五等分の花嫁 -上杉風子の場合-   作:悠魔

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 この話書くにあたって矛盾のないように四葉関連の考察とか伏線とか調べてたんですよね。(主にリボンの民考察班の考察)
 そしたら、

・一花はピアス一つ、二乃は二つリボン…四葉は風太郎のアホ毛と合わせて四葉のクローバー
・77話、ブランコ意識したりマルオに釘刺された後に四葉へのプレゼントの感想聞かれて答えられなくなる
・77話「応援するとか言いやがる」
・77話「こいつだけは心配ないだろう」
 つまり四葉は心配ある
・68話で「誰だよ」ではなく「何だよ」って言ってるから見分けられてる、つーか「何だ四葉」と言いかけてるのでは?
・34話で不自然に五月アップのコマが→ヘアピンついてない→これ四葉だ!フルカラー版がたのしみ!あと途中から病院のドアが開いてる!
・四葉の笑い方は昔は手を当てて上品に笑ってたのが風太郎の影響で「ししし」という笑い方に変わってる
・50話風太郎は滑るが四葉は滑らない
 68話風太郎は滑るが四葉は滑らない
・88話で行ったのは八坂神社、素戔嗚尊というたくさんの兄弟の中で一人だけ結婚した神を奉ってる
・後悔のない〇〇にしましょうね!でどんどん目を逸らし始める
・四葉の「そうだね」が移る

とか、伏線多すぎて……
こう……気が狂いそうになる……。



十一巻
私と姉妹


『私と姉妹』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瓜二つ。

 学校の先生から聞いた話だ。瓜を半分に切っても同じ形だからそういうらしい。

 その瓜とかいう食べ物が何なのかは分からないが、だったら私達は、言うなれば、『瓜五つ』──ということになる。

 

 私達はいつも一緒だった。

 見た目も、髪の長さも、服も、声も。

 そっくりは私達にとって褒め言葉で、誰かの失敗も五等分で分かち合っていた。

 ……たまに一花が一人だけ得をすることは多かったし、私は脚を引っ張ることは多かったけれど。

 お母さんは私達それぞれに服を買ってあげられないことを申し訳なく思っていたようだけれど、でも、私達にとってはこれが最適で至福だった。これ以上の幸せなどないと思っていた。

 

「私達の考え方も共有されてるみたいで心地良い」

 

 そう言ったのは二乃だったか。

 私が財布を落としてしまった時、代わりに花を送るのはどうか、と提案したら、もう既に姉妹全員が花を探してくれていたことは記憶に新しい。

 皆んなと一緒は、楽で、楽しい。

 その日は病気が治ったお祝いで、お母さんへサプライズの花を渡す日だった。

 

「帰りました。………?帰りました。いないのですか?」

 

 お母さんが不審に思ってきたところで、電気を点ける。同時に、満開の笑顔と花束を差し出した。

 

「お母さんおめでとう!元気になってよかったね!」

「!……………」

「見てー、これ皆んなで集めたんだ」

「今日もお仕事おつかれさま」

「いつもありがとう!」

 

 ……あれ?固まっちゃった。

 やっぱこれじゃあ………、と、不安に感じた私達の身体を、お母さんは優しく抱き締めてくれた。

 

「私にとってはあなたたち五人が健康に過ごしてくれるのが何よりもの幸せです」

「………!」

「こちらこそありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小学生の修学旅行のときのこと。

 なかなかお母さんに抱き付いて離れない五月を引っぺがして電車に乗り込む。

 と。

 背の高い、かっこいい男の人がお母さんを迎えに来ていた。最近よくお母さんが会ってる、お医者さん。

 

「お母さん、あの人って」

「そうですね…いずれ説明しますが……」

「彼氏?」

「私達の将来的なお父さん?」

「…………………、…………、敢えて言うなら、私のファンらしいです」

 

 口籠ったと言うよりは、顔を緩ませないようにするのに必死で返答に遅れたような顔をして、お母さんは答えた。

 デキてる!

