幽霊を笑顔に!!【本編完結】   作:GTP

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皆様、本当にお久しぶりです。遅くなってしまって申し訳ありませんでした。

ここまで更新を開けてしまったので軽くおさらいですが、前回は雄也の自宅掃除。彼の父親が遺したキーボードを前に泣いてる雄也がこころにハグされるという内容でした。今回はその続きとなっています。

このお話を覚えている方がどれだけいるかはわかりませんが、再びお付き合いいただけると幸いです。


とれない釣り合い?

雄也視点

 

 

父さんの部屋を掃除した次は2回の廊下への雑巾がけ、最後に黒服さんに任せるのは気が引けた場所。具体的にはお風呂場とトイレの清掃を1人で済ませて───

 

「雄也、次はどこを掃除すればいいかしら?」

 

「うーん……もうないかな?」

 

こころちゃんと黒服さん達のおかげで土曜日を丸々使う予定だった家の掃除がその日のお昼に完了してしまった。

 

「黒服さん。本当にありがとうございました。」

 

「お力になれて幸いです。また何かありましたら気軽にお声がけください。」

 

「は、はい……何かあれば……」

 

そう返事はしたけど……黒服さん達に頼るのは最後の最後の最後まで取っておきたい……

 

「あとその……こころちゃんもありがとね。一緒に掃除できてえっと、すごく楽しかったから……」

 

助けられたのは掃除のお手伝いだけじゃないんだけどね……ってダメだダメだ!思い出すとまた不思議がられる!

 

「どういたしまして!それじゃあ早速──」

 

あのキーボードで演奏しましょう!と言おうとしたんだろうけど……

 

 

 

ぐぅぅ〜

 

 

 

言い切るより先にそんな音で遮られた。はい。出処は僕からです……

 

「雄也はお腹がすいたのね。」

 

「う、うん……お昼まだだったからね……」

 

あはは……と苦い笑いが零れる。今日だけでこういうの何回目なのさ……

 

「冷蔵庫には何も無いし……外に行かないとかな?れい姉もそうするって言ってたし。 」

 

その足で晩御飯の買い出しも……

 

「それならあたし、雄也と行きたいところがあるわ!」

 

「えっ、ちょっ、ちょっと待って……!」

 

「?」

 

「いやその……出かける前に着替えたいってのと、どんなお店に行くのか教えて欲しいなって……」

 

 

 

 

 

 

 

そして11月の寒空の下、こころちゃんに手を取られダッシュで連れてこられたのは……

 

「ここがたぬきやよ!」

 

「はぁ……はぁ……ここ……?」

 

商店街にあるお好み焼き屋さんだった。

 

「え、えっと、こころちゃんってお好み焼き好きなの?」

 

息は絶え絶え、膝に両手を当てながら訊いてみる。お店の名前的に高級レストランとかではないだろうとは思っていたのだけれど…これはこれで意外というか……

 

「初めて食べるわ。」

 

「え。それならなんで場所だけ知ってるの?」

 

「練習帰りに前を通りかかったの。そういえばその時もお好み焼きを食べようとしたのだけれど……どうしてみんなで帰っちゃったのかしら?」

 

「忘れちゃったんだ……」

 

考えられる理由としては美咲さんが止めたとかかな?晩御飯作ってるんじゃない?みたいな感じで。

 

「けれどあたし、このお店を思い出した時からずーっと楽しみにしてたの!ここでは好きなものを焼いて食べれるのでしょう?だから───」

 

あ、これは……

 

「あたし、ふ菓子を焼いて食べてみたいわ!」

 

「ふ菓子!?ここでふ菓子っ!?」

 

なにか勘違いしてるでしょ…と言おうとするより早いぶっ飛び発言。こころちゃんの口からそんな言葉が出ると思わなかったよ……

 

「そうよ!こんがり焼いてバターを塗ればトーストみたいで絶対美味いわ!」

 

「それ、おふでやったほうが…じゃなかった…あのねこころちゃん。そもそもお好み焼きってそういう料理じゃなくて……」

 

ほら、あそこに書いてあるでしょ?と、外に出されているメニューを指さし、食べたいものを決めてもらうことにした。でもふ菓子でアレンジ料理は悪くないかも…

 

「豚玉、イカ玉……不思議な名前ね。」

 

「省略してるからね……それでその、何か食べてみたいのある?」

 

「それならあたし、豚玉を食べてみたいわ。」

 

「豚玉ね。早速お店で注文しようか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませー!

