幽霊を笑顔に!!【本編完結】   作:GTP

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お待たせしました。花音回その2です。

書きたいことを全部盛ったらまた最長記録を更新してしまいました。

あと、今回書きたかったゲストが居たのでおまけで登場しています。

誰が来るかはお楽しみに。


初恋の味は…

雄也視点

 

 

喫茶店「エヴァース」は夫婦で営業していて、霊感のある奥さんが幽霊の話し相手になることも多いそうだ。

 

ちなみにマスターの旦那さんは実は霊感がなく、僕みたいなお客さんが来たときは奥さんがサインを出して見えるようにしてもらっているらしい。

 

「危なかったよぉ。もしストーカーとかだったら、ティーカップの下に塩を仕込んで追い払ってたからねぇ。」

 

カウンターの席にかけた僕達に奥さんがいたずらっぽく笑う。ほかにお客さんはいないので気にしなくても大丈夫だ。

 

ちなみに僕はお清めの塩を盛られた経験はないけど、やっぱり痛いのかな……

 

「それで、二人はどんな間柄なんだい?嬢ちゃんは花咲で君は……アヤ校でしょ?」

 

アヤ校と花咲は結局離れているので、生徒同士の交流は珍しいのだ。

 

「えっと……バンド仲間、でいいのかな?」

 

「多分……」

 

間違ってはいない……と思います。

 

「バンド!?じゃあ兄ちゃんも演奏するのかい!?」

 

目を丸くして僕を見る奥さん。バンドやってる幽霊はやっぱり珍しいのかも…

 

「えっと、僕はキーボードやってます…自動で演奏しているという体ですが。」

 

「演奏はポルターガイストでするのかい?器用だねぇ。」

 

あ、ありがとうございます……

 

「それで、嬢ちゃんはなにやってるの?」

 

「私は……ドラムをやってます。」

 

「ということは嬢ちゃんがいつも演奏を支えているのかい?すごいじゃないか!」

 

「そ、そんなことないですよ……」

 

早くもたじたじの松原先輩。この人も初対面なのにぐいぐい来るなぁ……というか僕、弦巻さんといい、おたえさん?といい霊感がある人に怖がられた事がないような……

 

「まったく……話すのは良いが先に注文を取らせてくれ……」

 

マスターが話を注文を聞いてきた。やれやれという感じではあるけど、やっぱりここではよくある事みたいだ。

 

「えっと……シフォンケーキと、アールグレイをお願いします。」

 

「あ、僕はその……大丈夫です……」

 

 

 

程なく先輩が注文したシフォンケーキと紅茶が来て、奥さんを交えた話の内容はペンギンの雛を助けた話や、夏休みに南の島に行った話。そして最近僕がメンバーとして入った前後のエピソードなど、ハロハピ結成から今までの出来事にになっていった。

 

「ずいぶんとパワフルな娘だねぇ。ライブに幽霊まで巻き込んじゃうなんて聞いたことないよ。」

 

一通り話をきいた奥さんが感心のため息をつく「いいこと思い付いたからやってみるわよ!」な弦巻さんの凄さは説明だけでも充分過ぎるくらい伝わったようだ。

 

「でも、そんなこころちゃんがいたから。今の自分がいると思うんです。」

 

引っ込み思案だった松原先輩は弦巻さんに何度も勇気をもらったそうだ。確か…朱に交われば赤くなる。だっけ?