 

「お母さん、顔には出ないけど割と分かりやすいよねー」

「お父さんかぁ、どんな人なんだろ」

「ちょっと気が早くない?……いたっ!」

 

 先行していた一花が誰かにぶつかった。

 私達と同じくらいの歳の子。他の修学旅行の子だろうか。

 ………って、わっ。

 人混みに押されて………、ああっ、皆んなと逸れてしまった。

 

「えらいことになってしまった……」

 

 早く見つけないと私だけ取り残されちゃう。私達は五人一緒じゃなきゃいけないのに……、五人、一緒に………

 本当にそうなのかな……?

 皆んなの所に戻った方が良いんだよね?

 

(って、だめだめ!こんなこと考えちゃ。

 あーあ、あの女の子みたいに一人旅できる勇気があればなー)

 

 …………ん?

 なんか知らない人に変なクレームつけられてる?警察まで呼ばれちゃって……。

 好奇心と同情心が半分ずつ。

 お母さんの真似をして、顔に出さないように努めながら、声を掛けた。

 

「その人は無罪だよ」

 緊張を拳の中に覆い隠した。

「私、見てたもん」

 

 

 

 

 

「あんた誰?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 派手な金髪。

 細身の身体を隠すように攻撃的な服装を見に纏ったような彼女は、話してみると、案外子供っぽくて気さくだった。

 

「ほら見て!さっきまでいた京都駅まで見えるよ!」

「え、マジ!?すっげ……」

 

 そんな彼女が子供の手には不釣り合いな大きさのカメラを構える。揶揄ってみたくなって、ピースして写り込んだ。

 

「……………」

「え?撮らないの?」

「もう付いて来ないで」

「わーっ、お守りだって!買ってこうよ」

「なんで付いてくんの!?」

 

 

「あ、もうこんな時間」

「うわ、とっくに夜じゃん。……あんたが連れ回すから」

「風子ちゃんだって結構ノリノリだったように見えたけど?」

「む……。ま、言い合ってても仕方ない。携帯とか持ってないでしょ?」

「うん……先生達、探してくれてるかも」

「取り敢えずバスに乗ろう?」

「うん。あっ!」

 

──お昼に使ったお守りで全財産使い果たしてしまった!

 

「バカなの!?五個も買うからだよ!」

「あはは、やってしまった」

「言っとくけど私の手持ちはこんだけ、あんたには貸せないよ」

 

 うん。分かってる。

 彼女とはここでお別れだ。

 じゃあ、気をつけて……

 と、言おうとした瞬間、彼女はお賽銭箱の中にお金を全部入れてしまった。

 え?なんで?

 

「あ、無くなっちゃった。じゃあ、私もここで待たなきゃだ」

「え?」

「私の家、貧乏で毎回五円なんだよねー。

 ……って今のお金で電話すればよかったじゃん私のアホ……ま、いっか」

 

 何だろう、この女の子。

 好奇心は更に増す。

 

「風子ちゃんは、……その、お金がなくても辛くないの?」

「?」

「あー、っと。うちも貧乏で、お母さんが一人で働いてくれてるの。私は辛くないけど、そんな風に頑張ってるお母さんを見るのは辛いよ」

「うちも似たようなもん。そりゃ、お金持ちの家が良いに越したことはないけどさ。それは仕方ないじゃん」

「そうだね。でもたまに思うんだ、自分がいなきゃもっとお母さんは楽だったのに、って」

 

 後ろで息を呑む気配。

 何か思うところがあったのだろうか?

 

「だから、これからたくさん勉強して、うんと賢くなって、とびっきりお給料の貰える会社に入ってお母さんを楽させてあげるんだ!そしたらきっと、私がいることに意味ができると思うんだ」

「すごい……大人じゃん」

 

 風子ちゃんの、どこか感嘆したかのような声に、少し照れ臭くなった。

 

「………私も、だよ。……こう、世界中の人間から要らない子って言われてるみたいっていうか……そんな風に思ってた。

 でも、自分の立場とか環境とか全部、自分が変わって自分で変えれば良いんだ!」

「ま、まぁ。なんか照れる」

「妹がいるの!まだ小学校入りたてなんだけど、私がめっちゃお金稼げるようになったら、あの子にも不自由ない暮らしをさせてあげられるかもしれない。

 必要ある人間になれるかもしれない!」

 

 輝いて見えた。

 憧れと言っても良いかもしれない。

 

「あの時の我儘は、そうやって返せば良かったんだ!」

「?」

「ごめんこっちの話!」

「そう?とにかく、二人で頑張ろう!

