幽霊を笑顔に!!   作:GTP

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長らくお待たせしました。

それではどうぞ。

追記 5/25 美咲のセリフに違和感があったので一部を修正しました。


女子高に行こう!

雄也視点

 

結局あのあと弦巻さん達はライブの映像だけじゃなくて。今までの活動記録なんかも流し始めてしまい、演奏できずに練習が終わってしまった。

 

CIRCLEから外に出るともうすでに日は落ち、歩道を街灯が照らしている。

 

「こんな遅くまで練習やってたんだ……」

 

「まあもう十月だしね。日が暮れるのも早くなるよ……」

 

「練習の後に素敵な星空を見れるなんて最高ね!」

 

疲れ気味の奥沢さんに対し弦巻さんは元気一杯だ。奥沢さんは練習中いなかったんだけど、まりなさんと打ち合わせかな?いつもお疲れさまです。

 

「暗いから道に迷わないようにしないと……」

 

「はぐみと一緒に帰ればだいじょーぶだよ!かのちゃん先輩!」

 

不安げな松原先輩を北沢さんが励ます。確かに暗くなると道の雰囲気って変わりますけど、家に帰るだけでそこまで……

 

「雄也……申し訳ないけどその、私の後ろを歩くのはちょっと……」

 

「あ、すいません。」

 

先を歩く瀬田先輩の声が強張ってる。確かにこれだと文字通りの背後霊だ。

 

でも、周りが暗い状態で急に先輩の目の前に躍り出てしまったので

 

「………………」

 

びっくりした先輩が固まってしまった。幸い気絶まではいってない。

 

「あ……すみません……」

 

動く前に一言掛ければよかった。

 

「い、いや……気にしないでくれ。かのシェイクスピアも言っていた。

『暗闇はなく、ただ無知が有るのみ』

……とね。」

 

先輩、言いづらいですが多分使い方間違えてます……

 

 

 

 

と、そんなこんなで賑やかな帰宅時間を過ごしていると。

 

「……そうだわ!みんな、金曜日の夜って時間空いてるかしら?」

 

また突然何かを思い付いた弦巻さんが、みんなの予定を確認してきた。

 

「金曜日は……あ、ごめん用事入ってる。」

 

「私もバイトのシフト入ってる……」

 

「とーちゃんのお手伝いするって約束しちゃった……」

 

「こころの頼みに応えたいのだけど、私も外せない予定が入っているんだ。」

 

なんとまさかの全員空振り。

 

「なんか珍しいかも。こころがあたしたちを誘う時って大体誰かは予定が空いてるから。」

 

「あ、ゆーくんは空いてる?」

 

「僕は空いてるけど……一体なにするの?」

 

空いてるというか、練習以外特にする事がないというか……

 

「久しぶりに天文部の活動をしようと思ったの。あたしの学校で一緒に星を見ましょ!」

 

弦巻さんは天文部だったんだ。一人の時によく星空を見ていたから天体観測は嫌いではないんだけど……

 

「そんなことしていいのかな……」

 

「ええ、とっても素敵じゃない!」

 

「いやそういう意味じゃなくて……」

 

以前の練習公演の時に一回女子高に入ったことはある。その時はれい姉がいたし、一般公開みたいな感じだったからそこまで抵抗はなかった。

 

でも今回は違う。何もイベントのない女子高に単身で入らないといけない。入校許可みたいなのが下りればいいんだけど幽霊が取れるわけないし、完全に不法侵入だよねこれ……

 

「ゆーくん。はぐみたちの分までよろしくね!」

 

「満点の星空の下で男女二人が語り合う……ああ、とても儚い光景が目に浮かぶよ……!」

 

行く体で話が進んでいってる……って瀬田先輩!?さりげなく何言ってるんですか!?

 

「い、いいのかな……雄也君って男の子だけど……」

 

「いや許可もらわないと…ってキミ周りから見えないのか……」

 

奥沢さんと松原先輩が止めようとはしてくれたけど。周りの「行こう!!」と盛り上がってしまった空気を止めることができず。

 

「ごめん駒沢君。これ、観念して付き合うしかないかも……」

 

「そんな……」

 

「正直あたし達も気は進まないけど…こうなったこころって基本止められないんだよね……」

 

頼みの綱は呆気なく切れてしまった。

 

「まあ君なら大丈夫だとは思うけど……見えないからって変なことしたら美麗さんに言うからね。」

 

「そんなことやる訳ないじゃん……」

 

 

 

 

 

そしてあっという間に時間はすぎて───

 

「来ちゃったよ……花咲川女子学院。」

 

校門の前でため息を吐く。日も暮れかけていることもあり、帰宅する生徒もまばらだった。

 

「本当にいいのかなぁ……」

 

ここを越えたら不法侵入。越えずに帰っても事情を知ってるれい姉の数珠(じゅず)パンチ……一体どうすれば……

 

「いいんじゃないかな?」

 

「わっ!?」

 

声をかけてきたのは花咲の生徒さんだった。

 

弦巻さんと同じでこの人も僕のことが最初から見えるらしい。長く伸ばした黒髪と背負っているギターケースがとても印象的だ。

 

「い、いいって……?」

 

「あ、今のセリフ特に意味はないよ?君が「いいのかなー」ってぼやいていたから「いいんじゃないかな?」ってとりあえず言ってみただけ。」

 

「は、はぁ……」

 

こういう時なんて言えばいいんだろう……

 

「それで、君はここに何しに来たの?」

 

「え、それはその。えっと……」

 

言い訳しないと……何かよさげなやつ……

 

「あ、わかった。転校生でしょ?」

 

「はい!?」

 

斜め上をかっ飛んでいくような解答に思わず声をあげてしまった。

 

「はい…ってことは正解だね。花咲川女子()()にようこそ!」

 

いやちょっと得意そうにしてるけど全然違うよ!?学ラン着てる人が女子高に転校するわけないじゃん!!というか通ってる学校の名前微妙に間違えてなかった?

 

「大丈夫。うちはいいとこだよ。香澄やこころみたいにちょっと変った人もいるけど。」

 

もうこれどうすれば……と目頭に指を当てた僕を見て、転校先が不安だと更に勘違いしたらしい。心配してくれるのはありがたいけど違うから!転校しないから!!

 

あとその……あなたは弦巻さんのことを変わってるって言っちゃダメな気がするんだけど……というか、この人に変わり者呼ばわりされた香澄さんって一体何者なのさ。

 

と、ツッコミたいことは沢山あったのだが───

 

「おーいおたえー!!いくぞー!!」

 

「あ、有咲が呼んでる。じゃね。」

 

友人に呼ばれたらしく急に立ち去ってしまった。

 

「何だろう、前にもこんなことあった気が……」

 

とりあえず、他の霊感がある人に見つかる前にさっさと部室に行ってしまおう。




ここまで読んでくださってありがとうございます。

若干スランプになってしまい投稿が遅れてしまいました。いまは大部よくなっているとは思いますが。

今回のゲストはおたえと有咲でした。

せっかくなのでおたえも最初から雄也がみえることにしてみました。

そして、作者が一番好きなバンドリキャラは有咲なので一言だけでもセリフを書けて嬉しいです。

次回はようやくメインヒロインのこころ回です。お楽しみに

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