やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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赤龍帝の影響

 

 

 エキシビジョンの直後から、リアスとその眷属達は一気に注目されることとなった。

 予想よりも強かった、という為であったが、その中でも桁の違う注目度を集めたのが言うまでもなく一子だった。

 

 彼女自身の強さ、美貌は勿論のこと、白龍皇や皇帝を助っ人に呼べる、その人脈も。

 冥界におけるマスメディアはこぞって一子に対して取材を申し込み、一子は笑顔でそれに応じた。

 

 勿論、主であるリアスや、魔王達も一子がマスコミの前でやらかすと大いにマズイ為、誰かしらが傍についた。

 もっぱらリアスかセラフォルー、時々サーゼクスといったものだった。

 

 そんな日々を送りつつ、一子はある日の夜、朱乃の部屋を訪ねた。

 

 

 

「夜遅くに……ふふ、遂にですわね」

 

 朱乃は怪しく笑い、一子は肩を竦める。

 部屋に招き入れられ、鍵を閉められ、そして開口一番これであったのだ。

 

「朱乃、そりゃ私としても嬉しいけど、もうちょっとこうね……?」

「あら、私の気持ちなんて、とっくに分かっているのに。一子はまどろっこしいのね」

 

 一子さんではなく、呼び捨てへと切り替えてきたので、もう朱乃は止まらないだろう。

 仕方がないので、一子はさっさと言うことにした。

 

「朱乃、あなたとずっと一緒にいたいの。どうかしら?」

「ダメよ、一子。もうちょっとうまく言わないと」

 

 うわ面倒くさ、と一子は思った。

 やる気満々であったがしかし、複雑な乙女心。

 

 ドライグは爆笑しながら、声を掛ける。

 

『相棒、また面倒くさい女に引っかかったな』

『うるさい赤トカゲ』

『ま、精々うまくやれ。俺は寝ているからな』

 

 ぐぬぬ、と一子は思いつつも、咳払いを一つ。

 もう実力行使だった。

 

 一子は朱乃をぎゅっと抱きしめると、その耳元で囁いた。

 

「朱乃、あなたの全てを私は受け入れるわ。未来永劫、ずーっと離さない。たとえ、あなたが逃れようとしても」

「……ふふ、一子。私もよ。あなたが逃げようと、私はあなたを離さないんだから」

「もう、朱乃って意地悪なんだから」

「好きな子に意地悪をしたくなってしまうのよ」

 

 くすくす笑う朱乃に一子は軽く溜息を吐きながら、彼女の頬を優しく撫でる。

 

「キス、しよっか?」

「ええ……これから末永く、よろしくお願いします……一子」

 

 そして、2人は口づけを交わした。

 夜はまだまだこれからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 朱乃とも関係を持った一子はそれなりに充実した日々を送っていた。

 そんな彼女はマスコミ対応をしつつ、リアスや朱乃とイチャイチャし、たまにリアスや朱乃も含めたグレモリーチームに修行を行うというものだ。

 

 エキシビションからそれなりの日数が経ったある日、魔王主催のパーティーが開催されることとなり、当然リアス達も出席することとなった。

 とはいえそれは実質的には仕事であり、その内容は会いに来る面々に笑顔で応対というものだ。

 

 

 そして、パーティーの当日、会場で一子は懐かしい顔を見つけて、声を掛けた。

 

 

「久しぶりね、レイヴェル」

「わ、私の名前を覚えていてくれていたの?」

「勿論よ。可愛くて綺麗だし」

 

 微笑みながら、一子はレイヴェルに接する。

 その様子をリアスや朱乃達が見逃す筈もない。

 

 一子がまた口説いている、という事実にリアスも朱乃も内心では不満げであったが、それを阻むことはちょっと無理であった。

 

 

「……阻止したいけど……」

「ええ、部長……」

 

 体が保たない、というのが本音だ。

 朱乃もまた一子とエキシビジョン後からそういう関係になったのだが、一子に抱かれるということはどういうことか、思い知った。

 