 私はお母さんのために!風子ちゃんは妹さんのために!一生懸命勉強しよう!」

「うんっ!」

 

 瞬く星が散りばめられた空の下。

 私達はそこで、約束をした。

 

「ね、さっきの二百円分の願い事しとこ。私とあんたで百円ずつ神様に頼むの。いつか万札入れられる大人になれるようにね」

 

 目標の共有が、とても嬉しくって、

 とても愛おしかった。

 

「なんてお願いしたの?」

「秘密…………わっ、まぶしっ!」

「………あ!」

「──四葉君、何をしているんだい?」

 

 その人に連れて行かれて、皆んなのいるホテルまで帰って来れた。学校から連絡を貰ったお母さんが相談してくれていたみたいで、わざわざここまで捜しに来てくれたのだとか。

 さて。

 件の風子ちゃんは、まだ私達の旅館にいるのだとか。学校の先生が迎えに来るまでにもう一度会いに行こうと思って、こっそりあの子の部屋に向かって……

 

 一花と一緒に話している風子ちゃんの姿を見つけた。

(……………………)

 

 言いようのない疎外感。

 抜け駆けされたことが嫌なのではない。

 私だって二乃を連れて行こうとしていたし、風子ちゃんという存在を皆んなと共有したかった。

 問題はそこではない。

 私の代わりは四人もいる。

 あの役割は、別に、私じゃなくても誰でも良かったんだ、という虚無。

 

──アイデンティティの崩壊。

 

 私がリボンを着けるようになったのは、その時からだ。

 皆んなと一緒でなくなるように。

 見分けてもらえるように。

 

「四葉、そのリボン似合ってますね」

 

 お母さんはそう褒めてくれた。

 これなら、もう皆んなと間違えられないと思って──。

 

「さぁ、それはどうでしょう。何を身に付けているかだなんて、大した差ではありません」

「そ、それだけじゃないの!私、皆んなより勉強して、この前なんて一番だったんだよ!勝ってるんだよ、……私はもう皆んなと同じ場所にいない。そっくりなんかじゃない!」

 

 焦燥故の行動だった。

 けれど、私のそんな微々たる努力など、簡単に覆される。

 それを証明するかのように現れたのは、『私と同じように』星の髪飾りをつけてこちらに駆け寄る五月だった。

 

「お母さーん、見て見てー」

「あら可愛いです……ね……ヒトデ……?いえそんなことある筈が……疲れが目に来たのでしょうか……

 四葉、あなたの努力は素晴らしく何も間違っていません。ですが、一番にならずともあなた達は一人一人特別です。親としてあなた達に一緒にいてほしいと願います。たとえどんなことがあったとしても……」

 

 私はそれを、今でも思い出す。

 薔薇のように心に絡まって、外れない。

 

「大切なのはどこにいるかではなく、五人でいることです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お母さんは死んだ。

 

 お爺ちゃんなど、茫然自失として、現実を受け入れられないような顔だったのをよく覚えている。

 

「いるよ。いるんだよ、お母さんは私達の中に生きてる。

 これからは私がお母さんにな──…

──お母さんになります」

「……五月………?」

 

「失礼するよ」

 

「こうやって君達と話すのは初めてだね。

 何度か顔は合わせてるはず。……四葉君とは修学旅行以来だね」

「…………、あ」

 

 そこでその人は、一度だけお母さんの写真の方を見た。

 そして──何かを決意したかのように、力強く、どこか悲しげに、言った。

 

 

 

 

 

「──君達は僕が責任持って引き受ける」

 

 

 

 

 

 




四葉って風太郎に嫌われるの極端に怖がってる説があるんですって。
なんでも観覧車で四葉が話したのと実際の黒薔薇の描写が全然違ってて、再試ではなく再再試とか姉妹で協力して再起を図ったとか全部嘘じゃん!ってなってて、
しかも風太郎が『約束の子は超頭良くて必要とされる人間になってるはず』と思ってるのを知って、幻滅されないよう約束の子の立場を棄てたかった……
みたいな考察見てすげえ……と思いました。まる。
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