五等分の花嫁 -上杉風子の場合-   作:悠魔

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シスターズウォー 三回戦

『四葉、お願いがあるの』

 

『フー子ちゃんとは、二人きりで話し合いたいんだ。や、告白じゃないよ。謝罪しておきたいの。混乱を招いてしまったことについてね。

 ──三玖とは、まだ、正面きって話す度胸がまだなくってね』

 

『上杉ちゃんと二人で話すチャンスが欲しいってこと?でも、わざわざ二人になる必要性は……』

『フー子ちゃん、修学旅行すっごく楽しみにしてたなあ』

『ッ』

『このまま、全てが有耶無耶になったまま終わるのかなあ。それで良いのかなあ』

『………わ、私に任せて!』

 

 

 

 

 

 

──これで四葉を引き入れた。

 決行は二日目の自由行動日だ……!

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 一花から言い渡された指示はこうだ。

 『上杉ちゃんと二人きりでいられる時間を作ってほしい』……実に単純なお願い。

 私はそれを遂行するだけだ。

 何の疑問も抱いてはいけない。

 姉妹の皆んなが私より幸せになるのは当然だから。

 中野四葉一人だけが、幸せになってはいけないのだから。

 

(その指示を受けたはいいけど……五月は隣にいるからいいとして、肝心の二乃と三玖はどこに行ったんだろう)

 

 上杉さん関連で、何かを企んでいそうな二人だ。最優先で見張っておくべきだったのに……抜かったな。

 …………五月、か。

 

「わぁ……久しぶりに見ると高いですね。うぅ、落ちたらどうしましょう。柵はもっと高いと思っていたのに」

「あはは………でも、ちょうど良かった。五月、聞いておきたいことがあったの」

「?何ですか?」

「これ」

 

 私はお守りを取り出した。

 それを見て五月は息を呑む。それもそうだろう。これは、五年前……いや六年前に私がそこの売店で買ったものだから。

 そして五月にこのお守りを渡して、おそらく零奈になったタイミングで上杉ちゃんに渡した。

 当の上杉ちゃんはお守りをクリスマスに川に流してしまったのだけれど、それを偶然私がキャッチしちゃうのだから運命って分からないものだ。

 ………だけど解せない。

 

「どうして上杉ちゃんにこれを?」

「…………それは」

「怒ってるわけじゃないよ。でも、純粋に疑問だったんだ。……何で自分から正体がバレるようなことを?」

「……うう、やはり私に隠し事はできませんね。正直に話します。

──私個人としては、零奈の正体が私だということも、四葉が京都で出会った子というのもバレて良いと思っています」

 

 …………な。

 予想外の答えに頭がクラクラした。

 

「なんで?上杉ちゃんは過去の私に執着していた。だから五月に頼んで『さよなら』してもらったのに」

「先日、旅行の買い出しの際、私は零奈として上杉さんに会いました」

「──────え」

「その際に感じたのです。彼女は、零奈に以前のような執着を抱いてはいないということを。彼女はもう過去に『さよなら』を済ませたのだと」

「ッ、なら、五月がこれ以上何かする必要はないよ!私のためにそんなにしてくれなくたっていい!上杉ちゃんは過去へのこだわりを捨てた、これでこの話はおしまいなんだから!」

 

 思わず声を荒げてしまう。

 私のその必死な形相に思うところがあったのか、それともこの場は目立つと判断したのか。五月は「場所を変えましょう」と切り出した。

 人気がないところに来ても、私の中の混沌は消えなかった。時間を置いたせいか、余計にその黒渦は大きくなってきているような気がした。

 

「四葉、あなたのその態度は前々から不思議に思っていたのです。あなたはやけに上杉さんに肩入れしている」

「そりゃそうだよ。私は、誰かの役に立てるような人生を目指してるんだから」

「とはいえ、ですよ。私に零奈役を頼んだ時のあなたはやけに切羽詰まっていた。今思えば、あれは──……

 ………。四葉、あなた上杉さんに恋してるのではありませんか?」

 

 図星だった。

 違う、という反論すら頭に浮かんでこなかった。私はどうも不意の出来事に精彩を欠くらしい。真剣味を帯びた、それでいて優しく問い掛けるような五月に動揺を覚えなかったといえば嘘になる。

 

「一花と、二乃と。そして三玖の修学旅行の動向を見ていれば私でも自ずと分かりますとも。あの三人は上杉風子に恋をしているのだと。四葉は、それと同種の──同じ感情を抱いていたのだと」

