やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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劣悪な労働環境、春が来た、人外の桁数

 

 

 

「うぅ……リアス……」

「ソーナ、よしよし……」

 

 旧校舎のオカルト研究部の部室にて、リアスは一子が作った方のソーナを慰めていた。

 何で私が、と思いつつも、どう見ても本物の親友にしか見えないソーナを無視するわけにもいかず。

 

 

 結局、ソーナは実は双子だったと思い込むことでリアスはどうにか複雑な思いを飲み込んだ。

 

「ええっと、ソーナ? 以前にも聞いたけど、一子に作られたとはいえ、その、私の知っているソーナと同じなのよね?」

「ええ、リアス。ただ、ちょっと一子さんへの思いが強いというだけなので……」

「はぁ……それで? どうしたのよ、ソーナ。来るなり、急に泣きついて」

 

 やっぱり戸惑いがあるから、2人目の自分も作ってもらって、そっちにソーナの対応を任せようかしら、とちょっとリアスは思い始める。

 

「一子さんから仕事を任されているんですが」

「ええ、聞いているわ。行政組織を整える、準備委員会ですってね。大出世じゃないの」

「どれくらい広いか、知っていますか?」

 

 リアスは視線を逸らした。

 情事の後に一子から聞いている為に。

 

「元々の規模からしておかしいんですよ。ユーラシア大陸並ですよ!? いやまあ、一子さんの力を鑑みれば、それくらいは当然かもしれませんが!」

「そ、それで?」

「つい先日、ウチの姉……2人目の方が魔王様達と協議した結果、更に倍ですよ!? ユーラシア大陸が!」

「ユーラシア大陸が2倍……とんでもないわね」

「しかも、ほとんどが未開拓で無人! 人跡未踏の地なんですよ!?」

「や、やり甲斐があるじゃないの……」

「やり甲斐なんて通り越して真っ黒ですよ! 私は学校にも通わず、家のこともやらないので、24時間ずーっと、それで働きっぱなしなんですよ!」

「そ、そうなの……」

 

 作られた存在とはいえ、ソーナが奴隷よりも酷い待遇で働かされていることを目の当たりにし、リアスは思わず涙する。

 

「曹操達は……?」

「彼らは人間なので16時間労働です」

「……ええっと、こういう場合、労働基準法は適用されるのかしら……」

「労働後、彼らは死んだように眠っています」

 

 リアスは思わず、悲しみを覚えた。

 しかし、彼女は一子のやらかしを忘れていなかった。

 

「そう、そうよ、グレイフィア達! あとユーグリット!」

 

 子供達の保護の後からずーっと冥界で、一子の領地となるところで働いている筈だ。

 

「嬉々として24時間労働をしています。ユーグリットさんもグレイフィアさん達と一緒ということで不満も無く」

 

 返ってきたソーナの言葉にリアスは冷や汗が出てきた。

 

「……他にもいっぱい、作っていなかったかしら?」

「はい。一子さんの気まぐれで毎日数十人から数百人くらいの、それこそどこでも頭角を表すだろう、非常に優秀な方々が送られてきます。例外なく女性であるのが気になりますが……」

「女性であることはさておいて……足りないの?」

「もう全く、全然足りないです。砂漠に水を撒いているように」

「一子にもっと作るように言っておくわ。毎日1000人単位なら、どうかしら?」

「よろしくお願いします」

「……あなたの眷属も、作ってもらう?」

「……お願いします。私も、椿姫達がいないと寂しいので」

 

 一子が奴隷未満の待遇で働かせていると知った今、それは早急に改善せねばならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 リアスがソーナのお悩み相談を受けていた頃、一子は松田と元浜の2人に涙を流しながら、感謝されていた。

 

「おぉ……兵藤……」

「遂に、遂に……俺達にも春が来た……」

 

 大げさなくらいであったが、一子はそんな2人を邪険にせず、うんうんと頷く。

 

「彼女ができたの?」

 

 一子の問いかけに2人は勢い良く頷いた。

 

「お前がくれたあの薬のおかげで、俺達は……」

「女とは、どういうものか知ることができた!」

「溢れ出ていたこの欲を全部発散させることができた!」

 

 ありがとう、と声を合わせて感謝する2人。

 一子は満足げに頷く。

 

 学園祭の後くらいから、2人は覗きや盗撮を全くしなくなった。

 ひとえにそれは一子が渡した薬によるもの。

 

 ユグドラシルにおけるアイテム、淫魔の秘薬というもので、夢の中――というよりか仮想現実世界で色んな淫魔とイチャイチャできるというものであり、2人は盛大に性欲を発散し――また同時に実際に色々と体験したことで、男としてのレベルを一気に上げたのだ。

 

 

「ヤるのって、結構しんどいよな」

「ああ……」

「分かる」

 

 松田の声に元浜と一子が同意する。

 それはまさに、数多の女を抱いたからこそ、重みのある発言だった。

 

「やはり雰囲気重視」

「うむ」

「同意する」

 

 一子の言葉に同意する2人。

 そのまま、一子は問いかける。

 

「で、どんな子なのよ?」

「ウチの学園だと悪事が知れ渡っているので、他校の子をな」

「同じく。ちょうど学園祭の時期だったのが良かった」

「大事にしなさいよ。ゴールインして、その後までしっかりと面倒を見てやりなさい。男の甲斐性よ」

 