 

「嬉しいんだけどね……」

「ええ、嬉しいんですけど……気絶しても、ヤり続けてくださるのは……」

 

 リアスや朱乃が気絶しても一子は離さず、しばらくして起きて、また気絶して、というループが繰り返された。

 圧倒的な快楽に浸ってしまったリアスと朱乃としては嬉しいけれど、もうちょっと手加減してほしいのが本音だ。

 

 とはいえ、実際、行為の最中は手加減してほしいなんて微塵も2人の頭にはなく、色んなことを口走っていたりするが、そこは乙女の秘密である。

 

 

 

 

 リアスと朱乃がそんな会話をしているとは露知らず、レイヴェルと別れた後、一子は変な爺さんに絡まれていた。

 リアスと朱乃はというと、別の面会人がやってきて、会話を始めた為に気づかない。

 

「今代の赤龍帝は、おっぱいじゃな。おっぱいドラゴンじゃ」

 

 うむ、と頷きながら、ジロジロと見てくる爺。

 一子は直感的に彼の正体を察した。

 

 彼女はおもむろに、こっそりと尋ねる。

 

「オーディン?」

「ワシを知っとるか。うむ、最近の若い者も捨てたものじゃないのぅ」

「それはそうとしてヴァルキリー、くれない? 私、眷属を探していてね」

「ほほう、ヴァルキリーに目をつけるとは通じゃのぅ。だが、対価は?」

「私がそっちに戦争を仕掛けないという安全保障」

 

 それは大きく出たな、とはオーディンは言えない。

 何しろ、先のエキシビジョンを見た限りでは、どう考えても一子は本気ではあったが、全力ではなかったのだ。

 無論、それは相手であったセラフォルーとグレイフィアも同じだが、赤龍帝の全力とはすなわち、覇龍。

 神をも超える力だ。

 

「……お主、どこまで至っておる?」

 

 眼光鋭く、オーディンは問いかけた。

 一子は不敵な笑みを浮かべ、答える。

 

「赤龍帝の中で初めてのことをやらかしたみたいよ」

 

 それだけで彼は察する。

 覇龍を扱えるということを。

 

「まったく、今代の赤龍帝はぶっちぎりじゃな。チートの極みじゃろ」

 

 オーディンはそう答えつつ、破格の条件だと確信する。

 伊達に彼は北欧の主神であるわけではない。

 ヴァルキリー程度で赤龍帝からの安全を買えるのなら、安いものだ。

 

「お主の願いは?」

「趣味で世界最強を目指しながら、女の子達を侍らせて、世界を楽しむことかしら」

「……女じゃろ、お主」

「実は両性具有になれるので、あっちこっちの種族問題を解決できるわよ」

「嘘じゃろ?」

「本当なのよ」

 

 オーディンは溜息を吐いた。

 赤龍帝がどれだけの価値があるか、理解できてしまったが為に。

 

「口約束では嫌じゃぞ?」

「約束は守るわよ。約束を破ると信用が無くなるし。それに送ってくるヴァルキリーを真面目なタイプにしておけば、私が破ることを止められるんじゃないの?」

 

 それもそうだ、とオーディンは思いつつ、力で押し切られたりはしないだろうか、とジト目で一子を見る。

 彼女はにこにこ笑顔を返すのみだ。

 

「分かった、分かったぞ。ただし、ワシが送るなんてことはできん。お主が落としたら、リストラという体面を取るから、好きにするがいい」

「よし」

「今、ワシのお付きでついているロスヴァイセなら落としやすいぞ。ちなみに処女」

「契約成立」

 

 がっしりと握手を交わす一子とオーディン。

 果たして、これは良い取引だったのか、と彼はちょっとだけ悩んだ。

 

 

 

 

 

「あのー、本当ですか? これ」

 

 ロスヴァイセはとても困惑していた。

 彼女は今、一子と2人で対面している。

 

