やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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それぞれの動き

 

 

「……レイナーレ、あなたは随分と変わったわね。色々な意味で」

 

 カスピエルは目の前で固まっているレイナーレに、そう声を掛けた。

 なぜ、レイナーレが固まっているかというと、色んな衣装を持っていた為に。

 

 まだ普通のものなら、言い訳がついた。

 しかし、それらは天野夕麻として活動したときの制服であったり、または一子と同じ駒王学園の制服であったりで、言い訳がきかなかった。

 さらに言えばカスピエルは堕天使陣営の中でも比較的上位にあたる。

 少なくとも、下から数えた方が早かったレイナーレからみれば雲の上の存在に等しい。

 

「か、カスピエル様、これはその……」

「いいわよ、別に。私もそっち目的だし。それ、一子様とエッチするためでしょ?」

「……はい。その、やっぱりカスピエル様って……」

「ええ。一子様みたいな綺麗な女の子が大好き、ましてやその子に犯されるなんて……最高じゃない?」

 

 レイナーレは噂は本当だったんだ、と驚く。

 堕天使を抜ける前から、そういう噂があった。

 

 カスピエルは美少女好きの変態というものだ。

 しかし、見た者に与える印象は誠実とか清楚というものであり、またその実務能力も高く、美人秘書という渾名が陰でついていた。

 その為に噂はカスピエルに嫉妬した者達が故意に流したものではないか、という思いを抱く者達も大勢いたのだ。

 

「もう抱かれたりとか……?」

「こっちに来たその日に。凄いわね、あの子。さすがは赤龍帝」

 

 やっぱり、とレイナーレは溜息を吐く。

 領地を得たあたりから、一子から回された仕事は非常に大量で、当初は張り切っていたレイナーレやミッテルト、カラワーナもすぐに音を上げることになった。

 だが、仕事は待ってくれず、どんどんと増えていく一方だった。

 

 一子と家でイチャイチャできるだけで良かったのに、いつの間にか一子の使い魔ということで、使い魔らしく扱き使われるということになってしまったのは嬉しいやら悲しいやら。

 

 役に立てるというのは嬉しかったのだが、仕事漬けの毎日は望んでいなかった、というのがレイナーレ達の本心だ。

 つい最近になってようやく、人手不足が解消され、レイナーレ達も好きに振る舞えるようになった。

 明日は久しぶりに一子を独占できる日なので、レイナーレは気合を入れていた矢先に、カスピエルがやってきたのだ。

 

「アザゼル総督はあなた達を切り捨てたことを、本当にそれはもう、この世の終わりだってくらいに後悔していたわ」

「一子のことで手のひらを返したの?」

「ええ。しかし、昔はあんなにアザゼル様やシェムハザ様の役に立ちたいって言っていたあなたが、よくまあ、変わったものね……」

「昔は昔よ」

 

 レイナーレにとってはもう終わったことだった。

 

「そうね。もう終わったことだけど……一応、聞いておくわ。戻ってこない? 今のあなたなら、総督も副総督も、最高の待遇で迎えるわよ?」

「虫のいい話ね。こっちは上からの命令で少ない人員で神器狩りをやっていたのに」

「組織なんて、そういうものよ。返事は?」

「私は一子の使い魔なので。それと今の私、ちょっとだけ強いわよ?」

 

 そう告げ、レイナーレはその力を解放する。

 部屋中を解放による風が吹き荒れて、色んなものが大変なことになるが、今のレイナーレは後のことなど考えていない。

 

 カスピエルはその力の奔流に感心してしまう。

 単純な力だけなら自分に匹敵するかもしれなかった為に。

 

「智天使クラスじゃない。凄いわ」

「一子が私にくれた力よ」

「……そういうことも、あの子はできるのね」

「ええ。魔王級の悪魔を量産できるんだから、コレくらいは当然よ。それに、私はもう負けない。あんな蛇共に」

 

 量産型ミドガルズオルムに押し潰されて、大変な目に遭った駒王町襲撃事件。

 いくら何でも不甲斐なさ過ぎたあの一件から、レイナーレ達はひっそりと鍛錬の密度を増やしていた。

 最近はまったく鍛錬なんぞできなかったが、それでもその間に身に付けた力は本物だ。

 

