幽霊を笑顔に!!   作:GTP

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お待たせしました。

この回は美咲回その2です。

メンバー会は一区切りとは言いましたが、事情があって一話だけ復活です。

本当にギリギリですが美咲の誕生日に間に合わせられました。

では、どうぞ


はっきり見えた気持ち

雄也視点

 

ハロー!ハッピーワールドとライブをすると決まってから僕の1日のスケジュールはかなり変わった。以前までは起きる時間とかもバラバラだったけど、今は朝決まった時間に起きて自習をしたり、その合間にライブに向けて弦巻さんの家で自主練をしたりと、ぼんやり過ごしていたのが嘘みたいだ。

 

当たり前の事だけど、自主練習で弦巻さんの家にお邪魔する時はちゃんと弦巻さんや黒服さんに挨拶をするようにしているし、キーボードのある練習部屋以外には入らないないようにしている。弦巻さんの部屋が気にならないのって?えっと、それはその……

 

と、とにかく!僕は人として!いや今幽霊か……それでもっ!自分の当たり前の範囲ではあるけどマナーを守るように心がけている。

 

はずだったんだけど……

 

「つ、弦巻さん……一体どこ……?」

 

その日、僕は弦巻さんを探して屋敷中の部屋を見て回る破目になっていた。

 

なんでこうなったのかというとメンバーみんなで弦巻さんの家で練習していた時に───

 

「あたし、みんなとやりたいことがあるの!」

 

ということで何故か皆でかくれんぼをやることになったのだ。練習の方はすごく順調なので気分転換に皆と遊びたかったのかもしれない。ただ……

 

「グーを出しとけばよかった……」

 

じゃんけんでストレート負けを喫し、僕が5分後に皆を探すことになってしまった。

 

なんで負けちゃうかなぁ……隠れる側なら練習部屋のバスドラムに入り込むつもりだったんだけど……女の子の家を探って回るのは気が引けるよ……

 

でも、隠れている人をほったらかしにして帰るとかもっと気が進まないし……実際やられたことあるからね……

 

こうなった以上は仕方ないと気持ちを決め、時計が大体5分進んだところで練習部屋を出たら───

 

「あれ?奥沢さん?」

 

廊下に奥沢さんが立っていた。全然隠れているようには見えないけど、どうしたんだろう?

 

「お、奥沢さんみーっけ?」

 

「あ、こんな状況でもちゃんと言うんだ……」

 

「隠れんぼだから一応……でも、どうしてわざと見つかったの?」

 

「こころの家ってとても広いじゃん?だからあたしも手伝おうと思って。」

 

「あ、ありがとう……」

 

大変なのは覚悟していたので奥沢さんの気遣いがとても嬉しかった。

 

 

 

それから最初に見つけたのは北沢さんで、別の部屋の戸棚に隠れていたのだが……

 

「───ッ!!!」

 

「あっ、ごめん!」

 

うっかり扉を開けず首を突っ込むという無用心なことをしてしまったせいで、見つけた北沢さんは腰を抜かし涙目でぷるぷる震えていた。

 

「あのさ、ポルターガイスト使うとか首突っ込むまえに一言かけるとかしよ?こんなことしたら誰だって腰抜かすから……」

 

「すみませんでした……」

 

もちろんその後奥沢さんに怒られてしまった。

 

 

 

それから数分後

 

「あ、あの……」

 

「薫さん……そこで何しているんですか?」

 

廊下に置いてある大型観葉植物の隣で謎のポーズをとっている瀬田先輩を発見した。これで隠れていると言うのはちょっと無理があるような……

 

「せ、瀬田先輩みーっけ……」

 

「なんと、もう見つかってしまうとは……」

 

残念そうにポーズを解く。もしかして、先輩なりに自信があったのかな?

 

「完全にむき出しじゃないですか……一体、なにがしたかったんです?」

 

「私は以前、木の役を演じたことがあるからね、その時培ったものを今こそ活かそうと思ったのだが……」

 

そう言われてみれば木に見えなくも……すみません。やっぱりよく解らないです……

 

「確かに先輩の演技は凄いと思いますけど……流石にそうは見えないと言いますか……」

 

「それなら茶色の全身タイツを着て両手に枝を持てば……」

 

「「普通に隠れてください!」」

 

そんなことしたらポピパのりみさん?みたいなファンの方々がガッカリしますよ!!?

 

 

 

そして、松原先輩は

 

「ふぇぇ……」

 

「あ、かのちゃん先輩みーつけた!」

 

「はぐみちゃん?あ、みつかっちゃった……」

 

廊下で迷子になり隠れるどころじゃなくなっているのを北沢さんが発見した。なんか、自分以外にかくれんぼで見つかってホッとしている人を初めて見たかも……意味合いは違うけど……

 

 

 

ということで、最後に残ったのは弦巻さんなのだが……

 

「ど、どこいったの……?」

 

開始から一時間。奥沢さんと僕のペア、瀬田先輩の二手に別れて弦巻さんを探しているのだが一向に見つかる気配がない。松原先輩は北沢さんと練習部屋でお留守番だ。

 

ちなみに今探しているのはたくさんある黒服さんの部屋の一つ。

 

普段はサングラスにスーツでピシッと決めている黒服さん達だけど、ぬいぐるみが沢山置いてあったり、アジアン風な家具を集めている人がいたりと部屋は個性豊かだった。あまりまじまじみたら怒られそうだから気をつけてるけどね……

 

「そうだ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ。」

 