 

「でも意外でした。ハロハピ二人目のメンバーって松原先輩だったんですね。」

 

ただそのきっかけがいきなり声を掛けられて、手放すつもりのスネアで演奏する羽目になったからというのがあの人らしいというか……

 

「よく考えると…そんな状況で演奏しきっちゃう先輩も凄くないですか?」

 

「そ、そんなことないよ……あの時は簡単なテンポでしか叩けなかったし……」

 

「そんな状況で凝った演奏ができる人なんて…中々いない気が…」

 

弦巻さんのことだし、即興で作った曲でもおかしくない。それに合わせたって増々すごいんじゃ…

 

「そうそう、もっと自信をもちなって。おばちゃん演奏のことはよく解らないけど、こんなガッツのあるドラマーさんが支えてくれるならバンドのみんなもきっと心強く思っているんじゃない?」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

奥さんに褒め倒され、先輩はどうしていいかわからなくなっていた。

 

けれどガッツか……確かに自分が先輩と同じ立場だったら置物になっちゃいそうだし……そういう意味では先輩は僕よりずっと度胸があるのかもしれない。

 

それに、奥さんの言う通り先輩のドラム…というか、北沢さんも含めたハロハピのリズム隊は安定していて本当に心強い。ハロハピの曲はテンポが途中で変わるものもあるのだけれど、そんな時はいつも二人が皆をずれないように纏めあげ、支えてくれるのだ。

 

(そういえば、僕が初めて見えたとき最初に声を掛けてきたのも先輩だったよね……)

 

と、色々思い出していると──────

 

「それにしても、ガールズバンドの中に男子が一人。なんて兄ちゃんもよりよりみどりだねぇ。」

 

「へっ!?」

 

いたずらっぽくニヤニヤしている奥さん。なんでそういう方向に話を持って行くんですか!?

 

「まだまだ若いんだし、気になる娘とかいるんでしょ?」

 

「あ、いや、そんなこと……」

 

「ふーん……嬢ちゃん。本当のところ、どうなの?」

 

松原先輩に聞いてみるようだ。こういう時、こっち側の話は大抵信じてもらえないのなんでさ……

 

「この間、そのこころちゃんに……告白したみたいで……」

 

「ぶっ!!!」

 

ま、まさか松原先輩も天文観測のことを知ってるんですか!?

 

「ちょっ、ちょっと待ってください!!それは……いたっ!!」

 

遮ろうとした指先に電流が走る。よく見るとカウンターには皿に盛られた清めの塩が。い、いつの間に用意したの!?

 

「やっぱり好きな娘いるんじゃないか。それで彼はどんな告白したんだい?結果は?」

 

「夜の花咲の屋上で天体観測をしていた時に……つ、「月がきれいですね。」と……」

 

がっつかないで下さい!そして押し負けないでください先輩!!凄く恥ずかしいです!!

 

「おーずいぶん大胆な。それで?結果は?」

 

「それが……通じてませんでした。」

 

「あちゃー……でも振られた訳じゃないんだし、まだチャンスはあったりするかね?」

 

「ほ……ホントに待ってください!!あれは事故なんです!!」

 

それとお願いなのでお塩下げてもらえませんか?なんか近くにあるだけでピリピリしてきました……

 

「え、違うのかい?」

 

お塩を下げながらとぼける奥さん。なんか見透かされてる気がするけどとりあえず一旦止めないと!!なんかもうよくわからないけどマズい!!

 

「そうなんです!!あれはその……たまたま弦巻さんと僕が同じことを考えていただけで……それで、僕が話を切り替えようと……

 

これ……間違いなく墓穴掘ってる……

 

「同じ事?何を考えていたのかな?」

 

「それは……「もっとここにいれればいいな……」と……」

 

嘘を吐くような余裕なんてあるはずもなかった。水を打ったように一瞬店内が静まり返ったが──────

 

「ぷっ……あっはっは!!」

 

すぐに奥さんの笑い声が響き

 

「ゆ、雄也君……」

 

驚きながらも「それだと逆効果なんじゃ……」と言いたげな松原先輩の視線が深々と突き刺さった。

 

「い、いやぁ……息ピッタリじゃないか!!いいねぇ、青春だねぇ!!」

 

もうやだ!おうちかえる!!

