やべー奴が赤龍帝になりました。   作:やがみ0821

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素敵な宣戦布告

 

 一子がリアスの眷属になって1週間程が経過した。

 

 この間、彼女は悪魔として契約の取り付けに奔走していた。

 元々の経験と一子の万能性から、訪問先では必ず契約を取り付けており、またその美貌から早くもリピーターが続出しつつあった。

 そして、その合間には冥界や悪魔のことをその他各神話勢力のことなどをリアスと朱乃を家庭教師として精力的に学んでいた。

 その勉強範囲は非常に広く多岐に渡り、悪魔社会で話題となっているレーティングゲームなどは簡単な説明しかされていない。

 まずは基本的な知識がないとダメだというリアスと朱乃の教育方針によるものだ。

 

 途中、生徒会長のソーナとその一派が実は悪魔だった、と明かされ、一子のことをリアスが紹介したこともあったが、些細なことだ。

 シトリー家は性愛を生業としているということを聞かされ、一子はちょっとだけ心を惹かれたのは秘密であった。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな日々を過ごしていると、何やらリアスがぼーっとしていることが多くなった。

 

「ねぇ、朱乃。リアスはあの日?」

 

 女の子特有の単語であるが故に、朱乃も当然意味は分かる。

 しかし、今回はそれではない。

 

「いいえ、違いますわ。ちょっとした家庭内事情ですよ」

「家柄が古いと大変よねぇ」

 

 朱乃と一子がそんな会話をした、その夜のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「一子、私を抱いて!」

「どういうことなの……」

 

 一子が自室で寛いでいると、魔法陣が現れたと思ったら、リアスが現れた。

 そして、いきなりそんなことをのたまったのだ。

 

 ともあれ、据え膳食わぬは何とやら。

 一子は手早く電灯を消して、そのままリアスを抱き寄せる。

 

 その慣れた様子にリアスは驚きつつも、身を委ねる。

 

「両性具有になって、抱いて」

「分かった」

 

 恋愛感情を向けられるようなことをした覚えは一子にはない。

 契約を取り付けていることへのご褒美か何かか、あるいは家庭内事情とやらが関係しているのか、と彼女は考えながら、両性具有となる性別転換薬を飲む。

 ちょっとした魔法のようなもの、とレイナーレ達は称していたが、彼女達からすればそう思えるのも当然であった。

 

 こんな魔法薬は聞いたこともなかった為に。

 

 

 

 

 飲み干して、そのまま一子はリアスの唇を奪いながら、ベッドへと押し倒す。

 

「……女誑し」

「ドラゴンで悪魔だからセーフよ、セーフ」

 

 一子はリアスの首筋に舌を這わせながら、その豊満な胸を揉みしだく。

 リアスは小さく喘ぎながら、一子の背中へと両手を回す。

 

 そのまま、一子はリアスのスカートへと手を伸ばし――

 

 そのとき、魔法陣が現れた。

 敵か、とすかさずに一子は起き上がり、リアスを抱きしめながら、対峙する。

 

 現れたのは銀髪のメイドだった。

 

「あばよ、とっつぁーん!」

 

 一子はそのまま窓を開け放って、跳んだ。

 リアスを抱えたまま。

 

「いやー、一度言ってみたかったのよ、あの台詞」

「ちょ、ちょっと一子! 敵じゃないからね!?」

 

 屋根伝いに逃げる一子にリアスは叫ぶ。

 しかし、一子は止まらない。

 

「リアス、家庭内事情とやらが関係しているのでしょう? 私はグレモリーだから、有名な悪魔の家系だから、あなたの眷属になったんじゃないわ」

 

 一子はリアスに顔を向けて、そう言いつつも、足は止めない。

 

「リアスっていう少女の話を聞いて、あなたの人柄を見て、判断したのよ。誇りなさい、この私をあなたは眷属にしているのだから」

 

 ちょうどビルの屋上に来たとき、2人の目の前に魔法陣が現れた。

 

「逃げる?」

「いいえ、大丈夫よ。逃げなくて」

「殺す?」

「……もうちょっと物騒な思考を抑えてくれると、主人としては助かるわ。大丈夫だから」

 

 それがまた嬉しいんだけど、とリアスは内心思いつつ、現れるのを待つ。

 数秒と経たずに魔法陣から先程の銀髪メイドが現れた。

 