ベッド周りを探し終えた奥沢さんがこちらに声を掛けてきた。

 

「駒沢君って、こころのことをどう思ってるの?」

 

「どうって……」

 

探す手を止め、腕を組んで考える。

 

「ちょっとざっくりしてるけど……ありがたい。かな?この状態になった後にれい姉以外で初めて話した人だから。」

 

「その辺気になってたんだけどさ、美麗さんの他に霊感のある知り合いとか、逆に幽霊の知り合いとかいなかったの?」

 

「うん……外に出るとはっきりこっちを見る人もいるにはいたんだけど、みんな怖がって逃げちゃうか素通りで……

あと僕、実は霊感なくてそういうのをみたことないんだよね……」

 

「幽霊同士なら見えるとかないんだ…」

 

あの喫茶店の奥さんやれい姉みたいに幽霊と積極的に関わろうとする人は結構珍しいのだ。

 

「うん。だから、初めて弦巻さんに声を掛けられたときはこっちがびっくりしちゃったよ……でも、そのおかげで今があるわけだし、やっぱり嬉しいというか……ありがたかったというか……」

 

もちろん最初は振り回されて大変だったし怒ってしまったこともあったけど、あの子に会えたから今の自分が居る。なんて言っても決して大げさではない。

 

「それに、弦巻さんっていつも楽しそうだから一緒にいると元気もらえるんだよね。」

 

「あー。それは解る。」

 

「今は幽霊だからやれることは少ないけど……もしあの子がよければ、体に戻れた後にまた遊園地に行ったり商店街を回って美味しいもの食べたりとかしたいなって……」

 

ここまで言ってにやけている奥沢さんに気付いた。し、しまった……これじゃ……

 

「やっぱり、こころのこと気になってるんだ。」

 

「……は、はい……そう、だと思います……」

 

今まではっきりとした形にはできていなかったけれど、やっぱり僕は弦巻さんの笑顔にいつの間にか惹かれていたようだ。

 

「えっと、このことって……」

 

「大丈夫、こころには内緒にしておくから。」

 

「あ、ありがとう。でも反対とかしないの?」

 

「反対より大変だろうなー。みたいな感じかな?

でもなんというか、キミの気持ちも解らなくはないからね。」

 

え、解らなくはないって……まさか奥沢さんってレズ?とかそっち系の……

 

「いや別にそういう意味じゃないから。変な受け取り方しないでくれない?」

 

「は、はい……」

 

怒るよ?とジト目で睨まれてしまった。僕、考えてる事がすぐ顔に出るんだよね……

 

「こころって放っておけないけどさ、こころもあたし達の事を放っておかないじゃん?だから、異性としては気になっちゃうんじゃないかなって。

それに、あの子といるときのキミってやっぱり楽しそうだし。」

 

「ううっ……」

 

自分でも形にできてなかった気持ちを言い当てられ、思わず顔をそらした。

 

「でもちょっと心配だなぁ。こころってネガティブなのが通じないから。」

 

「え?通じない?」

 

苦手とかなら解るけど、通じないって?

 

「そういうことを言っても、「よく解らないのだけど。」って話を進めていくんだよね。だから、ずっとジメジメしてると嫌われちゃうかもよ?」

 

「うそ……」

 

思わずうなだれる。もしかして僕、弦巻さんと相性悪いのかな……

 

「通じないのは本当。でもまあ大丈夫じゃない?こころはそれで誰かを避けるような事はしないから。それに、駒沢君って根は明るい性格だと思うしさ。」

 

顔をあげると、おかえしと言わんばかりのいたずらっぽい表情をしている奥沢さんが。

 

「本当にそう思ってる……?」

 

「ごめんって……一応相談とかは乗るよ?あたしじゃ力不足かもだけど……」

 

「そんなことないけど……忙しいんじゃ……」

 

すごく頼もしい反面、いつも大変なのに僕までお世話になるのは申し訳ないような……と思っていると……

 

「みしゃき~……」

 

「!!お、奥沢さん。今の……!」

 

「う、うん……!」

 

微かだけど弦巻さんの声がした。慌てて二人で彼女を探したら───

 

「すぅ……すぅ……」

 

彼女はクローゼットの中ですやすやと寝息を立てていた。

 

「まさか同じ部屋にいたとは……」

 

本当に肝が冷えたよ……もし聞かれてたら……

 

「でもどうしよう。全然起きないけど……」

 

奥沢さんが声を掛けてもゆすっても一向に起きる気配がない。

 

「このまま寝かせてはおけないし……おぶるしかないか……」

 

クローゼットに入り込み、よっこらしょ。と弦巻さんを背負う奥沢さん。

 

そのまま弦巻さんの部屋に向かう途中。「みっしぇる……」と寝言を言う彼女に「はいはい、ミッシェルですよー。」と答える奥沢さんはやっぱりお母さんみたいだった。

 




ここまで読んでくださってありがとうございます。

この話は雄也にはっきりこころを意識する場面がほしいなと思って急遽作ることになりました。

最初は花音さんと薫さんも入れて三人にしようか?とかハロハッピーに予告状出させようか?とか色々考えたのですが雄也の過去を知ってる美咲とのマンツーマンに落ち着きました。

ちなみにこころがかくれんぼをしようと言ったのは、自分の家には楽しいものがたくさんあるのに雄也が遠慮しているからだったり。

次回は雄也の掘り下げとこころ回です。お楽しみに。

最後になりましたが誤字報告ありがとうございました。

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