やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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赤龍帝なので仕方がない

「よく分からないうちに終わってしまったのだけど……」

 

 異空間の駒王学園から現実空間へと戻り、リアスはそう言って溜息を吐いた。

 怒るわけにはいかない。

 何しろ、許可を出したのが自分なのだ。

 

 ただ予想していなかったのが、一子が予想以上に強すぎたということ。

 朱乃よりは強い、というのは誤りだった。

 朱乃が足元にも及ばないくらいに強いというのが正しい認識だった。

 

「まあまあ、良かったのではないでしょうか? これで婚約は正式に破棄できますし」

 

 朱乃の言葉にリアスは頷くが、そのとき魔法陣が幾つも現れる。

 

「……納得がいかないらしいわよ」

 

 リアスの言葉と共にグレイフィアとライザーが現れた。

 

「おいリアス! 聞いてないぞ! 赤龍帝がいるなんて!」

 

 食って掛かるライザーの前に一子がリアスを守るように立ちはだかった。

 そして、獰猛な笑みを浮かべながら、告げる。

 

「だから、言ったでしょう? 瞬きする間に皆殺しにできるとね。それとも今度は100万回くらい殺されたい? そっちのほうが嬉しいんだけど」

 

 そう言われるとライザーとしても恐怖する。

 泣こうが喚こうが、降伏すら許されずに一方的にサンドバッグにされたのはついさっきのことだ。

 むしろ、彼がここに来て文句を言えるという、その精神力の強さは称賛されるべきことだ。

 

 黙ってしまったライザーの代わりにグレイフィアは問いかける。 

 

「一子さん、あなたが赤龍帝だというのは分かりました。あなたはどれほどの力をお持ちですか?」

 

 問いに一子はすぐに答えず、グレイフィアの横の何もない空間をじっと見つめる。

 

「……それよりも、そこに隠れているヤツを引きずり出してもいいかしら?」

 

 え、とグレイフィア以外の全員が驚きの声を上げるか、あるいは視線をグレイフィアの横へと向ける。

 別に何もない空間だ。

 不自然でも何でもない。

 

 しかし、唐突に声が響いた。

 

「いや、それには及ばないよ。こちらもお忍びで来たのだ。許して欲しい」

 

 その声と共にグレイフィアの横に1人の男が現れた。

 

「お兄様!?」

 

 リアスは思わず叫び、それにより誰も彼もが理解した。

 サーゼクス・ルシファーである、と。

 

「魔王様の登場ってわけね。私の力に魅入られてしまったかしら?」

 

 しかし、一子は魔王を前に怯えた素振りなど微塵もなく、普段通りであった。

 

「まあ、そんなところかな。君に興味がある。中継を見ていたが、一緒に見ていた者達は誰も彼もが呆気に取られていたよ。あのフェニックスが一方的に負けたのだからね」

「それは重畳。ささやかな私からのサプライズよ。長いこと生きていると、退屈が最大の敵でしょうからね」

「違いない。それで、君は何者かな?」

 

 問いに一子は笑みを浮かべつつ、告げる。

 

「外に出さないよう、全力で結界を張れ。5秒後に解放する」

「グレイフィア」

 

 サーゼクスの言葉にすぐさまグレイフィアは反応し、結界を張る。

 また同時にサーゼクスもその上から結界を張った。

 

 そして、きっかり5秒後、一子は自身の指にしている一つの指輪――隠蔽の指輪をゆっくりと外した。

 

 途端に彼女の存在感は膨れ上がった。

 さながら巨大なドラゴンを前にしているかのような圧力だ。

 

 それだけに飽き足らず、一子は自身の魔力を周囲に放出する。

 あまりの圧力にサーゼクスとグレイフィア以外は立っていることすらできず、へたりこんでしまった。

 

「改めて言うけど今代の赤龍帝であり、禁手化に至っているの。あなた達、悪魔の側に立ってやったの。リアスに感謝しなさい。私は彼女の人柄に惚れたのよ」

「……うちの妹には濃いのが揃っているが、君は特大だな」

 

 感心したようにうんうんと頷くサーゼクス。

 その様子に一子は何となく察した。

 

「グレイフィア、サーゼクスって妹馬鹿?」

「ええ、端的に言いますとそうですね。それと申し訳ありません。以前、あなたのことを弱小と言ってしまいまして」

「構わないわ。普段は隠蔽しているの。そうしないと、ちょっと世界が壊れてしまうので」

「なるほど、そうでしたか。確かにその力ならば納得です」

「ちなみに、赤龍帝の籠手の能力はご存知? 倍加するのよ、私の限界まで」

「恐ろしい話です。どうぞ、お手柔らかに。それと、そろそろ戻して頂けませんか? 他の皆様が潰れてしまいます」

 

 グレイフィアの言葉に一子は魔力を収めて隠蔽の指輪をはめた。

 たちどころに彼女からは普段と同じ、ただの人間の気配しかしなくなってしまう。

 

