今回はモカと日菜の短編集2本立て
…といきたかったんですが。読みやすさを考慮して分断して投稿することにしました。
2つ足して7000字近く行くほどに文字数が増えてしまうとは思わなんだよ…
最後になりますが5/24の日間UAランキングで33位に入ることが出来ました!
投稿を初めて一年経ちましたがここにきて最高順位の更新できるとは・・・重ね重ね、本当にありがとうございます!
では、本編をどうぞ!
12/26 中盤、終盤の展開を大幅に修正しました。
モカちゃん初冬のパン祭り
雄也視点
「つ、疲れた……」
体に戻り、目を覚ましてから一週間。日課のリハビリが終わり、僕は息絶え絶えに病室のベッドに突っ伏した。
久しぶりの体は相変わらず言うことを聞いてくれないけれど、起きるのも辛かった時に比べたら大分進歩したと思う。この調子で行けば結構すぐに退院できるそうだ。回復はやいって先生びっくりしてたけど…幽体離脱中、こころちゃんに連れ出されてたのと関係あるのかな…?
(でも退院かぁ……そうなったらまた新しい生活が始まるんだよね……)
追試対策や、転校のあれこれとか全然決まっていないんだよね……皆がいる東京から出たくはないのだけれど……
これからがどうしても不安で、気持ちに雲がかかりそうになっていると不意に病室のドアが開いて───
「ゆーくん。いる~?」
「あ、青葉さん。久しぶり……」
Afterglowのリードギター。青葉モカさんがお見舞いに来てくれた。時間も時間だし、羽女の制服を着てるから学校帰りかな?なんか鞄とは別に大きい紙袋を抱えてるけど……
「おー。ちょっと見ない間にずいぶん濃くなりましたな~。」
「う、うん……体に戻れたからね……」
濃くなったって日焼けじゃないんだから……今さらだけど、幽霊の僕が見えてた人ってみんな自分の世界を持ってるというか……不思議な感じだよね……れい姉除いて。
「あ、そうだ。消えかけた時励ましてくれてありがとね。青葉さんのメッセージ、すごく格好よかったから……」
「どーいたしまして〜。
ゆーくんにそう言って貰えてモカちゃん冥利に尽きるってものよ〜。」
『これから待ってる沢山のエモい事が、いつも通りになっていく。』
ちょっと間延びしていたけど、青葉さんもあのAfterglowのメンバーなんだって、そう思えるような言葉選びだった。今の返答からそういうのはその、あまり感じられなかったけど…
「おやおや〜?これはあれですかな?ようやくゆーくんもモカちゃんの魅力に気付いちゃったとか~?」
「あ、いや、えっと……」
青葉さんの独特な返答に戸惑ってると、彼女の表情が「ふふーん」と言いたげなしたり顔へと変わっていた。
正直、最初の笑顔もそのいたずらっぽい表情も可愛いとは思います……ますけど僕はもう別な人が気になっている訳で……こういう時って何て言えば……
「こころちゃんか、それともモカちゃんか……二人の
「こ、こころちゃんです……って何でしってんの!?」
「モカちゃんはなんでもお見通しなのだよ~。」
は、はぐらかされた……と、少しだけ冷静になった次の瞬間
「病室では静かにしなさい!!」
看護師さんの怒りの声が僕の耳をつんざいた。
「え、えーと……ところで青葉さん、その大きな紙袋は?」
怒られてまくって沈んだ気持ちをなんとか立ち上げ直し、気になってることを聞いてみる。
「ふっふっふー。ここ、どーこだ?」
青葉さんが持ってきた袋に書かれていたのは……
「やまぶきベーカリー……?それってもしかして、あのお店のパン?」
「そーだよー。お化けじゃなくなったゆーくんにモカちゃんが一押しを買ってきました~。」
じゃじゃーんと、青葉さんが取り出したのはミニクロワッサンだった。焼き上げてからそんなに時間が経っていないのだろう。つやつやで見た目だけでも美味しそうなのが伝わってくる。
「……ってあれ?それだけ?」
「うん。おしまーい。」
「ほ、他のパンはないの!?」
これだと僕が図々しく見えるかもしれないけど、彼女が抱えられる位大きい紙袋の中に小さなパンが一つだけというのはどう考えてもおかしい訳で……
「いやー、パンがみんなモカちゃんを呼んでたからね~。あたしを食べて~って。」
「呼んでたって……じゃあまさか、青葉さんはその袋に入ったパンをほとんど食べちゃったって事!?やまぶきベーカリーからここに来るまでの間に!?」
「だいせいかーい。ゆーくんさえてるね~。」
う、嘘でしょ……いやでもそうだ。僕が初めて青葉さんに会った時も……
『やっぱり焼きたてはたまりませんな~。』
って言いながら食パン1斤もりもり食べてたんだ。何も付けずに…あの紙袋位の量なら行けてしまうかも……
「いや、あの、そんなに沢山食べて大丈夫なの?」
「だいじょ~ぶ~。カロリーをひーちゃんに送ってるからね~。」
「カロリーを?送る?…ってそんなレベルを毎回送りつけたら可哀想じゃん…
それにひーちゃん?って?」
「上原ひまりでひーちゃん。ベース担当であたしたちAfterglowのリーダーなんだ~。」
ベースの人ってピンクの髪の人?なんかライブの最後に掛け声やろうとして盛大に滑ってたけど……
「ん?うーん………」
「どーかした〜?」
「いや、ライブ以外で上原さんを見たことがある気がして……」
……あ、そうだ思い出した!!練習公演の後屋上に来た薫先輩のファンの人だ!!
