やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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魔王からの呼び出し

 

 

 

「魔王からの呼び出しってあれね、また何か私はやらかしたのかしらね」

「一子ちゃんは思い当たることしかないよねー」

 

 一子はセラフォルーと共にサーゼクスに呼び出されていた。

 魔王領にある彼の居城。

 そこは当然ではあるが、グレモリー家よりもよほどに広くて大きかった。

 

 一子は対抗心が湧き上がってくるが、今回はそっちよりも呼び出された理由が気になった。

 

「大丈夫だよ、今回は悪い話じゃない……いやまあ、一子ちゃん相手に悪い話なんかできないけど」

「失礼しちゃうわね」

「ちなみにだけど、リアスちゃんとかアザゼルちゃんとかもいるから」

「そういや昨日なんか明日はお兄様に呼び出されているから、と言ってた気がする」

「一子ちゃんの件だよ。リアスちゃんは主だから」

 

 そりゃそうだな、と一子は思いつつ、どういう話なんだ、と首を傾げる。

 

「もしかして、グレイフィアとかの件?」

「それも含めて、具体的に言うと、冗談抜きで一子ちゃんがどこまでできるか、やれるかを知っておきたいの。いや、本当に一子ちゃん、把握しておかないと大変なことになりそうだから」

 

 それもそうだ、と一子は同意を示す。

 自分がセラフォルー達の立場であったなら、まさしく徹底的に調べようとするだろうことは簡単に想像がつく。

 

「かなり頭の痛い話とか非常識でぶっ飛んだ話になっても、覚悟はしてきたから大丈夫」

「私の秘密を丸裸にしようっていうの? 嫌なんだけど」

 

 一子の言葉にセラフォルーは首を横に振り、否定する。

 

「ううん。どうしてそういう力を持ったか、とかそういうのは聞かないから。何ができるか、どこまでできるか、それだけでいいよ。過去の詮索はご法度だからね」

 

 ウィンクしてみせるセラフォルーに一子としては一安心だ。

 とはいえ、悪魔であるから、油断はできなかった。

 

 

 

 

 セラフォルーに案内された会議室にはサーゼクスとアザゼル以外にも見慣れぬ魔王が1人いた。

 魔王以外ではリアスとソーナ、サイラオーグ、シーグヴァイラの4人とそれぞれの女王がいる。

 見慣れぬ魔王はアジュカ・ベルゼブブとセラフォルーに紹介され、一子もまた簡単に自己紹介をする。 

 

 そして、サーゼクスが口火を切った。

 

 

「彼らは若手四王と早くも呼ばれ始めている。いわば、期待の新星といった面々であり、将来の冥界を担う存在になる。だからこそ、同席してもらっている」

「セラフォルーから聞いたけど、要するに私がどこまでできるかを知りたいって?」

「話が早くて助かる。だが、先に君がやらかした一件を彼らに明かして欲しい」

 

 サーゼクスは渋い顔でそう告げた。

 彼としては非常に複雑であったが故に。

 

「いいか、お前ら。一子はもう超越者だ。転生悪魔がそうなったのは初めてだが、ともかく、サーゼクスやアジュカすらも及ばないくらいに、ぶっちぎりで。それをよく頭に入れた上で、一子の話を聞くんだぞ」

 

 アザゼルは念を押す。

 事前に何度も彼は似たようなことを言っていたが為に、そこまで言われるとリアス達も身構える。

 

 

「じゃ、いいかしら? 呼んでも」

 

 一子の問いにサーゼクスは頷いた。

 彼女の背後に控えるグレイフィアが少し身構えた。

 

 そんな様子を見ながら、一子は兵藤邸にいるグレイフィアを呼んだ。

 

 すぐさま魔法陣と共に現れるグレイフィア。

 しかし、その人数が――

 

 

「……おいなんか増えてるぞ。9人ってなんだよ、9人って。野球でもするのか?」

 

 アザゼルはかろうじてツッコミを入れた。

 しかし、それ以外の面々は完全に固まっていた。

 

 グレイフィアが9人、一子の背後に控えて立っていた。

 

「皆様、初めまして。一子様のメイドのグレイフィアです。どうぞ、よろしく」

 

 そう告げて、優雅に頭を下げるグレイフィア。

 残る8人も全く同じタイミングで頭を下げる。

 

「……ええっと、ねぇ、一子ちゃん。いつ作ったの?」

「あの後、人間界に送ったとき、1人だとなんかほら、アレだから。ワーキングシェア的な発想で」

「ワーキングシェアでグレイフィアちゃんを追加で8人も作らないでよ」

 

 セラフォルーのツッコミは道理だった。

 

「……私、ですか?」

 

 ようやくオリジナルのグレイフィアが口を開いて、問いかけた。

 

「はい。とはいえ、実際には違います。辿った過去が違うと思って頂ければ」

 

 にこりと微笑みながら、そう告げるグレイフィア。

 

