「一子は私のこと、どのくらい好き?」
「宇宙全部の質量よりも好き」
「……また絶妙に分かりにくいわね」
リアスはそう言いながらも、一子の頭を撫でる。
「もっと分かりやすく言ってくれる?」
「んー」
リアスの言葉に一子は彼女の両頬を両手で包み込む。
まっすぐに彼女の瞳を見つめて、告げる。
「リアスの髪の毛から細胞の一つ一つまで、リアスという存在自体が好き。全部私のものにしたいというか、もう私のもの」
「もう、一子ったら」
なでなでと一子の頭を撫でるリアス。
彼女の胸に顔を埋めて、一子はとても満ち足りていた。
京都と駒王町への襲撃事件の後始末は終わり、いつも通りの日常が戻ってきていたように見えたが、そうでもなかった。
それは2つある。
1つは一子への修行をお願いする頻度が多くなったこと。
リアスをはじめ、もっと力を、と貪欲に求めるようになった。
先の駒王町襲撃事件により、力不足をより痛感したのだ。
もう1つは修行をつける対価として、リアス達と京都でイチャイチャしたい、という一子により、週末は1泊2日の小旅行と洒落込んでいた。
勿論、大人数で行くのではなく、2人きりの落ち着いたものだ。
今週はリアスの番であり、観光もそこそこに基本的にホテルでずーっと乳繰り合っていた。
そんな感じでリアスとの週末を過ごして、駒王町へと戻ってくると――グレイフィア達が困った顔をしていた。
9人全員が揃って困り顔というのも中々見られない光景だ。
さてどうしたのか、と一子とリアスが思うよりも早く、原因だろう存在に気がついた。
9人の前に土下座をして、息を荒くしている変態がいたのだ。
グレイフィアと同じく銀髪の青年だった。
「どういうことかしら?」
「私達の存在を嗅ぎつけてやってきた……実弟です」
恥ずかしそうに告げるグレイフィアの言葉に一子は察した。
彼女は頷いて青年の前に膝をつき、その肩に手を置いた。
そもそも秘匿されているグレイフィア達の情報を入手し、ここまでやってきた。
その事実だけで彼は生半可な輩ではなく、ついでに彼の嗜好を一子は評価したのだ。
故に、掛ける言葉はただ一言。
「……姉は好きか?」
彼はガバっと顔を上げた。
整った顔立ちであった。
「……はい……! 姉上を、愛しています……!」
「よろしい。ここまで辿り着いたことに敬意を称して……ただ条件がある」
「何なりと! 姉上の全てを頂けるのなら!」
「私は姉弟愛よりも姉妹愛の方が好きなので、女になって。生やせるようにしてあげるから」
「無論です! 姉上さえ手に入るのなら、構いません!」
「その後、姉と同じ職場で働くっていうのはどう?」
「是非とも! 何でもします!」
「よろしい。ならばあなたには弟が妹になってしまったけれど、むしろ、だからこそ可愛くてしょうがないグレイフィア、ただし忠誠心は変わらないよバージョンを授けよう」
彼は目を血走らせ、地面に頭を擦りつけた。
そこで事態をようやく理解できたリアスが口を挟んだ。
「……ちょっと一子、いいの? というか名前も聞いていないのに……」
「いいのよ。彼は尊い同志だから……!」
「変態という名の同志ね、分かりたくなかったわ……」
リアスはコメカミに手を当て、溜息を吐いた。
同時にこの状況を冥界にいるだろうオリジナルのグレイフィアへと伝えるべく、魔法でもって連絡を入れる。
リアスがそうしているうちに、あっという間に事が終わってしまった。
なんか青い光がピカッとしたと思ってそちらを見たら、そこにはグレイフィアに似ている女性がいた。
あの魔法を使ったのか、という戦慄をリアスは覚える。
エロの為なら絶対に妥協はしない、たとえウィッシュ・アポン・ア・スターを使ってでも。
それが一子であった。
「……これが、僕の姿……」
自らの体の違和感に戸惑いつつも、彼女は息を呑んだ。
「さぁ、グレイフィアの妹よ。刮目して見なさい。これが、私の魔法だ……!」
一子はグレイフィアをどどん、と5秒間隔で3人作り出した。
勿論、先程言った設定を反映した3人だ。
「ユーグリット、可愛らしくなりましたね」
「たっぷりとこれから永遠に可愛がってあげる」
「ふふ、楽しみだわ」
3人のグレイフィアはそう言って、彼女――ユーグリットを取り囲んだ。
「あ、あぁ……僕の姉上達……」
恍惚とした表情のユーグリットにグレイフィアがくすりと笑う。
「僕ではダメよ? 女の子の振る舞い方、たっぷりと教えてあげます。勿論、一子様への忠誠の仕方も」
「はい……姉上……」
リアスはそのやり取りを見て、近い将来における重大な原因を取り除いたような気がしたが、こんな変態がそんなことをできるわけがないので気のせいだと思うことにした。
「愚弟がご迷惑をお掛けました……申し訳ありませんが、このままでよろしいでしょうか?」
リアスが連絡を入れて30分後、オリジナルのグレイフィアが兵藤邸を訪れて、今の弟――妹の惨状を見て、そう告げた。
3人のグレイフィアに囲まれて、だらしない顔の美女がいた。
それがユーグリットだと説明されるも、グレイフィアは関わりたくなかった。
というか、リアスも関わりたくなかった。
あんな変態シスコンがグレイフィアの実弟だと思いたくなかった為に。
リアス以外でも兵藤邸に住んでいて裏側を知っている面々は誰も関わりたくなかった。
一子ならOKであったが、それ以外の変態はちょっと……というのが共通する思い。
とはいえ、当の一子は全く気にしていなかった。
「ほら、ユーグリット。あそこにオリジナルの姉がいるわよ?」
「一子様、私の目には薄汚い雌しか映っておりませんが」
ユーグリットはオリジナルのグレイフィアを見て、不思議そうに首を傾げてそう言った。
どうやら彼女の中ではオリジナルのグレイフィアは既にグレイフィアと見ていないようだった。
「ふふ、ユーグリット。あなた以外の輩に処女を捧げて、挙げ句の果てに子供まで産んだグレイフィアよ」
「私の姉上はここの姉上達だけです。下賤な雌豚を今晩の夕食にしましょうか?」
一子はユーグリットが可愛く思えたので、頭を撫でてあげる。
そんなやり取りを見て、リアスは告げる。
「グレイフィア、貸しよ、これ」
「ええ、構いません。本当に、本当にご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします」
グレイフィアは深々と頭を下げた。