やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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新たなる悪魔ビジネス

 

 

 

「中級悪魔への推薦状? え、中級でいいの?」

 

 サーゼクスが持ってきた推薦状に一子は思わず、そう問い返した。

 問い返された側としても苦笑するしかない。

 

「何なら、私は冥界全部と戦争しても良いけど。勝てるから。そうすりゃ魔王になれるわね」

「勘弁してくれ」

 

 両手を挙げるサーゼクスに一子は笑いながら、問いかける。

 

「で、学園祭が迫ってこっちが忙しい中、わざわざ魔王が私のところに来たの?」

「事情を説明しておかないと、冥界の中心が消し飛びそうに思えてしまって」

「私を何だと思っているの?」

「……最終兵器かな」

 

 遠い目になるサーゼクス。

 最終兵器でも生ぬるいが、さすがに造物主と発言するのは問題がありすぎる為に。

 

 ああ、そうだ、とサーゼクスは話を変える。

 

「実は最終兵器赤龍帝というアニメを作りたいと思うんだ。悪党達が蹂躙しているところに颯爽と現れて、悪党をワンパンでぶっ飛ばして絶望させていく感じの」

「なんか色々なところから文句が出そうなものだけど……まあ、法律的に色々クリアしてくれれば。あとちゃんと代金は寄越しなさいよ」

「勿論だ。それで本題に戻るが……まあ、形式的なものでね。特例で一気に、というわけにはいかないんだ。そもそも君みたいな規格外の存在が転生悪魔になることは、想定されていない」

 

 それもそうだ、と一子は頷く。

 そもそも規格外な存在はわざわざ悪魔の眷属になる必要などない。

 

「君なら楽勝だろう? 上級悪魔への道も用意しておく」

「約束された昇進の道って素敵なものよね」

「昇進ではない、昇格だよ」

「そういやそうだったわ。で、試験はいつ?」

「2学期の中間テストの頃だな」

「試験に試験を被せてくるとか、悪魔め……」

「当然だ。私は魔王だからな……日程が重なったのは偶然だ」

 

 サーゼクスの前半の言葉に一子は真顔でレーヴァテインを取り出したので、すぐさま彼は後半の言葉を付け加えた。

 それにより、一子は得物を再度無限倉庫へと放り込んだ。

 魔王が討伐される危険は去ったのだ。

 

「で、試験の形式は?」

「筆記と実技だが……後者は免除だよ。君の実力は先のエキシビジョンで冥界全土に証明されているからね。無論、上級悪魔への昇格試験時でも無しだ」

 

 そう告げるサーゼクスに一子は手をひらひらさせる。

 それを見ながら、彼は問いかける。

 

「それとグレイフィアが3人増えたと聞いているが……?」

「ユーグリットとかいうのが同志だったので、願いを叶えてやった。後悔はしていない」

「……惨状は聞いているよ。まあ、やってしまったことはしょうがない」

 

 暴走しそうなユーグリットを事前に抑え込んだと考えれば、大金星であるかもしれないが、ともあれ、話を聞いた限りでは変態が変態を助けたという風にしか聞こえなかった。

 

「領地を得るまで、大人しくしてくれると助かる。領地内では程々に好き勝手やっていいから」

「分かったわよ」

 

 サーゼクスの心からのお願いに一子は承諾したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「……いくら何でも詰め込み過ぎじゃない?」

 

 一子は冷静にオカルト研究部の面々に疑問を投げかけた。

 おばけ屋敷に占い館、メイド喫茶と人が少ない割にまた随分と大掛かりな、というのが彼女の感想だ。

 

「みんなの意見を取り入れた結果よ」

「私の意見、取り入れられていないのだけど」

 

 一子の言葉にリアスは視線を逸らした。

 

 一子の提案した意見は「2人は魔法少女! マジカル☆レヴィアたん! 悪い奴らは皆殺し☆」の演劇であったが、リアスと、話を聞きつけたソーナの反対で没となった。

 

 姉が2人に増えているという状況でソーナは勘弁して欲しかった。

 

「何で色々能力を使わないの?」

「こういうのは手作りをするからこそ、味があるのよ。一子も手を動かして」

「はーい」

 

 そんなわけで一子は与えられた仕事である看板作りに精を出すことになったのだが――彼女はユグドラシル時代に幾つもの職業を習得している。

 その中には錬金術師の最上位のものもあり、それを習得する為に取らざるを得なかった生産系の下位スキルなども持っている。

 

 結果どうなったかというと看板は、およそ素人が作ったとは思えないものになってしまった。

 至高の看板――という程ではないが、それでも町中にあっても不思議ではないという絶妙な出来栄えだ。

 

 リアスがジト目で出来上がった看板を持ってきた一子を見つめる。

 絶対何かを使っただろう、とその視線は問いかけていた。

 

「仕方ないでしょう!? 普通に作ったらこうなったのよ!」

 

 信じてもらえず、一子は悲しみに包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園祭が迫る中、一子は将来における悪魔としての稼ぎ――ではなく、もっと悪魔らしいやり方で人間を配下に収めようと企んでいた。

