幽霊を笑顔に!!【本編完結】   作:GTP

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あけましておめでとうございます。

今年もこの作品をよろしくお願いします。

また時間かかってしまいました。いつものことながら煮詰まってしまった上に年末からAPEXにどハマりしてしまいまして……

今回は大掃除回その二。話を膨らませるのが大変でしたがお付き合い頂けると嬉しいです。

では、どうぞ。

2025.2.19 今後の展開に違和感が出た為「贈り物」の内容を少し変更しました。


時を超えた贈り物

雄也視点

 

 

「わぁ……」

 

こころちゃんの瞳が好奇心たっぷりに見開かれている。

 

あの子に初めて見つかった時、遊園地で僕が名残惜しそうにピアノを撫でていた時、星座の話をした時……

 

そんな楽しそうな物を見つけた時の表情。思い出に残るような出来事とだいたいセットなので、自分の中では笑顔と同じくらい印象が強くなっている。

 

けれど、いまその視線が向けられているのは、幽体離脱した男子高校生でも、満天の星空でもなくて───

 

「ピアノがあるわ!雄也はここで演奏していたのね!」

 

「う、うん……今は壊れて音鳴らないけど……」

 

埃まみれで、そんなに特徴もないであろう僕の部屋だった。

 

「それなら黒服さんに直してもらいましょう!きっと元通りにしてくれるわ!」

 

「い、いやそんな……」

 

「かしこまりました。そのピアノは一旦こちらでお預かりします。よろしいでしょうか?」

 

「あ……はい。」

 

申し訳ないよと言うより先に黒服さんがピアノ持ってっちゃった……びっくりしすぎてうんって言っちゃったよ……

 

「これで雄也とまた一緒に歌えるわね。楽しみだわ!」

 

「そ、そう……ならよかったけど……」

 

黒服さんとこころちゃんにどんどん借りが増えていく……ピアノが直ること自体はいい事なんだけども……罪悪感みたいな気持ちが一気に……

 

「あー…えっと、とりあえず掃除しよっか?」

 

なんかキャパをオーバーしそう……というか、既にしていたのかもしれない。逆に冷静になった気がした。

 

 

 

とまあ、先が思いやられる形で始まった大掃除はというと……

 

「ねぇねぇ雄也?これはアルバムかしら?」

 

「え、まあそうだけど……あ、待って!読むのは掃除終わってから……」

 

「この子が赤ちゃんだった頃の雄也ね!とーっても可愛いわ!」

 

「そのー……こころちゃん。掃除しよう?ね?」

 

彼女の好奇心があっちこっちに行くせいで作業が中断したり……

 

 

 

「窓を開け終わったわ!次は何をすればいいかしら?」

 

「えっと、次はハタキで高い所からホコリを落としていこう。

床に落ちた汚れは掃除機で吸い取るから。」

 

「なんだか楽しそうね!それーっ!」

 

「あ、ちょっ!そんなバタバタやると……げほっ!ごほっ………!」

 

彼女のパワフルぶりにこっちが振り回されたり。

 

 

 

 

「机や本棚のホコリも充分落ちたし、床の掃除も終わったね。

それじゃあ最後に本棚の裏や机の下も動かして……ふんっ……ぬぬぬ……」

 

「雄也?本棚がちょっとしか動いてないわよ?」

 

(お、重い……僕こんなに力なかったっけ……?)

 

ずっと寝たきりだったとはいえ、非力すぎる自分にショックを受けたりしたけど、あまり広くはないのもあって意外とあっさり終わってしまった。

 

 

 

そのまま次の部屋に行くことになったタイミングで黒服さんが戻ってきたのだが──

 

「駒沢様、申し訳ありません。電子ピアノが…」

 

直せないとのことだった。外傷だけでなく、内の回路にまで錆が回っていたらしい。

 

「そうでしたか…見てくださってありがとうございます。」

 

やっぱりそうだよね……どこかの誰かが散々床に叩きつけて、ひび割れとかスピーカーからお酒注いでたからなぁ……

 