 会場でオーディンが勝手にふらふらと行ってしまい、探していたときに声を掛けられたのだ。

 

 噂の赤龍帝ということもあり、ロスヴァイセも情報収集として会話をしていたのだが、そこで一子が誘ったのだ。

 

 内密の話がある、と。

 

 

 そして、そこで明かされたのは――いわゆるヘッドハンティングだった。

 

「ええ、本当よ。私も眷属は確保しておきたくて」

「威勢の良いことばかりですが、本当に本当ですか? これ」

 

 ロスヴァイセに提示された条件は各種保険完備、月給に加えて成果給、年間ボーナス3回、その他各種手当てつき、各種休暇制度完備という今の彼女の労働環境とは比べ物にならない程に天国なものだった。

 

「当然よ。はいこれ、証拠」

 

 一子は金のインゴットを1本、無限倉庫から取り出して、それをロスヴァイセに渡した。

 彼女はそれを受け取り、しげしげと眺める。

 

「……本物のようですね」

「本物よ。ロスヴァイセ、私は魔力の消費だけで金塊を作り出せるのよ。だから、私のところに来れば給料未払いという心配はないわよ? この金塊を換金する術もあるし、何よりもこれ以外にも無数の資金源があるし」

 

 ロスヴァイセは無言になり、インゴットを机に置いて、そして一子の両手をがっしりと握った。

 

「一子さん、いえ、一子様。是非あなたの眷属にならせてください」

 

 ロスヴァイセの目は据わっており、迫力が半端ではなかった。

 しかし、一子は動じることなく、告げる。

 

「ええ、そう答えてくれると思っていたわ。じゃあ、そのインゴット、支度金として使って頂戴」

 

 一子の言葉にロスヴァイセは歓喜した。

 

 

 太っ腹な上司って最高――!

 しかも、見た目も最高――!

 

 ロスヴァイセは決してそっち系ではなかったのだが、何分、今まで相手にしていたのがオーディンだ。

 

 いくら主神だからといっても、見た目は完全に爺さんである。

 その爺さんと一子なら、どちらを常に見ていられるか、と問われればロスヴァイセは当然、一子を選んだ。

 

「一子様、早速退職届を書いてすぐに提出しますので、3分だけお時間を頂けると……」

「ええ、構わないわよ」

 

 ロスヴァイセはウキウキ気分でその場で退職届を書き始めたのだった。

 

 

 

 

 

「なぁ、赤龍帝よ。ロスヴァイセが10分くらい前に退職届をワシの顔に叩きつけてきたんじゃが……というか、もうお主の後ろにおるのか……」

 

 ぷいっとそっぽを向いているロスヴァイセ。

 オーディンとしては、いったいどうやって落としたのか、全く不思議でしょうがない。

 

「いやまあ、そうねぇ……条件は大事としか言えない」

 

 オーディンの下への道すがら、一子はロスヴァイセにヴァルキリーの労働条件を聞いて、涙した。

 経費削減を受けて、下っ端のヴァルキリー達がとても悲しいことになっていたのだ。

 

「条件……? もしや、ああ、うむ、そうだな……」

 

 オーディンとしても思い当たる節があったらしく、目を逸らした。

 一子はそれを見逃さなかった。

 

「どうかしら? 融資、欲しくない?」

「……い、いらんぞ」

「本当に? 今なら低金利で融資をするわよ?」

「……話だけなら聞く」

「ええ。構わないわ」

 

 一子は爽やかな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 結果として、オーディンは一子から融資を受けることにした。

 金塊1000トンという膨大な量であり、それは彼が構築した異空間にて受け渡しが行われた。

 

 一子が無限倉庫から1000トン分の金塊を地面に置いたとき、ロスヴァイセは目が飛び出る程に驚いた。

 

 一子が空間に倉庫を置いているという事実から、その魔法も高いレベルにあることを察した為、そしてそれだけの量をぽんと出せる懐に対して。

 