「……………」

「違いますか?今ここには私と四葉以外は誰もいません。ここなら本音を話せるのではないですか?」

「────。そうだとしても、ここにいるのが二人だけだったとしても、中野四葉は絶対にその言葉を口に出すわけにはいかないの」

「な──何故です!」

「それを口に出してしまったら、私は、きっと諦めきれなくなってしまうから。抱いてはいけなかった感情を抑えられなくなってしまう。

──私はあの子に恋してはいけないから」

 

 中野四葉は四人の脚を引っ張った。

 ひとえに愚かで、浅はかだったが故に、私は馬鹿をやらかした。

 私が上杉風子への恋を肯定するということは、また姉妹を裏切るということ。万が一にも私が上杉ちゃんと付き合うことになってしまったら、それこそ取り返しがつかなくなってしまう。そんなことは有り得ないとはいえ、それで皆んなを振り回すわけにはいかないんだ。

 また脚を引っ張ってしまう。故に私はこの気持ちを捨て去らなければならない。

 

 ──だから。

 ──分かって。

 

 

 

 

 

「──分かりません!!」

 

 突然の怒鳴り声に動揺した。

 五月?なぜ──?

 

「い、五月……?」

「抱いてはいけない感情!?恋してはいけない!?それなら、あの三人はどうなるんです!一花も二乃も三玖も、恋してるのは女の子なんです!同性なんですよ!?ですが彼女達は嫌われるのも覚悟の上で上杉さんに恋しているんです!

 あなたの恋心を否定するのなら、彼女達の恋心をも否定することになります!」

 

 五月は爆発した感情を、不器用にも私にただぶつけるしかできないようだった。

 でもその本質は、どこまでもどこまでも優しさだった。

 

「それに──何ですか?『姉妹の皆んなが私より幸せになるのは当然』?私達が、四葉一人だけ不幸になっても幸福と思えると本気で思っているんですか?」

「ッ、それは────」

「──妹が、姉の幸せを願ってはいけないんですか………!」

 

 知らず、五月の眼は潤んでいた。

 

「四葉が上杉さんと上手くいくかどうかは分かりません。でも……、自分の気持ちを言わないまま終わるだなんて……、そんなの、寂しすぎますよ………!」

 

 …………私は……………

 

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 空に聳える曇天は、私達を見下すように君臨していた。あれだけ黒い雲だと、雨が降るのも時間の問題だろう。

 清水寺の下で、ぼんやりとそんなことを考えていた。さっきまで四葉と五月がいたような気がするけど……気のせいかな。

 そういえば皆んなは傘を持ってきていただろうか。分からない。少なくとも三玖は持っていなかったようだけど。

 

「三玖………」

 

 ごくりと唾を飲み込むのは、恐怖のサインだ。三玖が怖いのじゃない。恋愛について考えるのが、もう嫌なのだ。

 だからこうして五つ子の皆んなに会わないよう、こそこそと行動している。………情けない。誰にも胸を張れない。堂々といることができない自分が情けない。

 喉が渇いた。

 旅行用にあらかじめ多めに持ってきたお金を自販機なんぞに使うのも癪なので、自販機近くのウォーターサーバーへと行き水道水で喉を潤そうとする。

 ……先客がいた。

 武田君だった。

 ふう、とひと心地ついて、口を拭う姿までもが様になっている。彼はこちらに気付くと、柔和な笑みを浮かべた。

 

「やあ上杉さん」

「ん。……一人でどうしたの」

「前田君と回るつもりだったのだけどね。彼、好きな子がいるみたいで。彼女と二人で回れるよう、僕は一人で行動することにしたというわけさ」

「成程。……私がとやかく言うことではないのかもしれないけれど、ちょっと残念じゃない?恋愛で……友達と回れなくなってしまったのは」

 

 って。

 思いっきり今の私の状況と照らし合わせているじゃない。

 少しの沈黙。流石の武田君もこの質問の意図は伝わらなかったのかな……?

 

「いや、深い意味はないんだけどね……」

「……正直言って、今のこの状況は僕にとって最良に近い。

 僕の修学旅行の当初のプランは、上杉さん、君と二人っきりの班を組んで回ることだったからね」

「……………えっ?」

「しかし君は中野さ……三玖さんと一緒に回るという。ならば、修学旅行中に二人になる機会がないかと考えた。しかし、君は体調を崩してしまった」

 

 武田君?

