INFINITY WITCHES ~無限大の魔女~   作:AGM-123

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Misson04 厄災の記念碑 ~ストーンヘンジ攻略戦~

 

 

エリアT8F オストマン中央部 2019年 7月8日 1100時

 

 

 

《よおし、見えてきた!…って、うわあっ!!》作戦開始早々被弾しかけたオメガに、

《喋ってると舌噛むわよ。あと新品の機体壊したらどうなるか分かってるでしょうね?》

とヴァイパーが脅しをかける。

 

《レイピア2、左翼をやられた!すまない、離脱する!》いきなり戦力ダウンを知らせる無線に気が滅入る。レーダー上で、1機のF/A-18Fがよろめくように反転していく。

《ヴァイパー、作戦は!?》とのオメガの問いに、《見えたものから叩き潰せ!》という、シンプル過ぎる回答。《はいはい、いつも通りの現場主義!》その回答をかき消すように、再びストーンヘンジからの砲撃。

 

《ハハッ、手厚い歓迎ね!》こんな状況というのに、ヴァイパーはどことなく楽しそうだ。

《スカイ・アイから全部隊へ、これよりストーンヘンジ破壊作戦を開始する》スカイ・アイの言葉を合図に、私たちはストーンヘンジの懐に突っ込んでいく。なんでこんな無茶な作戦を、と心の中でつぶやき、私はブリーフィングの内容を思い出していた。

 

 

 

約10時間前──

 

「国連軍がイユーリへの爆撃作戦が予定しているわ」とグッドフェローが切り出す。

「でも、イユーリはレールガンの射程範囲内で近づくことは出来ないわ。そこで、これよりエリアT8F、オストマン中央部の厄災の記念碑こと、“ストーンヘンジ・タイプ3”に攻撃を行います。……レールガンの直撃を受ければ勿論、砲弾の衝撃波に巻き込まれても即終わりよ。特にオメガ、貴女は前回墜ちたんだからその怖さはわかっているわね?まあ、それは置いといて、敵はストーンヘンジの中央に電子攻撃システムを建設したことが判明してるわ。強烈なジャミングで航空機からのロックオンは無効化される。そこで友軍の地上部隊がストーンヘンジに接近して砲撃による電子攻撃施設の破壊を試みます。貴女たちの任務は彼らの前進を阻む敵防衛部隊の排除よ。電子攻撃施設が破壊されればロックオンが可能となるわ。電子攻撃施設の破壊を確認したら速やかにレールガン本体に攻撃を加えなさい。そして、今作戦においては リッジバックス隊を含む腕利きのパイロット達が集結しています。先を越されないようにね。あのデカ物を落としたら、報酬上乗せよ」

このブリーフィングを要約すると、ストーンヘンジの砲撃下、ベルツ中尉ら率いる地上部隊を援護。彼らにECMを無力化させ、その隙に空爆ということだ。シンプルだが無茶な作戦だ。

しかしオメガは異常なまでにこのミッションに燃え、「全部私がぶっ壊してやる」とまで息巻き、普段より多くのグレネード弾やSTANAGマガジンを弾薬庫から持ち出してきていた。普段は身に着けないチェストリグを装着し、その上背中にはSMAWロケットランチャーまで背負っている。まあ、当然だろう。前回のミッションで墜落した彼女は、EF-2000ストライカーを再び入手したもののその購入費の一部を負担させられ、本人曰く「有り金はたいた」らしく、重度の金欠に陥っていたのだ。今回のミッションで金を稼がなければならないのだろう。

かく言う私も、似たような理由で金欠だった。エンジンを壊したトーネードの修理費が嵩んだ……のではない。もともとあの機体は今年中に退役する予定だったらしく、私が壊してしまっても特に何の問題もなかったのだ。そこで突き当たった問題がこのミッションに使用する機体がないということだ。F-4Eのエンジン修理は終わったが、この難易度のミッションを行うには機体が古すぎる。機体のレンタルも考えたが、アローズ社が保有する機材──F-5EやSu-25──ではやはりこのミッションの完遂は困難だと判断した。そこで、今までの仕事で貯めたある程度の預金を使い、それでも足らずに一部はローンで自分の好みの機体を入手することとしたのだ。初陣がこんな無茶な作戦だとは思わなかったが、それでも今まで乗ってきた中では最高性能機。どれだけ活躍できるか、ある意味楽しみだった。

 

 

 

 

