やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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戦後処理

 

 

「こりゃ、随分と大物を捕まえたもんだな……」

 

 アザゼルは呆れ顔だった。

 

「私も聞き及んでおります。まさか、彼女がいたとは……」

 

 ミカエルもまた難しい顔だった。

 

「そうだ、保護観察ということにしよう」

 

 サーゼクスはそう決めた。

 

 

 以上が黒歌を見た時の各勢力のトップの反応だ。

 

「さすが一子ちゃんって言うしかないね。よくリアスちゃんは一子ちゃんを眷属にできたね。たぶん、私とかサーゼクスちゃんとかが頭を下げても、一子ちゃんは眷属になってくれないよ?」

 

 セラフォルーの言葉にリアスは恥ずかしそうに顔を俯かせる。

 ここまでストレートに褒められるというのはあまり経験がなかった。

 

「にゃ。もう私は悪いことはしないにゃ。元々、主を殺したのも色々と事情があるにゃ」

 

 黒歌はそう前置きし、これまでの経緯――いわゆる一般に知られているものとは別の、彼女が実際に体験したことを語りだす。

 

 後天的な超越者作成実験やら眷属に対する無理な能力向上、さらにはそれを眷属の家族にまで強要し始めた為、妹を守ろうとしたのだ、と。

 

 思い当たる節が幾つかあったサーゼクスは溜息を吐いた。

 

「まあ、こう言っちゃなんだけど、よくある話じゃないの。こういう世界だと」

「そうにゃ。よくある話で、よくある復讐劇とその後の逃走劇にゃ」

 

 小猫はこの場にはいない。

 サーゼクスの判断によるものだ。

 ただ黒歌を一子が捕らえた、とリアスから口頭で伝えてあるに過ぎない。 

 

「で、どうするの? なんか保護観察って聞こえたけど」

「彼女が嘘をついているようには見えない。だからこそ、その判断だ」

 

 サーゼクスの言葉にミカエルとアザゼルもまた頷く。

 

「保護観察ということは一子が全部、責任を取るということでいいんだな?」

「ええ、構わないわ。ちなみにだけど、私の感覚からするとじゃれついてきた野良猫を拾った程度なので」

 

 だろうなぁ、とアザゼルは答える。

 

「リアス、構わないかな?」

 

 サーゼクスはリアスへと問いかける。

 とはいえ、彼女にとっては肯定するしかない。

 

「はい、構いません。ただ小猫への説明はどうしたものかと……」

「それなら乗りかかった船だ。一子には腕を元通りに治療してもらったことや、その他諸々で返せない恩がある。俺らも説得に参加しようじゃねぇか」

「ええ、少しずつ返していかねば、恩に押し潰されてしまいますから」

「リアス、私も参加するから。安心して欲しい」

 

 アザゼルとミカエル、そしてサーゼクスの言葉にリアスは安堵の息を吐く。

 この3人からの嘘をついていない、という保証付きならば小猫に真相を信じてもらえる可能性も高まることだろう、とリアスは考えた。

 

「ところで3人共、会談が始まる前に私の言ったこと、覚えているかしら?」

 

 一子の問いかけにサーゼクス、アザゼル、ミカエルはそれぞれ頷く。

 

「過激な連中は私が物理的にお話をして、言うこと聞かせるっていうのなんだけど、早速、いいかしら?」

「何がどうなのか分からんが、何をするつもりだ?」

 

 アザゼルの問いに一子は笑みを浮かべる。

 

「カテレアが欲しい。だから頂く。それだけよ」

 

 その言葉を理解するのに、この場にいる面々は多少の時間を要した。

 

「カテレアちゃんは死んだよ」

 

 セラフォルーの言葉に一子はニヤニヤと笑みを浮かべる。

 その顔にセラフォルーはまさか、とあることに思い至る。

 同時にサーゼクスやアザゼル、ミカエルすらもそれに思い至った。

 

 完全にカテレアは死んだ。

 転移や偽装など、そういった可能性はない。

 

 しかし、一子の笑みが意味するところ、それは一つしかない。

 

「……死者蘇生か?」

 

 アザゼルの言葉に一子は告げる。

 

「まあ、見ていて頂戴。情報を得る意味でも、身柄は欲しいでしょう?」

 

 一子の言葉に異論を唱える者はいなかった。

 そうであったが為、彼女は余計な邪魔が入る前に迅速に取り掛かった。

 

 レベルダウンを防ぐアイテム、強制的に蘇生を承諾させるアイテムを使い、唱えた。

 

命の星(スター・オブ・ライフ)

 

 そして、青白い光と共に彼女は蘇った。

 

 

 

 

 