 彼女は現れるなり、溜息を吐いてみせる。

 

「お嬢様、良い下僕をお持ちですね」

 

 皮肉たっぷりのその言葉にリアスは笑みを浮かべる。

 

「あら、ありがとう。私への愛と忠誠に溢れているのよ」

「例の件についてですが……」

「ええ、分かっているわ。そうね、婚約を正式にしてもいいわ」

 

 おや、とメイドは首を傾げた。

 

「一つ条件があるわ。レーティングゲームをしましょう。それで私が勝てば婚約は無し、私が負ければ婚約をする。簡単なことでしょう? グレイフィア」

「よろしいのですか? ライザー様の戦績は……」

「知っているわ。8勝2敗、その2敗もわざと負けている。ええ、とても凄いと思うわ」

 

 でもね、とリアスは不敵な笑みを浮かべて告げる。

 

「だからこそ、ライザーに文句はないでしょう? ただ勝てば良いのだから」

 

 メイド――グレイフィアはリアスから視線を一子へと移す。

 恐ろしい程の美貌であるのが一目で理解できる。

 

 だが、強大な力は感じない。

 むしろ、そこらを歩いている人間と同じ程度にしか。

 

「そちらの方が新しい下僕のようですが……駒も揃っていない状態で、本当に?」

「一子のことを逃げ足だけは速いと思っているなら、グレイフィア、あなたに対する評価を改めなければならないわね」

 

 あからさまに溜息を吐いてみせるリアスにグレイフィアはくすり、と笑う。

 

「分かりました。ではそのように……そちらの方、お名前は?」

 

 問いに一子はこれでもかと溜息を吐いてみせる。

 

「名前を尋ねるときは名乗るくらいしたらどうかしら?」

「これは失礼。弱小ですが、良い逃げ足をお持ちでしたので、敢えて名乗らせて頂きましょう。グレイフィアと申します」

「兵藤一子よ。あなたは美しい名前ね」

「ふふ、ありがとうございます。それでは失礼します」

 

 魔法陣でグレイフィアは去っていった。

 

 リアスは軽く溜息を吐き、一子に問いかける。

 

「一子、勝てる?」

「そもそもどういうことなのか、情報が無さすぎてさっぱりなんだけど」

「分かった、じゃあ明日、部室でどうしてこうなったか、教えるから」

 

 リアスの言葉に一子は頷きつつ、ようやく実戦ができそうだと内心ほくそ笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、シンプルに倒せばいいのね?」

 

 翌日、オカルト研究部にて今回の経緯をリアスから聞いた一子はそう問いかけた。

 

「ええ、そうよ。あなたの力、頼りにしているわ」

 

 リアスの言葉に朱乃が手を挙げる。

 

「部長、一子さんってどの程度の御力が? 神器持ちとは聞いていますが……」

「今代の赤龍帝で禁手化に至っているのよ」

 

 まぁ、と朱乃は驚いてみせる。

 木場も小猫も朱乃程ではないが、驚き、一子へと視線をやる。

 

「ただ普段は神器を使わないようにしているの」

 

 一子の言葉にリアス達は疑問に思う。

 それはどういうことか、とリアスが問いかけようとしたとき、魔法陣が現れた。

 グレイフィアが現れ、それから数秒して、また別の魔法陣が現れる。

 

「よぉ、愛しのリアス。まさか君からレーティングゲームを申し込んでくるとは思わなかったよ」

「ライザー……」

 

 リアスが名を呼ぶとライザーは笑みを浮かべながら、彼女へと歩み寄り、腰に手を回す。

 そして、ライザーが連れてきた15人の美女美少女達。

 おそらくは眷属だ。

 

 一子は中々やる、と素直に彼の男としての手練を評価する。

 

「勝たせてもらうよ。こっちの駒はフルに埋まっている。見たところ、そちらは僧侶がおらず、戦車も騎士も1人ずつ。兵士は1人か? おいおい、リアスも含めてもたった5人で戦う気か?」

「ライザー、悪いけど勝たせてもらうから」

 

 そう気丈に告げるリアスにライザーは笑みを深める。

 

「気の強い女は嫌いじゃない。勝負を楽しみにしているぜ」

 

 ライザーはそう言い、一子へと視線を向ける。

 

「随分と綺麗な子がいるじゃないか? 君、名前は?」

 

