やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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悪魔なので、自己利益を追求します

 

 

 旧校舎に到着した一子は、すぐに動くことはしない。

 開かずの間として最初に説明された部屋が、おそらくそうなのだろうな、と思いつつも。

 カテレアとの契約がある為だ。

 

 幸いにも言い訳は考えてある。

 予想よりも面倒くさい奴が出たので、手こずった、と。

 

 強い奴ではなく、面倒くさい。

 ここがミソだ。

 

 強い奴が出た、というと、それこそ魔王クラスでも出てきたのか、ということになってしまうが為に。

 

『全く、お前はとことん魔王に向いているぞ』

 

 一子の考えを読んだドライグはそう告げた。

 

「褒め言葉と受け取っておくわ。ああ、始まったみたいね」

 

 窓から校庭を見れば、カテレアとアザゼルが戦っているのが見えた。

 リアス達も何やら校庭に出て戦っている。

 傍にグレイフィアがいることから、何かしらのサポートを受けているのだろう。

 

「肝心の魔王達は……うん、見るまでもなかったわ」

 

 セラフォルーが数多の敵を一瞬で凍りつかせていたり、サーゼクスが消滅の力で一瞬で消し飛ばしていたり、ミカエルが膨大な光の槍で射殺していたり、と敵が可哀想になる有様だった。

 しかし、それでもまだ本気ではないだろうことは想像がついた。

 

「学園を傷つけないように、という配慮から魔王達は本気になれていないわね」

『相棒、気づいていると思うが、来たぞ』

「ええ、どうやら彼がユダだったようね。しかも気配を消しているけど、仲間まで連れてきているわ」

 

 そう会話して程なく、彼は現れた。

 白い鎧を纏った姿で。

 

 

 

「俺が内通していたことに驚いていないようだな?」

 

 意外そうに声を掛けてきたヴァーリだ。

 戦闘をする気が満々であったが、かといってただちに戦闘に移るような気配でもない。

 会話を楽しむ程度の余裕は彼にありそうだ。

 

「あれだけ分かりやすい態度なら猿でも分かるわ。それに、あなた1人だけじゃないみたいね? お仲間を呼んだらどう?」

「そこまで分かるか。さすがだな」

 

 ヴァーリはそう言いながら、出てこい、と告げると気配を露わにした。

 

「俺っちは美猴。孫悟空の子孫だ。よろしくな」

「私は黒歌。よろしくにゃ」

 

 色々とツッコミどころはあるので、一子がヴァーリに視線を向けると、彼はそんな目で見るな、という表情を出しつつ、説明する。

 

「禍の団に所属しているんだ。アースガルズと戦わないか、と言われてな。あと黒歌の語尾は種族的なものだからな。それと美猴のほうも本当だ。そういう連中が集まっている派閥――英雄派と呼ばれるものが禍の団にはある」

「なるほどね。とりあえず、そっちの黒歌は私の眷属にしたい」

 

 一子のストレートな言葉に黒歌は微笑んでみせる。

 

「それは嬉しいにゃ。とはいえ、聞いてはいるけど、本当に赤龍帝は強いの?」

「停止世界の邪眼を赤龍帝の籠手の力を使わず、自力でレジストしたぞ。俺が見ていた」

「にゃ!?」

「マジかよ……」

 

 ヴァーリの言葉に驚く黒歌と美猴。

 対する一子は再度、あの言葉を贈る。

 

「時間停止対策は戦闘において、当然のことでしょう。いい? 強い連中っていうのは大抵、時間なんて簡単に操るから。覚えておいたほうがいいわ」

「なるほど、勉強になるな……」

「うん……これ、本当に強いにゃ」

 

 美猴と黒歌に正しいけれど誤った知識を教えたところで、一子は問いかける。

 

「で、戦闘だけじゃないみたいね。勧誘かしら?」

「ああ、そうだ。とはいえ、お前が何もせずにわざわざここで時間を潰している理由も気になる」

「カテレアとちょっとした契約をしていてね。彼女が失敗したら、彼女をモノにできるのよ」

 