ってこころに雄也じゃないか!」

 

「とっ、巴さん!?」

 

お店の引き戸を開けた先にいたのはAfterglowのドラマー、宇田川巴さんだった。会うのはお見舞い中のあこちゃんを迎えに来て以来だね。

 

「巴!あなたもここにお好み焼きを食べに来たのかしら?」

 

「いやアルバイトとかでしょ……いらっしゃいませって言ってたじゃん……

…ですよね?」

 

巴さんの格好はさっきまでのこころちゃんと同じエプロンに三角巾スタイルだった。

 

「まぁ雄也の言う通り、ここのおばちゃんに急用ができてな、それでアタシが呼ばれたんだ。」

 

腰に両手を当てて少し胸を張る姿はれい姉や薫先輩とはまた違う。男前とか姉御肌とか、そんな言葉がぴったりな雰囲気だ。

 

「ていうか雄也はアタシと学年同じなんだろ?『ですよね?』とかよしてくれよ。」

 

「う、うん…そうなんで…だけど……」

 

同学年って感覚になれないんだよね…れい姉と背丈が変わらないんだもん……

 

「おーい巴ちゃん!お友達来て嬉しいのはわかっけどちゃんと対応してくれぇ!」

 

「あ、はーい!!

悪ぃ、すぐ案内するわ。」

 

口ごもっていたら巴さんがどやされてしまった。

 

「こ、こっちもごめん……」

 

「雄也が謝ることじゃないだろ。」

 

ほら行くぞと席まで案内され、オーダーをしてから程なく───

 

「お待ちどうさま!豚玉2人前だ!」

 

卵を2つ割入れた真っ白い生地と、薄く切られた豚肉、そしてトッピング用のおかかと青のりが机に並べられた。

 

「これを焼いていくの?」

 

「まぁうん。そんな感じ。」

 

「不安ならアタシが焼こうか?」

 

言いながら腕まくりをしている辺り、巴さんはやりたくて仕方がないみたいだけど……

 

「あ、あの───」

 

「?」

 

「ぼ、僕が焼いてもいい…かな?」

 

家の掃除の時はへこたれてたし、料理も半年以上ブランクあるけど……これでも昔から家のことを1人でやってきてたんだし…大丈夫…なはず。

 

「お、雄也がやるのか?いいぞ!」

 

「雄也が作るのね!どんなお好み焼きが出来上がるのかしら?」

 

(お手並み拝見だな!)と言う視線と(楽しみだわ!)という2人の視点が微妙にプレッシャーだけど、言ったからには頑張らなければ……!

 

「まずは鉄板を温めて…… あ、ここ触っちゃダメだからね。」

 

「わかったわ。」

 

準備が出来たら全体に油を塗り、生地に乗った卵を潰し、空気を含ませるように大きく、ざっくりとかき混ぜてから適量を流し込む。じゅうじゅうと早くも食欲をそそる音が響いた。

 

「まるでホットケーキみたいね。」

 

「甘くはないけどね……」

 

豚肉を乗せて暫く様子を見ていると、端の部分が焼けて固まってくる。

 

「そろそろかな……」

 

軽く生地を抑えたあと、テコを生地の両側から差し込んで──

 

「よいしょっ!」

 

軽く浮かせて一気にひっくり返す!

