やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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悪魔らしいやり方

 

 

 

「狐か……使い魔に欲しいかも」

 

 出店を皆で物色しながら、一子はそんなことを呟いた。

 

「一子ちゃんのことだから、九尾を使い魔にするとか言い出しそう」

「イリナ……九尾の尻尾、絶対もふもふで最高よ?」

「私も九尾を使い魔にしたいなぁ」

 

 1秒くらいで手のひらを返したイリナ。

 そんな会話にゼノヴィアとアーシアは笑ってしまう。

 

「……タユンスカポン? コリャンチワワ? うーん、なんかそれと似たような名前がふっと湧いてきたけど、どうもピンとこないわね」

「たまに一子ちゃんって毒電波を受信するよね。やっぱり強いとそうなるのかな?」

「なんか、こう、私と、とても相性が良さそうな狐っぽいのがいそうな気がするけど……破壊と殺戮を好むのが。召喚しようかしら」

「ダメだからね」

 

 これ、もしかしてツッコミ役、私しかいないの、とイリナはそこで気がついた。

 ロスヴァイセさん、どうしてついてきてくれなかった、と後悔するももう遅い。

 

「一子さん、千本鳥居へ行ってみましょうよ」

「ええ、いいわよ」

 

 アーシアが一子の手を引いていくのを見送り、イリナはゼノヴィアへと向き直る。

 

「ゼノヴィア、いつ?」

「今夜、かな。イリナには悪いが……」

「構わないよ。初めからそういう約束だし。時間はいっぱいあるからね」

 

 にっこりと微笑むイリナにゼノヴィアは優しく微笑み返した。

 

 

 

 

 

 

「うーん、こういう神秘的なところって好き。すごく好き」

 

 一子は千本鳥居にご満悦だった。

 アーシアやイリナ、ゼノヴィアも一子と似たようなものだった。

 イリナはともかくとして、イタリア人のアーシアとゼノヴィアにとってはキリスト教圏とは全く違った方向の神秘に、より一層の感銘を受けている。

 

 とはいえ、一子は正確に把握していた。

 何やら良からぬ輩がいることを。

 

 

「ところで気づいているかしら?」

 

 一子の問いにイリナとゼノヴィアはすぐに表情を戦士のそれへと変えた。

 

「遠巻きに見ているね」

「レヴィアタン様との外交交渉を失敗させたい過激派とかだろうか?」

 

 そのやり取りにアーシアはただ事ではないと気がついた。

 

「て、敵でしょうか?」

 

 小声で問いかけるアーシアに一子は肩を竦めてみせる。

 

「よく分からないわ。まあ、お手並拝見……いえ、どうせなら……」

 

 一子は何やら良からぬことを思いついたらしく、ニヤリと笑みを浮かべた。

 

 イリナ達はまたろくでもないことを思いついた、とすぐに分かった。

 アーシアすらも、分かる程だから相当だ。

 

 同時に3人の頭に一子の声が響く。

 彼女の魔法だ。

 

 ちょっとわざと捕まってみるから、いい感じに立ち回って欲しい、とのことだった。

 

 

 

 

 

 

 そして、4人が千本鳥居を超えた先で襲撃を受けた。

 

「きゃー助けてー」

 

 一子本人は迫真の演技のつもりであったが、事情を知っている3人から見れば大根役者もいいところ。

 半ば呆れながらもイリナとゼノヴィアはアーシアを守ることに手一杯で、一子にまで手が回らないという風に立ち回る。

 襲撃を仕掛けてきた側は情報がなかったのか、一子の演技を真に受けてしまう。

 

 一子へと攻撃が集中して、そして、襲撃者達は彼女を縄で捕縛し――その際、一子はとてもニヤニヤ笑っていた――一連れ去っていった。

 

「それで、えーと……この番号に……」

 

 イリナは手筈通りに一子から事前に渡されていたメモを見ながら、スマホを取り出して電話を掛けた。

 

『はいはーい? 魔王の携帯に掛けてくるなんて、いい度胸だね?』

「あ、レヴィアタン様ですか? 紫藤イリナです。一子ちゃんが京都の妖怪に拐われました」

『……は?』

 

 相手――セラフォルーは思わず間の抜けた声を返した。

 

「一子ちゃんから伝言です。うまくやれ、だそうです」

『あっ、そっかー! うんうん、一子ちゃんめ……もう、本当に大好き! 一子ちゃんは自分で出てくるって言っていた?』

「特には……ただ、縄で縛られながら、すっごくニヤニヤ笑っていたので、早くしないと大変なことに……」

『そっかー、それは大変だね。こっちも戦争をしにきたわけじゃないから、穏やかにやらないとね。ありがとー』

 

 電話が切れた。

 

「なぁ、イリナ。部長にも電話をしておいた方が良くないか? 放課後にはこっちに来るだろうし」

「あ、そうですね。きっとリアスお姉様、心配しそうです」

「そうだよね。じゃ、掛けるよ」

 