「……あー、その、そっちのグレイフィアはどういう過去を?」

「サーゼクス様と出会わなかったグレイフィアです」

 

 サーゼクスの言葉に笑顔で返すグレイフィア。

 彼は反応に困った。

 

「話には聞いていたが、ここまでぶっとんでいるとは思わなかった」

「アジュカちゃん、半信半疑だったけど、分かった?」

「よく分かった。軽く調べさせてもらうぞ」

 

 アジュカの言葉に一子が許可を出すと、彼は魔法陣を展開し、グレイフィア達をスキャンする。

 

「……紛れもない純血の悪魔だ。こう言うのもなんだが、粗悪なコピー品などではない。内包する魔力もオリジナルと同等だ」

「当然よ。あと気づいてくれたかしら? 10代の頃のグレイフィアとサーゼクスとは別の悪魔と結婚して子供も産んだけど、離婚したグレイフィアも3人ずついるわよ」

 

 サーゼクスはアジュカへと視線を向け、アジュカもサーゼクスへと視線を向けた。

 

「どうすればいい?」

「こっちが聞きたい。どうすればいいんだ……」

 

 魔王が2人、頭を抱えるという異常事態だった。

 

 一方のオリジナルのグレイフィアは別の自分と認識して、むしろ興味津々だった。

 

「どういう過去か、詳しく聞いても? あと、一子様。私とあまり接点がなかった筈ですが、どうして私を?」

「私の欲望に従った結果よ。私がルキフグス家とか冥界の歴史とか色々調べて、いい感じにあり得たかもしれない過去を作って設定にはめこんだのよ。ほら、使い魔とか作るときにこういう目的で作るっていうのと同じ」

「どういう反応をしていいか、私自身も困っていますが、興味はあります」

 

 しげしげとグレイフィア達を眺めるグレイフィア。

 非常にシュールな絵面だった。

 

「グレイフィアはあっちのグレイフィアのことはどう?」

「特には何も感じません」

 

 なるほど、と一子は頷く。

 そこで、ようやく事態を理解したリアスが我に返って叫んだ。

 

「何でグレイフィアがこんなにたくさんいるのよ!?」

 

 非常にマトモなツッコミだった。

 

「一子、何でなの!?」

「グレイフィアが欲しい。だけど、寝取りはダメ、ましてや義兄ならば尚更。そうだ、私がグレイフィアを作ればいいんだ、どうせならパーフェクトメイドとして作れば私が楽できる、という感じで」

「何でそうなるのよ!? 諦めなさいよ!」

「世界一ワガママなので」

 

 一子の返事にリアスは深く、それはもう深く溜息を吐いた。

 特大級のやらかしだった。

 

「ええっと、その、一子さんが作ったグレイフィアさん達はオリジナルのグレイフィアさんと同じ力も持っているのですか?」

 

 理解がようやく追いついたソーナの問いに一子は自信満々で頷く。

 

「魔王にも引けを取らないのよ。どんな悪徳な押し売りがきても1秒で地獄に追い返せるの」

「作るときに代償などは……?」

「私の魔力消費だけで5秒で1人は作れるわよ」

 

 ソーナは倒れそうになったが、慌てて椿姫が支えた。

 

「……にわかには信じられんが、目の前に存在するということは本当なんだろうな」

 

 サイラオーグはグレイフィア達を凝視しながら、そう呟いた。

 

「初めて会ったときから、ぶっ飛んでいるとは思っていましたが、ここまでとは……紛れもなく超越者ですね」

 

 シーグヴァイラは素直に感想を抱いた。

 なまじ、最近知り合ったばかりであった為に驚きはしたが、そういうものなのだ、と納得することができた。

 

 

「私が本気で世界征服とか考え始めたら、グレイフィアを100万人くらい作ってぶつけて、それでもダメならサーゼクスを100万人くらい作ってぶつける」

「雑な世界征服はやめろ、と言いたいところだが、それができちまうから困るんだ」

 

 アザゼルは溜息混じりに告げた。

 

「一子ちゃん、残る2人も呼んで。ちゃんと皆に言っておかないと」

 

 セラフォルーの言葉にリアス達は嫌な予感がした。

 サーゼクス達は事前に知っていたが為に、もう驚きはない。

 彼ら魔王達が驚いたのはグレイフィアの人数が増えていたことに対してなのだ。

 

 

「やっほー! 皆! 魔法少女マジカル☆レヴィアたん! 参上!」

「お姉様は全く……初めまして、ソーナ・シトリーです」

 

 2人目のセラフォルーと2人目のソーナが現れた。

 

「私!? なんで私なんですか!?」

 

 オリジナルのソーナは立ち直って、作られたソーナに食って掛かった。

 

「お、落ち着いてください、私。私もよく分からないですが、お姉様2人の意向があるかと……」

 

 オリジナルのソーナは2人のセラフォルーへと視線を送った。

 

「だって、ソーナちゃんがいつかどっかの男に嫁いだら、嫌だし……」

「そうだよ。ソーナちゃんと離れたくないし……」

 

