「人生いいこともあれば悪いこともある。」
よく使われる励ましの言葉だ。たいていその後に「だから気を落とすな」だったり「いいことあるよ」といった言葉が来る。
まあ、正直僕は全然そう思わなんだけど…
だって僕、
子供の頃から母さんは僕のことがどうでもよかったみたいだし、大好きな父さんは小学校の時に事故で亡くなってしまった。
それからは母さんも家にいると思ったら「お前がいるからあの人に振られた!!」と大抵泣きながら八つ当たりである。
どこからこんな個人情報が漏れたのかは知らないけど学校でもいじめられた。「お前いないほうが母ちゃん幸せなんじゃね?」とか「こいつ触ったらうちの家族も不幸になるぞー」とか。口で言われるのはまだいいけど次第に殴られたり、楽しみだったピアノのレッスンの邪魔をされ続けるなど、いじめも次第に陰湿になっていった。
そして、高校まで進学したある日の下校中。歩道橋を降りていたら
「邪魔なんだよ───」
微かにそんな感じの声がした気がする。でも、誰が言ったとか考えるより先に背中に衝撃が走って世界がぐるぐる回っていた。
気が付くと青空が見えた。誰かに歩道橋から突き落とされたのかな?だけど体が全然痛くない。
不思議だなぁと考えながら起き上がる。とりあえずどれだけ時間が経ったか確認しようとポケットに手を突っ込むが何の感触もない。
「あれ。スマホ落とし……ってうわぁ!」
慌てて足元を見ると、そこには頭から血を流してピクリともしない自分がいた。
幽体離脱していると気づけたのは、駆けつけた救急隊員の人が全然自分に反応しないところでだった。
搬送先のお医者さんが言うには怪我は軽症で命に別状は無いということだった。なので戻れないかなーと体に触ってみたり、自分の体に入り込んで寝てみたりしたけれど全然上手くいかない。
そうこうしているうちに戻っても別に良いことが無いって気づいて、体に戻るのはやめてしまった。
そのあとは幽霊らしくいじめっ子相手に仕返ししてみたり、道行く人を脅かしてみたこともあったが、元々そういう事が好きではなかったのもあって全然気持ちが晴れなかった。
現在はれい姉こと従姉妹の
れい姉は子供の頃から霊感があり、僕みたいな体から出てしまった幽霊との関わりも結構多いのだ。
そして、そんな彼女曰く、体の方が死ぬと「この世に残りたい」という強い意志がない限り幽霊も消えてしまうそうだ。
……長くなっちゃったからまとめると
僕は家でも外でもいじめられた挙句に魂が抜けてほとんど周りと接することなくただただ消えるのを待つことしかできない。
ということになる。
まあ、最後の最後でいじめられず静かな時間を過ごせる点は悪くはないのかもしれない。体が力尽きてこのまま消えても残念がる人なんて誰もいない訳だし…いやれい姉と叔父さん叔母さんが悲しむか。とは言っても、何やったって戻れなかったんだしどうしようもない。
そういう風に考えてずっと諦めていた……いや、諦めていたつもりだった。
あの娘が僕を見つけるまでは──────
この作品を手に取ってくださってありがとうございます。GTPです。
初めて小説を書くので至らない点があるとは思いますが精一杯頑張っていきますのでよろしくお願いします。
メインヒロインのこころちゃんは次回出てきます。