「で、ライザー。フェニックスが本当に不死身かどうか、試したくない? もしかしたら1億回くらい殺せば死ぬかもしれないし、私は試したいなって思うの」

「あ、すいません、生意気言って。俺の負けですので……」

 

 ライザーは震える体を叱咤しながら、頭を下げる。

 

「そうなの? それは残念だわ。私は悪魔のお家事情に疎くてね。ついうっかり、変なことを言う連中をこの世に生まれたことを後悔させてしまうかもしれないので、フォローしてくれると助かるわ」

「わ、分かりました! ちなみに、どんなことを……?」

 

 ライザーの問いにそうねぇ、と一子は少しの間をおいて、告げる。

 

「死はこれ以上の苦痛を与えられないという意味だと悟らせてあげるくらいのことを」

「冥界中に周知徹底致します!」

 

 土下座するライザーに一子はくすくすと笑う。

 

「それと、あなた、男としての手練は中々やるわね。それだけの女を囲うってことは色々と大変でしょう?」

「いえいえ、そんな、俺なんて全然です!」

 

 ライザーが可哀想になり、見かねたサーゼクスが口を開く。

 

「全く随分と悪魔らしい悪魔だ」

「魔王のお墨付きが貰えるなんて嬉しいわ。将来は魔王でも目指してみましょうか」

「勘弁してくれ」

 

 降参とばかりに両手を挙げるサーゼクスに一子は愉快そうに笑う。

 

「ああ、それと夏休みには是非、冥界に来てくれ。歓迎しよう」

 

 サーゼクスの言葉に一子は満足げに頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一子って、めちゃくちゃ強かったのね……」

 

 リアスは改めてそう実感した。

 他者を寄せ付けない圧倒的な強さ。

 それこそ、まさに力の象徴としてのドラゴンそのものだ。

 

 一子は既にこの場にはいない。

 リアスが一番の功労者だから、と一足先に帰らせた。

 

「ええ。私達、完全に空気でしたわ」

 

 朱乃の言葉に木場が悔しそうに拳を握りしめる。

 

「僕はもっと強くなりたいです。一子さんの足を引っ張らないように……」

「私も、もっと強くなりたいです」

 

 木場に同調するように小猫もまた告げる。

 

「みんな、これからも継続して修行をするわよ。ただし、劇的に強くなれるわけではないから、基礎的なことを着実に繰り返していきましょう」

 

 はい、と元気良く返事をする朱乃達。

 その様子を頼もしく思いつつ、リアスは思い出す。

 

 誇りなさい、この私をあなたは眷属にしているのだから――

 

 何よりも嬉しかった。

 グレモリーではなく、リアスとして見てくれていることに。

 

 おそらく一子にとっては地位や家柄、肩書なんぞは大して意味のないものだろう。

 だから、きっとそういうものではなく、その人物を見て判断する。

 

 先程のサーゼクスとの会話がそれを如実に現している。

 

 しかし、リアスにとってはいつまでも一子におんぶにだっこではプライドが許さない。

 だからこそ、もっともっと精進しなければならない、と強く心に思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サーゼクスは冥界へと戻り、関係各所に今代の赤龍帝がやったことだと伝えて回った。

 

 フェニックス家としても、赤龍帝がリアスの眷属にいたこと、そしてあれほどの力を持っていたことは寝耳に水の出来事だった。

 だからこそ、ライザーが負けても仕方がなく、婚約についても元々は両家の当主が酒の勢いで決めたことだから、ということで仕方がない出来事だったと互いにメンツを潰すことはなく、婚約を正式に破棄することができた。

 

 

 

「予想外の掘り出し物だったね」

 

 一段落ついたところで、サーゼクスは傍らのグレイフィアに声を掛けた。

 

「今代の赤龍帝が、既にあれほどの力を得ているとは思いませんでした」

「おそらくだが、あれでもまだ本気ではないだろうな」

「全力は、どの程度かと思われますか?」

「まあ、世界が壊れるのは最低ラインではないかな。深淵を覗き込んだ気分だよ」

 

 まさにその名に相応しい力だ、とサーゼクスは告げ、そして、と彼は言葉を続ける。

 

「そんな存在がリアスの眷属に、広義の意味では悪魔についた。これは大きい意味を持つ」

「どのようにされますか?」

「彼女の希望をできる限り叶えるさ。ヘソを曲げられても困るし……何より彼女は昔ながらの連中にも受けがいいだろう」

 

 サーゼクスの脳裏にはなぜだか、力こそが正義だ、とドヤ顔で宣言する一子が浮かび上がってきたが、非常に似合っていた。

 

「ただ惜しむらくは女であること。男であったなら、リアスの婿にちょうど良かったかもしれない」

「……サーゼクス様、おそらくですが、一子さんは何かしらの手段で男になれるのかもしれません。事に及ぼうとしていましたので」

「グレイフィア、詳しく話してくれ」

 

 サーゼクスは真剣な顔でグレイフィアに尋ねたのだった。

 

 

 

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