五等分の花嫁 -上杉風子の場合-   作:悠魔

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問題は山積み

よし。三玖もなんとか勉強する側に立ってくれたところで、2回目の家庭教師の時間だ。

今日は曲がりなりにも五人全員が集まってくれてる。これなら何とかなりそう……かな?

 

「じゃあ、四葉、まずは宿題……」

「四葉ー、バスケ部の知り合いが大会の臨時メンバーを探してるんだけど、あんた運動できるし今から行ってあげたら?」

「今から!?えっと、でも……」

「なんでも五人しかいない部員の一人が骨折しちゃったみたいで、このままだと大会に出られないらしいのよ。頑張って練習してきたであろうにあーかわいそう」

そんなのやるわけないよね?

 

「すみません上杉さん!困ってる人を放ってはおけません!」

私が困るんだけど。

 

「じゃあ、ほら、一花、こっちにきて……」

「一花も二時からバイトじゃなかった?」

「あー、忘れてた」

忘れてんじゃないよ。こっちもバイトだよ。

 

「えーっと、五月?分からないところとかあるかな」

「五月、こんなうるさいとこより図書館とか行った方がいいよ」

「それもそうですね」

図書館潰れればいいのに。

 

「………えっと、三玖………」

「三玖、こないだあんたが間違えて飲んだアタシのジュース買ってきなさいよ」

「それならもう買っておいた」

「えっ。って、抹茶ソーダってなによ!」

大丈夫?それ鼻水入ってない?

 

「そんなことより授業始めよう」

「ありがとね、三玖。あんたのそういうところ素敵だよ、大好き」

「!?な、何言ってるのフー子。ばか」

この子よりは頭良い自信あるんだけどなあ。

 

「え?え?こういうダサい服の子と仲良くするっていうの?」

「なに?この尖った爪がオシャレなの?」

「あんたにはわかんないかなー」

「わかりたくもない」

「ちょっと、姉妹なんだから仲良くしなよ。外見とか中身とかそんなの今はいいでしょ」

こちとららいはと喧嘩するくらいなら三日ご飯抜きの方がまだマシなのにさ。

 

(そういえばお腹すいたな……)

「じゃあ三玖の言う通り中身で勝負しようじゃない。料理勝負よ!どちらがより家庭的か、アタシが勝ったら今日は勉強なし!」

「えっ。み、三玖……」

「心配しないでフー子、すぐ終わらせるから座って待ってて」

あんたが座ってろ。

いやね、勝つ勝たないじゃなくって、そもそも受けないで欲しかったんだけど。ね?

 

「じゃーーーん。旬の野菜を使った生ハムのダッチベイビー」

アメリカ発祥のパンケーキだっけ?確かドイツ人のオーナーが開発したとかいう。ドイツを意味するDeutsch(ドイッチュ)が発音出来なくって訛ったとかなんとか。

うん。結構美味しそう。

 

「………オ、オムライス」

フランス語で薄焼きの卵料理を表すomelette(オムレット)と、riceが混ざった和製英語がオムライスだね。王がある料理人の手早く卵料理を作る様を見てケム・オ・ム・レスト(なんてすばしっこい男だ)と呟いたのが語源だとか。

んー、まあ。得意不得意ってあるよね。

見た目はらいはの作った奴の方が美味しそうだけれど……。

 

…………。

「うん。どっちも普通に美味しい」

「はぁ!?」

「ほんとだって。食べてみる?」

「い・や・よ!」

美味しいのになぁ。

 

「三玖!何か言って……」

「………」

「…………。フン!何それ!つまんない!」

ああ、行ってしまった。食べればいいのに。勿体無いなあ。

 

「三玖、全部食べちゃっていい?」

「え!う、うん……いいけど」

「ありがと」

久し振りにオムライスなんて食べたなぁ。家で卵料理する時はあんまり贅沢に使えないからね。いつものご飯の倍の量はあるよ。はぁ、お腹いっぱい。

「じゃあ三玖、勉強を……どうしたの?」

「全部食べて……い、いや、なんでも」

「?」

「オムライス……全部食べてくれた……」

 

