やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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超特大のやらかし あるいは悪魔陣営の一人勝ち

 

 

「まー、何というか、悪の秘密研究所ってところかしら」

「そんなに褒めないでくれ。おじさん、照れちゃう」

 

 無数の生体容器やら何やらが立ち並ぶ通路をリゼヴィムの案内で一子は進む。

 

「コキュートスにこんなの作るなんて、大変だったんじゃない? 資材を運んだりとか色々と」

「あ、分かってくれる? そりゃもう大変だったよ。ハーデス達の目を掻い潜りながら、1人で黙々と作ったよ。誰かの手を借りるわけにもいかなかったし。何しろ、ママがいるからね」

「もしかしなくてもここってあなた以外では私が初めての来訪者?」

「そうなるね」

「芳名録に名前とか書いたほうが良い?」

「一子ちゃん、地味に生真面目だね」

 

 そんなどうでもいい会話をしながら、10を軽く超える程の扉を通り、ようやくに最深部に辿り着いた。

 広大なフロアの大半を埋め尽くすかのような巨大な培養槽があり、そこに醜悪な肉塊が浮かんでいた。

 一子としては、こういうのは前世のリアルで見慣れていたので驚きも何もない。

 ただ維持費にカネが掛かって大変そうとくらいにしか思えなかった。

 

「リゼヴィム、ルシファーがこうしたの? あなたってパパは嫌い?」

「基本的には好きだったけど、ママをこうしたから嫌い」

 

 一子の問いに答えるリゼヴィム。

 なるほど、と一子は頷きつつ、更に問いかける。

 

 

「あなた、バブみって言葉はご存知?」

「知らないけど、何だか意味が分かる」

「バブみを感じてオギャりたい」

「知らないけど、何を言いたいか何となく分かる」

「人間の文化は侮れないわよ。今度、教えてあげる」

 

 さて、と一子は肉塊を改めて見る。

 リゼヴィムの顔は決して醜いものではない。

 父と母、どっち譲りかは分からないが、ともあれ母親――リリスは決して醜い顔というわけではないだろう。

 

 残念なことに、一子はこういうのもいけるクチであった。

 美しい女性であったのに、このように成り果ててしまう。

 その過程を考えるとゾクゾクとした。

 

 リゼヴィムはそれを察したのか、問いかける。

 

「一子ちゃん、ママに欲情した?」

「うん。再婚してくれないかな?」

「俺としてはいいけど、ママの気持ち次第。ただそうだな、敢えて言うなら……一子ちゃんが俺のもう1人のママになってくれるかもしれないと考えると、胸が高鳴る……」

「中年のおっさんにママ呼ばわりはちょっと……せめて性転換して」

「ひどい。一子ちゃんひどい。義理の息子にそんなことを言うなんて」

 

 2人以外に誰もいないのは幸いだ。

 なぜなら、もしいたら、この会話に頭を痛めることになるからだ。

 

「さて、リゼヴィムの願いを叶えてあげるとしましょう」

 

 一子はいつもの通りに流れ星の指輪を取り出して、指にはめた。

 そして、蒼い巨大な魔法陣が展開される。

 

「リリスを一切の後遺症、不具合などなく完全に元の姿、人格に戻しなさい。ウィッシュ・アポン・ア・スター」

 

 蒼い光がフロア全体に迸った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、サーゼクス、やっほー」

「リゼヴィム!」

 

 魔王領に現れたリゼヴィムは瞬時にオリジナルのグレイフィアにより拘束され、サーゼクスの前へと連れてこられた。

 そして、サーゼクスの前へとやってきたリゼヴィムは呑気に手を振って、挨拶をしたのだ。

 

 昔っからこんなノリであるのは、この場にいる魔王達――珍しくファルビウムもいる――にとってはよく知っていた。

 

「一子さんに何をした? というか、何もされていないか?」

「あ、やっぱり一子ちゃんの心配より俺の心配をしてくれるのね。何にもされていないけど、俺は永遠に一子ちゃんに尽くすことに決めた。あと、一子ちゃんは俺のもう1人のママになってくれた」

「すまん、誰か翻訳してくれ」

 

 サーゼクスは投げた。

 ファルビウムは面倒くさいと言わんばかりにその巨躯にも関わらず、素早く顔を逸らし、

アジュカは手元へ視線を向け、セラフォルーは頬を思いっきり膨らませていた。

 

「リゼヴィム! 私の一子ちゃんに何をしたの!」

「ママを治してくれたんだ。で、俺のママってリリスだろ?」

「……知っているけれど……あっ」

 

 セラフォルーは察してしまった。

 他の面々も、同じく気づいてしまった。

 