 そもそもからして、彼女が好きなように作り出せば良いだけの話であったが、そういう気分でもなかった。

 また、神器まではさすがに再現ができるか怪しい為、それなら最初から可能性のある人間を数打ちゃ当たる方式で味方に引き込んだ方が早いと考えたのだ。

 

 ともあれ一子が目をつけたのは子供だ。

 高校生までの子供。

 しかし、ただの子供達を手八丁口八丁でやるのもそれはそれで面倒だ。

 

 一子が求めるのは子供達を引き込んでも、それは第三者の目から見て、心情的に正しい行いであると判断されるようなやり方だ。

 赤龍帝が子供の誘拐を始めた、なんて評判が立っては堪らない。

 

 故に、彼女が目をつけたのは虐待やいじめを受けている子供達の存在だった。

 

 

 

 

 

 

「という感じでやっていきたいんだけど、どう?」

「……何というか、ぶっ飛んでいるわね」

 

 虐待やいじめを受けている子供達を助けて悪魔の味方になってもらおう、という題名で一子はリアスに説明した。

 返ってきた言葉に一子は口を尖らせる。

 

「私はどっちかというと人類の守護者を自称しているので、虐待とかいじめをするなんてけしからん! 死ね! 今すぐ死ね! って思うわけなのよ」

 

 一子の言葉にリアスは肩を竦める。

 

「誰が世話をするのよ? 下手をすれば人数、四桁はいくでしょうに」

「私の領地にそういう子達を集めた都市を作る。環境が人間に有害ならアレも使う。勿論、孤児とかも全部将来的には私が受け入れる」

「……冥界征服を本格的に考え始めたの?」

「冥界征服なんてグレイフィアとサーゼクスを100万人ずつ作ってぶつければ終わるから」

 

 リアスは溜息を吐いた。

 

「ともあれ、そんなわけで事前に報告はしたので」

「ダメって言っても、やるんでしょ?」

「当然よ。だってリアス、領地よ? 私、そういう街とかを発展させるゲームは大好きなのよ」

「ゲームとは違う、と言いたいけれど、一子のことだからまあ……何でもできるのよね」

「そういうこと。世界で一番発展して繁栄させる」

 

 満面の笑みの一子にリアスは笑ってしまう。

 

「一子がそうやって目を輝かせているのって初めて見たかもしれないわ」

「……そんなことはないと言いたいけれど、基本的に目を輝かせるのってエロと戦いしかないわね」

「良かった、真人間……じゃなかった、マトモな悪魔……いえ、これも変ね。ともあれ一般的な感情があって」

「すごい引っかかる言い方なんだけど?」

「あら、外れているかしら?」

 

 そう言われると一子としても当たっている為に反論できない。

 

「で、具体的には?」

「チラシを配るなんてことはしないわ。ネットを使うのでギャスパーを借りる」

 

 なるほど、とリアスは頷く。

 インターネットの発展に伴って、悪魔もそちらの方がチラシを配るよりも効率的ということで、力を入れている。

 ただ、何の対価も払えない子供をターゲットにしているというのはリアスとしても聞いたことがない。

 

「問題はネットに繋がることができない子のほうがより悲惨ということね」

「確かに」

「なので、やっぱりアレを使います」

 

 もうリアスは驚くこともない。

 

「アレを使うには指輪を使っているみたいだけど、そんなに持っているの?」

「異世界からこっちに来る直前にたくさん買ってきたので」

「……市場に流通していることが驚きだわ」

 

 さすがのリアスも驚きながら、一子みたいなのがいる世界だからそれも当然かもしれない、と考えてしまう。

 

「その為にチラシがたくさん必要なので。気づいたら、そういう子達の手元にチラシがあるという状況を作りたい」

「チラシの準備ね、任せて」

 

 リアスとしても、新しい事業になりそうだったので、それなりに乗り気であった。

 いじめはともかく、虐待に至るというのは、そういう状況になってしまう両親が置かれた環境などもあるのだが、リアスも一子もそんなことは気にしない。

 

 なぜなら、彼女達は悪魔なので人間の事情なんぞ知ったことではないのだ。

 ましてや、知られていない虐待、いじめは人間が解決することはまず無理がある。

 たとえ被害者が声を上げても黙殺されるケースもあり、結局そのまま被害者が死亡してしまうという事例には事欠かない。

 

 とはいえ、何よりも大前提として、欲しいものを手に入れるというのは悪魔にとって当たり前の価値観だった。

 

「ところでこういう場合って現地の神々とか裏側の存在に連絡とかは必要なの?」

「そちらは大丈夫だと思う。人間が選択したなら、人間の意思を尊重するという協定があるから」

「本当のところは?」

「正直、どうでもいいというのが本音。例えば一子みたいな規格外な力を持っていたら、現地の裏側の連中が引き止めたりするかもしれないけど、有象無象の人間を一々引き止めていたらキリがないし」

 

 なるほど、と一子が頷いたのを見て、リアスは釘を刺す。

 

「学園祭が終わってからにしなさいよ」

「勿論よ。だって、もう3日後だし……準備とか色々していたら、最低でも2週間は掛かりそうだもの」

 

 さすがの一子も3日で準備が終わるとは考えていなかった。

 

 

 

 

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