今年も本作をよろしくお願い致します。
前回はお好み焼き回でした。巴の下りやふ菓子のシーンは結構書いてて楽しかったです。
また時間がかかってしまいましたが、良ければお付き合いください。
雄也視点
幽体離脱生活が終わり、リハビリが想像以上のスピードで完了。家の大掃除とれい姉の引越し作業も片付いて……それでも、僕の生活は目まぐるしく変わり続ける。
今のライフスタイルは朝にご飯とお弁当作り。午前中にアヤ高、もとい亜矢鞠高校へ保健室通学しながら12月末の転入試験に向けた勉強。帰ってきたられい姉にご飯を作って宿題をする。主夫と学生を行ったり来たりだ。
ちなみに今は晩御飯を作っていた。お品書きは納豆ご飯にほうれん草のおひたし。そしてにんじん、玉ねぎ、ジャガイモのお味噌汁。ちょっと質素だけどブランクも気になるし、食費も節約したいからこんな感じだ。
「……洗い物でやること終わっちゃうね……」
宿題も済ませたしお風呂も準備できているけど、本音を言えばもう少し何かに集中してたかった……だって……
(こころちゃんは何してるのかな……)
最近、空き時間ができると落ち着かないのだ。あのキーボードを弾いてもイマイチ集中しきれなくて…もう勉強するか家事をしてないとダメなんだよね……まぁ保健室で延々勉強してたから転入試験も追試も大丈夫そうだけど……
これってホントに恋なのかな…?それならなんでこんな苦しいんだろう。もっとこう、違う物だと思っていたのに……押し込むことばかり考えるのはおかしいんじゃ…でも、やっぱりふとした時に浮かんでくるのはあの太陽みたいな笑顔で……
「あ、スマホ……」
着信相手はちょうど考えていたあの子から。取るのを若干躊躇った。
「も、もしもし……」
『こんばんは雄也!いまは何をしてるのかしら?』
「あ…晩御飯作ってた。こころちゃんはハロハピのみんなと練習してたの?」
『そうよ!今日は……あら?どうしたの美咲?』
電話から聞こえる声が小さくなる。1人じゃなかったんだ。
『そうだったわね。あのね雄也!あたし、あなたに聞きたいこととお願いがあって電話したの。』
「聞きたいことと……お願い?」
『そうよ。お願いは直接会わないといけないのだけれど、雄也はお家のことをしてるのよね?
これからお邪魔してもいいかしら?』
「えっと、い、いいけど……」
学校とかハロハピのことを話したいわけじゃないみたいだけど、今度はなにが……
それからしばらくして───
「お邪魔するわね。」
「い、いらっしゃいこころちゃん。あれ?美咲さんは?」
「美咲は帰ったわ。妹と遊ぶ約束をしていたみたい。」
「そうなんだ……」
なんだろう。あの人にもいて欲しかったようなそうでもないような……
「あ……コートとマフラーはこっちにかけるから、取ってもらっていい?」
「わかったわ。」
ダッフルコートを受け取りハンガーに……うわ、ふわふわで凄く軽いや。シワとかならないようにしないと……
「大切に扱ってくれるとこっちもうれしくなるわね。」
「いやだって雑にはできないよ……
そうだ、うがい用のコップ取ってくるから先に手洗ってて。
洗面所は……」
「お掃除の時に覚えたわ。こっちよね?」
「あ、うん。そっちで合ってる。」
こうして手洗いうがいを済ませて……
「それで…お願いと聞きたいこと、どっちから聞けばいい…のかな?」
テーブルにお互い腰掛け、そこで話を切り出した。
「聞きたいことから話すわね。雄也はハロウィンライブの後、あたしとお話したことは覚えてるかしら?」
「お話したこと……えっと……」
確かあの時……幽霊じゃなくなったらこころちゃん達ともう演奏出来なくなることを伝えて、それで……
「あ、僕と演奏する方法を思いついたんだっけ?」
「そうよ!あたし、この間とっても素敵なパフォーマンスに出会ったの!」
「パフォーマンス?どういうのさ?」
えっと……ある時ショッピングモールで買い物をしてたら、急にお客さんが歌いだして、周りのお客さんがどこからともなく楽器を手に混ざって。そして、いつの間にか大きな演奏会に───
「つまり……こころちゃんはフラッシュモブみたいなのをやりたいの?」
「フラッシュ……?それはよくわからないけど、なんだか面白そうでしょう?」
「うーん……」
こういうパフォーマンスはハロハピらしいといえばらしいし、また皆と演奏できるのはいいんだけど……いいのかな……
「この事ってハロハピのみんなは知ってるの?」
「ええ。はぐみも薫も名案だって言ってくれたわ!花音と美咲はなんだか難しい顔をしてたけど。」
やっぱり知ってたよね……それ聞いたら断りづらいなぁ………
「わ、わかった。やってみる……日程とかはもう決めたの?」
「これから決めるわ。いつ作戦会議に参加できるかしら?」
「今週末…で、大丈夫かな?補習は順調だし。」
「そうなの!?やっぱり雄也は頑張り屋さんね!」
「そ、そういうわけじゃないんだけど……」
勉強してないとあなたの事で落ち着かなくて……とか絶対言えない……
それにしてもフラッシュモブ……どこか引っかかるところはあるけど……どういう形になるかも決まってないし、言ったからには……
「それなら次はお願いのお話ね。あたし、あなたともう一度ハグがしたいわ。」
「……ん、はい?」
待って今なんか凄いこと言われたような……
「あら?聞こえてなかったかしら?あたし、雄也ともう1回ハグがしたいの!」
声のボリュームをあげられてしまった。さっきの事を考える時間が本当にない。
「きゅ、急にハグしてって……一体何があったのさ……」
「あたし達、この間ハグしたでしょう?」
「う、うん……」
こころちゃんの言葉に暖かくて、少しくすぐったくて、重いものが胸に蘇っていく。
「その時あたし、不思議な気持ちになったの。
上手くは言えないのだけど……ふわふわしてて、胸がぽかぽか暖かくなって…とっても素敵だったわ!」
「……」
「けれど、そういう気持ちになれたのは雄也にハグした時だけだったの。」
「ほ、ホントに…?」
「ええ!色んな人にハグして来たもの。間違いないわ。」
「……色んな人、とは?」
「美咲に、はぐみに、花音でしょう?
