モンスターの生態調査報告   作:白竜

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熾烈な争いを繰り広げる二頭の王
遂に最後の決戦が始まろうとしていた。


最終決戦。 火竜は飛び立つ

睨み合う両者。

 

二頭とも既に満身創痍と言えるほどに疲弊し、傷ついていた。

しかし、どちらも退く気など無かった。

 

縄張りを守るため

縄張りを奪うため

 

一度始めここまで行ってきた戦いから逃げられるはずもなく。

 

しかし何よりも大きな理由があることは、草を焼き焦がし、自らの喉をも焼き切るほどに強烈に燃え盛り口元より漏れ出る火竜の炎が物語っていた。

 

戦いは始まろうとしているし、終わらんとしていた。

 

先程の咆哮とうってかわりただ炎が燃え盛る音が聞こえるこの空間を、黒炎王の火球が切り裂いた。

 

当然火竜はその火球を飛翔しかわすと、逆にいくつもの火球をはきかえす。

それに同じように黒炎王が応える。

 

大量の火球が大空を翔る二頭の間で交わされた。その火球は躱され、地面にぶつかる度に大爆発を起こし瞬く間に植物を焼き払う。

その威力はそれを当然のように撃ち交わしている二頭ですら当たればただでは済まない火力だった。

 

火竜種の火球(ブレス)は元より自らの喉を焼き焦がしながら行うものであり、この大火力を何度も何度も撃って平気でいられるはずはなかった。

 

この調子では自らの体が持たないといち早く察した黒炎王は自らが放った火球と共に、火竜が放った火球を掻い潜り火竜に突っ込んだ。

 

しかし火竜も限界が来ることに気付いていないわけではなかったし、むしろ黒炎王のこの突撃を待っていた。

 

相手に向かっていき接近戦で決着をつけようとすることはこの状況では最善と言える判断ではあるが、同時に通常の戦いであれば短絡的とも言える判断なのだ。それはいうまでもなく大きな隙を晒し、相手に"迎撃"のチャンスを与えてしまうからである。

 

火竜にチャンスが与えられた。

 

噛み付いてくるならば

たとえば上昇し頭を踏みつけてしまうか?

それとも躱して首元に噛み付いてやるのもいい。

 

脚を使って攻撃してくるか?

爪による攻撃は後ろに飛び退くなどして避けてしまえば大きな隙になるはずだ。

 

もしくは接近戦と見せかけフェイントで火球を飛ばしてくるか?フェイントということで攻撃すると見せかけ後ろに回ってくるかもしれない?

 

とにかく、そんな一瞬の思考の時間が火竜に与えられた。

 

 

そして黒炎王の間合いに火竜が入り、火竜は身構える。

 

そして黒炎王は攻撃する  と見せかけ、横を通り過ぎ背後から攻撃しようとしてくる。

しかし火竜はそれも予想していた。尻尾で攻撃しようと尻尾を振りかぶり空中で大きく回転し横に薙ぐ。

しかし当たらなかった。ならば爪で攻撃してくるはずだ!

回転し真後ろを見た火竜は"見上げた"。そこには翼を大きく振りかぶる黒炎王がいたからだ。

 

鳥や飛竜は翼で攻撃することはあまりない。

なぜなら翼は空を飛ぶための大事な部位で、頑丈というわけでもないからだ。

 

ーーーーーしかし、黒炎王は翼が頑丈である。

その為に強い飛翔能力があるのだ。

そんな黒炎王であることが前提の攻撃方法に火竜は対応できなかった。

 

火竜に翼が叩きつけられ、同時に黒炎王が羽ばたくのをやめた。

 

二頭はどんどん下降していく。黒炎王はこのまま地面に叩きつける気だ。 戦略的に上を行っていた筈の火竜がいつのまにか下にいる。

しかしただやられるわけではなかった。

王としての誇り、そして妻の死による怒りが火竜にとてつもない馬鹿力を与えた。それにより火竜は強引に体を回転させ振り解いた。

 

そしてあろうことか火竜はその場で勢いよく宙返りをした。

それは亡き妻リオレイア "陸の女王" の技だった。

 

火竜の尻尾が勢いよく黒炎王に当たり、思わぬ攻撃に大きく怯んだ。

その隙を見逃さない火竜が背中と右翼の翼膜に爪を食い込ませ完全に上をとった。

 

二頭が落下する。翼を封じられ首に噛み付かれている黒炎王に反撃の余地はない。 火竜は全体重をかけ、捨て身の攻撃を仕掛ける。

つまり、二頭は大きな音を立て、地上に激突した。

 

砂煙が立つ。

しかしその中からぼろぼろになった火竜が足を引きずりながら出てきた。

 

砂煙が晴れた時、そこには黒炎王が横たわっていた。

動く様子はない。

 

火竜は勝ったのだ。

この地を、誇りを、守り抜いた。

 

ボロボロになった火竜は足を引きずり、妻の亡骸のもとにたどり着いた。 そして火竜は寄り添った。

その時空からいくつかの羽音がした。

子竜達である。

全てが終わったことをかぎつけ、戻ってきのだ。

空の王者リオレウスは子供達を見た。

そして認めた。彼らが次の王者達であることを。

 

リオレウスは天に向かって咆哮をした。

その声は島中に響き、海を渡っていくようであった。

 

そして、息を引き取った。

その最期は雄々しく、猛々しく。

まさに"王"にふさわしいものだった。

 

子竜たちは息を引き取った両親の元にしばらくいたあと、やがて大空へ飛び立った。

それは未来へと飛び立つ翼か。

 

彼らは成長しきったわけではない。

これからも経験を積み重ね、成長していく。

 

父に守られた命を、与えられた命で彼らは目指した。

 

両親の背中を、王者の道を。

 

そして、果てなき空を。

 

 

 

 

 

 

 

 




これにて火竜の生態調査を終了するものとする。
彼らは王者として空を飛ぶことだろう。
燃えるが如き両親の意志を心に宿して。
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