DMMORPG――Yggdrasil
12年という長期間、運営されたが、そのサービスは遂に終了することとなった。
ギルド:アインズ・ウール・ゴウン所属のメリエルは一人、思い出の場所巡りをしていた。
ギルド長だったモモンガには一足早く挨拶をしてある。
最後の最後までずーっとログインしていたのは彼とメリエルの2人きりだけだった。
別段、それが悪いとは思わない。
リアルの事情とはどうしようもないものだ。
ただ、メリエルは唯一の心残りがある。
かつて、彼女は世界を敵に回して戦った。
具体的には9人のワールドチャンピオン、そしてそれを支援する数百人の廃人共を相手に。
あのときは引き分けだった。
昨日、彼女はファウンダーを貰った。
所持していたプレイヤーから、こっそりと連絡が来ており、最後だから渡します、ということでメリエルは有り難く頂戴していた。
運営は狂っていると言われる程のぶっ飛んだ性能のワールドアイテムであったが、もはやそれは意味などない。
しかし、メリエルは貰ったのに気を良くして、そのまま勢いで、破格の安さで大放出された装備やアイテム類を全て買い占めて、無限倉庫に放り込んである。
もはや意味のないことであったが、それらを駆使すれば、例え世界を相手に回しても勝利できるとメリエルは確信している。
とはいえ、それも叶わぬ夢だ。
あと30秒もすれば、Yggdrasilは終わる。
アーコロジーの一等地に新築の家が1軒建つくらいの金額を注ぎ込んだが、悔いなど全く無い。
世界最強の称号こそ手に入れられなかったが、十分に楽しんだ。
ただ、もし夢でもいいから、叶うならば。
次こそは世界最強になりたい――
ネトゲのゲーマーなら誰もが一度は思う、それを強く思いながら、メリエルは――
何やらおかしなことになってしまった。
「……まぁ、私としてはいいんだけど」
兵藤一子。
それが今世のメリエルの名前であった。
『まったく、今代の相棒は本当に規格外だ』
『黙れトカゲ。焼いて食うぞ。ドラゴンの霜降りステーキって美味しいんだから』
『お前が食べたいだけだろうが!』
ツッコミを華麗にスルーして、メリエルこと一子は鏡に映る自分を見る。
見た目は完全にメリエルであり、そのステータスを受け継いで、更にはユグドラシルの魔法やスキルは勿論、無限倉庫も機能していることがこれまでに判明していた。
10年くらい前、初めて悪魔やエクソシストに遭遇したとき、一子は確信した。
強いやつと戦える、と。
そのときは何やら内部争いであったようで、とりあえず逃げている悪魔とエクソシストとその悪魔の眷属達を逃してやり、追手の悪魔達には実験台になってもらった。
追手にいたエクソシスト達は全員、一子の顔見知りであった為に刺客であった悪魔達が代わりに犠牲となった形だ。
ともあれ、悪魔達の尊い犠牲により、一子はユグドラシルにおける魔法やスキル、マジックアイテムといった数々の効果を確認することができたのだ。
それらのこともあり、彼女の世界最強になるという夢は未だ潰えていない。
夢の続きのようなものだから、楽しまねば損だと考えていた。
勿論、それだけに全てを注ぐのはあまりにも、もったいない。
何よりも一子が感動したことは青い空、マスクなしに出歩ける環境、美味しい食べ物。
そして、しっかりと保存・保全されている数多の世界遺産や動植物。
そっちを堪能するほうが最優先であり、故に世界最強は趣味で緩く目指すことにしているのだ。
「一子、ごはんよー」
一子の楽しみは多くあったが、その一つは食事であった。