 語られる通りに、リリスは悪魔となった後、自由な性交に耽った。

 ルシファーの術式と儀式により、初代と呼ばれる上級悪魔達を産んだのだが、それだけではない。

 嘘か真か、ルシファーが直接交わってくれないときにリリスはルシファーの目を盗んでは自分が産み落とした悪魔達と交わったり、その他、冥界にいる色んなモノと多く交わったと伝えられている。

 勿論、これらも伝えられているとは言っても、流石に一般的に大っぴらにできるはずもなく、機密扱いだ。

 

 悪魔の勢力拡大を目指すルシファーと何よりも女であることを求めたリリスという対比にもなっているのでは、という説も研究者達の間にはある。

 

「……リゼヴィム、お前……」

 

 サーゼクスはお前もまさか、という疑いの視線を向ける。

 勿論、彼だけではなく他の3人もそういう視線を向けた。

 

「おっと、俺を不純な目で見るな。俺はあくまで一般的な息子としてママのことが大好きだ」

「本当に?」

「本当、本当。こればかりは本当だ」

 

 そう言ったところで、リゼヴィムは話を元に戻す。

 

「ぶっちゃけると、ママが一子ちゃんに一目惚れした。一子ちゃん、生やせるっていうから、その場で見せたら、ママが……ママが襲いかかった」

 

 欲求不満だったんだな、とサーゼクス達は納得してしまった。

 とはいえ、納得している場合ではない。

 サーゼクスはリゼヴィムを睨み、強い口調で告げる。

 

「リゼヴィム、分かっていると思うが……現在の体制を転覆などは絶対にさせない。私が全力で止めてみせる」

 

 その言葉にリゼヴィムは両手を挙げた。

 

「おいおい、待ってくれ。何でそうなっているんだ? 俺、本当に一子ちゃんに尽くすつもりだけど。あ、できれば一子ちゃん、魔王にしてくんない? そうしたら過激な連中、全部こっちで引き受けるからさ」

「……お前が出てきたのは不満を抱いて、現政府の転覆とかでは……?」

「いやいや、俺、単に一子ちゃんを見に行ったら、気に入っちゃって。そしてこうなってるの。まあ、確かに不満とかはあるけど、一子ちゃんと話をしたら、どうでも良くなった。あと一子ちゃん、面白いし、俺より怖いし……」

 

 何をやったんだ、とサーゼクス達は全員が疑問に思う中、リゼヴィムは真剣な顔で告げる。

 

「なぁ、サーゼクス、アジュカ、ファルビウム……お前ら、玉をクルミのように潰して、ショックで死んでも何度でも蘇らせて、何度でも割るって言われて裏切れると思うか?」

 

 サーゼクス達3人は体を震わせた。

 何という恐ろしいことを――しかも、1回ではなく、何度でもというのがヤバイ。

 

 この世で唯一人、一子にしかできない拷問だった。

 

「うーん、一子ちゃんらしいね。私も昔、玉を割ったことはあるけど、1回で終わっちゃったし。泡を吹いて白目を剥いて、ショック死しちゃった」

 

 やったことがあるのか、と恐れ、セラフォルーからサーゼクス達3人とリゼヴィムは距離を取った。

 その反応にセラフォルーは不満そうに頬を膨らませる。

 

「ともあれ、サーゼクス。俺は本当に何かをするという考えはない。異世界侵略とか現政府の転覆とか、ちょっと前までは考えていたが、今は一子ちゃんに尽くすくらいで……あと魔王に……」

 

 そこで、ふとリゼヴィムの脳裏に良いセリフが思い浮かんだ。

 まさしく、中二病を拗らせた彼にとってそのセリフは至高のものに思えた。

 

 彼は態度を改め、父親のように魔王っぽい感じに変えた。

 サーゼクス達からすれば、まさに別人かと思う程の雰囲気の変化に身構える。

 

 リゼヴィムは凛々しい表情でもって、告げる。

 

「俺は……あいつを魔王にする……!」

「どこかで聞いたことがあるぞ……それ」

 

 アジュカが冷静にツッコミを入れた。

 リゼヴィムは渋い顔となった。

 

「俺の渾身のセリフが……!」

「はいはい。リゼヴィムおじいちゃんは一子ちゃんの何になるの?」

「眷属ってことでいいや。無理なら、顧問とか何でもいい。ともあれ、俺、一子ちゃんに味方するから。あとおじいちゃんじゃない。せめておじさんと呼んでくれ」

「おじいちゃんで十分だよ」

 

 セラフォルーの言葉にリゼヴィムはがっくりと項垂れた。

 

「とにかく、リゼヴィム……一子さんのところへ案内してくれ」

「はいはい、リゼヴィム秘密研究所にご案内。ただし、濡れ場しかねぇから、覚悟しろ。なんちゃってー」

 