 イリナが電話を掛けると、リアスはすぐに出た。

 

『イリナ? どうかしたの?』

「一子ちゃんが襲撃を仕掛けてきた妖怪達にわざと拐われていきました」

『……ええと、それは大丈夫かしら? 京都が消し飛ばなければいいのだけど……』

「レヴィアタン様にも連絡したので、大丈夫だと思います」

『それなら大丈夫ね。万が一のときはセラフォルー様が抑えてくれる筈……で、イリナ? 首尾はどう?』

「上々です。とっても凄くて、気持ち良かったです」

『ふふ、まだ序の口よ。じゃ、ローテーションに組み込んでおくから。ただし、京都にいる間は3人でうまくやりなさいよ?』

「分かりました」

 

 電話が切れた。

 イリナはゼノヴィアを見て、にんまりと笑う。

 

「ゼノヴィア、すっごいからね。もうホント、凄いから」

「な、何だよ……そんなに凄いのか? 子作りって」

「うん、私が保証する。あれ、凄いから」

 

 唐突に始まる猥談にアーシアは頬を膨らませる。

 

「そんなことより、一子さんのことをちゃんとアザゼル先生やロスヴァイセさんにも今すぐ報告しておかないとダメです! もし、もし万が一、一子さんを倒せる妖怪とかがいたら……」

「いや、無理だと思うぞ」

「だって一子ちゃんだしねぇ……拐った人達も今頃、持て余しているんじゃないの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなったのじゃぁ……」

 

 九重は頭を抱えていた。

 母親を拐った輩と関係があるかもしれない、と魔の気配がする余所者達を襲撃し、うまく分断し、1人を捕まえ、裏京都に連れてきたまでは良かった。

 

 しかし、この連れてきた輩がマズかった。

 

 

 

 

 

 時間を少し遡る。

 九重は捕らえた輩を裏京都に連れてきて、牢に閉じ込めて鍵を掛けた。

 強大な妖怪をも封じる結界術式が付与されており、まず脱獄などできない。

 

「そこを出たくば、母上のことを話すのじゃ!」

 

 九重はそう言った。

 牢の外から。

 しかし、直後、牢の中から聞こえてきた声は――

 

「はいはいー、ちょっくらごめんなさいね」

 

 そんな声と共に牢の扉を素手でこじ開けながら、出てきたのだ。

 

「……え?」

 

 九重は勿論、護衛役の烏天狗や妖狐達も目が点になった。

 

「さて、ここがあなた達の本拠地というわけね?」

 

 その問いかけに我に返り、烏天狗達が、妖狐達が一斉に戦闘態勢に入る。

 

「おっと、いいのかしら? 一応言っておくけど、これはあなた達にとって重大な失点よ? これ以上、失点を重ねないほうがいいと思うけど」

「も、問答無用じゃ!」

 

 九重はそう告げ、それを合図に烏天狗達や妖狐達が攻撃に移ったのだが――彼らは1分と経たずに誰一人例外なく、地に倒れることとなった。

 

「お、お前は誰じゃ!」

 

 九重は叫んだ。

 

「私? 今代の赤龍帝でリアス・グレモリーの眷属の兵藤一子だけど。何なら、こっちに来ているセラフォルー・レヴィアタンに連絡を取ってみたら? 私のこと、よーく知っているから」

 

 そこまで内情を知っている上、名のある悪魔の眷属、しかも今代の赤龍帝――

 九重は血の気が引いて、顔が真っ青になった。

 

「あら? 大丈夫? 顔色が悪いわよ?」

 

 善意しかなさそうな、にこにこ笑顔で一子は九重に問いかけた。

 

 

 

 

「ほら、九重。もっともふらせなさい」

「うぅ……世知辛いのじゃー……」

 

 九重は現在、罰として一子にその尻尾を存分にもふられていた。

 そうすればうまく事を収めてくれる、と一子が約束してくれた為に。

 

 ここは九重の部屋である為、周りから見られていないのが幸いといえば幸いだ。

 とはいえ、妖怪側にとって事態はかなり深刻だ。

 

「まあ、安心しなさいよ。どうせ禍の団とかいう連中が何かやる為に拐ったんだろうから」

「そ、そうなのか?」

「そうよ。きっとそう。絶対そうだ、そうに違いない。だから私がさくっと解決してあげるから」

「ほ、本当か!?」

 

 一子の顔をまっすぐに見つめる九重。

 うんうん、と一子は頷きながら、その頭を撫でる。

 

「勿論よ。京都といえばなんかこう、霊的なパワーが凄そうなので、それを利用してとかじゃないの?」

「確かに京都はそういう都市設計じゃ。しかし、皆目検討がつかんな……」

 

 むむむ、と悩む九重。

 一子は愛らしい姿にお持ち帰りしたいくらいだった。

 

