やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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非常に幸運な堕天使達

 

 

「一子、今日も会ってくれてありがとう」

 

 夕麻は、はにかんだ笑みを見せた。

 

「他ならぬあなたの為だもの。勿論よ」

 

 一子は微笑みながら、夕麻の頭を軽く抱き、自身に抱き寄せる。

 良い匂いに彼女は頭がくらくらしそうになるが、気を引き締める。

 

 魔性の女というのは一子のことを言うに違いない、と思いながら。

 

 たった数時間、会話をし、食事をしただけで取り込まれたと夕麻は思うが、それに足る人物だと。

 

 女誑し、と夕麻は内心呟きながらも、そろそろだとフリードに合図を送る。

 空いている手で指を1本立てる。

 

 すると、即座に現れた。

 

「ぐへへへへ。なぁにイチャイチャしてるんですかぁ?」

 

 うわぁ、と夕麻は内心思った。

 素でやっているのか、それとも演技なのか、判別がつかないくらいには不審で、なおかつ、危険人物だ。

 

 こんなのを部下にしていては自分の品性も疑われるのでは、とちょっと思ってしまった。

 

 

 片手に剣、片手に銃を持って、フリードはゆっくりと歩みを進めてくる。

 とにもかくにも、予定通りのシナリオだ。

 

 夕麻は告げる。

 

「一子さん、実は、私には秘密があって……」

「え、秘密?」

「はい。私は……堕天使です」

 

 そう言って、夕麻――レイナーレは背中に翼を顕現させた。

 

 目をぱちくりとしている一子にレイナーレはその額に口づけして、フリードに向き直る。

 

「さぁ、私が相手になるわ」

「ひゃーこりゃ敵わないー無理だー」

 

 棒読みに限りなく近い口調で、フリードはさっさと逃げていった。

 

「……何か、棒読みだったような」

 

 一子の言葉にレイナーレは慌てて、その口を自分の口づけで塞いだ。

 そのままレイナーレは舌を一子の口に入れると、一子もその求めに応じた。

 

 深くキスを交わしあった2人はやがて離れた。

 

「堕天使でも、いいですか?」

「勿論よ。本当の名前とかあるの?」

「私の本当の名前はレイナーレです」

「レイナーレ、か。良い響きね」

 

 レイナーレは嬉しくなって、一子の豊満な胸に顔を埋めた。

 

「一子は何か、特殊な力とか持っていたりするの? 神器っていうんだけど」

 

 そのまま上を向いて、上目遣いとなったレイナーレは問いかけた。

 

「まあ、あるっちゃあるわよ。それが狙い?」

「うん。上からの指示で神器狩りなんだけど……私の部下ということにするから」

「いいのそれ? バレたら問題よ」

「大丈夫、神器狩りも、上もあんまりやる気はないみたいだから。本気だったらもっと人員を回しているし」

 

 レイナーレはそう言って溜息を吐いた。

 堕天使はレイナーレと部下を合計して4人。

 フリードをはじめとした人間の部下もいるにはいるが、覚醒した神器持ちを相手にするとなると心もとない。

 

 おまけにここはリアス・グレモリーの領地だ。

 グレモリーと真正面から戦闘など御免被る。

 

「私に近づいたのは演技?」

「最初はそうだったけど、一子は強引だから……」

 

 レイナーレはそう言って、頬を膨らませる。

 くすくすと、一子は笑う。

 

「レイナーレ、今夜は暇?」

 

 一子の問いの意味をレイナーレはすぐさま悟る。

 彼女の返事は勿論、決まっていた。

 

「うん、暇。一緒にいたいかな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私と一子の時間を邪魔するはぐれ悪魔、死すべし! 慈悲はない!」

 

 レイナーレが張り切って、女ケンタウロスを攻撃していた。

 

 ことの始まりは10分くらい前だった。

 はぐれ悪魔が近づいてくる気配を察知したレイナーレが邪魔者を排除しようと部下を呼んで、更に戦闘をする為に場を整えたのだ。

 

 

「おー、張り切っちゃってまぁ……よっぽど、気に入られているみたいっすね」

「ええ、本当に。確かに、それだけの美しさを持っているから納得だわ」

 

 ミッテルトとカラワーナというレイナーレが急遽呼んだ部下が一子を完全にガードしていた。

 

「まだ終わらんか? 早くして欲しいんだが。グレモリーに気づかれたら少々問題だ」

 

 そして、認識阻害の結界を張っている唯一の男性、ドーナシーク。

 

