やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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皆無な緊張感

 

「リアス! 会いたかった!」

「一子! 私も!」

 

 2人は抱き合って、そのまま情熱的な口づけを交わす。

 往来であったが、そんなものは2人には関係なかった。

 

「……いや、もうちょっと緊張感とかそういうのを持てよ」

 

 アザゼルは深く、それはもう深く溜息を吐くしかなかった。

 一応、敵地である。

 しかし、そんなことなぞお構いなしで、2人の口づけはどんどんエスカレートしていく。

 既に一子とリアスの互いの手は互いの臀部を撫で回し始めている。

 このまま放置しておけば、公然わいせつ罪で逮捕されかねないだろう。

 

 俺がツッコミ役やることになるから、嫌だったんだ――

 

 アザゼルは何回目になるか分からない溜息を吐きながら2人に告げる。

 

「滞在しているツェペシュ派の城でやれ。話は通してあるから……あと今回の吸血鬼に関しては俺もジョーカーも離れたところで見ているから、好きにやってくれ」

 

 堕天使も天使も面倒なことになりそうなので、関わりたくないというのが本音だ。

 一子が出てきた――すなわち、サーゼクスらが一子を送り込むことを承認したことで、悪魔側の態度は明確に示された。

 

 話し合いという時間稼ぎは終わり、戦争の時間だ。

 相手はクロウ・クルワッハだが、おそらくそれだけではないとアザゼルは予想している。

 

 聖杯の力を使って、邪龍共を蘇らせている可能性は非常に高かった。

 

 

「しかし、一子。どうしてお前だけ一日早く来たんだ? 本来なら明日の今頃、お前の眷属達と来る予定だっただろう?」

「そんなの決まっているじゃないの。リアスと2人きりで過ごしたいから」

 

 当たり前のような顔でそう返す一子に対し、リアスは彼女により強くしがみついた。

 女としてのスイッチが完全に入っていることを長年の経験からアザゼルは簡単に分かってしまう。

 

「……別に構わねぇけどよ。とりあえず、静かにしろよな」

 

 そう言って彼は肩を竦めるしかなかった。

 

 

 

 

 

 その後、リアスと一緒に一子は今夜泊まる部屋へと到着する。

 まだ時間は午前10時過ぎであったが、そんなのは関係ない。

 部屋に入り、扉の鍵をしっかりと閉めたところでリアスが一子に再度抱きついて、そのまま唇を重ねる。

 

 5分程してから、ようやくリアスは離れた。

 

「もう我慢できないわ。千年くらい会っていないかった気がする」

「私もそう思う」

 

 リアスの言葉を一子は肯定する。

 彼女は知っていた。

 リアスの欲求不満の度合いはぶっ飛んでいることを。

 

 普段は絶対に口に出さない、出したら非常にマズイことになる性的な意味で過激な言葉のオンパレードをえっちな自撮りと一緒に一子に送りつけてきていた。

 その過激な言葉は文面だけでなく、通話においても勿論行われた。

 

「ねぇ、一子。いいわよね?」

「勿論よ」

 

 一子としても、最初からそのつもりであったので渡りに船であった。

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌朝、8時過ぎくらいまで一子はベッドの上でぐっすりと眠っていた。

 リアスとの営みが終わったのはつい数時間前のことで、昨日は午前中からずっとお楽しみな状態だった。

 

 しかし、リアスは既に起きていた。

 彼女は体力的に一子よりも劣るのだが、ある検査をする為に気合で起きたのだ。

 

 このときの為に以前より密かに購入してあった悪魔用妊娠検査薬だ。

 噂によればアジュカが関わっているらしく、性交後数時間以内に使用しても正確な結果が出て、その的中率は100%だという。

 

 

「大丈夫、絶対できている筈……」

 

 リアスにとって子供とはよく言われるように、夫との愛の結晶とは捉えていない。

 かつて彼女は語った。

 

 女のグレモリーは夫とする相手を深く愛するのだ、と。

 一子はその意味をハーレムを破壊するという意味合いではないか、と思ったが、そうではない。

 リアスもまた深く説明はしなかった。

 

 彼女にとって子供とは夫への愛の証であり、同時に自身が夫のものであると内外へ明確に示せるものだ。

 

 彼女の愛は重い。

 一子と自身の子供、その二者択一であれば躊躇なく一子を選択できる。

 

 

 グレモリーの血筋の女は皆、夫を優先していた。

 リアスの母ヴェネラナは両親がバアル家の者である為、そういうことはないが、リアスはグレモリーとバアル、双方の血を持って生まれた女だ。

 グレモリーの血を持つ女であるリアスは、これまでのグレモリーの女達と同じように夫である一子を何よりも優先してもおかしな話ではない。

 

 夫を深く愛し、子供を愛さないわけではないが、子供が夫よりも優先されたりはしない。

 

 母親にはならず、女のままであるというのが的確な表現と言えるかもしれないだろう。

 

 緊張しながら、リアスは検査に必要な時間が経過したのを確認しキットの結果を見た。

 

 リアスは思わず叫びそうになったが、愛する一子を起こすわけにもいかない為、どうにか我慢した。

 

 検査キットは陽性を示している。

 

「……高校生なのに、妊娠しちゃった」

 

 リアスはそう言って、自身の下腹部を優しく擦る。

 子供への思いよりも、一子への思いが先にきた。

 