「九重、これ、うちの住所と私の電話番号とメールアドレス。良かったら、来て」

「うん? ひ、人質か!?」

「そんなことはしないし、する意味もないわよ。九重と仲良くなりたいので」

「そ、そうか……?」

「そうよ」

 

 そんなやり取りをしていると、妖狐が報告をしてきた。

 セラフォルー・レヴィアタンがやってきた、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

「此度は大変申し訳なかったのじゃ! 何卒、何卒、穏便に!」

 

 深く頭を下げる九重と他の妖怪達。

 

「うんうん、謝ることができるって凄いことだよ? でもね、それだけじゃ、警察はいらないよ?」

 

 セラフォルーはニコニコ笑顔で、そう優しく問いかける。

 

「誠意ある対応っていうのかなー、そういうの、見せて欲しいかなー? 何しろ、一方的に名乗ることすらできないまま、襲われて、拐われたんだからさー?」

 

 セラフォルーは笑みを崩さない。

 そして、彼女は一転して、昔の彼女に戻った。

 

 思いっきりに妖怪達を睨みつける。

 

「悪魔を舐めんじゃねぇぞ、妖怪共」

 

 ドスの効いた声でそう言われ、九重は泣きそうになった。

 

 しかし、そこで一子が待ったを掛ける。

 

「まぁまぁ、セラフォルー。綺麗な顔が台無しよ?」

 

 その言葉と共にセラフォルーは元の愛想の良い笑顔を浮かべる。

 

「だってー、一子ちゃんが攫われたって言うし。もう私、本当に心配したんだからね?」

「それはありがとう。でもね、元はといえば禍の団が悪いと思うの。十中八九、その連中でしょうし」

「えー? そうかなー? 本当にー?」

「たとえ違ったとしても、ここは悪魔の懐の深さを見せるべきではなくて? 一致団結して脅威に立ち向かった方がお互いに良いわよ。いわゆる未来志向で」

 

 うーん、とセラフォルーは悩ましげに視線を九重へと向ける。

 

「私達としては大事な一子ちゃんを傷物にされかけたってことで、戦争もやむを得ないかなって思っているけど、一子ちゃんがそう言うなら、そうしようかなって」

「こ、こちらとしても、願ってもない申し出じゃ! 本当に、本当に申し訳なかった!」

 

 再度、九重達は頭を思いっきり下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでセラ。心配したのは……何を?」

「んー? そりゃ一子ちゃんが面白がって妖怪さん達を消さないかな、京都ごと更地に変えたりしないかなって……」

 

 裏京都を出たセラフォルーと一子はまっすぐに戻ることはせず、少し寄り道をしていた。

 セラフォルーが泊まっているホテルの部屋に2人はいた。

 

 お互いにベッドで裸で抱き合った状態である為、何が行われたかは一目瞭然だ。

 

「ねぇねぇ、一子ちゃん。リアスちゃんや朱乃ちゃんとエグいプレイしているんだって?」

「……どこ経由よ?」

「2号の私から。2人ともあっさりと快楽堕ちしちゃったねー」

「いやいやいや、そんな人聞きが悪い。で、何なのよ?」

「一子ちゃん、私にもそういうこと、したいんでしょ?」

 

 じーっとセラフォルーの瞳に見つめられる一子は何とも言えず、無言でセラフォルーの頬を撫でる。

 

「で? どうなの?」

「そりゃまあ、したいわね」

「うんうん、正直だね。いいよ? 今からする?」

「何かあっさり過ぎてありがたみがない……」

 

 一子はそう言いつつも、既に心の中ではヤる気であった。

 

「とか言いながら、ヤる気の癖に。一子ちゃんのえっち」

「セラだって人のこと言えない癖に……」

「だって、私は一子ちゃんにずーっと尽くすってもう決めたし。それに素を出しても大丈夫だから、気楽でいいかなぁ」

 

 そこでセラフォルーは言葉を切り、一子の耳元に口を寄せる。

 

「私がレヴィアタンじゃなければカテレアを殺して、一子の女王になりたいくらいには好きだよ」

 

 その言葉を聞いた一子は笑みを浮かべて、セラフォルーを抱きしめる。

 

「セラ、大好き」

「私も、大好き。一子ちゃん、しよ? 知ってた? シトリーって性愛を生業としているんだよ?」

 

 以前にもどこかで聞いたことがあるような、と一子は思いつつも、とにもかくにも今はそれよりもセラフォルーを抱くことが先だった。

 一子が体勢を変えようとしたところで、セラフォルーが声を上げる。

 

「ヤる前に……もう一つ」

 

 セラフォルーは真面目な顔で問う。

 

「ね、一子ちゃん。シトリーは一子ちゃんに賭けてもいいかな?」

「どういう意味合いか分からないけれど、もし私が同じ立場なら、全財産を賭けるわね」

 

 セラフォルーはその答えに満足し、何度も頷いた。

 

 

 

 

 

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