やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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三大勢力トップ+1

 

 

 

「……一子さん、リアス達に何かをしたかい? こう、顔つきが変わっているように思えるんだが」

 

 翌日の深夜、和平会談当日。

 サーゼクスから一子はそう尋ねられた。

 

 会談が行われる会議室にはまだサーゼクスと一子しかいない。

 そうなった経緯はひとえに、サーゼクスがそれを望んだからだ。

 少し話がしたい、と。

 

「ちょっと修行したので」

「あー、修行か。修行なら仕方ないな……」

 

 会談直前ではあったが、非常に和やかな雰囲気だった。

 

「おう、早いな」

 

 そんな声と共にやってきたのはオヤジ臭い印象を与えるアザゼルだった。

 

「アザゼル、あなたも十分早い」

「まあな。赤龍帝と少し話したくてな……」

「会談よりもそっちが目的か? あなたといい、おそらくはミカエルすらも」

「当然だろう? コカビエルを相手に回して掠り傷一つ負わず、叩きのめしたのだから。おまけに弁護までしてくれた」

 

 アザゼルはそう言いつつ、一子をじっと見つめる。

 対する彼女もまた真っ向からその黄金の瞳で見返す。

 

「……これまで何人も赤龍帝や白龍皇を見てきたが、お前さんのような輩は初めてだ」

「どういう意味かしら?」

「目は口程に物を言うってな。おい、サーゼクス。彼女はこれまでの連中とは違うぞ。興味深く、そして恐ろしい」

 

 アザゼルの言葉にサーゼクスは肩を竦めてみせる。

 

「そんなことは百も承知だとも。一子さんの機嫌を損ねるのはやめたほうがいい。冥界が沈むぞ」

 

 そのとき、神々しい光と共に男性が現れた。

 

「おや、私が最後でしたか?」

 

 穏やかな笑みを浮かべたその男性はミカエルであった。

 

「なんだ、ミカエル。お前も兵藤一子に?」

「ええ。彼女には色々とお世話になっておりますので」

「聖剣使いを悪魔に堕としたことなら、謝ったりしないわよ? というか、私は関与していないし」

 

 ミカエルの言葉に一子はそう告げるも、彼は首を横に振る。

 

「いえ、あれは仕方のないことでした。むしろ、新たな場所を与えてくださり、こちらからは感謝を」

「さっさと神は魔王と相討ちになったって公表すればいいのに」

「耳が痛い御言葉です。とはいえ、そうした場合の混乱のほうがデメリットが大きく……」

「まあ、それなら仕方ないわね。で、アザゼル。私を世界を滅ぼす化物みたいに呼ばないで頂戴」

 

 一子はアザゼルへと矛先を向ける。

 

「おっと、そいつはすまんな」

「第一、私は世界を7日間もあれば十分滅ぼしてお釣りがくるけど、8日目からは何を楽しみにして生きていけばいいの? 私は人類を護るわよ。その為なら戦争も辞さない」

 

 その言い草に思わず一子以外の3人は笑ってしまう。

 

「確かにこれまでの赤龍帝とは違いますね」

「だろ?」

「ええ。これは好ましいです」

「むしろ、うちのヴァーリの方が心配だ。やらかしそうで」 

 

 アザゼルとミカエルの会話にサーゼクスもまた頷く。

 

「というか、素で人類を護るっていう悪魔は初めて見たな」

「どちらかというとそれって我々の側では……」

「確かに。どちらかというと天使寄りではあるな」

 

 3人の視線にこれでもかと一子は溜息を吐く。

 

「あなた達、人間の利用の仕方がなっちゃいないわよ? いい? 人間を全力で守って文明と文化を発展させれば、あなた達が退屈しない数多の娯楽を生み出してくれるのよ? まあ、ほどほどに争わせる必要があるかもだけど。ともあれ、天使も悪魔も堕天使も、どんな存在だって永遠を生きる者の敵は退屈よ。退屈は神や魔王をも殺すもの」

 

 そう真っ向から言われると返す言葉が3人にはなかった。

 否定できなかった為に。

 

 かつての戦争などもはや起こす余裕も、起こす必要性もない。

 となれば、これからの時代、もっとも重要なのは永遠に等しい寿命を持つ各種族が暇を潰せる娯楽なのだ。

 