 なるほど、と頷きつつ、ヴァーリは問いかける。

 

「お前は女が好きなのか?」

「ええ。私は両性具有になれるので。どこの陣営からも引っ張りだこでね」

「なるほどな。確かにそうだ」

 

 ヴァーリと、そして美猴もまた納得したが、1人、目を光らせた存在がいた。

 

「一子、私をあなたの眷属にしてにゃ。赤龍帝の子供が欲しいにゃ」

「了承」

「秒でOK、さすが一子にゃ!」

 

 黒歌は一子に飛びついて、彼女の顔に頬ずりし始める。

 

「ヴァーリはいいの?」

「ヴァーリは不能にゃ。女に興味がないみたい」

 

 不能呼ばわりに美猴が大爆笑し、ヴァーリはむすっとした顔になりながら、告げる。

 

「俺は戦いがあれば、それでいい。あと不能ではない」

「ストイックが極まったタイプって、一度、火がつくと女に弱くなるのよね」

「俺は誘惑なんぞされない」

「ヴァーリ、悪いことは言わないから、性的な快楽は慣れておいたほうがいいわよ。こじらせると、色々と大変だから」

 

 一子から真剣にそう言われると、ヴァーリとしても考慮しないわけではない。

 彼にとっての戦いとは力と力のぶつかり合い。

 しかし、一子の言う戦いとは力と力のぶつかり合い以外のものも含んでいる。

 

 ヴァーリは何となくだが、それを感じ取った。

 

「分かった。だが、どうすればいい? 俺は性的な快楽というものは知らないし、黒歌は一般的に見れば女性として魅力的だろう。だが、まったく興味が湧かない」

「ちょっと美猴、あなたも暴れまわった斉天大聖の末裔なら、このくらい教育しておきなさいよ」

「俺っちに言われてもなー……とはいえ、ここまでうちのリーダーがアレだとは思ってもみなかった。とりあえず風俗にでも連れて行くさ」

 

 そうしなさい、と一子は告げて、頬ずりしている黒歌の頭を撫でる。

 黒髪はさらさらとしており、また生えている猫耳はふにふにとしていて、とても心地良い感触だ。

 

「で、黒歌はこのまま貰っていいの?」

「仕事のとき以外は別に構わないぞ」

「黒歌の協力が必要な場面って、本当にやばい時だからな。というか、大抵はヴァーリが何とかしちまうし」

 

 なんだか良いらしいので、一子はそのまま黒歌を表向きには捕虜とすることにした。

 

「黒歌って強い? どんなタイプ?」

「ウィザードタイプ。仙術や妖術などの優れた使い手だ」

 

 ヴァーリの説明に、ちょうどぴったりだわ、と一子はにんまりと笑う。

 面倒くさい相手というのはまさに黒歌のような輩の為にある言葉だ。

 

「あんまり私が火消しに回るようなことに黒歌を協力させなければいいわ」

「それならば兵藤一子、取引だ。俺が戦いたいと思ったときに戦え。それなら黒歌を呼び出すことはしない」

「おいおい、いいのかよ? ヴァーリ」

「構わんさ。黒歌を手放してでも、一子と好きなときに戦えるというのは魅力的だ。美猴、お前も戦ってみたいだろう?」

 

 そう言われると美猴としても頷かざるを得ない。

 

「確かにそうだな。というわけで、黒歌。お前は一子とイチャコラしていいぞ」

「言われるまでもないわ。というわけで、一子、子作りするにゃ」

 

 豊満な胸に一子の顔を埋めさせながら、今度は黒歌が一子の髪を撫でる。

 その黄金の髪の手触りに、黒歌はうっとりとした表情になってしまう。

 

「やばいにゃ。これは完全に堕ちてしまうにゃ……」

 

 2本の黒い尻尾がピンと立って、ご機嫌であることを示している。

 その様にヴァーリも美猴もやれやれ、と溜息を吐いた、そのときだった。

 