 横たわった状態で蘇生したカテレアは視線だけを動かして周囲を見回すと、驚いた顔をしている面々と、そして目の前で自身を見下ろしている一子に気がついた。

 

 瞬間、理解した。

 同時に、畏怖した。

 

 死者蘇生――

 

 その単語がカテレアの頭に浮かんでくる。

 

「カテレア、あなたが欲しいわ。だから、私のモノになりなさい」

 

 一子の黄金の瞳がまっすぐにカテレアを見ている。

 彼女は体を起こして、一子へと平伏する。

 

「蘇らせて頂いたこの恩、永遠に忘れません。あなたにお仕え致します」

 

 そういう契約であったのだ。

 カテレアには異論などない。

 むしろ、死者蘇生などまでして、自分を手に入れたい、という一子の思いを嬉しく感じた。

 ここまで誰かに求められたことなど、生まれて初めてであったが故に。

 

「よし、じゃあ、早速、あなたの知りうる限りの過激派の情報、教えて頂戴。ちょっとぶっ殺してくるから」

 

 一子はとてもにこやなか笑みを浮かべて、そう告げた。

 

「笑顔って本来、攻撃的なものだったな……」

 

 アザゼルをはじめとした、この場にいる者達全員に、その意味を思い出させる程に一子の笑みは怖かった。

 

「一子様、恐れながら、我々は好き勝手に動いている為、実のところ……」

 

 カテレアの申し訳なさそうな言葉に、一子をはじめとした面々は気がついた。

 

「……もしかして、派閥がありすぎて、一つ潰しても、また別のが出てくるような?」

「有り体に言えばそうなりますね。私以外にもシャルバ・ベルゼブブ、クルゼレイ・アスモデウスがいますが、基本的には別々に動いていますので……」

「うわ、めんどい……」

 

 一子の率直な言葉にうんうんと各勢力のトップ達もまた頷く。

 

「これ、もしかしたら堕天使や天使も呉越同舟的な感じで、過去のことに納得いかずに参加しているパターンがあるんじゃない?」

 

 一子の言葉にミカエルとアザゼルは溜息を吐いた。

 ありえそうでならなかった。

 

 なんでそういうところでは結束できるのか、とミカエルとアザゼルは頭が痛かった。

 

 

「禍の団に関しては各陣営と協力して、叩き潰すことにしていきたいが、よろしいか?」

 

 サーゼクスの提案にアザゼル、ミカエルともに承諾する。

 どこの陣営にとっても、所詮は単なるテロリストであり、百害あって一利なしだった。

 

「決してテロリストに屈してはいけないわよ。要求がどんどんエスカレートするから」

「分かっているとも。ちゃんと罪を償わせるさ」

 

 そんなサーゼクスに一子は肩を竦めてみせた。

 テロリスト相手に裁判するなど、一子からしてみればあまりにも人道的だった。

 

「セラフォルー、テロリストには死あるのみなんだけど、私っておかしいかしら?」

「そこで私に話を振るって、一子ちゃんに私はどう思われているのかな?」

 

 ぷんぷん、と怒ってますアピールをするセラフォルーに一子は不思議そうに首を傾げる。

 

「私が間違っているのかもしれないけど、魔王とか悪魔って恐れられ、怖がられることが褒め言葉じゃないの?」

「合っているんだけど、何か違う感じも……とりあえず一子ちゃんが怖い」

 

 その言葉にぽん、と手を叩く。

 

「リアス、どうしよう? 私、現役の魔王を怖がらせてしまったわ。これはもう私が大魔王になって、地獄帝国を築き上げるしかないわ」

「そこで私に話を振らないでよ!」

 

 リアスはもう色々といっぱいいっぱいだった。

 一子がやったことに関して。

 あと、彼女が普通に三勢力のトップ達と対等に会話していることについて。

 

「一子、せめて敬語は使って」

「私が敬語を使うと、なぜか周りから似合っていないとか気持ち悪いと言われるので」

 

 その言葉に各自がそれぞれ、敬語を使う一子を思い浮かべてみた。

 そして、すぐに想像したことを後悔した。

 

「確かに、一子さんに敬語はちょっと似合わないかな」

「まあ、ドラゴンだし、いいんじゃないか?」

「私は今のままで別に構いませんよ」

「一子ちゃんが敬語って、怖いんだけど。普通にキレる5秒前って感じで」

 

 各勢力のトップ達からの言葉に一子は頬を膨らませる。

 

「……一子、そのままのあなたでいて」

 

 想像したリアスも敬語を使う一子はかなり怖かったので、仕方なくこれまでと同じであることを許すしかなかった。

 

「……もしかして、私、とんでもない人のところに来てしまったにゃ?」

 

 一子のこれまでのやり取りを見て、黒歌は思わずそう尋ねざるをえなかった。

 

 

 

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