「というわけで、人間界の娯楽を輸入するときは私に言ってくれればいいわ」

 

 にんまりと笑って告げる一子に3人はその思惑に気がついた。

 

「お前、商人でもやったほうがいいんじゃないか? 利益を独占するつもりだろ?」

「あら、アザゼル。私は悪魔よ。自分の利益の為に全力を尽くすに決まっているじゃないのよ。カネを払うなら私は魔王だろうが神だろうが堕天使だろうが妖怪だろうが、何にだって商品を卸してやるわ」

 

 そこで言葉を切り、3人の顔を見回した後、一子は告げる。

 

「私は種族で区別することはあっても、差別することは決してしないわ。これからの時代、悪魔だから、天使だから、堕天使だから、と云々言う輩は淘汰されていくだけよ。過激な連中とかだって、私が物理的にお話をして何とかするから」

 

 物理的に、というところに空恐ろしいものを3人は感じたが、そこには触れない。

 

「とりあえず、お前は和平には賛成ということでいいんだな?」

「ええ、いいわよ。ああ、よくあることのように、紛争を作って双方に物資を横流しとか、そういうことはやらないから安心して」

「なあ、サーゼクス。一子を魔王に推薦したいんだが、どうだろうか? こいつ、絶対狙っているだろ」

「奇遇ですね、アザゼル。私も一子さんを是非とも次の魔王に推薦したいと思いまして」

 

 アザゼルとミカエルの申し出にサーゼクスは苦笑するしかない。

 

「私よりも確かに、魔王らしいな。古い連中も一子さんなら納得しそうなところがまた怖い」

 

 サーゼクスの言葉に一子はくすり、と笑う。

 ぞくり、と3人の背筋に悪寒が走る。

 

「私が魔王になったら、サーゼクスのことで色々口出ししていた連中が生きていられると思っているの? あなたの政策は私から見ても好ましいものが多いわ」

「……嬉しいんだけど、すごく複雑だ」

「とりあえず大主計からでいいわよ?」

 

 サーゼクスは笑うしかない。

 大主計――いわゆる財務大臣みたいなものだ。

 どれだけの権力と影響力があるか誰にだって分かる。

 

「あいにくと、そこは別の者が就いているんだ。とはいえ、君の強さや功績を鑑みるに、下級悪魔のままというのでは、色々と体面が悪いな」

 

 コカビエル討伐という実績は冥界においても公表されていないが広く知られている。

 早くもスポンサーを申し出る――それもリアスではなく一子に対して――有力な悪魔もおり、下級悪魔のままというのは妹のことを考えても世間体がよろしくない。

 

 要するに、あれだけ強い赤龍帝を昇格させない現魔王達は目が節穴だ、と侮られる可能性があった。

 侮られる、というのはどの組織においても、非常に問題のあることだった。

 

「さっさと上級悪魔にしとかないと、堕天使が頂いちまうぞ」

「おっとアザゼル。抜け駆けは許しませんよ。天使としても欲しいので」

「おいミカエル。色々と問題がありすぎるだろう?」

「それらをねじ伏せてでも、一子さんは手に入れたいので」

 

 

 堕天使と天使の間で争いが起こっているのを横目に見つつ、サーゼクスは決断する。

 

「一子さん、上級悪魔となれるよう私から手を回そう。はっきりとした期限は約束はできないが……」

「眷属は? 眷属がほしいのだけど!」

「無論、そこも大丈夫さ。候補者などを探しておくといい」

 

 堕天使や天使に取られてはたまらない、ということでサーゼクスは大盤振る舞いだ。

 とはいえ、一子の功績は勿論、戦闘力は言うまでもなく、悪魔の間で評価の引き合いに出される単純な魔力量もサーゼクスと最低でも並ぶ程度にはあるのは彼自身が確認済みだ。

 

 容姿も抜群であり、社交性もある。

 何より、この場において対等に話せる胆力があるというだけで上級悪魔の社交界に出しても、主導権を握っていきそうだ。

 

 そんな彼女に眷属が加わる。

 当然、彼女が選ぶ眷属は並大抵の者であるわけがない。

 

「おいおい、ここに眷属まで加わるのかよ」

「これはもう手を出すとか出さないとか、そういう次元ではありませんね。これからは争いに関しては一子さんに仲裁役を頼んだほうがいいのでは?」

 