 4人とも、校庭へと視線を向ける。

 カテレアがちょうどアザゼルにやられたところだった。

 

「自爆をしようとして、アザゼルが片腕を犠牲にしてトドメをさしたところのようだな」

 

 ヴァーリの解説に頷きつつも、一子は黒歌から離れ、歩みを進める。

 カテレアが失敗した、と判断したが故に。

 

 カテレアをあとで蘇生しておかないと、と思いつつ。

 

「行くのか?」

「ええ。今、戦いたい?」

 

 ヴァーリに向けられた問い。

 まるで無防備なその背中であったが、ヴァーリは本能的に感じ取った。

 

 踏み込んだ瞬間に首を飛ばされる、と。

 そして、それは美猴もまた感じ取ったものだった。

 

「……いや、やめておく。どうやらまだ足元にも届いていない」

「こんなにおっかない相手は初めてだぜ。模擬戦ならやりたいが、実戦はやりたくねぇな……」

「懸命な判断よ。黒歌、あなたはついてきなさい」

「はいにゃ。というわけで、ヴァーリ、美猴。短い間だったけど、それなりに楽しかったにゃ。手紙のやり取りくらいはしてやるにゃ」

 

 一子は歩みを再開する。

 その後ろを機嫌良く、2本の尻尾をゆっくりと揺らしながら、黒歌がついていった。

 

 2人を見送った後、美猴が気づいた。

 

「あ、勧誘してないけど、いいのか?」

「構わないさ。彼女はおそらく、誰にも靡かず、傲岸不遜で、己がなしたいがままに生きる。その在り方は、まさしく龍そのものだ」

 

 ヴァーリがそこまで評価したことに美猴は驚きながらも、納得する。

 

「さて、美猴。アザゼルに別れの挨拶をしにいく。お前もついてくるか?」

「いや、俺っちは移動しとくわ。面倒くさいし」

 

 美猴の言葉に頷き、ヴァーリは校庭へと歩み始めた。

 それを見送り、美猴もまたその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、これはさすがに想定外」

 

 開け放たれた開かずの間。

 そこへと踏み入れると、なぜか顔を露わにした魔法使い達が一斉に平伏した。

 

 またそこにいる魔法使い達は皆、女性であった。

 

「カテレア様より、聞き及んでおります」

「あらそうなの。それは手間が省けたわ。この奥に?」

 

 開かずの間はどうやら2部屋構成になっているらしく、入ってすぐの部屋にギャスパーはおらず、もう一つ奥の部屋にいるらしかった。

 

「はい。恐れながら赤龍帝様。願わくば、我々と契約をして頂けると……」

 

 その言葉に一子はくすり、と笑ってしまう。

 協会に所属していない、今この場にいるような、はぐれ魔法使い達は基本的に自分の好奇心や欲求に素直であるらしいと判断する。

 

「ええ。私は構わないわ。契約内容としては、あなた達を不老不死にする代わりに、私に永遠に尽くしてほしいっていうのはどうかしら?」

 

 問いに、呆気に取られた顔を彼女達は見せた。

 黒歌は面白そうに事態を見守っている。

 

「それは……その、本当に? 確かにドラゴンの血は強力で、そういう言い伝えもあるにはありますが」

「血? そんなものは使わないわよ。私にとって不老不死の薬なんて、簡単に作れるものだから」

 

 魔法使い達は完全に唖然とした。

 そんな彼女達に一子は微笑む。

 

「私は赤龍帝よ? 神器は思いの力でアレコレできるの。で、どうなの? 不満?」

「永遠に尽くす、というのは具体的には……?」

「簡単に言うと、私の女になれってことかしらね。私は両性具有になれるので。もっとストレートに言うとエッチなことしたい」

 

 魔法使い達はその言葉の意味をよく吟味し、そして理解するや否や、声を上げた。

 

「もちろんです! こちらとしても願ってもない申し出!」

 

