やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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呆気ない幕切れ

  

 

 

 

「ああ、来たか! 待ちわびたぞ!」

 

 ツェペシュ派の暫定宰相であるマリウスは笑顔でリアス達を出迎えた。

 数日前に面会したときと何だか様子が違う上、ヴァレリーがいない。

 

「ヴァレリーは……?」

「安心しろ。もう用は無くなったからな。だから解放する」

 

 マリウスの言葉と共に扉が開かれ、運ばれてきたのは棺だった。

 棺は開け放たれており、そこに横たわっていたのはヴァレリーだ。

 誰が見ても死んでいることが分かる。

 

 ギャスパーは絶望と怒りにより叫ぶ――なんてことはなかった。

 

 

「あ、先輩。そういうわけらしいのでお願いします」

「あいよ」

 

 軽い感じでギャスパーは頼み、一子は頷いた。

 

「うっわー! ギャスパーくんの大切な子が死んじゃった! きっと神器を抜き取られたせいだ!」

 

 大笑いするリゼヴィム。

 しかし、誰も取り合わないので彼は静かになった。

 

 盛大に滑ってしまった――!

 

 さすがのリゼヴィムといえど、滑ってしまったこの空気は居たたまれない。

 助けを求めるかのように彼は一子へと視線を向けたのだが――

 

「ありきたりで、面白くない。幼稚園児の初めての煽りみたいな感じ」

「辛辣! めちゃくちゃ辛辣!」

「私だったら、やっぱりここはオーソドックスであるが故に外さないこと……兄にヴァレリーはめちゃくちゃ辱めを……」

 

 一子が危ない言葉を言いそうになったところをすかさずリアスが口を塞ぐ。

 想像がついてしまったからだ。

 

「はいはい、一子。さっさとやって頂戴」

「何をするつもりだ?」

 

 思っていた反応と180度くらい違う為、さすがのマリウスも問いかけた。

 

「何って、こうするのよ。神器、抜いてくれてありがとう。手間が省けたわ」

 

 そして、一子はデスペナルティを防ぐアイテムを幾つか使用した上で、死者蘇生の魔法を唱えた。

 すると青い光がヴァレリーを包み込み、それはやがて消えた。

 

 数秒ほどして、彼女はゆっくりと棺から起き上がり、周囲を見回してギャスパーの姿を見てにっこりと微笑んだ。

 

「ギャスパー、何だかとてもスッキリとした気分だわ」

「良かったぁ……」

 

 ギャスパーは嬉し泣きをしながら、ヴァレリーに微笑んだ。

 一方で、マリウスは驚愕のあまり目を見開いていた。

 彼の後ろではクロウが興味深いとばかりに視線を一子へと向けている。

 

「さて、リアス。こっからは私が仕切らせてもらうから」

「初めからそのつもりだから、任せたわ。あ、でも早めに終わらせてね。ここらって自然は美しいのだけど、それ以外はないから」

 

 早く帰りたいと伝えてくるリアスに任せろと一子は頷いた。

 

「リゼヴィム、必要に応じてサポートをお願いね」

「はいはいはいよ。ドヤ顔している悪役を圧倒的な暴力でぶちのめすって楽しいよねー! おじさんも超大好き!」

 

 その名前にマリウスは驚き、一歩後ずさった。

 

「ま、まさか、そこの男は……」

「あ、おじさん、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーっての。よろしく、聖杯の力を得て好き勝手しようとしている三流悪役さん。いいかい? 超一流の悪ってのはおじさんの主である一子ちゃんのことを言うんだぜ?」

「そんな馬鹿なことがあるか! 赤龍帝がルシファーの実子を従えているだと!?」

 

 それだけじゃないんだが、と曹操は思うも、自分のネームバリューではさすがにリゼヴィムには敵わない為、小さく溜息を吐く。

 とはいえ、彼から見てもリゼヴィムの力は底知れずだ。

 

「知らなかったのか? おじさんはミーハーなんだぞ?」

「そんなこと知るか!」

 

