INFINITY WITCHES ~無限大の魔女~   作:AGM-123

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本来はエースコンバットインフィニティの完結と同時に投稿しようと考えておりましたが、作者の都合で一年近くずれ込んでしまいました。
有りがちな内容ですが、どうかお楽しみいただければ幸いです。


Misson01 迷い蝶 ~艦隊防衛戦~

2019年―???―

 

 

『――あの災厄からもうすぐ20年です。あの日、空は砕かれ無数の光の矢が降り注ぎました』“彼”のその言葉と共に、“私”の目の前の画面に降り注ぐ流れ星の映像が映される。

『今日は歴史の勉強をしましょう』“私”は思わず眉をひそめた。歴史の講義なんて、退屈で嫌いだ。そんな“私”の内心を知ってか知らずか、“彼”は勝手に話を進めていった。

 

『1994年、長い楕円軌道を描く一群の小惑星が発見されました。それは、木星軌道上の小惑星“1986VG1ユリシーズ”に未知の小惑星が激突してできた破片でした』惑星の軌道がCGで表記され、そこに伸びた赤い線が、惑星の1つと重なる。次の瞬間、赤い線が何本にも分裂する。

『この“ユリシーズ小惑星群”は地球との衝突軌道にあり、地球に一万個の隕石が降り注ぐと判明します』その言葉通り、地球の引力に引き寄せられた破片が、まんべんなく地表に墜ちてくる。『全ての軌道変更は不可能なため、小惑星と隕石を迎撃・破壊する最後の手段として超巨大地対空レールガン施設の建造が開始されます』

画面が切り替わり、8門の砲台が1セットになったそのレールガン施設が表示される。『建造は大モンゴル帝国の試験機タイプ・ゼロからリベリオンのタイプ1、アウストラリス、オストマン、南アフリカ、ノイエ・カールスラントのタイプ5までの計6箇所』立体的に表示された地球儀の上に、6つの点がつけられる。

『そして1999年7月、小惑星群が飛来します』今度は、戦闘機のコクピットかららしき映像。昔のテレビ中継の画像だろう。隕石が落着したとたん、画像が乱れ、消えた。恐らくは衝撃波で撮影機が墜ちたのだろう。次に移されたのはやけにごみごみとした街。画面端に映る特徴的なツインタワーを有したビルが目立つ。しかし、その街に隕石が飛来し、落着し、画面が暗転して、消えた。

『レールガンにより被害はごく僅かに抑えられました。……そう、世界秩序の崩壊程度(・・・・・・・・・)でしたがね』とんでもないことを“彼”はあっさりと流し、続けた。

『これが、有史以来人類が始めて経験する未曽有の大惨事――“ユリシーズの災厄”です』回転する地球儀の上に映し出されるまだらの点は、クレーターだろう。

『既存インフラの喪失により世界経済は破綻し、特に被害の大きいユーラシア大陸ではアジア諸国、南欧州諸国が破綻を免れるために地域ごとに共同体として再編、軍事予算を削減し復興予算にその多くをつぎ込みました』その言葉通り、“復興予算58%、軍事予算3%、復興予算総額1兆8450億ドル”と表示される。

『領土縮小によるエネルギー資源の枯渇はどの共同体でも大きな問題となり 天然資源を求めての紛争が激化していき…』早口の解説にまぶたが重くなってくる。

しかし、“私”のまどろみはビープ音に吹き飛ばされた。

 

[SORTIE ORDER(出撃 命令)]

 

全ての画面表示が消え、その表示だけが映る。

 

『続きは後程……』と“彼”は名残惜しげに言うも、無視だ。

 

どうせつまらない仕事だろうが、こんな眠気しか感じない退屈な講義よりはましだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AREA J4E 扶桑皇国旧首都東京 2019年5月1日0900時

 

