「あ!これこれ!これですよ!一花が出てるコマーシャルです!ほら!見ててください!来ますよあのセリフ!はい!あともう少し!3、2、1……」
『忘れられない夏にしてあげる♡』
「キャー!」
(うるさいわ……)
「一花なら毎日見てるでしょ」
「それとこれとは話が違います!テレビや映画で観る一花は輝いて見えます!」
「そりゃメイクしてるし」
「……そ、それに!すごく楽しそうで本当に一花がやりたいことだと思うんです!」
「ほんと優等生ね」
「はは……。それでも一花を応援する気持ちは本当です!二乃だってそうでしょう?」
「………」
(嬉しい、けど……それでも一緒にいたいっていうのは私の我儘なのかしら)
▽▽▽▽▽▽
「こ、こう……?」
「うん。もっと強く」
(ああ……あの三玖ちゃんが新人ちゃんにレクチャーしてる!新人ちゃんはもの凄くシフト入ってくれるし……この店はもうあなた達のものよ!)
「……なんかいつの間にか店貰ったような気がする……」
「私も……」
「そうそう、一花が退学を選んだ理由って三玖は知ってる?」
「それは私の口からは言えない。ただ、心からの言葉じゃない……と、思う。
フー子こそ、なんで一花を引き留めようとするの?」
「………誰にも言わないでね?」
▽▽▽▽▽▽
それはとある昼下がりのこと──。
仕事が終わって、社長とプロダクションに帰ってきたときのことだった。
「どーも。菊は元気?」
いつものように悪戯っぽい笑みで私達を出迎えたのは、私のよく知る人物。
「フー子ちゃん……?」
そして隣には三玖の姿まで。
何をしにきたというのだろう。
「ふふふ、どうやら君もプロダクションに入る決意を固めてくれたようだね。個人的にはそそられはしないが、芸能プロダクションとして見るならば君は磨けば光る原石だ!さあ契約書にサインを」
「いやそういう話ではなく。分かってるでしょう、一花のことです」
口の中で言葉を幾分か転ばせた後、意を決したように、彼女は言った。
「退学を考え直してほしいの」
「それは無理な相談だね」
しかし社長はその言葉を切り捨てる。
それはそうだろう。私はもう自分の価値が分からない人間ではない。
「彼女は君の想像を遥かに上回るほど大きな存在となっている。今まで通り学校に通いながら、というのは不可能だろう。
何より彼女が決めたことだ。僕はそれを尊重する」
「わかりました。退学“は”諦めます」
「………んっ?え?」
「それじゃあ次はビジネスの話。一花、学校を辞めるのではなく、学校を一時お休みするのなら大丈夫?」
「………それって」
休学ってこと?
それこそ無理な相談だ。それはフー子ちゃん自身よく知っているはずで──
「私は自主映画を撮ることにしたの!出演は家庭教師と生徒の二人のみ。撮影は週二回で、三時間カメラの前でぶっ通しで勉強を教えるという素晴らしい脚本まである。監督兼家庭教師役はもちろん私。
で、その生徒役を、今をときめく中野一花さんにお願いしたいんです。その結果として学校に一定の学力を示すことができるかもしれないけれど、それはまあ些細な問題ってやつだね」
「お金はあります」
「………君達、まさか」
『退学はさせない』。
という、断固たる決意がそこにはあり、フー子ちゃんはどうやら本気らしかった。
意図が読めない。
なんでそこまでして……?
「……………、………。私は怒ってるの。一度私が家庭教師を辞めた時、引き戻してくれたのはあんた達でしょう?それなのに勝手に降りるなんて許さない。
五人揃って笑顔で卒業!それができなかったら意味ない!せめてそのくらいの義理は果たしたい、それが私の本心!以上!」
「違うでしょ」
「………い、以上っ!」
「感謝してるんだって」
「以上ったら以上!」
「あの時フー子を雇い直せたのは一花が仕事をしてくれてたおかげ」
「以上つってんだろ!」
「その恩返しがしたいんだって」
「み、三玖ぅ……!それは言わないでって約束したじゃん!」
「私はした覚えはない」
ドキリとした。
……そんな風に言われたら、また私は勘違いしてしまうではないか。
馬鹿らしくなるくらい不器用な優しさ。
恥ずかしそうに顔を背ける彼女の顔が、何度見ても、愛おしい。
「フー子ちゃん、私卒業できるかな?……このままお仕事に専念ってのも悪くないと思ってるし、さ。あと半年間もこれ以上、君に迷惑かけて……」
「──そんなに勉強してまで学校に行く理由ってなんだろ?」
「そりゃ……青春をエンジョイっていうか……今しかできないことを一花としたいと思ったから………」
「………そう」
「あと一花と一緒にいたいから……」
「えっ?……え、えええ!?」
「な、なに!?私、そんな驚くようなこと言った!?」
「わ、私と一緒にいたいって……」
「………あっ」
指摘されるなり顔を真っ赤にするフー子ちゃんを見て、釣られるようにして私の顔にも血が巡っているのに気付く。
本当に、この子は、もう。
……マジになっちゃうじゃん。
「二人とも顔真っ赤」
「うるさいな!……まあ、そんなとこ。これが私一人の我儘ならともかく、一花本人が皆んなと卒業したいってのなら、私はそれを放っておくわけにはいかないよ」
「あ、あれは嘘で──」
「いやもう分かるって。あんたの嘘くらいすぐに分かる。……で、まだ学校に未練があるのなら、このお金で私に雇われて」
……受け取るべきか?
