各地から届けられる人手不足の催促、更にはレイヴェルまでもが涙目になって上目遣いで催促してきたことに一子は最後の手段を使うことにした。
ウィッシュ・アポン・ア・スターで一気に億単位で作っても良かったのだが、残念ながら、その全員が一子の望む通りの輩になるかは分からない。
だからこそ、ウィッシュ・アポン・ア・スターで1回あたりに作成できる人数を青天井とした。
幸いにも種族や容姿・性格その他はランダムという形でお任せできたので、一子は気合を入れて自分で作るというとき以外は基本そうしていた。
また、フレーバーテキストも一文ごとに流用できるので、基本はランダムとして、最後に揺らぐことのない絶対の忠誠と有能あるいは優秀、天才といった単語のどれかを入れた文と上級悪魔に匹敵する実力という文を挿入して良しとする。
もっとも重要なのはフレーバーテキストの最後の2つのみであったので、一子はそこだけをチェックすれば良かった。
年内には絶対に終わらせるという断固たる決意を持って。
冬休みまでまだ期間はあったが、一子はリアス経由で公休扱いにしてもらった。
そして、彼女は自分の領地で人材の大量生産を開始する。
「うおおおお」
雄叫びをあげながら、一子は作成する。
別に雄叫びをあげようが何をしようが、意味などない。
同時に100個程の魔法陣が描かれ、5秒くらいで見目麗しい乙女達が現れた。
「はーい、1番の列はこちらでーす」
「2番はこっちだー」
「3番はこちらですー」
イリナやゼノヴィア、アーシアまでも遂に動員し、彼女らを含めた100人が看板を持ち、新たに作られた面々を誘導する。
5秒に100人、増えていた。
1時間30分で10万8000人とかいう馬鹿げた人数であった。
これだけなら1日で達成できるかと思いきや、残念ながら、事前に出された試算では面積的に人員は最低でも10億は必要という悲しい事実があった。
住民ではなく、各種機関運営と開拓の為に必要な最低限の人員だ。
手付かずの大自然を開拓し、そこを領地とするのは非常に手間と労力が掛かるということを如実に表していた。
それがユーラシア大陸2個分ともなれば言うまでもない。
とはいえ、一子が作った者達は給料を貰うなどもってのほか、無条件で一子に対して絶対の忠誠を尽くし、24時間休みなく働くことに幸せを感じる為に作ってしまえば丸投げでOKというのが救いでもあった。
だが、100人単位では24時間、一子が作り続けたとしても2年近く掛かる計算だった。
100人単位では埒が明かない、と一子は3日目にして気がついた。
だから、4日目には1000人に増やした。
5秒に1000人だ。
1000人分のフレーバーテキストの必要箇所だけをチェックするという作業は苦行そのものであったが、一子は頑張った。
1時間30分で108万人という大台であったが、領地の広さに吸い込まれて消えていく。
15時間作り続けてようやく1080万人という事実に一子は発狂しそうになった。
それだけの人数を作っても、領地の広さに追いつかなかった。
ここでその日はリアスによるストップがかかり、一子はリアスの胸に包まれて存分に癒やされた。
そんなときだった。
一子すらも忘れていたアザゼルが言っていた、堕天使を派遣するという約束が実行され、1人の堕天使がやってきたのだ。
「はじめまして。アザゼル総督から派遣されてきました、カスピエルと申します」
「あー……うー……」
「……話には聞いていましたが、欲張った者の末路ですね」
ぐったりと精神的な意味で死にかけ状態で、うめき声を上げる一子にカスピエルは微妙な表情となった。
しかもそれがリアスの胸に埋まった状態なのだから、尚更しまらない。
「ほら、一子。あなたの好きそうな女性よ」
「疲れた無理しんどい」
カスピエルの容姿は美女という言葉がぴったりな程のものであった。
リアスに勝るとも劣らない大きな胸と長く伸ばした金色の髪。
すらりと伸びた手足に白い肌。