それから香澄に、有咲に、たえに、りみに、沙綾に……」
Poppin’Partyのメンバー全員じゃん…
「あと、紗夜とイヴと千聖にもしてきたわ!」
さ、紗夜先輩にもしたの!?
これは後から美咲さんから聞いたんだけど、こころちゃんにハグされたのは花咲にいるバンド繋がりの生徒全員だったので、戸惑う人はいたけどトラブルとかは大丈夫だったらしい。
それどころか、花園さんや戸山さん、あとPastel*Paletteの若宮さんは普通にハグし返してたとか……
「でも、やっぱり違うからもう1回僕とその…ハグしてみたいと。」
「そうよ!けれど……また赤くなってるわね。大丈夫かしら?」
「だ、大丈夫……だからえっと…はい。」
もう早く終わらせた方がいいと思って立ち上がり、リビングに行ってから目を瞑って両腕を広げた。既にかなり恥ずかしい……
「あら?雄也から誘うなんて珍しいわね。」
「いっ、いいから早くして……!」
「わかったわ。ぎゅーっ。」
ふわりと体が包まれ、じんわり暖かくなっていく。あの時と同じだ。
平常心…平常心……柔らかい…じゃないよ平常心っ!!
「………?あの時と全然違うわ。どうしてかしら?」
「そ、そうなの……?」
「そうね。なんだか木の幹みたい。」
「……」
なんか……こういうのって伝わっちゃうんだね……
「すんすん……」
「ちょっ…!?なんで匂い嗅ぐのさ……!」
「あら?ダメかしら?」
「…もう好きにしてください……」
ダメ……いっぱいいっぱいで何も言えない……
「少し体が柔らかくなったけれど…まだ何か違うわね。もっとぎゅーってしたら変わるかしら?」
「え、ちょっ…!」
「ぎゅーっ!」
「まっ……くるし……!」
慌てて背中をタップしたけど、彼女がそういうのを知ってるわけなかった。その上……
「ただいまー。あれ?雄也ー!誰か来てるの?」
「!!?」
えっ嘘れい姉!?帰り遅くなるんじゃなかったの!?
「美麗だわ!お話するのは久しぶりね!」
確かにそうだけど……こころちゃん離して!じゃないと……
「なんだこころちゃん来てたんだ。いらっしゃ……」
れい姉が固まった。
「お邪魔していたわ。久しぶりね、美麗!」
「あーうん。久しぶり……」
向こうに意識がいったお陰なのかハグは緩んだけど…なんでそのまま話してるのさ……あんな歯切れの悪そうなれい姉初めて見たよ……
「えっと、ごゆっくり……」
しばらく時間が経ったのか、あっという間だったのかわからなくなってたけど、れい姉は洗面所へと去っていった。
「美麗はどうしたのかしら?……雄也?」
と同時に、恥ずかしさと気まずさが溢れんばかりにぶり返して───
「もうやだ……かえる……」
「?貴方のお家はここよ? 」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
次回は少し飛んでフラッシュモブ作戦本番にする予定です。
実はこの話を書くに当たり、今まで考えていた今後の内容から大幅な路線変更をしました。なので、当初の予定より少し話数が増えるかもしれませんが、お付き合いいただけると嬉しいです。
また10ヶ月とか書けなくならなくて本当によかった……
最後にいつもの余談ですが、今回の美咲はハグ魔になったこころを止め、紗夜さんや千聖さんに謝りに行ったりで結構忙しいことになってました。