 オーディンは一子が出した金塊の山を一瞬で魔法でもって真贋とその量を確かめ、本物であり、適正な量であることを確認して自身の空間倉庫に収納した。

 

 最後にオーディン自ら借用書を作成し、それを一子は確認した。

 その内容はオーディンに有利なものかと思いきや、そういうこともなかった。

 しかし、一子は念の為にロスヴァイセにも確認してもらう。

 早速の仕事だとロスヴァイセは張り切り、借用書の隅から隅まで読み込み、調べて、特に抜け道がないことを確認した。

 

「しかし、何でまた経費削減なの? 金とか腐るほどありそうなものだけど」

「色々とな。人間社会と同じじゃ……」

 

 何やら色々ありそうだったので、一子はそれ以上のツッコミはやめた。

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、一子様、どうしてオーディンは融資を受けたのでしょうか?」

 

 取引の後、ロスヴァイセは不思議に思いながら、そう問いかけた。

 主神としての威厳とか色々とそういうものから、断ると思っていただけに意外だった。

 

「簡単よ。派閥争い。経費削減なんてやったら、求心力の低下に苦しむに決まっているわ。現にあなたとか」

 

 なるほど、とロスヴァイセは頷いた。

 北欧とて、一枚岩というわけではないのだ。

 

 過激な連中も多い。

 

 そのときだった。

 

「一子? そちらはどちら様かしら?」

 

 リアスがにこやかな笑みを浮かべて、仁王立ちしていた。

 気づいたら、一子が会場から消えていて、けれど次々と面会に来る連中のせいで、今の今まで行動できなかった、というのが彼女の事情だった。

 

「あ、リアス。こっちはロスヴァイセ。さっきオーディンのところから引き抜いた。私の眷属候補」

「はじめまして、リアス・グレモリー様ですね。一子様の眷属候補のロスヴァイセと申します」

 

 頭を下げるロスヴァイセにリアスは深く、それはもう深く溜息を吐いて、コメカミに手を当てた。

 

「色々とツッコミどころがあるのだけど、戦争にはならないのよね?」

「なるわけないわよ。オーディンには貸しができたから。経費削減って大変よねぇ」

 

 のほほんとした一子にリアスは再度溜息。

 ロスヴァイセは何となく、それでリアスの苦労を察した。

 

「……あの、リアス様。もしかして、こういうことはよくありますか?」

「ええ、ロスヴァイセ。それはもうよくあるわよ。あと、一子の色々を知ったら、もうアレよ、卒倒するわよ」

「失礼しちゃうわね」

 

 つーん、と口を尖らせる一子。

 ロスヴァイセは、オーディンとはまた違った意味で苦労するのでは、という勘がした。

 とはいえ、あのときと今は違うと考え直す。

 

 薄給激務ではなく、高給激務ならロスヴァイセとしては苦労が多くても問題はなかった。

 

「まあ、いいわよ。それはさておき、さっさと帰るわよ。これ以上、ここにいるとまた面倒なことになりそうだから」

 

 それこそ、あっちこっちでやらかすこと間違いない。

 それを防ぐ為にも、面会人が途切れた今、帰るしかなかった。

 

「なんかこう、テロリストが襲撃を仕掛けてくるとかそういう展開は……」

「あなたがいるから、テロリストの方が逃げ出すに決まっているじゃないの」

「それもそうだった」

 

 

 至極道理であった。

 ロスヴァイセとしても、全くその通りと頷いた。

 

 魔王と魔王級の悪魔を2人相手に単独で戦えるのだから、大抵のテロリストでは相手にもならないことは証明されている。

 

「あ、そうだ。ロスヴァイセ、私にあなたが学んできたこと、教えてくれないかしら? 私、趣味で世界最強を目指しているので」

 

 にっこりと笑う一子にロスヴァイセは何だか嫌な予感がした。

 

 

 

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