「ん?あれ?待って、そもそもAfterglowのリーダーってあの……ここにメッシュ入れてる人じゃなかったの!?」
「蘭じゃないんだよね〜。よく言われるけど〜。」
「そ、そうなんだ……」
メッシュの人はランさんって言うんだ。こっちの経験のせいかお化けチックな歌が最初には来るとはいえ、あのサビの心を底から揺さぶるような歌声も忘れられない。
「あ、そうだ。このパンありがとね。せっかくだからここで……」
頂いたものなんだし、美味しいうちに……と思い、クロワッサンを口に入れようとすると───
ぐぅ~~~~~
僕ではない誰かのお腹の音がしたような……いやいやまさか……
「じゅるり……」
「……」
そのまさかだった。音のした方に目を向けると、口元に人差し指を当て物欲しそうにこっちを見ている青葉さんの姿が……
嘘でしょ…あれだけ食べてまだ足りないの!?いくらなんでも底なしすぎないこの人!?
「……ってちょっとよだれ!よだれっ!!僕大丈夫だから!これ食べていいから!!」
唖然としてる時間もない。ある意味危険な状態の彼女に慌ててミニクロワッサンを差し出すと、待ちきれんとばかりにふらふら近いてきて……
「あむっ。」
ぱくりと一口で頬張ってしまった。手ごと食べられるかと思った……
「♪~」
そのまま目を瞑り、至福の表情でクロワッサンをもむもむしている。一個しか無い分、味だけじゃなくて香りや食感まで全部味わい尽くすつもりなのだろう。
結局僕のお腹は膨れなかったけど、こんなに幸せそうならなんかもう……全然気にならないや。
「満足満足~。やっぱりさーやのお店のパンが一番だよ~。」
「ま、満足できたなら良かったけど、そんな食べて本当に大丈夫なの?あげた後に聞くのもあれだけど……」
「もーまんたいもーまんた~い。モカちゃんのカロリーはひーちゃんに行くけど。ひーちゃんのカロリーはきょーぶに行くからね~。
だから実質ゼロカロリ~。」
「胸部って……胸?でも上原さんって確かに大……────!!」
何声出してるのバカなの!?僕はバカなの!?普通にセクハラだよこれ!!
「うわぁ〜変態だ~むっつりだ~。いっちゃお~こころちゃんにいっちゃお~」
「!!」
マズイ、こんなことこころちゃんにバレたりしたら……
『雄也……最低ね。』
ダメだ!想像するだけでも辛い!!絶対止めないと……!
「ま、待って!今の無し!!代わりに僕、青葉さんにやまぶきベーカリーのパン奢るから!好きなだけ食べていいから!」
「!それ、ほんとー……?」
「うん!今お金全然ないけど……絶対忘れないしちゃんとバイトも探すから!だから……」
「りょーかーい。それじゃあその話はおいおいってことで〜。」
言った手前、ちゃんとバイト探さないと……あと、これからは自分の言動にもっと気をつけよう。もう僕は皆から見えるんだから……
一方その頃、羽女の屋上では───
ひまり「───ふぇっくしょん!!」
蘭「ひまり、もしかして風邪ひいた?さっからずっとくしゃみしてるけど……」
ひまり「風邪じゃないと思うんだけど……なんか急に寒気が……」
巴「ここにいないつぐかモカが噂してんじゃないか?」
ひまり「もーっ!モカはまたあたしをまたからかってー!!」
蘭「つぐみが噂してない前提なんだ……」
ここまでお付き合い頂いてありがとうございました。
モカちゃんの口調はやっぱり書いてて楽しいです。ただ内容の方も完全に彼女のペースに持ち込まれた感じで作者としては微妙に悔しいです(笑)恐るべしモカちゃんパワー…
ちなみに雄也の好きな人の下りは、モカが自力で気づきました。初対面の時、ハロハピにお世話になってることを雄也が言っており、その表情やらなんやらかんやらで察した感じです。
それとラストでの下りでの補足ですが、多分モカは雄也がパンを奢ろうとしても
「あれ〜なんのことだっけ〜」
みたいな感じにとぼけて躱すんじゃないかなと思います。いくら彼女でも懐事情がキツくなるであろう雄也にパンをねだったりしないはず……
最後にひまりちゃんすまぬ……なんかあなたをセクハラせんといけない気がしたんだ。反省はしたけど後悔は全然してない。むしろ清々しい。
……はい。失礼しました。
次回は日菜回です。こんなバカで変態な作者ですが、また拙作をお手にとってくださると嬉しいです。