このお話は、透明文字を使っています。ドラッグしながらお楽しみください。
続きまして、こころはこちらの上下が終わるまでお待ち下さい…
雄也視点
(今日はお客さん、来てくれるかな…)
そんなことを考えながら電車に揺られる。
火木土で路上ライブを始めて2週間。リクエストを受け付けたり、歌い方を本で勉強したり、曲のレパートリーをふやそうとしたり…と、色々してるんだけど…
『悪かないんだがなぁ…』
『あのライブと違う。』
幽霊時代と比べると表現とかがもう一声なんだよね…卒なく演奏できてるだけ…なせいかリクエストもないし、お客さんもあまりきてないし…
それでも、2回目くらいの演奏に比べれば進歩はしたはず。だってあの時は〘また他人を巻き込んじゃった…〙とか色々考え込んじゃってたせいで目も当てられなかったから…
そんな演奏をしてしまった後、アレンさんに一人で呼び出された時は正直とても怖かった。でもそこから話を聞いてくれて『ユー、
『
…ってあれ、もう降りる駅だった!?あーまってドア閉めないでーっ!!
「───あ、来た。」
「おう。来たな。」
「…あ…!えっと…!」
待っていてくれた市ヶ谷さんと花園さんに言葉がまとまらず、代わりに思い切り頭を下げていた。大げさだとも思ったけど、わざわざ土曜日に来てくれたのが申し訳なくもあって…
「走って疲れた?」
「いやちげーだろ。
…ってかそっちもいちいちお辞儀とかいいから。」
「なんか言葉詰まって…」
「そんなかしこまられると却ってやりづれーんだっての…
前にも言ったろ?私、基本ムリはしない主義だって。」
「けど有咲、さっきまで眠そうに…「それ以上言ったら弁当交換しねーぞっ!」…
「…」
両手で自分の口を抑えて返事をする花園さんで少し肩の力が抜けた。同じ楽器の視点で物を言ってくれる市ヶ谷さんはもちろんだけど、花園さんにも助けられっぱなしだ…ああいうやりとりでも、演奏聴くと気持ちが引き締まるという意味でも…
「ほら、練習すんだろ?さっさと行くぞ。」
確かに二人とも毎回来ているわけじゃない。でも負担がないなんてとても思えない。多分僕のライブのあとは自分たちのバンド練とかもあるんだろうし…けど…
「…うん。」
ここでそっぽだけは向きたくなかった。
今の僕には、きっと芯みたいなのがないんだと思う。あの時は皆がいたし…路上ライブの動機も、追いつきたい!しかないからね…
だから、見つけるためにも続ける。そう決めたんだ────
「Welcome.ユー、タエ、アリサ。」
「おはようございます。」
「おはようございます!」
「おはようございます。今日もよろしくお願いします。」
練習時間を設けてくれたことにお礼を言ったら、頑張れよ。と肩を叩かれる。ちょっと懐かしい感じがした。あの人からあまりされた記憶はないし、手もずっしりしてるけどね…
「よし、花園さん。お店回るよ?」
「うん!」
荷物を置いたら周りのお店に挨拶。今回は練習したくて早めに来たからライブの時間もしっかり伝える。「もり立ててくれるなら。」とお店の人たちが僕達を受け入れてくれているのがどれだけ嬉しいか…
そして、挨拶が終わったらお店の事務所で、本番前に練習を…
「あれ?」
「おたえ…なんで後ろ見てんだ?」
「どうしたの?花園さん?」
「え?男の子がいるなーって。」
「「「!?」」」
花園さんのいる方を見直しても子供なんていない…ま、まさか…!?
「…ってアレンさん!?しっかり!!」
そのまさかを考える余裕は、無言で上下に振動しだしたアレンさんのインパクトで塗りつぶされた。
そこから、どうにか歩けそうなアレンさんを事務所に連れていき、さらさんとれい姉に連絡して…と、ドタバタで10分位持っていかれたのだった…発表予定時刻まであと1時間…今のところ、特に変なこととかは起こってないけど…どうなっちゃうのさこれ…?
そんな不安に苛まれながら10分後───
「待たせたね。」
「お邪魔します。」
連絡を受けて、エヴァースからさらさんとれい姉がきてくれた。剣呑な雰囲気とかはないし、大ごとじゃない…のかな?
「わ…美人…」
「ふふっ。ありがとね。」
(『悪霊殺し』とか呼ばれてたらしいけどね地元では…って怖っ!)
市ヶ谷さんに笑いかけてたれい姉の背後に、こっちを睨む鬼が浮かんだ気がする。確かに背も高いし美人さんだとは思うけど…別側面を知ってるとじゃん…
そこから4人が自己紹介。立地のせいか、二人ともエヴァースは知らなかった。
「さてと、まずはお客さんから事情を聞かないとね。
美麗ちゃん、頼めるかい?」
「え、私ですか?」
「…アレンさんにも説明しなきゃなんだよ?その間、厚揚げとか豆乳とか、お客さんに出さなきゃいけないものもあるのに、他所のキッチン爆破なんてしたら訴訟もんでしょうが。」
「…」
「まじかよ…」
「目をそらすの、雄也そっくり。」
さらさん、なんかれい姉に容赦なくない…?でもまぁ…花園さん市ヶ谷さんは羽丘じゃないし…僕と同学年だし…先輩の名誉とかは大丈夫…なはず。れい姉側も愚痴とか我慢してる感じないし…
そのまま「わかんないことがあったら呼んでちょうだいな。」と、さらさんは店番に行ってしまった。
「───さて、と…」
程なく、気まずそうなれい姉の表情がすっ…と変わる。優しげだけど、どこか引き締まっていて…なんかこっちまで緊張してきた…現世で幽霊みるのは多分初めてだし…
「お話聞かせて?そこにいるんでしょ?」
「…」
れい姉の視線が部屋の入り口に向けられる。すると───
「あ、壁から出てきた。」
「え…うぉ、まじだ…」
「おねえちゃん…こわくない…?」
「へっちゃらだよ!」
「ま、まぁ…映像でみたことあるから…駒沢君のだけど…」
「おじさんは…?」
「I'm…ok…」
おどかさないようになのか、ゆっくり気味に二人が寄っていき、アレンさんは白目を剥くのをこらえて微かに震えている。ただ…
「あ、あれ…?」
…僕にはそれが、違う意味で怖い絵面にしか見えなかった…
「雄也は見えないのね。まぁそんな気もしてたけど…」
「こういうのって…コツとかある?」
「ない。あんたは基本、自力で霊と波長を合わせられないタイプね。数珠持って直接触るか、向こうが何かやってくれない限りは大体そんな感じだけど…触らないでほしいって。」
「そう…」
市ヶ谷さんと花園さんからも「まじか…」「ダメなんだ」みたいな視線が向けられる。なんか居づらい…
前にも霊が見える見えないは波長の合う合わない。みたいなのは聞いてたけど…いるって意識してもだめって僕どんな波長してるのさ…あと
「おにいちゃん、どうしたの?」
「ほっといて大丈夫。ショック受けてるだけだから。
それよりも…ここに来た理由、お話してほしいの。いい?」
こうして、僕だけ一歩遅れな話し合いが始まったのだった。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
ボツにした話で書く予定だったのですが、雄也のライブはちゃんとハロハピのメンバーも見ています。と言っても直接ではなく、ビデオカメラ(黒服さん貸し出し)で撮影したものですが。各々確認したり作戦会議中に観たりして、雄也の調子やお客さんの数から一緒に演奏できるのを待ってる感じです。
次回は明日投稿です。よければ引き続き、お付き合い願います。