 アザゼルの言葉を受けて、ミカエルの提案。

 それをサーゼクスとアザゼルは承諾する。

 

 さらりととんでもない歴史的な大偉業を成し遂げた一子だったが、当人にその実感などはまるでない。

 

「とりあえず、私の眷属は女の子で構成する予定なので」

「お、ハーレムか。アレは良いものだぞ」

「ええ、私は両性具有にもなれるので。どの種族の問題も解決できるわよ?」

 

 さらなる爆弾を放り込んだところで、ドアが叩かれた。

 どうやら時間になったようで、セラフォルーとグレイフィアを先頭に今回の会談に参加する者達が続々と入ってきた。

 そして、会談が始まった。

 

 

 

 

 会談自体は当初の予定通りに進んだ。

 会談直前のことは非公式ということで、各勢力のトップ達は勿論、一子も会談中にはそんなことはなかったかのように、素知らぬ顔だ。

 

 そして会談は進み、アザゼルによる和平への賛成か否か、という赤龍帝、白龍皇に対する問いに一子は躊躇なく賛成と伝え、ヴァーリは一子に好戦的な視線を向けながらも、賛成と伝えた。

 

 

 

 そして、いよいよ会談も終盤に差し掛かったとき、唐突に時が止まった。

 

 

「へえ、時間停止か。中々やる奴がいるじゃないの」

「分かっていたことだが、普通に動けるんだな」

 

 アザゼルは呆れ顔で一子にそう告げた。

 また同時に彼はあることに気がついてしまった。

 

 研究者寄りであり、かつ、神器の研究に注力しているからこそ、サーゼクスやミカエルと比べても彼はこの場でもっとも、神器に理解があった。

 

 各勢力のトップ、4人とグレイフィアを除けば動けるのは一子とヴァーリ、そしてそれぞれの剣でもって防いだ木場とゼノヴィア、イリナの5人だけだった。

 

「……おい兵藤一子」

 

 ヴァーリもまたアザゼルが気づいたように、そのことに気がついたらしく、名を呼んだ。

 

「何かしら?」

 

 首を傾げる一子に対し、ヴァーリは告げる。

 

「俺の中の白龍皇が言っている。お前は赤龍帝の力を使わずに時間停止をレジストしたな?」

 

 一斉に一子に視線が集中する。

 対する彼女はとても不思議そうな顔で問いかけた。

 

「時間停止対策は戦闘における必須項目でしょう?」

「いやいや、一子ちゃん。そんな当たり前みたいな顔されても、普通はそういう相手っていないからね?」

 

 セラフォルーのツッコミに一子以外の全員が頷く。

 

「あー、諸君。言うまでもないと思って黙っていたが、兵藤一子は歴代全ての赤龍帝の中でもぶっちぎりで最強だぞ? グレートレッドやオーフィスあたりを比較相手にしておくと分かりやすいだろう」

 

 ドライグの声が響き渡り、何とも言えない空気が漂う。

 そういうものを引っ張り出してこないと、いけないのか、と。

 ドライグが喋っているということより、その内容に誰もが皆、気を取られてしまった。

 

「そうか……それでこそ、倒し甲斐があるというものだ」

 

 唯一、ヴァーリは戦意を高めていた。

 彼にとって宿敵が強ければ強い程、良かった。

 

「とりあえず、この場にいる連中だけは解除しておきましょうか」

 

 一子の言葉に今度はなんだ、という意味合いが込められた視線。

 すると彼女は笑みを浮かべて、唱えた。

 

魔法位階上昇化(ブーステッドマジック)魔法抵抗難度強化(ペネトレイトマジック)魔法効果範囲拡大(ワイデンマジック)魔法持続時間延長化(エクステンドマジック)最上位(グレーター・)魔法解体(ディスペル・マジック・)(サークル)

 

 パリン、とガラスの割れるような音と共に時間停止の効力が失われた。

 同時に部屋の中央に魔法陣が描かれ、緑色の光を放ち始める。

 

「え? 何が起きたの?」

 

 動き出したリアス達の問いかけにグレイフィアが応じる一方で、見ていた者達を代表してアザゼルが問いかける。

 