受け取ったら何か変わるのか?
私は──「はいちょっと見せて」……社長が受け取っちゃったよ!
「全然お金足りないけど」
しかも足りないの!?
「嘘!?それでも多めに入れたのに!」
「うちの看板女優を見くびってもらっちゃ困るよ」
一瞬、間が空いて、
「一花……お金貸してくれない……?」
「──あはははははっ!かっこ悪っ!途中までは良かったのに、締まらないなぁ」
(何も言い返せない……!)
「ふふふ、うん。じゃあ、足りない分は出世払いでどうでしょう!」
「!」
「一花君!勝手に……」
「いいじゃん、社長。お仕事に迷惑はかけないからさっ。中卒の女優じゃ締まらないしさ、バラエティに出た時に話すネタ作りだと思って!」
社長はたっぷり悩んで、私とフー子ちゃんの顔を何度も見比べる。
悩ませちゃってごめんね、社長。
でも多分これが最初で最後の我儘だからどうか許してほしい。
「……信用していいんだね?」
「はい!」
「…はぁー。ここで君の仕事を受けさせなかったら、恥をかくのは僕だ。だが、一つだけ条件を出させてもらう。……絶対に仕事に支障をきたさないこと、いいね?」
「──ありがとうございます!」
「うん。よろしく、上杉風子さん」
こうして、私は休学になった。
少しずつ今の生活が変わってきている。
私達が一緒にいられるのもあと少し。
卒業はもうすぐそこまで迫っている。
──それまでのほんの僅かな時間で構わないから、神様。どうかお願い──
──私を恋する乙女でいさせてほしい。
許されないことだと思ってた。
「だーっ!寝るなっての!このままじゃ授業に追いつかないよ!」
「ひぃ〜、もう勘弁してよぉ。日中のロケでくたくたなんだよぉ〜」
「もう。このままじゃあの子達と卒業なんてできないよ?」
「卒業したいのは妹達とだけじゃないよ」
「?そうなんだ」
「……こやつめ。からかい甲斐のない」
資格なんてないと思ってた。
「それにしてもフー子ちゃんも大変だね。勉強も性格も面倒臭い五つ子相手に、よくもまあ熱心にやれるもんだよ」
「はぁー?あんた達姉妹が面倒臭いのはもう知ってるし慣れてるから、別にそこで失望なんてしないよ」
「………そ、そう?そう……」
「むしろそういう面倒臭いのがあんた達の魅力なんじゃないの」
「!…………、………あ、えっ。め、迷惑とかじゃないの?」
「だから、別に迷惑とか思ってないし。そこはマイナスじゃないって」
「……わ、私がからかいたいのに……!」
「何の話?」
けれどチャンスがまだあるのなら。
「そういえばさ」
「うん」
「花火大会、行くんでしょ」
「あー、仕事次第かな」
「来いって。皆んな楽しみにしてたよ」
「ふふ、花火は皆んなの思い出だしね」
自分に嘘をつかせてほしい。
勘違いさせてほしい。
「勿論、行くよ」
──私はそこで告白する。
おまけ
「あの子は僕が育てるんだ!!」
「いいえ新人ちゃんは私と三玖ちゃんが育てるの!あの子は渡さないわ!!」
「上杉さんはクリスマスの時からずっと入ってくれていたんだ!!」
「新人ちゃんは短い期間にものすごく多くの時間シフトに入ってくれたわ!!」
「上杉さん!」
「新人ちゃん!」
「「──どっちを選ぶの!?」」
「私は──誰も選ばない」
パァン!(平手打ちの音)
スマブラとあつ森ほんと終わらないゲームだよね…。
ポケモンのDLCも面白かったし、任天堂きてるな……!
ミェンミェン楽しみじゃあーっ!
あとはほんとね……ソラ出たらもう私のささやかな夢は叶うんよね……。キンハーほんと大好きで……。難しいとは思うけどクラウドやスネークのような時の奇跡をもう一度だけ見てみてぇ……。