 何か、彼の中の変なスイッチが入っているような。

 

「ようやく今、僕は君と二人になれた。今ここにいるのは二人きり。この機を逃せばもう永遠に訪れない気がする。

 だから言わせてくれ」

 

 

 

「──僕は君のことが好きだ」

 

 動揺、していた。

 咄嗟の返答ができなかった。

 

「しゅ、」

 できたことといえば、

 

「修学旅行までに答えを出すからっ」

 そう言って逃げることだけ。

 動転しながら、当てもなく、人気のないところへと走っていた。

 ……そうだ、もう、ホテルに帰ってしまおうか。一晩寝れば忘れるだろう。

 武田君のあれも、きっと、修学旅行の熱に浮かされてのことだろう。

──きっとそうだ。

 

「上杉ちゃん!」

 

──リボンをつけた少女が、不意に、私の手を掴んで強引に呼び止めた。

 

「ついてきてください!」

「ごめん、今は……」

「お願いします!今しかないんです!」

「急にどうしたの、………四葉」

 

 彼女は質問に答えなかった。

 ……一人になりたかったんだけど……。

 もう、なるがままだ。

 訳がわからないままに走ると、見覚えのある場所に出た。この道は六人前にも彼女と歩いたことがある。

 

「ここは……」

「来たことありますよね?」

「うん、まあ……小学生の頃にね」

「小学生の頃?」

「あの日のことは鮮明に思い出せるよ。私はあの子……零奈に振り回されるがままに辺りを散策したんだ」

 

 私を必要と言ってくれたあの子との思い出が楽しくないわけがない。気がつけば日は落ち、夜になっていたんだ。

 その後は学校の先生が迎えに来てくれることになって……零奈が泊まってた旅館の空き部屋で待たせてもらって、そこではトランプしてたっけ?

 ……担任にこっぴどく叱られたっけ。

 ……そこで私は……。

 

「その子は……」

「もういいでしょ」

 

 え、という驚きの声が上がった。

 でももう私に人の気持ちを配慮する余裕なんてとっくに無かった。

 あるのは苛立ち。

 これは八つ当たりだ。

 なんでこう……人を悩ませるようなイベントが被るのか。神ってやつが運命を操作しているのなら、きっとそいつは最高に悪趣味な奴に違いない。

 

「一花なんでしょ?」

「な………なんで」

 

 なんで、って。

 なんでって何だよ。

 最初に仕掛けてきたのは、私を見分けられるようにしたのはそっちのくせに。

 そっちから五月の森だのなんだの試してきておいて、言うにこと欠いて、……なんでときたか。

 胸に沸く苛立ちのままに、一花の頭に手を伸ばした。

 

「──だから、さぁ……」

「!や、やめ……髪……」

「分かる、って言ってんでしょ!!」

 

 彼女の髪を──正確には彼女の着けているウィッグを──頭のリボンごとむしり取る。いともたやすく、彼女の正体は露見してしまった。

 一花は、困ったような照れているような複雑な顔を浮かべていた。

 

「ほら正解」

 

 この子は、もう、本当に。

 私のことを侮りすぎだ。

 ………雨が降ってきた。

 

「学校の廊下で会った三玖の正体も、一花なんだよね」

「あ、あれは私じゃ……」

「なんで私にあんな嘘ついたの」

 

 雨は勢いを増し、石畳の上で激しく乱反射する。跳ねた雨粒が脚にかかるけれど、もうそれは些細なものに思えた。

 雨音さえも遠く聞こえた。

 

「さっきの話……フー子ちゃんは知ってるんじゃないかな。六年前のその子が私達五人の誰かだって」

「………ん」

「私だよ………」

 

 だから、一花の声は雨の中にあっても鮮明に聞こえた。

 

「私たち六年前に会ってるんだよ………」

 

 縋り付くような──。

 半ば掠れたような声だった。

 

「嘘じゃないよ……信じて……」

 

 真実にしてはあまりに昏い瞳。

 けど嘘にしてはあまりに迫真の演技だったので、私は混乱した。

 もう何が本当で何が嘘か私には判別がつかない。……その口振りは明らかに、彼女が零奈ではないと物語っているのだけど。

 零奈が五つ子の一人だって話はもうこの間の買い出しの時に済ませたじゃん。そもそもあの時の状況からして一花という可能性は低いわけで……、

 ………ってかそういうことはもう、どうだっていい。一花が零奈なのなら、証拠を見せてもらうしかない。

 

「──六年前、私とここで買ったお守り。覚えてる?」

「えっ……うん!今でも持ってるよ。忘れるわけないよ」

「ほら、また嘘じゃん……!」

 

 あれは私が失くしてしまったんだよ。

──私はあんたと胸を張って対等だって言うために見分けられるようになりたかったんだ。もっとずっと一緒にいたいと思ってしまったから。

──なのに、この仕打ちはなんだ?