「これで私は一子のものって、胸を張って言えるわ」

 

 リアスにとって、それは何よりも嬉しいことだ。

 そのとき、一子が身動ぎする。

 

 起こしてしまったかしら、とリアスは思いつつ、一子へと視線を向ける。

 すると一子がやがてその瞼を開く。

 

 リアスはネットで見た日本の文化に従って、検査キットを一子が見えるように片手で持ち、もう一方の手、その人差し指で指し示してみせる。

 これをやるのが最近の日本における作法らしい。

 

「一子、妊娠しちゃった」

 

 微笑みながらリアスがそう言うと、一子は数回、瞬きをした。

 

「え、本当に?」

「うん。このキット、的中率100%って噂のやつだから、たぶん」

 

 なるほどなるほど、と一子は数回頷いて、そのままリアスを押し倒した。

 

「お腹が大きくなる前に……ね?」

「もうエッチなんだから……」

 

 一子の言葉にリアスが拒むわけもなく、そのまま2人はギリギリまで深く愛を確かめあったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え? マジで!? 赤飯炊かないと!」

「私が言うのも何だけど、リゼヴィム。よく赤飯を知っているわね……」

「それほどでもない。いやーついに子持ちかー、子供はいいもんだよ。おじさんは子供がアレだったから殺しちゃって、孫からは殺意を向けられているけど」

「悪魔は悪であるべきっていうのがあなたのモットーなんだから仕方ないんじゃない?」

「仕方ないよねー」

 

 のほほんとしている一子とリゼヴィムのやり取り。

 しかし、この2人を除いて大騒ぎだった。

 

 一番悔しがったのは朱乃で、リアスは彼女や他の子達に妊娠する為のアドバイスなんてものをし始める始末だ。

 敵地であるにも関わらず、真剣に妊娠の為に話を聞く少女達。

 そこにカテレアや黒歌なども交じってリアスの話を聞いているのはご愛嬌だ。

 何故かベンニーアやオーフィスも交じっているが、前者は純粋な興味から、後者は何のことか分からず首を傾げながらも聞いている。

 

「……帰っていいか?」

 

 邪龍との戦闘ということで一子が誘ったらついてきた曹操は呆れ顔で尋ねた。

 彼からすればこの空間は非常に居づらく感じられた。

 

 こういう場面に慣れている木場とギャスパーの2人は苦笑いするしかない。

 

「曹操さん、諦めてください」

「木場、ヴラディ……お前達も苦労しているんだな……私のところに来ないか? 歓迎するぞ」

「……部長が引退したら考えておきます。ただ、あなたは一子さんの部下なんですよね?」

「……少なくとも、私の管轄下では主といえど好き放題にさせていない」

 

 曹操の言葉に木場とギャスパーは大きく心が揺れた。

 曹操の統率力とカリスマは本物であり、こういう場面で嘘をつく輩でもない。

 

「ちなみに曹操さん以外のところでは今、どうなって……?」

 

 ギャスパーは怖いもの見たさで問いかけると曹操は深く溜息を吐く。

 

「英雄色を好むということわざはあるが、もうアレは病気の類ではないかと思った。気がつくと、見目麗しい女性だけの騎士団とかそういうのがたくさん各地にできているぞ」

 

 木場とギャスパーの顔が引きつった。

 彼らや曹操には日本における薄い本的な知識はなかったが、もしもあればより深く理解できてしまっただろう。

 

 しかし、そこへ話を聞いていた一子が割って入る。

 

「エルフにダークエルフ、獣人にアマゾネスその他色々な種族を作っているわ。私に対する忠誠は抜群で、みんな才能溢れる子達だから。発展しているでしょう?」

 

 その問いかけに曹操は認めたくなさそうな、渋い顔であったが、頷いて肯定した。

 事実だった。

 

 一子による造物主の如き所業は彼女のユーラシア大陸2個分の領地を大きく発展させていた。

 誰もいない手つかずの大自然が広がっていたのだが、自然を程良く残しつつ、各地には街や村ができ、それらを結ぶ道路や鉄道が敷かれている。

 しかし、基本的には他の領地からの住民が入ってくることは厳しく制限されており、あとから付け足された日本の本州程度の大きさの領地のみ入ることができる。

 

 また最近は落ち着いているが、それでも一子は暇を見つけてはちょくちょくと人材を量産している為、時間経過によって問題なく発展するだろうと曹操は予測していた。

 ただ、一子は魔王みたいな力を持つメイド達も大量に作っていたが、彼はそこは見なかったことにした。

 

 

「……やっぱりというか、お前ら全然話が前に進んでねぇな」

 

 見るに見かねたアザゼルが口を挟んできた。

 彼の隣にはジョーカーと呼ばれるデュリオがしげしげと一子の顔を眺めている。

 

「噂には聞いていたけど、ぶっ飛んでるなー……色んな意味で」

「色んな意味でとは失礼ね」

 

 一子は頬を膨らませ、不満をアピールした後に咳払いをする。

 

「それじゃ、ちょっと行ってくるから。皆、さっさと片付けるわよ」

 

 その物言いにアザゼルとデュリオは肩を竦めてみせる。

 クロウ・クルワッハと一戦交えることになだろう、と2人は確信していたからだ。

 

 とてもではないが、一子ら悪魔陣営はそんな緊迫した空気ではなかった。

 

 

 

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