 

涙目になって笑う奥さんに対し、沸点を完全に突破した僕はカウンターに突っ伏した。

 

もちろん弦巻さんのことは嫌いではないよ?幽霊の僕にれい姉以外で初めて声を掛けてくれた人だし、僕が笑った時もまるで自分のことのように喜んでくれて照れ臭かったし……だけどそういうのじゃ……

 

でも、さっき道に迷う前も弦巻さんのこと考えてたような……天体観測の後も星座のこと詳しくなれば喜んでくれるかな?とか考えていたこともあったよね。他にも最近気がつくと彼女の顔が頭に浮かぶ事が増えた気がする……

 

も、もしかして、今まで自覚がなかっただけで本当に……

 

「こら、あまりいじめるな。」

 

「あいた。」

 

我に帰り顔をあげると、マスターが伝票を奥さんの頭の上に乗っけていた。

 

「はぁ……うちの家内がすまなかった。」

 

「あ、いえ……」

 

マスターは右手に伝票を左手にはトレイを持っている。上には真っ白なティーカップが。

 

「えっと、そのカップは……?」

 

「レモンティー、君のだ。」

 

そう言ってティーカップを目の前においてくれた。淡い色のお茶とほんのりと昇る湯気が揺れる。

 

「あ、ありがとうございます……でも……」

 

「幽霊だから飲めないって?大丈夫。香りだけでも覚えて欲しいっていう旦那のおせっかいだから。」

 

「あ、はい……」

 

実は匂いも解らないんですけど……という言葉を抑え、とりあえず出されたカップに少し顔を近づけてみると───

 

「あれ?」

 

紅茶の香りにレモンのさわやかさが混ざりあい、今まで何も感じなかったはずの鼻を抜けていく。

 

「に、匂いが……解る……?」

 

あっけにとられる僕をみてマスターが少し笑った気がした。

 

「あ!その、申し訳ないんですがお代は……」

 

「代金はいい。その代わり、もしこれが飲めるようになったらまた来てくれ。」

 

れい姉の言ってたいいことってこういうことだったんだ……ささやかな変化かもしれないけど、また商店街を散歩するのが楽しみになった。

 

 

 

「今日はありがとうね。また迷子になっちゃったけど雄也君のお陰で助かったよ。」

 

「い、いえ……僕の方こそありがとうございます。」

 

帰りの途中、先輩が声をかけてきた。ケーキも紅茶もおいしかったようで表情も明るい。

 

けど、お礼を言いたいのは僕もだ。まさか匂いがわかるようになるなんて…それに弦巻さんのことも…ああもう思い出したらまた熱くなってきた!先輩が迷子にならないように案内に集中しないと……!

 

「あれ?」

 

突然スマホの画面真っ暗になった。そして出てきたのは電池のマーク…これって……

 

「スマホの電池…切れちゃった……」

 

「……」

 

もう空は夕焼けに夜の色が混ざって紫色になっている。このまま行ったら最悪遭難するんじゃ…

 

結局、喫茶店に戻って相談した結果、奥さんが車を出してくれて僕たちを近くまで送ってくれた。

 

また一つ、体に戻れたらやりたいこと……というか、やらなくてはいけないことが増えてしまった。

 

 

 

おまけ

 

雄也「香りが解るようになったから商店街のパン屋さんに寄ってみたんだけど……ダメだ、良い匂いすぎて動けなくなりそう……」

 

??「いや~。ゆーれーさんもやまぶきベーカリーの良さがわかっちゃいますか~」

 

雄也「うん、ホントに美味しそうな香りで……って誰!?

 

??「おーナイスリアクション。そんな君に3モカちゃんポイントプレゼント~」

 

雄也「へ?あ、どうも……」

 

この後普通に仲良くなった。




ここまで読んでくださってありがとうございます。

ということで、こんかいのゲストはモカちゃんでした~。いやーあの喋り方を一回書いてみたかったんですよね~。

補足……というより蛇足設定ですがひとくちに霊感があるといっても強弱とか波長の合う合わないはあります。こころ、たえ、モカはれい姉や今回出てきた奥さんより霊感は弱くて、見える幽霊と見えない幽霊がいたりします。

それでは次回もお楽しみに。
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