 

「馬鹿にしないでよ」

 

 ウィッグを握る手に力が篭る。

 もう、自分の苛立ちを抑えられない。

 何もかもどうでもよくなって、ウィッグを一花の顔に叩きつけた。

 

 

 

「──私の前でもう嘘つかないでよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋に帰るなり、私は、ベッドの上に飛び込む……のは汚いのでシャワー室に入り身体を洗って綺麗にしてからベッドの上に飛び込んだ。

 三玖がまだ帰っていないのをいいことに、枕に頭を埋めてジタバタと暴れる。

 

「あーーーっ!!!もーーーっ!!!」

 

 子供のように、暴れた。

 

「んんんんんーーー!!もーやだ!なんでどいつもこいつも私なんかのこと好きなの!見る目ないんじゃないの!勉強くらいしか取り柄のない馬鹿女になんで皆んな告白してくるの!ドッキリかよ!」

 

 暴れた……。

 

「わーーー!何で!?おかしいよお絶対おかしーーよーー!!もー誰のフリした誰とか何とか嫌だし恋愛もいやーっ!」

 

 ………暴れたら眠くなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フー子?もう夕御飯の時間だよ?」

「…………」

「ねえ、私と話し辛いのは分かるけどせめて返事だけでも………あれっ」

「スヤァ………」

「寝てる……」

「にへへへへ、もう食べらんないよぉ…」

「ベタな夢……」

 

 

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

「上杉さん、そろそろ学級長の仕事があるんだけ……ど……寝てる………」

「どうする武田君、起こそうか?」

「いや、まあ一人でもできる仕事だ。仔細ないよ。明日の選択コースだけ決めるよう言っておいてくれ」

「うん、分かった」

「…………僕は負けないから、ねっ☆」

 

「……………えっ何だったの今の」

 

 

 

 

 

 

 

「五班、全員いるかい?明日の選択コースを決めるから、代表者は用紙を持って二階の大広間に集合するように、だそうだよ」

「何故あなたが……」

「一応学級長だからね。疲れて寝ている上杉さんの代わりに来たというわけさ」

(……風子、やっぱり私達を避けているのかしら?仕方ないけれど……)

「…………僕は負けないから、ねっ☆」

 

「……………えっ何だったの今の」

 

 

 

▽▽▽▽▽▽

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!」

 

 いけない寝ちゃってた!やば、学級長の仕事があるってのに!時刻を確認すると、夕食三〇分前!…………やべえ!

 

「ああ、仕事なら武田君が代わりにやってくれてるみたいだよ。時間的にも、多分もう終わってるんじゃないかな」

「うわ、まずったな……」

 

 後で彼には何か埋め合わせをしよう。

 ………でも多分、彼ともう一度顔を合わせてしまったら、告白の返事を問われるのだと思う。そう思うと、彼の下に行くのは憚られた。

 ………てか冷静に考えて、今、三玖と同じ部屋にいるというこの状況も私にとってとても居心地の悪いものだった。直接、顔を見ることができない。

 「飲み物買ってくる」なんて、適当な嘘でその場から逃げてしまうほどに。

 しかし、私のこの行動がまさしく彼女を傷つけてしまっているのではないか……。

 三玖は何も悪くないのに……。

 ああ、もう。

 むしゃくしゃするーっ!

 

「あ、上杉さ……」

「今度は何!?」

「うわっなんかすまん!」

「………あ、前田君、ごめん」

 

 彼も飲み物を買いに来たらしい。

 奢ってくれるというので、お言葉に甘えさせてもらう。こういう時は男の子を立たせてあげるものだ、とお父さんに教わっていたし、そもそもお土産に使うお金を考えればここでお金を使う余裕はないのだ。

 

「──じゃあ、缶コーヒーで」

「微糖かブラック、どっちにします?」

「微糖でお願い」

「ウス」

「ごめんね、ありがとう」

 

 冷えたコーヒーをちびちびと飲む。

 ……やっぱり慣れない。砂糖入りなら飲めるかと思っていたけど、どうやら舌がコーヒー自体に慣れていないようだ。

 舌の上が何か変な感じ。とはいえせっかく奢ってくれたものに嫌な顔をするというのも何なので、頑張って表情に出さないように努めた。

 

「そういや明日の選択コースはどこにするんスか?」

「え?えーと……」

「もし決めてねえなら、俺達と一緒に回りません?武田の奴が上杉さんと回りたいって言っててよ、上杉さんと……ええと、中野三玖さんだっけ。彼女さえよければ」

「えっ!そ、それは……」

 

 それって明らかにデートじゃん。

 武田君のあの言葉が冗談でなければ、それってデートの誘いじゃん!?