 もっともな言葉にうんうんとリアス達大勢の面々は頷いた。

 彼女達もほとんどがその経緯を知って、脱力したものだ。

 

「こ、こいつはクロウ・クルワッハ! この強大なドラゴンにお前達が勝てるわけがないだろう!?」

「そこで俺を出すか?」

 

 呆れたように問いかけるクロウ。

 しかし、マリウスは気にしない。

 

「ええい! うるさい! 私は研究がしたいんだ! それさえできるなら何でもいい!」

「はいご苦労さん」

 

 その声に彼が振り返った。

 そして、見た。

 そこには笑みを浮かべた一子がおり、彼女は何事かを唱えた。

 

 

 すると糸が切れたようにマリウスが倒れる。

 

 同席していたマリウス派の吸血鬼達は事態の推移を見守っていたのだが、遂に手を出してきたと判断し一子達へと一斉に襲いかかった。

 しかし、蝿のように遅いとばかりに曹操、そして木場が左右から迫る彼らを一蹴する。

 その吸血鬼達は聖杯の力で強化されていたのだが2人は物ともしない。

 

「とりあえず、こいつは私が適切に利用・保管しておくので」

 

 一子は素早く眠っているマリウスに近づいて、ぽいっと放り投げた。

 それをカテレアが受け取り、素早く捕縛系魔法を多数重ねかげて、意識が覚醒しても逃げ出せないように封じ込めた。

 カテレアは主である一子の意向を察する力は相当に鍛えられており、この程度なら特に打ち合わせなどなくても流れるように行える。

 

 そして、一子はこれまで手出しができたにも関わらず、あえてそうはしなかったクロウに話を振る。

 

「で、クロウ。どうする? やる? やらない?」

「やるならば1対1が良い。お前との戦いは心躍るものだろう」

「それは嬉しい言葉ね。あなた相手では私も余裕なんてなさそうだし」

 

 そこで言葉を切り、一子は問いかける。

 

「ハーデスとかいうのに雇われているんでしょ? 今度、ハーデスのところにぞろぞろと連れて攻め込むけど、そっちは基本的に陣営としての勝ちを優先させてもらうからあなたの望む戦いにはならないし、そもそもさせない」

 

 クロウは一子の言葉に頷いてみせる。

 今代の赤龍帝が単純な戦闘能力以外においても、ありえないほどの規格外であることは彼も知っている。

 ハーデスは生と死の境界をめちゃくちゃにする存在として彼女を何よりも危険視していることも同時に彼は知っている。

 

「だから提案なんだけど、私のところに食客として来ない? 朝昼晩三食に加えておやつ付き。私は勿論、私以外にも実力者を大勢抱えているから好きな時に好きなルールで戦えるわよ?」

 

 提案にクロウは顎に手を当てる。

 

「俺はドラゴンの行き着く先を見たい。お前のところにドラゴンは他にいるか?」

「私のところにはいないけど、電話で5分以内に白龍皇を呼び出せるわね……あとは世界を滅ぼせるような色んな種類のドラゴンを召喚できる」

 

 ユグドラシル末期に実装された出現までに手間のかかるイベントなど無しで、使うだけでワールドエネミーや色んなモンスターを出現させられる使用回数無限のエンカウントアイテムがある。

 それを一子は持っていた。

 

「……一子、あとでまたお話をしないといけないみたいね?」

 

 そんなものを使われてはたまらない、とリアスはにっこりと笑顔で告げる。

 既に彼女の頭の中では結婚式までの予定が組み立てられている。

 頭が痛くなるようなことを夫にしてほしくないというのが正直な気持ちだ。

 

 何しろ、主従関係よりももっと距離が近くなる夫婦関係となる。

 一子がやらかしたことの後始末をリアスがする、なんてことは回避したかった。

 

「いいだろう。そもそもハーデスに雇われてやったのも、お前と戦いたいが為だ」

「あなたが美女だったら求婚したのに残念」

「……噂には聞いていたが、お前は本当に性欲が強く出たドラゴンだな」

 

