やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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そうだ、京都へ行こう

 

 

 

 いよいよ修学旅行の当日となった。

 この日を待ち望んだ者もいれば、望んでいなかった者も当然いた。

 

 

「一子ぉ!」

 

 泣きじゃくるリアス、その横で涙ぐむ朱乃。

 呆れる小猫。

 物珍しそうに見るギャスパー。

 

「何か凄いことになっちゃってるねぇ。一子ちゃんモテモテ」

 

 そう言いながらも、勝ち誇った顔でイリナは一子と腕を組む。

 その反対側にはゼノヴィアがおり、後ろからはアーシアが一子に抱きついている。

 

「嫌! 行かないで!」

「なんかドラマのワンシーンみたいですね」

 

 リアスの反応にギャスパーの言葉。

 周りに人がいなかったのは幸いだ。

 

「転移魔法で来ればいいんじゃない? リアスも朱乃も放課後にでも」

「……そういえばそうね」

 

 一子の冷静な指摘にリアスは泣き止んだ。

 朱乃も、その手があった、と言わんばかりの顔。

 

 普段しっかりしているが、どうにも一子が関わるとすっぽり抜けてしまうらしい。

 

「許可証だっけ? もらったやつ。リアスなら自分達の分も手に入るでしょ? 家の力はこういうときに使うものよ」

 

 リアスは無言でスマホを取り出して、どこかへと連絡を取り始めた。

 1分程で彼女はぐっとサムズアップ。

 彼女は先程の泣き顔とは打って変わり、にこにこの笑顔だ。

 

「というわけで、一子。私達が行くまでの間、くれぐれも……くれぐれも! 騒ぎを起こさないように」

「はーい」

 

 念を押されたところで、新幹線の出発時刻となった。

 ベルの音と共に扉が閉まっていく。

 

 互いに手を振りながら、新幹線は動き始めた。

 

 

「……さぁ、朱乃。さっさと学校を終わらせるわよ」

「違う意味に聞こえてしまいますけど……同感ですわ」

 

 そんな2人を見ながら、ギャスパーは傍らにいる小猫に話しかけた。

 

「なんだか2人とも燃えているね、小猫ちゃん」

「ギャー君は一子先輩の毒牙には掛からないで」

「先輩、男に興味ないんじゃないかなぁ」

「……ギャー君は男だけど、守備範囲」

 

 小猫から告げられた真実にギャスパーは衝撃を受けた。

 

「ぼ、僕……故郷に幼馴染がいるって言えば、何とか逃れられたりとか……?」

「早めに告げた方がいい。そうしないと食べられる。性的な意味で」

「ひぃ! 先輩怖い! 僕の能力も無効化されるし! こわいぃ!」

 

 怯えるギャスパーに小猫は軽く溜息を吐く。

 一子の荒療治のおかげで、ギャスパーの対人恐怖症はほとんど無くなり、能力の制御もかなり良くなってきている。

 

 時間停止対策は上位者との戦闘では必須とドヤ顔で言いながら、時間停止中にも関わらずに普通に斬りかかってきた一子はギャスパーにとっては恐怖の大魔王みたいなものだった。

 対人恐怖症がそのまま一子恐怖症へとスライドしたようなものだが、ともあれ、なくなったのは確かなのだ。

 

「しかし、ロスヴァイセもちゃっかりしているわね……」

 

 リアスの言葉に朱乃は肯定する。

 

 ロスヴァイセは生徒として駒王学園に在籍するか、あるいは教師として在籍するか、で非常に悩んだ。

 生徒であったほうが一子の傍につけるが、しかし、何かあったときに融通を効かせ易いのは教師だ。

 

 最終的にロスヴァイセは教師を選んだが、一子のクラスの副担任という位置に収まった。

 当然、修学旅行にも同行していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「京都といえば百鬼夜行、ふーむ冒涜的大行進で再現できるか……?」

 

 ぶつぶつと一子は修学旅行のしおりを見ながら、不穏なことを呟いていた。

 

「一子ちゃん、何をぶつぶつ言っているの?」

「イリナ、絶対もう確実に100%、騒ぎに巻き込まれそうな予感がするので、今から京都っぽい攻撃の仕方を……そうだ、平安京エイリアンの術を使おう」

「ええっと、騒動はともかくとして、何? 平安京エイリアンの術って」

「40年くらい前に発売された検非違使がエイリアンを穴に落とすゲームが元ネタね」

「ごめん、何を言っているかよく分からないよ……」

 