 つーか順序逆じゃね!?

 普通そういうのって告白する前にするでしょ!何なんだよ!これを断ったら彼を振ったみたいじゃねえか!……いや、むしろその方が良いのでは……?

 

「むむむ………」

「……?上杉さん?そんなに俺達と回るのが嫌なのか………って、違うか。

 なんか悩み事でもあるんスか?」

 

──なんかやけに鋭いし。

 この際だ。悩みを聞いてもらおう。

 

「……あのさ、友達の話なんだけど、もしも前田君が何人かからほぼ同じ時期に告白されたとしたら……どうする?」

「えっ!………いやそれって上杉さんのことじゃないんスか?」

「!?な、なんで分かったの!」

「だって上杉さん、告白とかいっぱいされてるみたいじゃないですか。つーか俺がその一人だし、今回もそうなのかなーって」

 

 た、たしかに。

 てか冷静に考えれば、この状況は、一度振った相手に恋愛相談を持ちかけているということになるのか……!?

 うわ!最低じゃん!

 いくら頭がいっぱいいっぱいだったとはいえ、流石にそれは酷いぞ私!

 

「いやそれは別にいーっすよ。過去のことを今更グチグチ言っても仕方ねえ。それに上杉さんが恋愛に前向きになったのなら、それは喜ばしいことじゃねえか」

 

 やべえ。

 すごいかっこいいこの人……。

 私が同じ立場だったとしても、こんなこと言える自信はないよ。

 

「………で、されたんすか?何人かから、同じ時期に告白を」

「……うん。皆んな、すごく大切な人で傷つけたくないんだけど、でも、誰かを選ぶということは誰かを選ばないこと。選択次第では、いつも通りの日常は望めないかもしれない。それが嫌なの。………ごめん、物凄く嫌味に聞こえたかもしれない」

「…真剣に向き合うってのァ、つまるところ『好き』か振るかの二択しかねえだろ」

 

 そう、だよね。

 何だかんだいって、道は二つだ。

 承諾するか、断るか。

 そのどちらも選べない──いや、選びたくないから、私は臆病者なんだ。

 

「返事に困ってるってことは、あんたは傷つけるのが怖いからじゃねえのか?」

「そうだね。拒絶したら勿論、承諾して、付き合ったとして──その先でその子を傷つけてしまったとしたら、って思うとね」

「んな未来のことは、なってから考えればいいんだよ。向こうさんだって、んな先のことは考えてはねえ」

 

 それは、……そうかもだけど。

 

「それにさ、」

 

 続けるように彼は言った。

 

「俺は一度あんたにフラれたからあいつと出会えた。失恋だって悪いことばかりじゃねえよ。たぶん、そいつに本気で向き合わないことの方がよっぽど辛いと思うぜ」

 

 

 

 

──私はどうするべきなのだろう?

──いや、どうしたいのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

「つーか、なんとなくだけどよ。

 上杉さんはもう好きな人がいるんじゃねえのか」

「────え」

 

 

 

 

 

 

 

三日目が始まる──。

 




おまけ
「おーい、そこの二人!見学は中止……」
「私の前でもう嘘つかないでよ!!」
「うわっすごいもん見た」

学年トップレベルの美少女と学年一の人気者の痴話喧嘩の場面に遭遇したモブってすごい貴重な体験したと思うの。




 おまけその2
 恋愛敏感度
 このパラメータが高ければ高いほど他人の恋心に気付きやすくなる。反対に低ければ低いほど他者の好意に鈍感になったり、難聴になったりする。(この数値はあくまでこの作品内でのものです)

【めっちゃ勘が良い】
該当者:四葉
 風子関連に対してのみこの順位。風子に惚れた人間を察知する能力が高すぎる。あの時点で一花の恋心に気付けるとか相当。

【けっこう勘が良い】
 該当者:一花、二乃、三玖
 だいたい普通の女子はこのくらい。

【鈍い】
 該当者:五月
 こいつが気付くわけねえだろ!

【ヤバい】
 該当者:風子
 直に告白されるまで気付かないレベル。つーか告白されてももともとそういう方面に鈍チンな上に恋愛嫌いなのが拍車をかけてる。
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