「魔法、使えたのか?」

「多少はね。やろうと思えば学園全体に対してディスペルを掛けることもできるけど、どうする?」

 

 一子の言葉にサーゼクスが告げる。

 

「いや、それをすると能力者に多大な反動がかかる。それに、この能力の所有者は分かっている。ギャスパーというリアスの眷属だ」

 

 リアスはサーゼクスの言葉に反応し、悔しげに端正な顔を歪めた。

 はて、と一子が首を傾げるとサーゼクスが説明する。

 

 それによれば力の制御が難しい為、旧校舎の一室に封印している、とのことだ。

 

「リアス自身の力も上がってきているし、良い眷属達もいる。会談後に封印を解除しようと考えていたのだが、どうやらそれが仇になってしまった」

「仇になってしまった、とのんびりしているけど、それっていいの?」

 

 一子の言葉に答えるように、続々と校庭の上空に魔法陣が展開され、そこからローブを纏った者達が溢れ出してきた。

 

 その光景に思わずソーナが目を見開いた。

 

「一子さん、本当にあなたの言った通りになりましたね」

 

 ソーナの言葉を肯定するように、グレイフィアが僅かに頷く。

 

「なんだ一子。これも想定していたのか?」

 

 アザゼルはそう言いながら、光の槍を校庭上空に顕現させて、ローブ姿の者達を次々と射抜いていくも、魔法陣からの増援は止まらない。

 

「ええ、まあ。で、こちらの増援は?」

 

 一子の問いにソーナは頷き、すぐさま魔法でもって駒王町各所に配置されている自身の眷属達に状況を伝える。

 

「グレイフィア、こちらも護衛に仕事をしてもらうとしよう」

「畏まりました」

 

 どうやら悪魔陣営に一子は助言していたようで、アザゼルとミカエルは溜息を吐いた。

 会談前まで接触する機会がなかったので、当然といえば当然だが、それでも面白くはない。

 

「一子さん、我々の護衛達にディスペルを掛けて頂いても?」

「おっとそれなら堕天使も頼むぜ」

「というか、それをやっても本人達がレジストできないと、一瞬でまた囚われる気がするんだけど」

 

 そりゃそうだ、とアザゼルもミカエルも納得する。

 この部屋の中は例外で、一子の唱えた魔法により、緑色に光る魔法陣から常にディスペルが発動している状態だ。

 

 しかし、一子はそれならば、と提案をする。

 

「あなた達の護衛を全員、範囲外に出せばいいわね?」

 

 マジかよ、とアザゼルは思い、思わずミカエルに視線を向けるとむこうも同じ思いだったようだ。

 

「頼む」

「お願いします」

「分かったわ。報酬は弾んで貰うから」

 

 にこにこ笑いながら、一子は対象の位置を確認する。

 

 幸いにも窓から見える位置に天使も堕天使も、どちらの護衛部隊がいた。

 時間停止されており、どんどんやられている。

 しかし、一子は冷静に唱えた。

 

 すると、一瞬にして天使達と堕天使達は結界の中から消え失せた。

 

「護衛だから少数で、かつ、攻撃で減っていたとはいえ数十人……天使も合わせれば軽く三桁に届く人数を一気に転移か。こりゃ、魔法使いも一子を欲しがり始めるぞ」

「というか、どの勢力も欲しがりますよ。リアスさんは本当に良い方を眷属としていますね」

 

 突然のミカエルの称賛にリアスは驚きながらも、素直に受け取る。

 

「リアス、指示をくれないかしら?」

 

 問いかけにリアスは我に返り、どうするべきかと思考する。

 真正面から倒せ、というならば一子はそれをするだろうが、とにもかくにも囚われのギャスパーを助け出さなければならない。

 

「ギャスパーを救出するわ」

「よし、それならちょっと行ってくるから。あ、言い忘れたけど、その部屋から出るとたぶんまた時間を止められる可能性があるので」

 

 一子はそう言って、窓を開けるとそこから飛び降りて、旧校舎へと目にも止まらない速さで駆け抜けていった。

 

 そして、彼女と入れ替わりになるように、会議室に魔法陣が展開され――

 

「ごきげんよう、現魔王のサーゼクス殿」

 

 カテレアが現れた。

 

 

 

 

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