「……」

 

「雄也?」

 

「…大丈夫。

ここの掃除終わったし、次の部屋行こ?」

 

はぁ……嫌なこと思い出しちゃったよ……

 

 

 

 

 

「雄也、ここは誰のお部屋かしら?」

 

「ここは…父さんがいた部屋だね……」

 

部屋は父さんが住んでた頃からほとんど変わってないんだよね…なんか僕、ファザコンみたい……

 

「と、とりあえず、ここも掃除していこうか。」

 

こころちゃんと話しながら、さっきと同じように窓を開け、天井や高いところのホコリを落として、床に掃除機をかける。2回目なのもあってビックリするくらいにスムーズだ。

 

 

 

───そして、作業もほぼ終わり、落ち込んでいた気持ちも何だかんだで元に戻りつつあった僕を思いもよらない出来事が待っていた。

 

 

 

「雄也雄也!ここにプレゼントがあるわ!」

 

「へっ?プレゼント?」

 

状況を飲み込めないままこころちゃんにクローゼットの前まで引っ張られていく。

 

(これって……父さんから!?)

 

かなり大きい箱だ。とりあえず包装紙を開いてみるとそこにあったのは……

 

「「キーボードだわ!(だ……)」」

 

2人の声が重なった。箱が若干色あせてはいたけど梱包の箱がテープで綺麗に止められている。間違いなく新品だ。

 

「スタンドもあるわ!これならどこでも演奏できるわね!」

 

「ほんとだ……すごい……」

 

中のキーボードもスタンドも子供向けのものとかではなく、ライブ活動なんかで使っても問題無いものだった。

 

「手紙もあるわ。これは雄也宛じゃないかしら?」

 

こころちゃんから手渡された便箋を開け、中の手紙を取り出してみると───

 

 

 

 

 

雄也、11歳のお誕生日おめでとう。

 

そのキーボード、今の雄也にはちょっと大きいかもしれないけど、ずっと使って欲しくて奮発してみたんだ。できるだけ軽いものを選んだつもりだけど気を付けろよ?またうっかり落っことしたりして壊しても買えないからな?

 

雄也にはいつも家のことをまかせている上、この頃はますます一緒にいる時間があまりとれなくてごめんな。

 

今父さん、仕事以外にもやることが出来るかもしれないんだ。

 

雄也は優しいからきっと気にしないでとか、無理しないでね。とか言ってくれると思うけど、本当は寂しいんじゃないかっていつも心配なんだ。

 

だから、父さん決めたんだ。今やってることが終わったらお前の願い事をなんでも聞いてやるって。

 

行きたい所に連れてってやるし、食べたいものがあるなら父さん頑張って作ってみるし、欲しいものがあれば……あーまぁ、ある程度なら買ってやる!

 

沢山思い出作ろうな!

 

駒沢優吾

 

 

 

「なんで……なんでだよ……!」

 

頭の中に沢山の情景が浮かんでは消えていく。

 

子供の頃。僕の手を引いて遊園地に連れていってくれたこと。

 

ピアノの発表会でなぜか1人だけボロボロ泣いてて逆に僕が恥ずかしくなったこと。

 

テストで100点をとった時に髪がぐしゃぐしゃになる位に頭を撫でてくれたこと。

 

けれど、振り返る思い出は暖かいものばかり。僕の父さんは少しおっちょこちょいだし、大袈裟な部分もあったけど、本当に……本当に優しい人だった。

 

 

 

こんな立派なキーボードを買ってたなんて……大切に使わないと……

 

母さんに見つかってたら絶対壊されるか捨てられていたはず……ずっと見つからなかったなんて奇跡だよ……

 

でも、なんでいなくなっちゃうの?なんで事故で父さんが死ななきゃいけなかったの?

