「えーと、これはどういうことかしら」
授業参観の当日、リアスは困惑していた。
「リアスは、私が守る!」
がるるる、と唸り声でもあげそうな勢いで、リアスの傍に一子がいた。
「昨日、一子ちゃんは新撰組だとか色々とそういう系を見てたの。そうしたら、局長を守るのはこの私だ、とか何とか」
イリナの説明を聞いて、リアスは溜息を吐いた。
「局長、警備はどうしましょうか?」
「遂に局長になったわ……一子、嬉しいんだけど、もうちょっと抑えて。あと今日は会談は無いからね」
「えー、この私の溢れ出る忠誠心と武士心をどうすれば……」
一子の言葉にイリナはそれならば、と口を挟む。
「それじゃ、一子ちゃんの局長になってあげるから」
「イリナはどう見ても話の途中で秘密を知って斬られてしまう脇役なイメージ」
「そ、そんなことないもん!」
きゃーきゃー、とじゃれ合う2人にリアスは笑ってしまった。
リアスと別れ、イリナを先に教室へ向かわせた一子はソーナの姉を探した。
ソーナの姉が現魔王のレヴィアタンであると別れ際にリアスから聞いたために。
どうやらカテレアは魔王の座を狙うという立ち位置だったということに、そこで気づいたが、後の祭りだ。
ということは本当に以前にレクチャーされたとおりに、現魔王のレヴィアタンは魔法少女というのが正解だったのだ、と一子は衝撃を受けた。
冥界のことや悪魔のことについてリアスと朱乃から色々と教えてもらっているが、何分、冥界や悪魔の歴史は非常に長い。
1万年前に生まれた悪魔が普通に生きているというのだから、どれだけのことが起こったのか、知るだけでも一苦労だ。
そもそも一子がリアスから最近の悪魔や魔王については最初の授業で冒頭に触れた程度で、それも名前と見た目、大雑把な経歴くらいであった。
どうして彼らが魔王になったのか、そこに至るまでに何があったのか、そもそも内戦とそれ以前の悪魔社会における違いとは、と覚えることが盛り沢山。
人間社会における歴史の授業がアルファベットを覚えるくらいに簡単に思えてしまう程に濃密で、膨大な量だった。
しかし、悪魔社会、特に貴族階級ではそれらは知っていて当然の教養であり、知らないと笑われるという。
郷に入っては郷に従え、という言葉通りに、また悪魔社会でうまくやっていく為にも一子は覚えなければならなかった。
ともあれ、現魔王のレヴィアタンとは是非ともお近づきになっておきたいという下心。
幸いにも、あっさりとソーナの姉は見つかった。
「……えぇ」
魔法少女姿で廊下で男子生徒達を相手に撮影会をしていたのだ。
さすがの一子もドン引きである。
しかし、話しかけないわけにはいかない。
大丈夫だ、ギルドの連中にはアレよりもフリーダムなのがいた、るし★ふぁーよりはマシだ、と。
るし★ふぁーと同じくぶっ飛んでいる問題児の片割れであるという事実を一子は棚に上げて、魔法少女へ近づく。
するとギャラリーがおお、とどよめいた。
あの兵藤と魔法少女のツーショットとか聞こえ、一気に写真を撮りまくる。
それを気にせずに一子は声を掛ける。
「ちょっとお話、いいかしら?」
「うん、いいよ。一子ちゃん、だよね? 知ってるよ。私はセラフォルー・レヴィアタンだよ」
その返事に一子はにこりと微笑み、セラフォルーの手を握る。
「さ、行きましょう。お姉様?」
「きゃー! 一子ちゃんだいたーん!」
そのままセラフォルーを引っ張って、一子はギャラリー達から離れると、そのまま転移魔法を発動した。
「秘密のお話ってところかな? 一子ちゃん?」
転移先は島であった。
しかし、ただの島ではない。
一子がこっちの世界に来て、物心ついたときに世界中を魔法で飛び回って、見つけたカリブ海に浮かぶ無人島の一つだ。
「ええ、セラフォルー。あなたに会ってみたかったの」
「ふふ、私に会いたいなんて、中々珍しいね。大抵はサーゼクスちゃんに会いたいって言うのに」
くすくすと笑うセラフォルー。
一子もまた同じように笑い、告げる。
「取り入りたいとかそういうのじゃないわ。私が欲しいって思ったら、権力なんて手に入るものだし」
「うわー、怖いなー。一子ちゃんの力は私も聞いてはいるけど、世界を滅ぼせるくらいなんでしょ?」
「ええ、そうよ。とはいえ、それはいいのよ。セラフォルー、あなたと戦って勝てたら、私の眷属になってくれないかしら?」
「現役の魔王相手に、そんなことを言うなんて冥界史上初めて。勿論、駄目だよ」
「それは残念だわ。とはいえ、私にとって色々と便宜を図ってくれると助かるわ」
どうかしら、と首を傾げる一子。
「んー、程度によるけど、一子ちゃんに便宜を図っておけば悪魔にとって、いいことありそうだし」
そう言って、セラフォルーはにっこりと笑って告げる。
「いいよ。便宜、図ってあげる」
セラフォルーの言葉に一子は満面の笑みで頷く。
「それはそうと、時間はいいの?」
「大丈夫、多少遅れたところで問題はないから」
まだ5分と経っていないので、一子の言葉は事実だった。
セラフォルーと一子が再度、学園へと戻って歩きながら世間話をしていると、ソーナが現れて頭を抱えてしまった。
「お姉様……なぜ、一子さんと?」
「ソーナちゃん、実はね……私は一子ちゃんにナンパされて、一子ちゃんのお姉様になってしまったの!」
「ぐへへへ。セラフォルーは頂いた。返してほしくばソーナを我がものに……」
セラフォルーを片手で抱き寄せて、イヤラシイ笑みを浮かべる一子にソーナはそれはもう深く溜息を吐いた。
「一子さん、もう間もなく授業が始まります。お姉様も、遊んでないでちゃんとしてください」
「え、セラフォルーって魔王の癖に妹には頭が上がらないの? 幻滅」
「そ、そんなことないもん! 私は魔王よ! こう見えても、昔はグレイフィアちゃんとどっちが最強か、対決したくらいだもの!」
「なにそれ面白そう。私も混ぜて」
これは駄目だった、ツッコミ役が足りない。
ソーナが諦めかけたそのとき、チャイムが鳴った。
「これはマズイ。セラフォルー、これ、私の電話番号とメールアドレスその他諸々ね」
便箋をセラフォルーに渡して、一子は駆け足で教室へと向かっていった。
「登録しとくねー」
「ろ、廊下は走らないでください!」
「ルールは破るためにある!」
ソーナの注意に一子からそんな返事があった。
「ふふ、ソーナちゃんも早く教室に……ううん、一緒にいこ?」
「や、やめてください。その、恥ずかしいので」
姉と波長が合いすぎる、姉と一子を合わせるのは自分の身がもたない、とソーナは痛感したのだった。