INFINITY WITCHES ~無限大の魔女~   作:AGM-123

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Epilog まだ始まったばかり

 

 

 

 

 

 

「…何故ですか!?」部屋中に、若い女性の大声と何かを力一杯叩く音が響く。

机を拳で叩いたその女性の顔は、怒りと憤りで歪んでいた。

彼女と机を挟んで正対するのは、各国の軍を束ねる立場にある重要人物たち。

彼女──タスクフォース118のコマンダー、グッドフェローの怒りを買ったのは、机に投げ出してある書類のようだ。

 

 

「理由をお聞かせ願えますか。何故、このような命令を!?」

 

怒声に近い彼女の声に、困ったような顔でリベリオン人の男性が説得を試みる。

 

「そうは言われてもね、ミス・グッドフェロー。これは既に決定された事項なのだよ」

「しかし!こんな命令、承服しかねます!これは、我が隊だけでなく、他の多くの部隊の士気にも──」

 

「なにも分かっとらんようだな、君は」グッドフェローの言葉を遮るブリタニア人男性。

 

「これは高度な政治的判断が求められる事案なのだよ。一介の現場指揮官でしかない君が口を出せる問題ではない」

 

「ですが!!」いきり立つ彼女に、今度はオラーシャ人男性が牽制を掛ける。

 

「いいかね、これは我が国連軍司令部、ならびに常任理事国代表の総意なのだよ。逆らうならば、君の指揮官権限剥奪も辞さない」

 

国連軍司令部だけなら、何らかの交換条件でこの命令を撤回させることもできたかもしれない。

しかし、海千山千、二枚舌外交がお手の物の各国要人が結託したこの状況では、グッドフェローは彼らに逆らうことも出来ず、目の前の理不尽な命令を呑み、うなずくことしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ボーンアロー1、ウェイポイント2ヘッドオン》

東京上空を哨戒飛行中の私は、すっかり口なじんだ台詞を無線に吹き込み、いつも通りの進路をとる。

バンカーショット作戦終了から、早いもので4ヶ月がたった。

私達は今、扶桑に拠点を置いて活動している。旧新東京国際空港─成田飛行場に私達は恒久的な司令部を置き、旧首都近郊の空中哨戒を担っているのだ。

 

 

何故私達ボーンアロー隊がユージア軍との最前線、ヨーロッパ地方ではなく東京にいるのか?

それは作戦終了から数週間後、国連軍総司令部から下された命令が原因だった。

怒りをあらわにしたグッドフェローが伝えてきたのは、「ボーンアロー隊の任地異動、それによる任務内容の変更」だった。

早い話が、「前線に出るな。後方で基地防衛等を行え」と言うことだ。

 

司令部曰く、「高い戦果を挙げたウィッチを戦闘で失えば、国連軍全体の士気が損なわれる。英雄となった彼女らを失うのは好ましくない。また、いざというときのために戦力は温存しておくに限る」とのことだった。

 

しかしそれはどうせそれは表向きの理由だろう。どこの馬の骨とも知れない寄せ集めの傭兵部隊なんかに、戦果を奪われるのが惜しくなったに違いない──というのは、グッドフェローの談だ。

 

 

 

実際、私たちが抜けた後の穴埋めには、様々な国から“自らの意思で参戦した”とされる義勇兵ら──事実上の派遣部隊が参加しているらしい。そして、それは戦局の泥沼化を招いていた。

 

確かにバンカーショット作戦は成功したが、それ以来大きな戦果は挙がっていない。

上陸部隊を壊滅の憂き目に追い込んだ件の宇宙兵器、OLDSとやらも全くの手つかずのままだ。

さらに、ドバイ・モスクワ・パリが幾度となく襲撃され、1度ならずアドリア海沿岸の橋頭堡が奪取されている。

 

 

しかし、国連軍直属の臨時編成飛行隊、アルファ隊・ブラボー隊がその危機をなんとか凌いでいるらしい。

合計わずか8機の戦闘機隊に、そこまでの戦果が挙げられるのかと正直驚いていた。

 

