五つ子との出会い
「焼き肉定食、焼肉抜きで」
「はいよ」
この学食での最安値は200円のライス……と思いがちだけど、焼き肉定食から焼き肉皿を抜くと同じ値段で味噌汁とお新香がつく!学食最高!水も飲み放題だし!
「上杉さんまた一人だぜ」
「誘ってみる?」
「ばっか、知らねえの?あいつ地雷だから」
(聞こえてるっつの。ま、私の人生とは関係のない人間だ……どうでもいいけど!)
「あっ」
「え?」
見ると、星のアクセサリーを髪にくっつけた女子が同じ席を取ろうとしていた。
「すみません、相席してもいいですか?他はどこも空いてなくて……」
「…………」
他の席をちらっと見る。たしかに、他はどこも埋まってる。待つのは面倒かな。
「好きにすれば」
「ありがとうございます!よかった、午前中にこの高校を見て回ったせいで足が限界なんです」
(転校生か……)
「おい、見ろよ。上杉さんが女子とご飯食べてる」
「やばい。美少女二人のツーショットだ」
「眼福眼福」
「……はぁ。男子ときたら」
「?」
「何でもない」
それにしても。うどんの上に海老天やらかしわ天やらが大量にトッピングして、その上デザートにプリンまで。セレブかよ。
ま、私は私なりの昼食を済ませよう。
「行儀が悪いですよ」
「テストの復習してるの。ほっといて」
「……へえ、食事中に勉強とはよほど追い込まれてるんですね?」
こいつの好奇心が刺激されたか、私のテストを奪い取った。
「あ、ちょっと!見るな!」
「上杉風子、得点は……ひゃくてん?」
「あーっ!めっちゃ恥ずかしい!」
「わ、わざと見せましたね!」
「何のことだか」
いやあ、さっぱり分かりませんねえ。
「悔しいですが勉強は得意ではないので羨ましいです……そうです!せっかくの相席なんですから、勉強!教えてください」
「いらない。ご馳走さま」
「食べるのはやっ……お、お昼ご飯それっぽっちでいいのですか?私の分少し分けましょうか」
「ダイエット中だから」
ま、嘘だけど。自分家の事情を話すよりかはいいでしょ。
「てか、あんたが頼みすぎなんだよ。太るよ」
「ふ、ふと……」
別に勉強に関係ない事だし気にしてる訳じゃないけど、胸の脂肪を見ると意地悪したくなってしまう。決して気にしてる訳じゃないけどね。
「や、やはり、私は人より食べる量が多いのでしょうか……」
今頃気がついたのかよ。マズったな。異性に言われたら何か言い返してたんだろうけど、なまじ同性に言われて図星突かれたみたくなってるし。
「ま、いいか。ん?らいはからメール……」
電話で話したところ、上杉家の借金問題を解決できるかもしれない、高額バイトのお誘いだった。
内容は最近引っ越してきたお金持ちの娘の家庭教師をするというもの。アットホームで楽しい職場、給料は相場の五倍。女子同士という事でお互い楽だろう、との事。
そしてその娘、というのが……
「中野五月です。よろしくお願いします」
(こいつかーっ!)
中野という苗字。最近引っ越してきたお金持ちの娘。たしか黒薔薇はお嬢様学校の筈だ。
やばい。あの転校生に拒否されたら家庭教師の話がなくなってしまう。なんとかご機嫌をとっておかないと!チャンスはお昼ご飯のタイミングしかない……っ!
「友達と食べてるし……」
「!あなたは……」
件の女は一瞬顔を赤らめると、ぷいと向こうを向いてしまった。
くそ。話す気はないってか、デブ。
「ね、きみきみ。五月ちゃんのお友達?」
……?ピアスの女子に心当たりはないけど、あぁ、五月の友達かなんかか。
「いや、そういうのじゃないけど」
「五月ちゃんと喧嘩でもしちゃった?ほらあの子、ちょっと意固地になりがちなところあるしさ」
「喧嘩……まぁ、そうだね。早く仲直りしなくちゃいけないんだけど」
「ホント?じゃ、一花お姉さんが手伝ったげるよ。呼んできてあげるね」
「待って。余計なお世話だから。自分の事は自分でなんとかする」
あんまり知られたくないし……。
「なーんだ。かっこいいとこあるじゃん」
「うるさいな」
「でも、困ったらこの一花お姉さんに相談するんだぞ?なんか面白そうだし」
「………」
あんた同学年でしょ、たぶん。
けどマジで昨日の件なんて言おう。
五月、貴女はデブなんかじゃない。豊満な安産体型です、とか?
碌な案じゃない。スケベ親父みたいな事言ってどうするよ。そっち方面だと誤解される…
「うーえすーぎさーん」
「………!?」
「あはは。やっとこっち見た」
いつのまにか目の前にはウサちゃんリボンの女の子。さっき五月のテーブルで見た……五月の友達?
「私の名前、なんで?」
「ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれました」
すると懐から二つのプリントを取り出して、
「貴女が落としたのはこの100点のテストですか?それともこの0点のテストですか?」
……何が目的?