「あのさ、一つ言っていい? あの子も可愛いからペットにしたいんだけど」

「いやいや、あれどう見てもヤバイっすよ。神器持ちって聞いてるっすけど……」

 

 ミッテルトの言葉に一子はにこりと微笑む。

 女神の如き微笑みだ。

 

 その微笑みはマジでヤバイっす、とミッテルトは一子を直視できない。

 

「一子さんはどんなことができますか?」

 

 カラワーナの問いに一子は告げる。

 

「レイナーレ、ちょっと横に退いて」

 

 そう言いながら、一子はゆっくりと歩いていく。

 

「ちょ! 一子!? 危険だから……!」

 

 レイナーレがそう言った直後、はぐれ悪魔――バイサーの足が1つ、一子に向かって振り下ろされた。

 

 レイナーレが悲鳴を上げた――が、どうも様子がおかしいことにすぐに気がついた。

 

 レイナーレ達はその光景に目を疑った。

 

 片手――否、指一本で振り下ろされた足を一子は支えていた。

 

「やはり弱いわね。これじゃ、ワンパンで終わってしまう。レイナーレ、15分だけ、待ってもらってもいいかしら?」

「あ、う、うん。いいよ」

 

 レイナーレの言葉に一子はバイサーに微笑み、告げる。

 

「15分だけ、遊んであげるわ。そうね、敢えて言うならば、どこからでもかかってこい」

 

 

 レイナーレ達は目撃する。

 一子の規格外の力を。

 

 

 

 

 

 

「一子って何なんすか? あれ、人間やめてるっすよね?」

「レイナーレ様が味方につけたのは僥倖だった」

「全くだ。もし敵対していたらと思うと、我々とて一撃で……」

 

 ミッテルト、カラワーナ、そしてドーナシークは拠点としている教会に戻っていた。

 そして、今、レイナーレと件の一子はレイナーレの部屋でお楽しみの最中だった。

 

「何なんですかぁ? 例の女、そんなにやばかったんですかねぇ?」

 

 そう尋ねてくるフリードにミッテルト達は哀れみの視線を向ける。

 その視線にさすがのフリードも困惑する。

 

「はぐれ悪魔がいたんだが、その悪魔、一子のペットになったっすよ」

「はぁ!? 悪魔なら殺さなきゃダメでしょうに!」

「無理だ。一子さんはな、悪魔よりも恐ろしいぞ……」

 

 ミッテルトとドーナシークの言葉にフリードは嘘だろう、と驚く。

 あの堕天使達がそこまで一目置く存在。

 悪魔がペットになるほどの存在。

 

 悪魔狩りという名目もある。

 ならばこそ、フリードはちょっと戦ってみたくなってしまった。

 そうであるが故に、現状を上層部に報告することにした。

 

 悪魔と手を組んだ人間をレイナーレ達が気に入っている、このままでは取り込まれるのも時間の問題だ、と。

 嘘は言っていないのでこの訴えは受理されるだろう、とフリードは確信する。

 

 すぐには間に合わないから、レイナーレの例の計画が終わるかそこらあたりまでは、大人しく従っておきましょ、と彼は思いつつ、部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『で、どうするんだ? 堕天使側につくのか?』

『つまんなそうだからパス』

『だろうな』

 

 レイナーレを十分に堪能した後、一子はベッドに座り、眠るレイナーレを見ながら、余韻に浸っていた。

 最初は女同士のそれで、ついで、一子はユグドラシルのアイテムを使って両性具有となって楽しんだ。

 

 神器の力と言っておけば誤魔化しが効くので便利なものだ。

 

『どの陣営につく? 天界は論外だろうから、残るは悪魔か、あるいは他の神話か、妖怪か』

『独自勢力ってのは?』

『やめとけ、面倒くさいぞ。それなりの付き合いだが、お前、面倒事は嫌いだろう?』

『当たり前よ。戦闘とエッチだけで私は十分。他の面倒は他人に押し付けたい』

『清々しいまでの他力本願だ。となると、やはり責任を取ってくれる上司は必要だろう?』

『ええ、そうよ。何か良いところ無いかしら? レイナーレに迷惑は掛けたくない』

『となると悪魔しか残らないな。ちょうどいいことに、ここはグレモリーの領地だ。グレモリーとは情愛の家系。眷属となれば十分に可愛がってくれるし、やらかしても責任を取ってくれるだろうよ』

 

 グレモリー、という単語に一子は聞き覚えがあった。

 