ユリシーズによってもたらされた城東クレーター。その上空を、二人のウィッチが飛んでいた。前方を行く一人はEUによって協同開発された「EF-2000タイフーン」、それに追従するもう一人は1958年初飛行の「F-4EファントムⅡ」ストライカーを履いている。

 

 

 

前方を行くウィッチ――オメガがもう一人のウィッチ――私に話しかける。

《今日もまた隕石の屑が多いわね。昨日のニュース見た?厄災からもうすぐ20年だってさ。まだ空にはカケラがいっぱいなのに》

見上げると、ごく小さなユリシーズの屑が大気圏に突入し、流れ星となって消えていくのが見える。

 

私はアローズ・エア・ディフェンス&セキュリティの新入社員、TACネーム「リーパー」だ。

 

《こちらFASDF(扶桑国防空軍)309飛行隊、コールサイン“ディアボロ”。貴機の所属確認を》

 

前方からやってきたのは2人のF-15Fストライカーを履いたウィッチ。

 

《こちら国連独立コマンドのアローズ所属、ボーンアロー隊オメガ。作戦支援に来たわ》  

《本隊より連絡を受けている空賊(・・)部隊ね。よろしく頼むわ》

《こちらこそ》

ディアボロ隊の2人は、こちらに手を振ると反対方向に離れていった。

 

《グットフェローからボーンアロー各機、これより作戦行動を開始します。敵機を発見次第速やかに迎撃しなさい》無線越しに呼びかけてくるのは、私達の指揮官、“グッドフェロー”だ。エクスウィッチである彼女は、地上管制を担当している。

 

《オメガ了解。12時方向に敵機(バンディッツ)、偵察用UAVと推定》

 

レーダーに2つの影が映る。

《交戦を許可します》

 

《ルーキー》

オメガが呼びかけてくる。

《敵は非武装の無人機よ。手柄は譲るから、落ち着いていきましょう》

《了解》

今日が初出撃の私に気を遣ってくれたのか、オメガは後ろへ下がる。私はMSSLを選択し、各機に一発ずつ発射。鈍い機動でしか動けないUAVは、一瞬で撃墜された。レーダーを切り替え、索敵。もう1機居たUAVを、今度はMk.48機関銃で撃ち落とす。

 

《敵無人機を全て撃破》

《よし、任務終了!オメガ、RT――》

仕事は終わり、とばかりにオメガが帰投しようとしたときだった。

 

《新たな敵編隊の接近を確認》と、グッドフェローからの無慈悲な指示。

 

《またぁ!?》オメガがぼやくも、次の瞬間には真剣な表情となり、アフターバーナーをカット、急旋回と共にフレアを放出した。そのフレアに何か(・・)が引き寄せられ、炸裂する。

 

《注意して。敵機の中に対空兵装を持つ無人機が混じってるわ》

グッドフェローのいまさらな警告に《先に言ってよ!》とオメガが詰る。

 

UVAによく搭載される、MANPADS改造のIRパッシブならF-4の機動力でも回避可能。そう踏んだ私は、エンジンを吹かして不完全燃焼の黒煙をノズルからたなびかせながら、格闘戦を挑む。

しかし、すぐに違和感を覚えた。さっきのUAVは直線翼でプロペラ駆動の、出来の悪い模型飛行機みたいな機体だったのに対し、この武装UAVはM字型の主翼にジェット推進の先進的な機影。これはまさか――

 

《あれって…まさかクオックス!?》ディアボロ1が驚いたように叫ぶ。

《さっきまでの機体に比べて運動性能が高いわね!》

苦々しい顔で、オメガも新型機の登場に同意する。

 

《クオックスってウチ(国防空軍)が開発した汎用無人機よ?それが攻撃してくるはずがないじゃない。どこかのメーカーのデッドコピーかもしれないわよ》ディアボロ2が苦言を呈す。

 

《ネウロイの偵察機だったりしてね》オメガが冗談交じりに混ぜっかえす。

 