 誰にも異論がなさそうだった。

 

「どういうことなの?」

 

 一子の疑問の声に答えたのは黒歌だった。

 

「当然にゃ。神器を宿しているだけとはいえ、それでもドラゴンの影響を受けた精を胎に受ければ、それだけで力を得ることができるからにゃ。実験や儀式の触媒など、そういったことに使う素材としても最上級で高値で取引されるにゃ。ぶっちゃけ、そのことを知っている者なら誰でも喜んでエッチするにゃ」

「ドラゴンって最高ね……」

 

 なるほど、と一子は納得しつつ、更に告げる。

 

「なんかこれだとあなた達が一方的に得をしているから、もう一個条件。世界を滅ぼしたり、既存の秩序を破壊したりとかそういうことをしないこと。研究したいなら、その環境を用意してあげるから」

 

 一子がそう言うと、魔法使い達からは恍惚とした視線を向けられた。

 

「一子、選択を間違っていないけど、間違っているにゃ。そんなこと言えば、神様扱いされるにゃ」

「あー、まあ、そうねぇ……とりあえず、今回の事件は終わらせるので」

 

 一子はそう言いながら、懐から便箋を取り出して、一番近くにいる魔法使いへと渡す。

 

「これ、私の電話番号とメールアドレス。今ここだと色々と見つかるかもしれないから。後日に。ちなみに女の子なら基本誰でも歓迎なので。自分達だけで独占したり、取り合って殺し合いをしないこと。女の子が死ぬのは世界の損失よ」

 

 深々と頭を下げる魔法使い達は「御意」と返してきた。

 理解してくれたらしい。

 

「……ところでこの世界って美人とか可愛い子しかいない気がするんだけど、これもなんか原因があるのかしらね?」

「色んなのが裏側にいるから、それのせいかもにゃ」

「色んなのに感謝しとこ」

 

 そう言いながら、一子は歩みを進め、黒歌もまた後ろからくっついていく。

 魔法使いの1人が奥の部屋へと続く扉を開けて、見送った。

 

 

 

 奥の部屋にいたのは魔法陣に張り付けにされた美少女だった。

 

「……にゃ。一子、この子は男の子にゃ」

「……それもまたあり。可愛ければ、美しければ性別なんて関係ないわ」

「あれ、一子って女の子……でも両性具有ってどっちにゃ? どっちを好めば普通なのにゃ?」

 

 混乱する黒歌を横目に見ながら、一子は美少女に見える男の子――ギャスパーへと近づいた。

 

最上位魔法解体(グレーター・ディスペル・マジック)

 

 ガラスの割れるような音と共にギャスパーを拘束していた魔法陣は砕け散った。

 その様子をこっそりと出入り口から覗いていた魔法使い達は見たこともない術式と、一瞬で自分達の拘束魔法が解かれたことに息を呑む。

 

 自分達よりも魔法の腕すらも上なのでは、と彼女達が思うのはすぐのことだった。

 

「もう大丈夫よ」

 

 魔法陣が壊されたことで、倒れてくるギャスパーを優しく抱きとめながら、覗いている魔法使い達に逃げるよう、片手で合図をする。

 すぐさま心得たとばかりに彼女達は逃げていった。

 

 逃げ足の速さは流石だった。

 

「気を失っているみたいで、それ以外は大丈夫そうにゃ」

「それは重畳。じゃ、終わりってことで。うまく口裏、合わせてよ?」

「もちろんにゃ。一子も、うまく庇ってにゃ」

 

 この後、最大の難関が待ち受けている。

 カテレアと黒歌を自身のものだと各勢力のトップ達に認めさせなければならないのだ。

 

「あ、私、SSランクのはぐれ悪魔だから。よろしくにゃ」

「さらっと爆弾を放り込むのはやめて」

「一子ならきっと大丈夫にゃ。信じているわ」

 

 そう言って、一子の頬にキスをして、黒歌は微笑んだ。

 

 

 

 

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