「総督には伝えておくわ。忘れて頂戴」

「ええ、そうして」

 

 カスピエルの言葉にレイナーレは力を収める。

 そして、部屋の惨状に溜息を吐く。

 

「……片付け、手伝ってくれない?」

「カスピエル様って呼んでたわりには、随分と厚かましいわね」

「だってもう堕天使から抜けたし、別に様付をしなくてもいいし……何より、一子の童貞は私が奪ったし!」

 

 ドヤ顔になったレイナーレにカスピエルは体を震わせた。

 

「一子様の童貞! どうだったの!?」

「知りたい?」

「知りたい!」

「教えてあげない」

 

 そんな、とカスピエルは絶望した。

 レイナーレはニヤニヤと笑い、部屋の片付けをカスピエルに指示したのだった。

 カスピエルは一子の童貞がどうだったかということを知る為に渋々、その指示に従うしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 レイヴェルは忙しくも幸せであった。

 彼女は一子の秘書ということで合法的に傍にいるという権利を手に入れているのだ。

 

 無論、レイヴェルがそれを手に入れたのは色々な事情があった。

 一子に対する立ち位置として、グレモリーは正妻を、シトリーは姉妹を側室として出している。

 フェニックス家は参加した時期が遅く、またインパクトも薄い。

 確かにレイヴェルは有能であり、容姿も良く、更にフェニックスの特性があったが、滅びの力を持つリアスや、そもそも現役魔王のセラフォルーがいるシトリーと比べるとやはり相対的に弱い印象を受けてしまう。

 

 だが、フェニックス家はフェニックスの涙で莫大な利益を上げており、更に悪魔には珍しく子沢山であり、将来的に強大化することは間違いない。

 故に、リアスがフェニックス家に配慮したのだ。

 

 そのような事情があったが、レイヴェルも勿論承知している。

 何はともあれ、一子の傍にいられるならそれで良かったし、家にも恩恵がいくのなら万々歳。

 そんな感じで彼女は今日も今日とて、一子と共にあちこちを見て回っているのだが――

 

 

 

 

「魔法少女、ミルたん! ただいま参上にょ!」

 

 可愛らしい黒髪の少女(・・・・・・・・・・)が魔法少女の格好で、一子の前に現れた。

 

「あ、ミルたん。久しぶりね」

「一子ちゃん、お久しぶりにょ。その節は大変お世話になったにょ」

「魔法少女、している?」

「しているにょ。この前、同志と出会ったにょ。マジカル☆レヴィアたんっていう子だにょ」

「あ、それ私と仲の良い子」

「そうなのかにょ」

 

 ごく普通に会話をしている一子。

 ここは冥界の彼女の領地であるにも関わらず、なぜ、ミルたんがここにいるのか、とそういうことは全く疑問に思わないようだった。

 

「……一子様、どちら様ですの?」

 

 レイヴェルは色々な疑問が思い浮かんだが、とりあえず誰かと尋ねる。

 

「私が悪魔家業をして、2番目に召喚された先の子でね。ミルたんっていうのよ。彼女の熱意に感心して、魔法少女にしてあげたの。ついでに、彼女のお友達も」

「一子ちゃんはまさしく魔法少女の神だにょ」

「……ええと、どこからツッコミを入れればよろしいのですか……」

 

 レイヴェルは困った。

 

「そういや、何でここにいるの? ここ、冥界で私の領地なんだけど」

「組織と戦っていたら、うっかり迷い込んでしまったにょ」

「組織って何なんですか……」

 

 レイヴェルのツッコミ。

 

「悪の秘密組織だにょ。魔法少女と血みどろの闘争を繰り広げているにょ」

「それ、悪魔じゃないわよね?」

「違うにょ。骸骨だにょ」

 

 一子は骸骨と聞いて、モモンガの姿が浮かんできたが、モモンガが魔法少女とガチバトルを繰り広げているのは面白すぎるので、想像力が大いに刺激された。

 もしそうだったら、思いっきり笑ってやろうと一子は思う。

 