 おう、と頷く2人に一子は満足げに頷いた。

 

 

 

 

 2人と別れた後、一子はギャスパーに呼び止められていた。

 恐怖の大魔王みたいな一子へ彼から声を掛けてくることは滅多にないことだ。

 虐待に遭う子供の保護は一段落つき、不登校やいじめに遭っている子供達の為に、ネット上にそういう子達だけが辿り着ける専用サイトを立ち上げようという仕事のときであっても、ギャスパーは一子を怖がってダンボール越しであったくらいだ。

 

 だからこそ、彼から声を掛けるというのは、彼にとっては魔王に挑むくらいの勇気が必要であった。

 自分を呼び止める、これは何事だと一子は身構える。

 

「あ、あの! 先輩!」

「うん」

「ぼ、僕、故郷に幼馴染がいるので!」

「うんうん」

「だから、先輩のことはゴメンナサイ!」

「……いや意味が分からないんだけど」

 

 さすがの一子も何がどうしてそうなったのか、理解が追いつかなかった。

 

「え、だ、だって先輩、僕みたいな男だったら……食べるんでしょう!?」

「誰がそう言ったの?」

「小猫ちゃんが!」

「……あの子は仕方がないわね」

 

 猫の妖怪であるが故か、意外とおちゃめだった。

 ともあれ、目の前のギャスパーである。

 一子は少し考えて、驚かすことに決めた。

 

「そうね……ギャスパーだったらいける」

「ひぃ! 食べないでください!」

「がおー! 食べちゃうぞー!」

 

 ぎゃー、と叫びながらギャスパーは素晴らしい速さで逃げていった。

 

「色んな意味で吸血鬼の概念が壊れるような存在ね……」

 

 一子はそんな感想を呟きつつ、部室に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一子、ソーナから聞いたわ。奴隷以下の、まるで家畜みたいな働かせ方をしているようね?」

 

 部室ではリアスが仁王立ちして、待っていた。

 はて、と一子は首を傾げる。

 そして、思い当たったのか、手を叩いた。

 

「グレイフィアとかが24時間働くことに喜びを感じているみたいだったから……他の子とかも」

「すぐに何とかしなさい。人手不足なら1000人単位で作りなさい」

「えー、面倒くさい……」

「面倒くさいじゃないの、やるの。あなたにしかできないし、そもそもあなたが欲張って領地をユーラシア大陸の2倍とかやるからでしょう」

 

 リアスの言葉に一子としては微妙な顔になる。

 

「アレ、冗談で言ったのよね。ユーラシア大陸くらいの広さが欲しい、どうせ余っているんでしょうって感じで、セラに。そうしたら、何かセラが交渉してこうね……」

 

 一子はそこで言葉を切り、今度は渋い顔となって告げる。

 

「もうちょっと土地が欲しいってのも、ほら、貰えるものは貰っておきたいって感じで、2倍欲しいとは思っていなかった」

「冥界は広い上に悪魔や堕天使の数も少ないんだから、あるに決まっているでしょう」

「冥界ってどんだけ広いのよ……」

 

 リアスは溜息を吐いた。

 そして、どこからともなくメガネを取り出して、それを掛けた。

 リアス先生と一子は呼びたくなったが、茶化すのはさすがにやめる。

 

「冥界については以前から朱乃と一緒に教えたわよね?」

「ええ。歴史から地理から色々と。総人口とか総面積とかそういう話はなかったけれど……そういえば何で?」

「単位がおかしいからよ。人間の基準だと。あなたを純粋に人間として考えていいか分からないけれど」

「つまり?」

「面積は悪魔側だけで地球よりも遥かに大きいわよ」

 

 一子は両手を前へと突き出して、ストップと言いたげに首を左右に振った。

 しかし、リアスが待つことはない。

 なぜなら、一子のこんなところを見ることなど、滅多にできないからだ。

 

「人口は1000年前の統計だと推定827億人、最新だと推定322億人なのよ」

「普通に人間の人口より多いんだけども!」

「前にも言ったじゃない。悪魔にとっての人間は野生動物のようなものだって。堕天使とか天使も悪魔と同じくらいよ。まあ、他の神話勢力はもうちょっと少ないらしいけど、それでも人類と同じくらいの総数は最低でもいるわ」

「何で人間に媚びを売るの? 人間なんて放置しておけばいいじゃないの」

「太古の昔から時間を掛けて827億人まで増えたの。それがたった1000年で500億人も消えたのよ。他の陣営も同じ。元に戻るまで、どのくらい掛かるのよ?」

 

 一子は実感した。

 彼女自身も結構に人間の常識とか色々と飛び越えているが、生まれた時から人外の連中は文字通り桁が違う、と。

 

「だから、一子は悪魔にとって希望の存在なのよ。個人としては色々と思うところはあるけれど、悪魔として考えると、一子がどんどん孕ませていけば、その分、人口回復は早まるし」

「……まあ、道理ね」

 

 一子としてはどう転んでも、薔薇色の爛れた未来であるらしかった。

 

「で、一子。早く人材を作りなさい。良い労働環境を提供するのも主の役目でしょう?」

 

 リアスに言われ、一子は頷くしかなかった。

 

 

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