しかし、その表情や雰囲気は誠実や、清純といった印象を見るものに与える。
いつもの一子なら服を脱ぎながら生まれる前から愛してましたとか言って飛び込んでもおかしくはない。
「これは重傷ね……」
「赤龍帝は何をしていたのですか?」
「アザゼル総督から現状は聞いていないの?」
「領地のアレコレに四苦八苦している、としか……ユーラシア大陸2個分なんて領地ですから、それも当然でしょう」
ビシッと言われたが一子はぐぅの音も出ない。
正論だったからだ。
どうやら現状を知らないらしい、とリアスは判断して告げる。
「15時間ずっと休み無く、領地の為に人材を大量生産していたのよ。今日は1080万人ね」
「……はい?」
カスピエルは目を丸くした。
一子は仕方がなく、見せることにした。
グレイフィアをその場で作成してみせる。
あちこちにその実力と容姿、名前が知れ渡っている彼女はとても便利な存在だった。
そして、5秒で現れたグレイフィアにカスピエルは驚きを隠せない。
「グレイフィアー、証拠を見せてあげてー」
「はい、一子様」
いつも通りにグレイフィアが結界を展開し、カスピエルにその魔力を披露してみせる。
「……魔王級の悪魔をこんなに簡単に作り出せるなんて」
「はいはいテンプレテンプレ」
驚き方もこれまでと同じようなものだったので、一子の対応もぞんざいだ。
よっこいしょ、と一子はリアスの胸から顔を上げた。
「領内警備にグレイフィアは増員したから……たぶん1000人くらいいる」
「グレイフィア・ルキフグスが1000人……」
「彼女の戦闘力をベースに、容姿とか性格とかその他が変わっているのがたぶん1万くらい」
「魔王級の悪魔が1万……」
「私は5秒に1000人くらい、作り出せるので」
カスピエルはその言葉に思わず、体がよろけてしまう。
衝撃的過ぎたのだ。
さて、アザゼルからは赤龍帝と良い関係になってこい、と言われて送り出されたカスピエル。
彼氏いない歴=年齢の彼女を思っての配慮であったが、カスピエルとしては実のところ、渡りに船であった。
いわゆる、彼女の好み的な問題で。
「領地のこととかその他色々はさておいて、本当に聞いていた通りに美しいわね」
衝撃から立ち直ったカスピエルは獲物を見つけたと言わんばかりに舌なめずり。
リアスはこの後の展開が予想がついた。
もうその言葉だけで、カスピエルが選ばれた理由が分かってしまった。
堕天使にはマトモな連中がいないのだろうか、いないのだろうな、と彼女は悪魔陣営のことは棚に上げて思った。
棚に上げるのは悪魔の大得意なのだ。
能力はともかく、性格が奔放という点で堕天使のトップも魔王達も似たようなものであるのは言うまでもない。
「あなた、女好き?」
「ええ。それにあなたは生やせるんでしょう? まさに私の理想だわ……」
カスピエルが堕天した理由は彼女の言葉に凝縮されていた。
「今、私は眷属を探していて。どう?」
「なるわ。仕事を教えて頂戴」
それを見て、リアスは溜息混じりに告げる。
「良かったわね、一子。眷属が増えたじゃないの」
「眷属が1人、2人、3人……9人たりなーい」
「皿屋敷っぽくしてもダメだから」
日本通なリアスだからこそ、一子のネタが分かったが、特に日本通ではないカスピエルは何のことか分からず、首を傾げるばかりであった。
そんなカスピエルを見ながら、一子は思う。
疲れたので今夜はカスピエルを食べよう、と。
「一子……私が分からないとでも思っているの?」
そのとき、リアスが問いかけた。
一子はビクリと体を震わせる。
「どうして?」
「一子の考えなんてお見通しよ。特にこういうときは。まあ、いいけど、この前の約束はちゃんと守りなさいよ?」
リアスの言う約束とは一子の処女をあげるという約束だ。
勿論だ、と一子は頷いた。
「それなら良し。皆には私から伝えておくから、よく味わってきなさい」
「はーい」
その会話の意味を悟ったカスピエルは内心で喝采を叫んだのだった。