《笑えないわよ。それ》

 

3人がやいのやいのと騒いでいる間に、私は2機をMSSLで撃墜した。

 

《機体は後程確認します。今は攻撃に集中しなさい》ため息交じりにグッドフェローが窘める。叱られたオメガが決まり悪げにUAVに照準を合わせた。そのときだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

《♪~♪》

 

 

 

 

 

 

 

 

《…え?》

 

聞こえたのは、鼻歌だった。昔懐かしのファミコンゲームのBGM。周りの3人を見るも、全員が無線をいじり、困惑している。

 

《いまの何?あんたらじゃ…ないみたいね》こちらを見たディアボロ1が言う。

《民間のラジオ放送じゃないの?きっと》とオメガが答え、

《ここいらはノイズが強いわね。隕石の影響かしら》とディアボロ2が応じ、これは「ラジオの混線」ということで決着がついた。

 

 

 

 

 

…………もし、この混線を重要視していたら、あの惨事は避けれたかも知れない。しかし、このときの私は、そんなことを知るよしもなかった。

 

 

 

 

 

お喋りをしつつもオメガはMSSLを撃ち、1機を撃墜。ディアボロ隊の2人も、協同で1機墜とした。

 

《敵無人機を撃破。よくやったわね》

 

《よし!じゃあ今度こそ帰投――新たなレーダー・ブリップ!うそでしょ!何でこんな所に!》

UAVのブリップが現れたのは、東京湾沿岸。つまり……艦隊の目と鼻の先だ。

 

レーダーロックをする間もなく、UAVから放たれた小型対地ミサイルがアーレイ・バーク級駆逐艦の後部ヘリ格納庫シャッターを突き破る。格納庫内で炸裂したタンデム配列HEAT弾頭は、そこに駐機していたMH-60Rとその搭乗員、整備員らを爆風で引き裂いた。ヘリから漏れ出た航空燃料に引火し、艦尾を黒煙が包み込む。レーダーに火が入っていないらしく、即応射撃が出来たのはCIWSのみ。軽量、小柄なUAVはひらりと20mm砲の火線を躱し、悠々と離脱する。

 

私は、何のためらいもなくHPAAを撃ち、艦を攻撃したUAVを木っ端微塵にする。

 

《ビルの間を縫っての超低空侵攻!?気づけない訳ね》と、オメガが呟く。

 

不意に聞こえた機銃の発射音と爆発音。振り向くと、街の数ヶ所から黒煙が上がっていた。

《敵無人機による市街地への攻撃を確認。シナガワからカワサキにかけての沿岸エリアね》

 

《全部さっきの武装タイプ!?》愕然としたようにオメガが確認を取る。

聞くまでもなく、UAVには機銃とミサイルが搭載されているようだ。

《各機、被害が拡大する前に排除しなさい!》

返答の代わりに手近な1機に7.62mm弾をたたき込み、離れた位置の2機には素早くHPAAを撃ち込む。数秒と立たないうちに、無人機は全滅した。

 

《敵無人機を全て撃破。当空域からの敵勢力排除を確認》

安堵のため息をついたディアボロ1が、こちらに笑顔を見せつつ体を翻す。

《こちらFASDF309。貴隊の支援に感謝します》

《お役に立てて何よりよ》オメガが手を振り、2人を見送った。

 

《現在、被害状況の確認中…。避難エリアまでは達していないようね。民間人への被害は無し。まずはよくやったわ。リーパー》

 

《そういえばクオックス…だっけ?何であれが東京を攻撃してるの?》

結局あの武装UAVの正体は不明なままだった。

《無人機の情報は国連軍から回してもらうわ。全機、帰還してください》

 

 

 

 

 

 

 

─???─

 

『お帰りなさい。それでは 先ほどの続きを………』退屈な任務から帰って来た私は、これまた退屈な講義で迎えられた。鼻歌交じりで行えるほどの楽な任務。結局私が操っていたUAVは、全て墜とされてしまったが、まあどうでもいいことだ。