 クロウは呆れ顔でそう告げる。

 そんな彼に一子はけらけら笑い、そして問いかける。

 

「ところで他の邪龍は蘇ってないの? ちょっと楽しみにしていたんだけど」

「いや、していない。マリウスは研究者ではあったが、才能はそれほど無かったようだ」

「じゃあ、マリウスを使って蘇らせた後に倒して、私の配下にしようかな。邪龍でも弱肉強食こそ唯一の掟という認識で問題ないかしら?」

 

 問いにクロウは深く頷く。

 強者であることは何よりも尊ばれることだ。

 特にドラゴンにおいては。

 

 そのとき、リゼヴィムが勢いよく手を挙げて告げる。

 

「一子ちゃん一子ちゃん、おじさんがもしもマリウスに早い時期から協力していたら、グレンデルとかアジ・ダハーカとかそういうやべー邪龍を蘇らせていたよ」

「あ、さては自分にやらせてくれっていうアピールね?」

「そうそう。おじさんに邪龍を蘇らさせてくれない?」

「いいわよ。ただし、変なことを考えちゃダメよ。監視にリリスをつけるから」

「ママが見ているなら変なことはできないなぁ。ママ、一子ちゃんにゾッコンラブだからなー」

 

 さらりととんでもない会話にレイヴェルが口を出す。

 

「一子様、さすがにそれはマズイんじゃないでしょうか?」

「え? 何で?」

「あちこちへの影響とか……」

「異空間にフィールドを作って、そこでやるから影響はないわよ? 表に出るのは私が配下にした後のことだし」

「あっはい……」

 

 そう言われてはレイヴェルも何も言えない。

 迷惑を掛けなければ何をやらかしても一子だから仕方がない、と納得してもらえるくらいの認識にはなっている。

 それは悪魔陣営だけでなく、天使や堕天使においても。

 

「それじゃ後のことは……誰に任せればいいのかしら?」

 

 一子の問いかけに皆、一様に視線を逸らした。

 マリウスによるクーデターの後始末なんていう政治的に面倒くさいことは誰だってやりたくはない。

 ならばと一子はギャスパーとヴァレリーを見るが、ヴァレリーはギャスパーによって顔を物理的に下へと向かされた。

 

 あらあら、どうして、とヴァレリーは問いかけるが、ギャスパーは視線を合わせちゃダメと言いながら、彼も顔を下に向けている。

 

「……え? これ私が後始末をするの? じゃあ只今の時刻を以て……ここを私の領土とする!」

 

 まさかの一子の領土化宣言。

 さすがにそれは、とギャスパーが顔を上げたそのときだった。

 

「何を馬鹿なことを言っているんだ、お前は」

「あ、やっぱり見ていた」

「当たり前だ。絶対碌でもないことをするって確信があったからな……予想の斜め上をロケットで飛んで行きやがって」

 

 アザゼルが現れた。

 その横にはデュリオもいるが、彼はしきりにすげーすげー、と言いながら一子へと視線を送っている。

 

「ところでアザゼル、彼はどうしたの?」

「この一部始終を目撃し、デュリオがお前のファンになった」

「いやだって、クロウ・クルワッハと戦うことなく食客として招き入れたってそりゃすげーってなりますって! ぶっ飛びすぎでしょ!」

「色んな意味でな。それと一子は虐待とか受けている子供達を積極的に自領で保護しているぞ」

 

 マジで、ときらきらとした視線をデュリオに向けられる一子。

 彼女は手をひらひらさせて、アザゼルに告げる。

 

「アザゼル、後は任せた」

「そうだな、お前にやらせるよりは俺がやったほうがまだマシだからな」

 

 アザゼルは皮肉げにそう告げた。

 しかし一子はそんなことは気にせず、ドヤ顔で告げる。

 

「ようやくリアスやイリナ、ゼノヴィアとイチャイチャできる……!」

 

 色々と台無しだったが、名前を挙げられた3人は喜んでしまうあたり、重症だった。

 

 




たぶんあと遅くても10話以内、早ければ5話以内に終わるかも。
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