「………100点の方」
「正直者ですね!では両方差し上げます」
「要らない。ていうか、誰のよ」
「私のです」
「……よく差し上げる気になったね?」
もういいや。無視して次の授業の準備しよ。
「上杉さんの第一印象は『クール系美少女』『だけど友達いなそう』でしたが、新たに『天才』を加えておきますね!」
「全然嬉しくない」
ついて来るし。
女の子同士いいじゃないですかーっ、て言ってマジでどこまでもついて来る。うざ……。
「上杉さん!私まだお礼言われてません!落とし物を拾ってもらったらありがとう、天才なのにそんなことも知らないんですか?」
「あっそ」
0点のテストを突き返してやる。
「え?私の……」
「たまたま落ちてたから拾った。これで貸し借り無し」
「そっか!ありがとうございますっ!」
「お礼言っちゃったよ」
こいつ、ホストに行ったらカモられるタイプだ。お金巻き上げられる奴。
「あー、あんた……あの……中野五月と仲良いんでしょ?私が謝ってたって伝えてくれない?」
「?よくわかりませんがダメですよ。そういうのは五月本人に直接言わないと!」
直接、ねぇ。
その言葉を真に受けてしまって、わざわざ放課後の勉強の時間を削って、ストーカーじみた真似までして私は何やってんだろ。
帰り道は一人だと思ったのに……。
「この肉まんおばけ!男にモテねーぞー」
「や、やめてください!」
(横の友達邪魔だな……)
「…………」
(あれ?もう一人は……あっ)
「…………」
「ど、どうも」
「一人で楽しい?」
「……割とね。こういうのが趣味なの」
「女子高生を眺める趣味。そっち系?」
「違う」
ヘッドホンの女子。この子、何考えてんだかさっぱり分かんないな。
「変な目で見るのはやめて。友達の五月ちゃんにも言わないでね」
「……分かった。けど、あの子とは友達じゃない」
「えぇー…」
我ながら女子って怖いな。あんなに仲よさそうに見えるのに。
「ここがあの子のマンションね……。!いたっ、五月!」
ここが声をかける最後のチャンス。あの子に謝れなかったらせっかくの家庭教師の件がなくなっちゃう。間に合え!
『上に参ります』
「間に合わなかった……」
エレベーターのドアは閉まっちゃった。
しかも運の悪い事に、らいはから送ってもらった住所を見る限り部屋は30階にあるらしい。降りて来るまで待つなんてできない。
「となれば、階段っきゃない!」
そりゃあ勉強ばっかで運動なんてほとんどした事ない私でも、30階登る体力くらいはあるはず!
「ゼハーッ、ゼハーッ……」
無かった。
私に体力は全くなかったらしい。その上五月の姿もどこにもない。マズった。タイムオーバーだ。もう家庭教師のバイトも始まるっていうのに。らいは、五月から拒否られたらごめん……
「あれ?」
フラッとする。
そういえば、保健体育の先生言ってたな。日頃から運動不足の人や、女性に目まいが起こる事がよくあるって。過労やストレスが原因で交感神経が活発になり続けたら、自律神経のバランスが崩れるとかなんとか……
ああ。そういや最近、寝る間も惜しんで勉強してたなぁ。
「じゃーちょっくらコンビニに買い物……って、君、大丈夫!?」
「ハーッ、ハーッ……君、は……」
サイドにつけたリボン。五月の友達、だっけ。あれ?でも……
なんか、顔が五月にそっくりなような?
「!」
「あ、目ぇ覚めた?」
「よかった〜。私達の部屋の前で倒れるからびっくりしたわよ」
「………水、飲む?」
「上杉さん!心配しましたよぉ!」
ここは何処だろう。
普通、病院とか自分の家とか、そういう所で目を覚ます物だと思うんだけど。
……てか、なんでこの子達がここに。
見透かしたような眼のコイツに、
しつこい単純バカのコイツに、
何を考えてるのか理解不能のコイツに、
正義ヅラしたコイツに。
いったい何の偶然なの?
「先ほど父から連絡がありました。私達の家庭教師、あなただったんですね」
「!五月……え?なんでこの子達といっしょに……」
「なんでって…住んでるからに決まってるじゃないですか」
……………。
「へ、へぇー…同級生の友達五人でシェアハウスか。仲良しなんだね」
この時、急激な負荷をかけられた私の脳は、限界を超えた速度で高速回転!一つの答えを導き出した!
夢だ。
これは夢に違いない。
「違います。私達、五つ子の姉妹です」
私はあの瞬間を、大人になってからも夢に見る。
ーーーとんでもない悪夢だ!
五等分の花嫁で、上杉君が女の子になったらどうなるのか?というコンセプトの元作りました。五つ子も男に!という案もありましたが二乃がクソ野郎になるので見送りました。女子に睡眠薬盛るのはアウト。一番好きですけどね。
上杉風子
160台前半くらい?身長が高くスレンダー体型。黒髪をポニーテールにしている美少女。ただし勉強魔で体力は風太郎以上にない。
五年前は小悪魔系金髪コギャル。