『どこまでお話ししましたか………あ、そうそう。紛争激化まででしたね』何が楽しいのか、“彼”は嬉しそうにに話を切り出す。

『その後長く続く紛争は、さらに難民の数を増やします』世界地図上のモザイクは、難民の発生場所だろう。どこも居住していた住民の50%以上が難民となったようだ。

『EU、アジア共同体、オラーシャの一部が難民特区を設けて受け入れを始めます。特にオラーシャ南部の難民特区“イユーリ自治区”は広大な土地を有し、多くの難民を受け入れました』デフォルメされた人影が、数え切れないほど、“IYULI”と書かれた場所に集まる。

『しかし難民は安価な労働力として囲われたに過ぎず、住環境は悪化し巨大なスラムを形成。さらに外国人労働者排除のデモ活動も頻繁になっていき周辺地域の治安を脅かしていました』資料映像に移されたのは、無数のバラックと火炎瓶らしき物を用いた排斥デモ─いや、暴動の様子。

『そこへ特区の雇用創出に支援を買って出る企業が現れます』次は、企業のホームページらしき物が表示される。『巨大軍需企業“ヴェルナー・ノア・エンタープライゼス”です』と、“彼”がどこか誇らしげに言い放つ。

『因みに、災厄直後では各国の軍事予算の削減から派遣傭兵部隊を有する軍事サービス業が大きな産業となっていました』言外にこの企業もそれに漏れずと匂わせ、次の資料が映し出される。

『また、“アドバンスド・オートマチック・アヴィエーション・プラント”と呼ばれる強化型コンピュータ数値制御工場の実用化により、既存の航空機は比較的容易にリビルド可能になっており、航空機が大量生産された結果今度はパイロット不足に悩まされることになります』リビルド可能な航空機の影絵が画面一杯に映り、次はフランカーらしき戦闘機が3Dプリンターで射出成形されるかのように無数に作られているのが表示される。

『ドロップアウトしたパイロットたちを集めた傭兵会社と言うのも設立されました。おっと、話が脱線しましたね。特区を持つ国家や共同体もヴェルナー社の支援を歓迎。同社は大手を振って自由にできる土地と労働力を得て軍需産業の他にエネルギー開発、宇宙開発にも手を広げます』この手の軍需企業が、自由に活動できる場所は少ない。何処か辺鄙な国に拠点を構えても、すぐにジャーナリストにすっぱ抜かれ、“死の商人”“戦争屋”と罵られるだけだった彼らにとっては、この厄災は発展の格好の機会だっただろう。

『ヴェルナー社の産業は各国の復興に大きな影響をもたらし、紛争も沈静化していきました。そして20年後の現在、ヴェルナー社の支援で急速な経済発展を見せた各特区でしたが、豊富な軍事兵器を保有するがゆえ過激な武装組織の温床となっていきます』ユーラシア大陸だけで、ざっと50以上の武装組織が居ることを示す図が出てくる。

『各特区に散らばった多国籍グループネットワークが形成され、次第にイユーリ周辺の近隣諸国で反大国主義を掲げた過激な武力行為が増加、国連および大国はこれをテロ組織と認定、そして現在に至る……』だめだ、今度こそ眠さに耐えられない。私はついに瞼を閉じた。

 

『…あれ?起きてますか?お疲れのようですね。それでは続きはまたの機会に』

“彼”も漸く諦めたようだ。眠りに落ちる寸前、私は今回の任務で1つ気になる事があったのを思い出した。東京上空で、私が操るUAVを次々叩き落としたウィッチ。

旧式ストライカーにも関わらず、あれほどの機動が出来る彼女が妙に気になる。……まあ、それほど気にすることでもないだろう。どうせ、彼女は私に墜とされる運命にある(・・・・・・・・・・・・)のだから。

 

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