 イリナは匙を投げた。

 新幹線からホテルまでは彼女が一子を独占できるということになっている。

 イリナが幼馴染であったが故に、ゼノヴィアとアーシアが譲った形だ。

 

「というか、騒動って?」

「セラが言っていたけれど、京都の妖怪と外交のアレコレだけど、まあ、そこで一悶着か、禍の団とやらがウダウダ懲りずにやってくるか」

「外交はともかくとして、禍の団が可哀想だね……」

 

 イリナからすれば一子とかいう最終兵器赤龍帝とも言うべき存在がいるところで、わざわざ騒動を起こすなんて自殺行為としか思えなかった。

 絶対に面白がって首を突っ込んで、そして可愛い子がいればお持ち帰りするに決まっている。

 

 もうその性格はリアスですらも諦めているのは周知の事実だ。

 

「あ、でもでも、一子ちゃん。禍の団も馬鹿じゃないから、人質とか取ってきたらどうするの?」

「人質ごと殺すに決まっているじゃないの」

「うん、聞いた私が馬鹿だった」

 

 死者蘇生が使える存在に人質を取っても意味がなかった。

 感情的なシコリが残るだろうが、そこらは一子がどうとでもするだろう。

 

「いい? イリナ。テロリストもドン引きするほどに凶悪なことをやれば、連中は大人しく言うことを聞いてくれるのよ。覚えておくといいわ」

「一子ちゃんって本当に考えが非常識だよね……どうしてそういう発想になるのかなぁ」

「だって、私に敵対するってことは私に何をされても構わないと宣言して契約書にサインをするのと同じ意味でしょうに」

「色々とダメだよ!」

 

 イリナは渾身のツッコミを入れた。

 ダメだ、この幼馴染。もう手遅れだ――

 

 昔はもっと可愛かったのに、とイリナは溜息を吐いた。

 

「ね、一子ちゃん。昔の私、男の子みたいだったでしょ?」

「急にどうしたのよ。まあ、そうだけどさ」

「んでさ、私、考えも男の子っぽかったんだよね」

 

 イリナはそう言いながら、ちょっとだけ視線を逸らす。

 そして、数秒の間を置いて告げる。

 

「初めて一子ちゃんを見た時、可愛い、結婚したいなって思ったの。女か男かそういうのって子供のときって曖昧だし……」

 

 自己弁護をするイリナに一子はくすり、と笑う。

 

「で、今は? 幻滅した?」

「どうだと思う?」

 

 一子の問いに挑戦的な視線を向けるイリナ。

 

「そうね……きっと、イリナは私と一緒になりたいって思っているわ」

「自信家だね、一子ちゃん」

「そうでもないわ。ただ、これまでの行動からね」

 

 一子はそう言いつつ、イリナの顎に手を当てて、軽く指で唇を撫でる。

 

「あなた、綺麗になったわ。悪いドラゴンに食べられてしまうくらいにね」

「悪いドラゴンって?」

 

 イリナの問いに一子はそのままゆっくりと顔を近づけて――やがてその唇に口づけた。

 そのままイリナは目を閉じ、それを見つつ、一子はイリナの背中へと両腕を回し、抱きしめる。

 やがて、一子が顔を離した。

 

「ん……いいよ、一子ちゃん。でも、ホテルのほうが嬉しいかな」

「ええ、当然よ。このままイチャイチャしましょうよ」

 

 そして、2人は新幹線に乗っている間――ずーっとそのままイチャイチャしていた。

 しっかりと結界も張っていた為、クラスメイトや他の乗客からはただ会話をしているようにしか見えないので、気にする必要もなかった。

 

 

 とはいえ、その結界を見抜ける者も当然いる。

 

 ゼノヴィアとアーシア、ロスヴァイセはもう慣れっこであり、驚くことでもない。

 だが、唯一グレモリー眷属以外で目撃してしまった輩がいた。

 

「……見なかったことにしよう」

 

 匙はヴリトラに記憶を吸い取ってもらえないか、と真剣に悩みながら、京都までの時間を過ごすことになった。

 

 

 

 

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