『もしかしなくてもリアス・グレモリーってそのグレモリー?』

『おそらくな。見たこと無いのか? お前が見れば一発だろう?』

『名前と写真くらいしか。そもそもクラスどころか学年も違うから接点がないわ。よく私を見に来る子達の中にはいないし』

『なるほどな。それじゃ、グレモリーでいいんじゃないのか? レイナーレもはぐれ悪魔もペットだと言い張ればいい。お前の力ならそれも可能だろう』

 

 そのとき、レイナーレが身動ぎした。

 ドライグとの会話を中断し、一子はレイナーレへと視線をやるとちょうど彼女が目を開いたところだった。

 

『うまくやれよ。グレモリーの眷属となると知ったら、レイナーレは発狂するかもしれん』

『あいにくと、女の扱い方は前世からよく知ってるわ』

 

 一子はレイナーレを膝枕してやる。

 満足そうに膝を堪能するレイナーレ。

 そんな彼女に一子は告げる。

 

「レイナーレ、あなたはどのくらい強いの? 堕天使といえば、いわゆるルシファーとかそこらが人間界では有名だけど、あなたは元々の位階はどれ?」

 

 問いかけにレイナーレは視線を逸した。

 少しの間をおいて、小さな声で問いかけてきた。

 

「笑わない?」

「笑わないわ」

「……私は権天使だった」

「そう。どうして堕天したの?」

「……その、エッチしたくなって」

 

 これ以上ないほどに分かりやすい理由だった。

 

 アザゼルっていう堕天使も、女に誑かされて堕天した、と一子はかつて、タブラに聞いたことがあった。

 

「私が初めてじゃなかったのね」

 

 一子の言葉にレイナーレは勢いよく起き上がって、一子を真正面から見ながら告げる。

 

「で、でも! こんなに感じたのはあなたが初めてだから! その、何回もイケたし……気持ち良かった」

「それならいいわ。私は女の過去は詮索しないタイプなので」

 

 そう言って、一子はレイナーレを抱き寄せる。

 

「現実的に考えて、私って脅威になる?」

「……なる」

「あなたは良いかもしれないけど、あなたの上司は排除するかもしれないと私は思う」

 

 レイナーレはその言葉を否定したかった。 

 だが、否定はできない。

 ありえる可能性だったからだ。

 

「レイナーレは信用できるけど、だからといって堕天使全体を信用できるかと言われると、そうではない」

「うん……」

「ここに来るまで、色々と教えてもらったけど、天使は論外で、それ以外の妖怪とか他の神話とかもそもそも接点がない」

 

 一子の言わんとすることがレイナーレには理解できた。

 認めたくはないが、それしか一子の安全を確保するという保障がない。

 

 レイナーレは思う。

 もっと強い力があれば、と。

 だからこそ、あの計画を推し進めようと確信する。

 彼女が独断で推し進めている計画だ。

 

「このままここで普通に暮らすっていうのは無理だと思う。きっとどこかの誰かが私を巻き込みに掛かるから。ならばこそ、私は積極的に関わることで主導権を握りたい」

「分かってる、分かってるよ……それしか方法がないって。でも、眷属になってしまったら、私はあなたの……」

 

 敵になってしまう、というレイナーレの口は一子の口づけで塞がれた。

 

「ねぇ、レイナーレ」

 

 口を離して、レイナーレを抱きしめて、一子はその耳元で囁く。

 

「私はとてもワガママなのよ。悪魔と堕天使の確執、それは私が壊してあげる。私の規格外さは理解しているでしょう?」

「だけど……」

「じゃあ、こう言いましょう。レイナーレ、私を信じて」

 

 ずるい、とレイナーレは思う。

 そんなことを言われたら、拒むことなどできはしない。

 

「それに悪魔の眷属になったからって、あなたはいきなり豹変するのかしら?」

「……しない」

「じゃあ問題ないわね」

 

 けらけら笑う一子にレイナーレはむー、と頬を膨らませる。

 

「ああ、それとレイナーレ。無上天の熾天使って知ってるかしら?」

「無上天? いえ、知らないわ。人間の創作?」

「そう、それならいいわ。あと、大公爵級堕天使ってどんなもん?」

「そういった区分はないけど、たぶん魔王とかに匹敵するんじゃないかな」

 

 なるほど、と一子は頷いた。

 

「一子、今、私はある計画を進めているの。それが終われば……だから、それまで眷属になるのは待ってくれないかしら?」

「計画? まあ、いいけど……向こうから接触してきたら、早いかもしれないわよ?」

「大丈夫、1週間以内には終わらせるから。接触はいいけど、待って欲しい」

 

 仕方がないなぁ、と一子は言いながら、レイナーレの頭を撫でるのだった。

 

 

 

 

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