 リゼヴィムは笑いながら、サーゼクスにそう告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

「一子ったら、凄い」

「リリスも凄いじゃないの」

 

 一方その頃、研究所ではリリスと一子がお互いに全裸で抱き合っていた。

 リリスは肉感的な美女であり、その長い銀色の髪は手触りが良く、どれだけ触っても飽きることはないと一子は断言できた。

 当然、その肉体も極上であった。

 故に一戦どころか十戦くらいは交えていたが、互いに衰えることはない。

 

 ママ、一子ちゃん、せめてベッドの上でやってくれ、とリゼヴィムがげんなりとした顔で2人を研究所内の部屋に転移させたのだが、2人はそんなことは気にしなかった。

 

「リリスって肉塊に成り果てるのって感覚で分かった?」

「分かったわ。痛かったりしたけど、最終的には気持ち良くなって……」

「私はリリスがそうなる過程を想像したら、興奮してしまって……」

 

 まさしく出会うべくして出会ったのかもしれない。

 古き変態と新しき変態の邂逅。

 早い話、相性が非常に良かった。

 

 だが、そんな爛れた時間ももう終わりだ。

 扉が一気に開け放たれた。

 そこにはセラフォルーがにこやかな笑みを浮かべて、立っていた。

 そして、彼女は呼びかける。

 

「かーずこちゃーん。あなたのセラフォルーだよー?」

 

 だが、一子は狼狽えない。

 彼女はリリスをさっと抱き寄せ、告げる。

 

「見て、セラ。私、あなたの遠い遠い先祖のお母さんを寝取ってしまったわ」

「寝取られちゃった……ごめんね、ママは一子ちゃんの女になります」

「嘘、そんな……ママ、どうして……」

 

 ノッてくれたセラフォルーに一子とリリスは満足げに頷く。

 セラフォルーもうんうんと満足げに頷いて、告げる。

 

「で、一子ちゃん。またすごいやらかしだよね。これ、もしかしなくても普通に色んなのを蘇らせられるよね?」

 

 先の大戦で死んだ連中を皆、蘇らせることができるのだろう、とセラフォルーの言葉には込められていた。

 そんなことになれば三大陣営は大混乱、それから波及して各神話勢力にも影響が及ぶ可能性は高い。

 ただでさえ、一子が簡単に死者蘇生できるということは表にバレると大問題になるが、同時に悪魔陣営にとって最高にして最強の切り札でもある。

 当然、カテレアを蘇生したあの場にいた面々は全員が知っている。

 堕天使も天使も、必要になった場合はその恩恵を与りたいと思っているが為に三大陣営でひた隠しにするという至極当然な結論に落ち着いている。

 

 ともあれ、今更、色々なものが蘇っても、困るのだ。

 歴史の中でじっとしていて欲しい、というのがどこの陣営においても共通する本音であった。

 

 

 

「そうなるわね」

 

 あっさりと一子は肯定した。

 だからこそ、セラフォルーは告げる。

 

「ちゃんと責任、取って?」

「ええ。当然よ。リリスは私が保護するから。リゼヴィムもついでに面倒を見る。現在の秩序を壊すようなことはしない」

「それなら良し。ねー、サーゼクスちゃん?」

 

 セラフォルーはそう声を掛けながら、どこからともなく毛布を取り出して一子とリリスに掛けた。

 その優しさに一子はほっこりした。

 そして、セラフォルーの呼びかけにサーゼクスが姿を見せ、魔王として判断を下す。

 

「それなら問題はあるが、まあ、何とかなるだろう。ただし、何かあったら、すぐにリゼヴィムは始末させてもらう」

「それは仕方がないわね。そうなったら、私が問答無用で消去するから」

 

 一子の言葉は力強かった。

 サーゼクスの横で隠れて聞いていたリゼヴィムは逃げたとしても、無駄なんだろうなと諦観した。

 たとえ異世界に逃げようとも、普通に追ってきて拷問される未来しか彼には見えなかった。

 

「とはいえ、一子さんのやってくれたことは悪魔陣営にとっては最大の僥倖でもある……早い話が……たくさん子供を作って欲しい。勿論、リアス達とも」

「一子ちゃん、私も頑張っていっぱい産むからね」

 

 産めよ増やせよ、とつまりはそういうことだった。

 母体がリリスとなれば、一子との間に産まれる子供はどれほどの能力を秘めているか、もはや想像もつかない。

 

「ママ達が安心して子作りできるよう、俺、頑張るから……」

 

 リゼヴィムが爽やかな笑みを浮かべて、そう宣言したのだった。

 

 

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