 

 

 

 

 

《ボーンアロー5、ウェイポイント3ヘッドオン…ボーンアロー1、コースを外れないで》

回想に浸っていた私を、僚機の声が現実に呼び戻す。

疑問に思う人も居るかも知れない。ボーンアロー隊は4機編成だったはずだ、ボーンアロー5とは誰か、と。

 

 

《……ごめん、エッジ。ちょっと考え事してた》《珍しいわね、貴女が任務中に考え事なんて》

そう、ボーンアロー5とは、他ならぬ元リッジバックス1──エッジだった。

彼女たちリッジバックス隊にも私達と同じような理由で同じような命令が下され、部隊運用の手間を減らすために2隊が統合されたのだ。

 

それによりボーンアロー隊は8機編成となっている。

勿論最初は若干の諍いもあったが、今は滑らかな運用が出来ていた。

《こちらグッドフェロー。緊急連絡案件あり。哨戒中の機は速やかに帰投せよ》

怒りを湛えたようなグッドフェローの声。顔を見合わせた私とエッジはすぐに進路を変更。

私達の拠点である成田飛行場へと向かった。

 

 

同じく哨戒を行っていたオメガとアクスマン、私達をブリーフィングルームで待っていたのは、他のボーンアロー隊員と、司令部からの通達を伝えてきたときよりも怒りとイラつきを露わにしているグッドフェロー、それに、司令部から送られてきた戦闘中に撮影されたらしい何枚もの写真と書類。

いつもつけっぱなしのテレビは、何かのニュースを映しているが、今は音を絞ってあった。

 

 

テーブルの上に投げ出されていた写真。それには、1枚見ただけでも卒倒しそうな、衝撃的なものが写っていた。

 

 

 

 

 

アルプス山中の超大型永久要塞と、その上空を飛ぶSu-57の編隊。

 

超特大の自走砲を配備して防衛されている大規模弾薬庫。

 

街1つと同じくらいの大きさの製油施設。そしてその脇を固める大艦隊。

 

コモナ諸島宇宙センターや、エリアB7R上空で行われるユージア軍との熾烈な空戦。

 

ミサイル施設が修復され、再び稼働状態になったアヴァロンダム。

 

私達が倒したものより、さらに強力になり、僚艦まで付いたアイガイオン級重巡航管制機。

 

目のくらむほどの高さのある、迎撃レーザー砲台。

 

修復され、高性能化した状態になったストーンヘンジ・タイプ3。

 

UCAVを射出している、”シンファクシ級”との注訳がある潜水空母。

 

そして、モスクワ・パリ・アドリア海橋頭保・B7R・ストーンヘンジ、それぞれの上空を我が物顔に飛び回る”蝶使い”とクオックス。

 

 

 

書類には、この全てを撃破してもなお、ユージア連邦には有効な打撃を与えられないと書かれていた。

 

 

そして、脇のテレビ画面が切り替わり、突如臨時の中継が入る。

見慣れた東京の街並みが、爆撃の黒煙でかすんでいる。カメラも、衝撃波で揺れていた。

画面下のテロップは、ユージアによる東京再侵攻が始まったことを示している。

 

 

テレビに呼応するように、基地に空襲警報が響く。その中で、開戦当初よりさらに強力に、さらに大規模になったユージア連邦軍の実情を知った私は思わず叫んだ。

 

「一体何なんですか、これは!まだ…まだ始まったばかりじゃないですか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





今話をもちまして、拙作「INFINITY WITCHES ~無限大の魔女~」をひとまず完結とさせていただきます。

途中8カ月にわたる休載を挟み、僅か14話に1年以上もかけてしまいましたことをお詫びさせていただきます。

さて、今後の予定ですが、外伝的なものを1話か2話、いつか投稿する予定です。
また、機会があればオリジナルのエンディングまでもっていければと考えています。
(なお、連載を再開した場合はこの14話は削除させて頂きます。)


最後になりましたが、1年間以上も拙作に付き合っていただいて、誠にありがとうございました。

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