 

もう1回会いたい……このキーボードで演奏する所を見せたかったよ………

 

 

 

巡り続ける色んな言葉になんでしか言えない口が追いつかなくて、ただただ涙が溢れて苦しくて………

 

「雄也。体をこっちに向けてちょうだい。」

 

「え…?こう…!?」

 

ふわりと僕の身体が包まれた。

 

「え、なっ、ちょっ………!えっ?え……」

 

こころちゃんにハグされている。涙も苦しさも全部ふっ飛び、頭の中が真っ白になった。

 

「ま、まって……急に……急にどうしたの……!?」

 

何秒、いや何分?そんな言葉を絞り出すのにさえ一体どれだけ時間がたったのだろう?

 

「あたしもよくわからないわ。けれど、泣いているあなたを見てたらこうしたくなったの。」

 

ダメだったかしら?といつもとは違う、どこか柔らかい声が左から聞こえてくる。

 

「だ、だってこころちゃんの服が……」

 

「気にしなくても大丈夫よ。また洗濯すればいいだけだもの。

雄也が元気になるまでこうしてあげる。」

 

エプロン越しから伝わる温もりと、微かに感じる鼓動に抗えず、みるみる力が抜けていく。

 

こんな情けない姿、見せたくないのに……そんな気持ちごと沈んでいくようだった。

 

 

 

 

───とはいえ、いくら僕でもずっとそのまま。なんてことはなくて……

 

「あ、あの……」

 

「元気になれたかしら?」

 

「う、うん……もう大丈夫、です……」

 

依然、ぼんやり気味の意識の中で恥ずかしさが安堵感を追い越すように大きくなっていく。

 

「ほっぺがとっても熱いわね。もっとこうしていても良いんじゃないかしら。」

 

「いやその……あ、ありがたいけどもうホントに大丈夫だからぁ……!」

 

薄れそうな意識の中でなんとか声を出す。ダメだ!このままだと何かがまずい!そんな危機感のようなものすらあった。

 

「そうなの?わかったわ。」

 

思いが通じたのか、背中に回されていた手が解かれ、少しひんやりした空気が服の中に入ってきた。 声色がちょっと残念そうに聞こえたのは気のせい……だよね。

 

「あー……えっと、あ、ありがとう、ね………」

 

一旦気持ちを落ち着かせてお礼を言おうとしたのだけれど、全然深呼吸しても意味が無い。完全にしどろもどろになってしまった。

 

「どういたしまして!あなたの力になれて、あたしも嬉しいわ!」

 

声色もいつも通りの元気一杯な雰囲気にもどったのだが、安堵感とあの声を忘れられない気持ちに覚めてない余韻で……もうぐっちゃぐちゃだよ……

 

「ねぇ雄也。あたしやりたいことがあるのだけど。」

 

「や、やりたいこと?」

 

「このキーボードで演奏して欲しいの。あたし、あなたの伴奏に合わせて歌いたいわ。」

 

「い、いいけど……掃除が完全に終わってからね。」

 

2階のもう一部屋はれい姉がやるって言ってるので、残っているのは廊下とベランダだけ。演奏までの道のりはそんなに遠くは無さそうだった。

 

 

 

 

 

ただ、最後まで背中に手は回せなかった。




ここまで読んでくださってありがとうございます。

私、後書きで毎回難しい難しい言っている気がしますが、今回もなかなかでした。

今回悩まされたのは泣いてる雄也を前にこころがどう動くのか、結果はこころからのハグになりましたが、いかがでしたか?

にしても、ホンマうちのオリ主はよう泣きおるわ……

補足ですが雄也の父さんが忙しかった理由は母親の内偵調査です。

離婚しても親権を獲得できる所まで見えてきたのですが、その矢先に事故で…と、考えていたのですがいろいろ矛盾ができたので、調べようとしていた矢先ということにさせて下さい。

それと今回、雄也の父親の名前は出てきましたが母親の名前は全く考えてません。理由はド〇えもんのジ〇イ子と大体同じです。

そして、次回もこころと雄也のお話です。出せるかはわかりませんが他のバンドからのゲストも考えています。

誰になるかはお楽しみに。
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