「まあ、何かあったら連絡して」

「ありがとうだにょ。失礼するにょ」

 

 そして、ミルたんは転移していった。

 

「一子様……魔法少女って何ですか?」

「セラに聞けば分かるんじゃない? 私が知っているのはリリカル・トカレフ・キルゼムオールと管理局の白い悪魔。知りたい?」

「……いえ、結構です」

 

 沼に引きずり込まれそうな予感しかなかったので、レイヴェルは忘れることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、某所にて、とある会議が開かれていた。

 それは普通ならばありえない出席者達によるものだった。

 

 

「今月のソーナ会議を始めます」

 

 3人のソーナによる定例会議だった。

 

「3番の私、匙はどうですか?」

「オリジナルの私、あまり良くはないですね。ハッキリ言って、知識しかなかった私から見ても下手です」

「やはりそうでしたか……慣れていないので、仕方ありませんね」

「2番の私、同意します」

 

 傍から見れば不気味にも思えるが、意外にもソーナ達はこれを歓迎していた。

 

 実質的に並列思考をしているようなものであり、またそれぞれのソーナが入手した情報は同じものもあれば別のものもある。

 そこから導き出される考えは三者とも全く違ってくるので、実に有意義な時間を過ごすことができるのだ。

 

「一子さんの具合はどうですか?」

 

 3番目のソーナの問いにオリジナルと2番目のソーナは笑みを浮かべてみせる。

 

「プレイの幅も内容も、非常に多岐に渡り、とても満足しています。あと、単純に女慣れしているので、がっつくことがありませんね。意外と紳士的ですよ、ベッドの上では」

「ええ。たまに暴走しますけれど、基本的に紳士です。ただ、やはりシチュエーションに興奮しますね」

 

 2番目のソーナの言葉に3番目のソーナは詳しく、と急かす。

 

「幼馴染で親友でもあるリアスの恋人、あるいは姉の恋人を寝取っていると考えれば最高ですよ」

「それは……興奮しますね……」

 

 ごくり、と3番目のソーナは唾を飲み込んだ。

 

「何よりも、普通にリアスの目の前で抱いてもらったこともありますし」

「ええ。私もオリジナルの私も、2人一緒に……」

「ずるいですよ、2人共。私は匙のことを愛していますけれど、彼は性癖的にはマトモなのが唯一の不満です」

 

 そんな感じで猥談が30分程続くのは恒例だった。

 そして、最近の性活状況を話した後はいよいよ、本題となる。

 

「各種機関の立ち上げは概ね順調です。一部では予想を上回るペースであり、彼女達の忠誠心が如実に表れていますね」

「シトリーの家業は順調ですね。ドラッグの売上も前月と変わらず。ただ先月にも報告したように、警告に従わない者がいるのは残念ですね」

「愚かしく、そして悲しいことです。10代後半から20代半ば程度のグループですから、分からないのも仕方ありません」 

「日本はある意味、特殊ですから……他国の若者グループが大人しく従うのはやはり銃の存在でしょうか」

 

 オリジナルのソーナと3番目のソーナは家業を、2番目のソーナは一子の領地に関することをそれぞれ報告し、また互いに意見を述べていく。

 

「処理はどうしますか?」

「お姉様から要望があります。一子さんが人間を殺せるか、試して欲しいと」

「殺せないわけがないでしょう。アレはどう見ても人間どころか星ごと殺せる顔ですよ」

「私としても同意見でしたが、まあ、念の為です」

「ある意味、通過儀礼ですね。何も善良な市民を処理するわけでもありませんし、問題はないでしょう」

「現地の裏側の存在への交渉は? 彼らのような若者達に神々への信仰などはないと思いますが」

「既に済んでいます。いつも通りに貢物を提供してあります」

「彼女の予定が空き次第、実施しましょう」

「次の報告ですが……」

 

 3人のソーナ達の会議は極めてスムーズに進行していく。

 猥談も含めて2時間以内に全ての事柄について終えるというのが当初の目標であったが、それは今に至るまで全て達成されているのだった。

 

 

 

 

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