 泣きそうな顔のセラフォルー2人にソーナは深く、これでもかと深く溜息を吐いた。

 

「だからといって、コピーを作るのはどういうことですか……」

「え? だって悪魔だし、そんな人間みたいな倫理観を持ち出されても、ちょっと困るんだけど」

 

 一子の言葉にソーナだけでなく、ほとんどの面々が深く溜息を吐いた。

 確かにそれはもっともな話であるが、悪魔よりも恐ろしい気がしたのだ。

 

「じゃあ、あれよ、すっごく、すごーく嫌なことだけど、作ったの、消す? 彼女達はもう1個の生命体として、生きているのに?」

 

 えげつない、とオリジナルのセラフォルーは一子の言葉に素直にそういう感想を抱いた。

 悪魔のくせに人間の倫理観云々と言ったのに、すぐにまるで人間に対するかのように、感情に訴えてくる。

 

 なんだかんだで、サーゼクス達は悪魔とは思えないくらいに優しすぎた。

 

 

 

 無理だよ、あなた達じゃ一子ちゃんは絶対制御できないよ?

 だって、この子、悪魔より恐ろしいもん。

 でも、そういうところが私としてはとても良いんだけど。

 

 

 セラフォルーはそう思いながら、なし崩し的に受け入れる判断を下すサーゼクスに内心ほくそ笑む。

 

 そうでなくては困るのだ。

 面倒くさい老害共の処理には一子の力が絶対に必要であったが為に。

 

 側室としての立場は非常に都合が良い。

 もちろん、そういう利益的なことだけでセラフォルーが一子の側室になったわけではない。

 綺麗で可愛いし、強いし、両性具有になれるし、性格も良い。

 超優良物件だ。

 

 

 そういうことを考えているとはおくびにも出さず、セラフォルーはいつもの笑みを浮かべて、告げる。

 

「ねぇねぇ、一子ちゃん。本題に戻るけど、一子ちゃんはどこまでできるの? 何ができるの?」

 

 セラフォルーの問いに一子はドヤ顔で告げる。

 

「何でもできるわよ。破壊も創造もね」

「んー、例えば?」

「例えば、と言われても難しいわね。不老不死の薬を作ったり、若返り薬を作ったりとか」

「他には? こう、派手なこととか」

「世界相手に1人で戦って勝てるんじゃないかしらね。今はドライグもいるし」

「何か隠していることとかない?」

「んー、まあ、そうねぇ……回数に制限はあるけれど、何でも願いが叶う魔法が使える」

 

 一子の言葉にアザゼルが待ったを掛けた。

 

「おい一子。その願いを叶えるってどういうことだ?」

「その通りよ。お伽噺にある魔法の典型ね。私が地球消えちゃえって願えば地球は消えるとか、全人類不老不死にして、と願えばそうなったりとか」

「……お前、もしかして聖書の神か? いや、でも、ヤツでもそこまではできなかった」

 

 アザゼルの言葉に聞いていたリアスは冷や汗が背筋を伝うのを感じた。

 

 そんなとんでもないことまでできるなんて、絶対一子の前世が関係している、と彼女は直感していた。

 

「ダメだよ、アザゼルちゃん。一子ちゃんのそういうことについては詮索しないって事前に決めたでしょ?」

「とはいえ、気になるもんは気になる。それだけだ」

 

 アザゼルはセラフォルーの言葉にそう反し、腕を組んだ。

 

「んー、どうしよっか? 一子ちゃん」

「やめといた方がいいわよ。いやマジで。本当に頭を抱える事態になるから」

 

 もう抱えている、とサーゼクス達はツッコミを入れたかったが、ともあれあの一子がそこまで言うということは相当であると判断する。

 

「一子、一つ、頼みがある」

 

 そのとき、サイラオーグが口を開いた。

 彼へと視線が集中するが、それを気にせず、彼は言葉を続ける。

 

「お前は眠り病を治せるか?」

 

 彼の問いに今度は一子へと視線が集中する。

 眠り病は悪魔が罹患する病。

 治療法が確立していないものだ。

 

「ええ、治せると思うけど。とりあえずやってみるわね」

「すまん。失敗しても、構わない」

「そう言われると、こっちとしてもやる気を出さざるを得ないわね」

 

 一子の言葉にセラフォルーが提案する。

 

「一子ちゃん、病院に行く?」

「ううん、ここでできるから」

 

 そう答えて、おもむろに無限倉庫から一子は指輪を一つ取り出し、それを指にはめた。

 そして、彼女を中心として巨大な蒼い魔法陣が展開される。

 

 誰もが皆、目を見開いた。

 全くの未知の術式であったが為に。

 特にアジュカはその驚きの度合いは他の面々の比ではなかった。

 

「眠り病に罹患している全ての者を一切の後遺症などなく、また今後も再発することなく完全に健康体にしなさい。ウィッシュ・アポン・ア・スター」

 

 青い光が迸った。

 

 

 

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