今回は少しシリアスな美咲回です。
彼女にしては積極的なキャラになってしまいましたがよければご覧ください。
美咲視点
キグルミの人の練習は早い時がある。その理由は──────
「また動きやすくなってる……」
練習スタジオで黒服さんがメンテナンスしてくれたミッシェルを他のメンバーが来る前に試着しなくちゃいけない時があるからだ。
こころ達が解らないのは今更だけど、そこまで変わった所が無い駒沢君まであたしがミッシェルって理解できないって……まぁ彼幽霊だけども…
「まあ、仕方ないか…」
そう呟いてミッシェルの頭を外すと──
「ひっ!!」
「だ、誰っ!?」
謎の悲鳴に体に緊張が走り、視界が反射的に入り口へ。そこには…
「ミッ、ミッシェルの首が……首が……!」
目を見開いて青くなっている駒沢君がいた。ドアをすり抜けて来たせいで全然気づけなかったよ…
「でっ、で……出たぁぁぁぁぁ!!お化けぇぇぇぇぇ!!」
「いやお化けは君でしょ!」
本物にそう言われるとは……
「え……え、あれ?奥沢さん!?どういうこと!?」
あたしの顔と声を理解した彼は更に混乱してしまった。
「はぁ……とりあえず今から着替えるからちょっと部屋出ててくれない?」
「え?あ、うん……」
それから数分後、あたしが着替えている間に駒沢君は落ち着きを取り戻したらしく……
「まさか……ミッシェルが奥沢さんだったなんて……」
なんとあたしがミッシェルだって理解できていた。何気にこのパターンは初めてだ。
「というか、なんで今まで気づけなかったんだろう…二人が一緒にいたことなかったし、声だって同じなのに……」
そうだよね、普通はそうやって解るはずだよね……
「それに…熊だとしてもずっと二足歩行だったよね?その地点でマスコットってわかるはずで…あれ、僕はいままでミッシェルをどう思って…」
「ま、まあ、気付けただけ凄いんじゃない?こころ達は未だに解らないんだし……」
なんか止めないとダメな気がした。練習前に疲れられちゃね…
「そ、そうなんだ……なんか、お疲れさまです……」
「あはは、どうも……」
駒沢君の迷走はとまったけど、そのまま会話も途切れてしまった。練習まではまだまだ時間がある。
(どうしよう。話すことがなくて気まずい……)
そういえば、彼は色々と謎な所が多い。一応一緒に演奏する訳だし、悪い人でもなさそうだし…ちょっと聞いてみようかな?
「駒沢君って、練習の合間何してるの?」
「へ?」
急にどうしたの?といいたげに目をぱちくりさせる駒沢君。
「えっと……れい姉のところでのんびりしたり、外に出てぼんやり人を眺めたりとか……」
「へ、へぇー……」
なんかおじいちゃんみたい……
「あ、でも最近は弦巻さんの家で自主練したり、問題集を使って勉強したりもするようになったかな?」
「あ、自習始めたんだ。」
きっかけははぐみの宿題かな?学校にも行けてないって聞いてたし、悪い兆候ではないはず。
「うん。ノートの代わりにれい姉のタブレットを借りてだけどね。」
なるほど。確かにポルターガイストでペンを動かしてノートに……は手間がかかるのかな?
「そういえば、美麗さんのいるところって学生アパートだよね?ずっとそこにいるの?」
「あっ、その……一応。」
さっきまでの柔らかい表情が一変。ばつが悪そうな顔をする駒沢君。
「え…本当に一緒に暮らしてるの?じゃあ寝るときとかは?」
一度美麗さんの家にお邪魔したことはあるけど、二人で住むには少し手狭な気がした。
「廊下で雑魚寝……してます。」
あ、そっちか……同じ部屋で寝ているとかだったら普通に引いてた……
「それで体を痛めたり、寒かったりしないの?」
一日や二日ならまだしも、半年近くもこの状態で過ごしてきたんだよね?
「実はこの状態、周りの温度とか感じないんだよね……それに壁はすり抜けるから寝がえり打っても大丈夫だったりするし……」
「へ、へぇー……」
幽霊って意外と便利……とも思ったがそれ以上に疑問が尽きない。
「じゃあ、元々住んでる家は?」
「あー……」
言いづらそうな表情がさらに曇っていく。踏み込みすぎだと頭の中で警告が鳴るが、もう遅い。
「あるけどその、基本家に誰も居ないし、母さんと顔合わせたくないから今の場所が居心地良いといいますか……」
どこか申し訳なさそうに言葉を絞り出す駒沢君。
背筋がすーっと冷えていくのが自分でもわかった。
結局、彼は全部話してしまった。
(お父さんを早くに亡くして、学校でいじめられて、お母さんも放置か体罰…それで誰かに歩道橋から突き落とされて幽体離脱……ね。)
想像以上の過去だったけど、苦しいのを押し殺す雰囲気がますます辛く見えてくる。
「ごめんなさい。暗い話して……」
「あーいや…こっちも辛いこと思い出させてごめん……」
さっき以上に重くなってしまった雰囲気がずっしりとのしかかってくる。
「でも、最近……僕、変わった気がするんだよね……」
しばらくして、沈黙を破ったのは彼だった。
「変わった?」
「上手くは言えないんだけど、皆のおかげでその、前向きになれているんじゃないかなって……」
「そうなの?」
「うん……僕、今まで友達とかいなかったから、みんなと一緒に何かやる事が新鮮で……
この間のソフトボールの試合観てた時もさ、もし体に戻れたらこんな風に皆の輪に入れるのかなって。そういう事、今まで考えたこともなかったから……」
たどたどしいけど、駒沢君の声に少しずつ生気が戻ってきた。
「……ありがと、少し元気出たよ。」
「よ、よかった……」
言葉に詰まりながら励まそうとしている駒沢君にお礼を言うと。ほっとした表情を見せてくれた。
彼の過去は明るいものではなかったけど、こころ達の影響で確実に前向きになっている。
こんな風に誰かを変えられるのだから、やっぱりあの子はすごいよ。
「それで、いつ体に戻るかは考えてるの?」
「うーん……流石にハロウィンライブが終わってからかな?今戻ったらリハビリでライブどころじゃなくなっちゃいそうだし。せっかく弦巻さんが誘ってくれたから、演奏はしたいなって。」
こんなのズルだけどね…と、照れ臭そうに答える彼との間に、もう重い雰囲気は流れていなかった。
おまけ
美咲「そういえば、天体観測の時こころに告白したって聞いたんだけど……」
雄也「!!!?……そ、その……それは……」
美咲「あ、こころに意味は教えてないから大丈夫だよ?ただ確認したかっただけというか……」
雄也「っ……っ……」
美咲(あー完全にショートしちゃった……ちょっとストレートに行き過ぎたかなぁ……?
けど、ここまでテンパられると逆に偶然っぽく……)
雄也「つっ、弦巻さんを僕に下さい!お母さんっ!!」
美咲「誰がこころのお母さんだ!」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
ハロハピで一番好きなのは美咲(というかみさここのカップリング)なんですが、書いてて難しいと感じるのが一番多いのも彼女なんですよね……どこかキャラが掴みきれないといいますか……
次は花音回の予定です。お楽しみに。
そして、最後になりますが本作のお気に入り登録者数が現時点で100人を達成しました!
本当に…本っ当にありがとうございます!!
投稿後に訂正してばっかりの作品ですが、これからもよろしくお願いします。