 問いに一子は素直に答えるのも癪だったので、頭の中に浮かんだアイツの名前を使わせてもらうことにした。

 

「たっち・みーよ」

「たっち・みー?」

 

 ライザーは首を傾げ、意味合いをいち早く理解したリアスがくすり、と笑う。

 

「私に触ってみろ、という意味よ」

 

 一子の言葉にライザーはくつくつと笑う。

 

「いいねぇ。リアスとはまた違った良さがある。俺が勝てばリアスは勿論、その眷属もくっついてくる。これは楽しみだ」

「リアス、一つ、聞きたいのだけど……良いかしら?」

 

 ライザーの言葉には答えず、一子はリアスへと問いかける。

 

「何かしら?」

「ここは彼らに対する宣戦布告の場と理解して良い?」

「ええ、そう捉えてもらって良いわ」

 

 リアスの返事に一子は満足げに頷いた。

 そのやり取りにライザーは面白そうだ、と言わんばかりに問う。

 

「何だ? 素敵な宣戦布告でもしてくれるのか?」

「いえ、そうするまでもなかった。あなた達、予想していたよりも弱いのね」

 

 場の空気が凍りついた。

 

「それはどういう意味だ?」

 

 ライザーは一子を睨みつけながら、問いかける。

 一子はあからさまに溜息を吐いてみせる。

 

「鳥頭にも分かりやすいように言ってあげましょうか? お前達、全員を瞬きする間に皆殺しにできる。そう言ったのよ」

「イザベラ! 痛めつけてやれ!」

 

 ライザーの指示に即座に半分に割れた仮面をつけた女性が飛び出した。

 あっという間に距離を詰め、拳を一子へと叩き込もうとした瞬間――とてつもない悪寒を感じ、一瞬にして後ろへと跳んだ。

 

「おい、どうした? イザベラ?」

「い、いえ……何か、悪寒がしたので」

 

 イザベラの言葉にライザーは首を傾げながら、一子へと視線を向ける。

 美貌を除けば何の力も感じない。

 

 にこにこと笑顔で、それがまた腹ただしい。

 

「グレイフィア、ここでやり合ってもいいけど、それだと当初の目的から離れてしまうでしょう?」

 

 唐突に一子はそう告げた。

 そのように話を振られたグレイフィアとしては職務上、一子の言葉を肯定しなければならない。

 

「はい、ここでやり合うのは許されません。レーティングゲームの当日まで、双方共に手出しはしないように」

 

 グレイフィアとしてもイザベラがなぜ引いたのか、理解できなかった。

 何の力も感じず、隙だらけ。

 一撃程度ならグレイフィアとしても大目に見ようとは思っていたのだが……

 

 ライザーは舌打ちし、眷属達と共に転移で去っていった。

 

「さすがに数や経験に差がありすぎますので、10日後に開催という形になります。ライザー様もそれは事前に承知されていますので……」

「ええ、分かったわ」

「それでは私も失礼します」

 

 グレイフィアはそう言って、転移していった。

 

 

 それらを見送り、誰よりも早く朱乃はにこにこ笑顔で、口を開いた。

 

「とても素敵な宣戦布告でしたね」

「私としてはまだ軽いジャブだったけど……全力でやるときは相手の血管がブチ切れるくらいに煽りまくるから」

「それは素晴らしいですわ。是非ともご教授願いたく……」

 

 物騒な会話がなされているが、リアスは咳払いをして止めさせる。

 

「ともあれ、10日間は修行に費やしたいと思うわ。ちょうど良い別荘があるから……」

 

 リアスがそう言った直後、一子が手を挙げる。

 

「バーベキューやりたい」

「……分かったわ」

 

 よし、と一子はガッツポーズ。

 

「しかし、一子さんはどのくらい強いんだい?」

 

 木場の問いかけに一子は告げる。

 

「さっきの連中が100万人いても余裕で勝てる程度には」

「……赤龍帝って凄いんだね」

「ちなみに神器を使わない状態で」

「……君、非常識って言われない?」

「よく言われるの。不思議なことに」

 

 一子の返事に木場は遠い目になった。

 

「はいはい、それじゃ早速、明日から修行に移るから。各自、荷物を用意して頂戴ね」

 

 リアスの言葉を聞きながら、一子はバーベキューに胸を躍らせるのだった。

 

 

 

 

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