料理対決に時間を取られたのもあって、勉強は全く出来なかった。

なぜか分からないけど、二乃は私に特別な悪意を持ってる。あの子と分かり合える日が来るとは思えない。

思えない、と思ったけど。

三玖曰く、誠実に向き合えば分かってくれる……らしい。ま、そうだね。

今の私に出来ることはそれくらいかな。

 

その後帰ろうとして、財布をマンションの中に忘れてきてしまった。オートロックめんどくさ……。

忘れ物は、シャワー浴びてる間に勝手に取っていいらしい。それでいいのか。

と言っても財布の中身なんて無いに等しいんだけど、それはそれで見られたくないし。

 

「あ!」

「?」

三玖、もうお風呂上がったんだ。早いな…。

それにしても風呂上がりの姿とか、あんまり気にしないタイプなんだ。私の場合、お父さんに裸見られたらぶん殴るけど。

「三玖、ごめん。すぐ出て行くから……」

 

「誰?」

「えっ」

「三玖?」

「いや……あー……」

この黒いリボン……三玖じゃなくて、もしかして二乃??

うわ、面倒くさい事になったぞ。

でも、目が悪くて私が認識できてないのはラッキーだったな。さっさと忘れ物を取って帰ろう。

 

「いつもの棚にコンタクト入ってるから取ってくんない?」

「……………」

いつものとか、そういうのやめてよ。

もっと具体的に言ってよ。

「?どうしたの?お昼にいじわるしたことまだ根に持ってんの?」

どの棚だ……?

「あれは勢いで……悪いとは思ってるわよ」

違う、ここじゃない!

 

「何してんの?そこじゃないって。場所変えてないわよ」

二乃が私の背中越しに棚のコンタクトを取ろうとしてくる。

やめろ!そういう後ろからおっぱい押し付けてくるのやめろ!惨めになる!やめやめろ!

「返事くらいしなさいよ。やっぱ怒ってんじゃん……」

 

「全部あいつのせいだ」

うわぁ目の前で陰口叩かれてる。

 

「パパに命令されたからってズケズケと無遠慮に家に入り込んで来て、私達のこと引っ掻き回して……」

「……………」

「私達五人の家にあいつが入る余地なんて無いんだから」

あれ?

もしかして、この子……。

 

「もう!ちょっとカワイイからって調子乗ってんのよ!」

いやいや、あんたの方が可愛いって。

「何なのよあの艶々の髪は!それにあの腰の細さよ!?寄越しなさいよ!」

「そんな立派なものぶら下げておいてよく言えるな!」

「え?」

「あっ」

墓穴掘った?

 

「あんたまさか……」

やめて。こっち来んな。

逃げよう。

財布は回収した。あとはもう出るだけ。

さっさとーーー

 

「あ」

二乃の頭の上の棚が崩れた。

「危ない!」

「きゃっ……!?」

なんとか庇えたけど……この子のタオルの上に頭を沈める体制になった。

この子の胸が豊かで良かったと考えるべきか。余計な脂肪だと思ってたけど意外に使えるじゃん。評価を改めよう。

 

「あ、あ、あんた……」

「勘違いしないで!私は(忘れ物を)取りに来ただけだから!」

「(私を)撮りに来たってなによ!?」

「ちがう!そっちじゃない!」

「いいから早くどきなさいってば!」

「何してるんですか、二人して……」

やめろ!そんな目で私を見るな!

 

 

 

「もう。気をつけてくださいね、ほんとに」

「……だって」

「だってじゃないですよ」

「なんで私まで……」

はぁ、変に気を使う必要なかったな。

でも。二乃のあの過剰なまでの拒絶。

どうにか、しないとね。




最新話、一花に対して読者が思ってたであろう事を作中で全部言われてて流石に笑いました。
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