 

焼き加減は……よし、焦げてない。この道具を使うのも初めてだけど崩さず出来て良かった。

 

「その感じなら大丈夫そうだな。アタシ一旦外していいか?」

 

「あ、うん!」

 

他の仕事をしに行くであろう巴さんを見送り、ふとこころちゃんに顔を向けると……

 

「こ、今度はどうしたのさ……」

 

またしてもすごくキラキラした瞳がこっちを見ていた。

 

「雄也のそんな顔、あたし初めて見た気がするの。」

 

「えっ、そうなの?練習の時とかも含めて?」

 

「ええ。キーボードを弾いてる雄也は花音を見たり、はぐみを見たり、ミッシェルを見たり、ハロハピのみんなとお話しているみたいだけれど、今のあなたはお好み焼きをずーっと見ていたわ。まるで……」

 

うーん…と首を傾げるこころちゃん。こういう表情はちょっと珍しいかも……

 

「そう!美咲よ!あたし達の音楽や羊毛フェルトを作っている時の美咲みたいだったわ!」

 

「そ、そうなんだ……」

 

集中している美咲さんと比べられるのは悪いことではないのだろうけど……見たことないからイマイチピンと来ない……

 

「ってそうだ!焼き加減みないと……!」

 

我に返ってお好み焼きに視線を落とすと、丁度いいタイミングだった。さっきと同じ領分で生地をひっくり返す。

 

「もう1回ひっくり返すの?」

 

「うん。あとはこっちの面もこうなるくらい焼けばOKだね。そしたらソースとマヨネーズとおかかを……あ、青のりは欲しい?」

 

「ええ!お願いするわ。」

 

「了解。」

 

じっくり焼く工程も終わってトッピングも完了──と。最後に切り分けたお好み焼きをこころちゃんの取り皿に出来上がりを盛り付けて──

 

「はい。召し上がれ。」

 

「わぁ……」

 

まだ食べてないのに感激が抑えきれない様子のこころちゃん。反応が楽しみ……という気持ちより美味しく作れたかどうか心配の方が大きいかも……

 

「雄也は料理もできるのね!とーっても美味しそうだわ!」

 

「ま、まぁ…ちょくちょく作ってたから……」

 

とはいえウチのお好み焼きで豚肉はほぼないけどね……

 

「そ、それよりさ、冷めないうちに食べて欲しいなって……」

 

「それもそうね。」

 

いただきます!と元気よく両手を合わせ、切り分けたお好み焼きの半分以上を1口で頬張るこころちゃん。初めての味が新鮮だったのかちょっとだけ目が見開かれて見えた。

 

もぐもぐもぐもぐ……ごくり──

 

そのままあっという間に渡した分を飲み込んだ彼女の第一声は──

 

「とーっても美味しいわ!」

 

「そ、そう?それならよかった……」

 

ぱっと今日1番の笑顔の花が咲いたけれど、自分には勿体なく感じて真正面から見れなかった。

 

「ええ!カリカリしてて、とろとろしてて、ちょぴっとだけ酸っぱくて、それが口の中いーっぱいに広がっていくの!こんな食べ物初めてだわ!!」

 

「あはは……」

 

返事がどうしても曖昧になってしまう。料理は上手く作れたみたいだし、ささやかなことではあるけど気になっている人を笑顔に出来た事は嬉しい。

 

嬉しいけど……今日は黒服さん達を巻き込んでいるから釣り合いが取れてない気がして…というか僕、そもそも彼女に命を助られているのも同然だから……

 

 

 

「今度は雄也のお好み焼きをあたしが作るわね!これでいいかしら?」

 

「……あ、うん!わかった。こころちゃんが作るのね!それじゃひっくり返すタイミングとかは……

ってあーっ!豚肉焼くのはまだだってばーっ!!

 

これどうするのさ……というかもう焼いた分食べちゃったの!?1枚丸ごと!?そんなぁ…




私の小説をまた読んでくださってありがとうございます。

1月の更新から書きたいことがまとまらなくなってしまい、APEX、ウマ娘、モンハンライズ、アキバストリップ、ポケモンユナイト、GTAとひたすらゲームばかりしていました。

実はここから先の展開で不安な部分がまだあるのですが…なんとか形にできればなと思います。

今回の余談ですが、最初のふ菓子の下りはこころのキャラエピソードをヒントにしました。貸し切ったホテルのレストランでメニューをガン無視して変な注文をするハロハピメンバーとそれにツッコミを入れまくる美咲の姿は必見です 笑
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