《しっかしまあ、グッドフェローもよくそんな珍しい機を入手できたわねえ》と、オメガが私のストライカーを見て呟く。まあ、確かにその反応が当たり前だろう。私の新しい乗機は、箱型2次元スラストベクタリングノズルとカナード翼を装備したマルチロールファイター、「F-15S/MTD アジャイル・イーグル」だ。ごく少数の機体が生産されただけのこの機体はほとんどが実験部隊や航空技術研究に用いられており、兵装やFCSを搭載しているものはせいぜい1機か2機だ。その内の1機をどういうルートを使ったのかグッドフェローは入手し、私に売ってくれたのだ。その苦労に見合う成果を上げねば、と私は内心奮起した。

ただ1つ問題があった。入手して慣らし運転をした後、即今作戦に使用しているので、塗装が変更できていないのだ。青、白、黒のストライプカラーの上面に真っ白な下面。デモンストレーター機か曲技飛行隊のような塗装はさすがに悪目立ちが過ぎる。この作戦が終わったら塗装しなおしてもらわないとな、と私は思った。

 

 

アフターバーナーを全開にし、地上部隊上空を通過。やはり加速性が段違いにいい。ファントムやトーネードも一応はマッハ2級の戦闘機だったが、イーグルのF100-PW-200の推力は129.71kN。ファントムの1.6倍、トーネードの1.8倍という推力は一線を画しているとしかいうほかない。

 

 

眼下は、茶色い砂と岩石で覆われた荒涼とした大地だ。その所々にみえるまだら模様の物体は、ストーンヘンジ攻略に失敗したオストマン軍の兵器の残骸だろう。陸軍のレオパルド2やM110自走榴弾砲はひっくり返されてスクラップと化し、UH-1らしきヘリは地面に叩きつけられて原形を留めていない。その少し向こうでは、何機ものF-16CとF-4Eが無残な黒焦げの残骸と化して横たわっている。

そして、地上車両の脇に横わたる黒い人型の塊。───もし私達が作戦に失敗したら、ベルツ中尉らもあの死体達の仲間入りをする羽目になる。

 

 

その地上部隊と正対しているのは複数両の装甲戦闘車と大型バンカー。この前の山岳戦と違い、平野での戦闘のため障害物に気を使わなくて済む。LAGMを釣瓶撃ちにして、複数のターゲットを同時に破壊。ふとレーダーでストーンヘンジの位置を確認してみると、やはりジャマーの影響でか、ぼんやりとした円でしか表示されていない。

 

今は攻撃対象ですらないストーンヘンジは取りあえず置いておいて、今度は横から地上部隊を襲撃しようとする車列に攻撃。2両をLAGMで破壊し、近くの小型トーチカともう1両には37mmグレネード弾をお見舞いする。高度100ftほどで低い丘陵を飛び超え、その向こうを進軍する戦車部隊を捉える。

 

《早く敵の情報を送ってよ!》と、初っ端から出遅れたオメガがスカイ・アイに文句を言うも、そこは「貪欲になれ」の教えを忠実に守る私の勝ちだ。クラムシェル型砲塔の戦車、おそらくはT-72にLAGMをロックオン。慌ててスモークディスチャージャーを作動させるも、こちらのミサイルはレーザー誘導ではなくレーダー誘導式。白煙に隠れて見えないが、撃破した手ごたえはある。

 

《砲撃の危険界のデータを送る。表示に注意せよ!カウント・ゼロまでにその範囲内から離脱、回避しつつ地上部隊を支援しろ。低空でも2次爆発のダメージは免れない。最初の炸裂を目視したら直ちに爆心から離れ、二次爆発の範囲を迂回しろ!》

さすがにストーンヘンジのすぐ近く、前回とは比べ物にならない頻度で砲撃が来る。すでに10発近く撃たれており、戦闘機部隊はろくに活躍することもできないままその半数が撤退、若しくは撃墜されていた。

 

《2射目、来る!》スカイ・アイが叫び、レーダーに赤い円がいくつも表示される。

 

《危険界から離脱!オメガ、そのままじゃ叩き墜とされるわよ!》またオメガが狙われているらしく、ヴァイパーがうるさいくらいに注意を促す。

 

《5…4…3…2…インパクト!》しかし、今度の狙いは航空部隊ではなかった。

巨大な火球がストーンヘンジから20kmほどの位置で炸裂する。

《ぐうっ!衝撃で押しつぶされる!》シールドで何とか熱風を防いだらしいオメガだが、衝撃波を受け流すのは難しかったらしく、苦しげに呻く。

 

《あのバケモノ、地対地攻撃もできるのか!?》ベルツ中尉が憎らしげにつぶやく。

《レールガンの砲撃だ!損害を確認しろ!》地上部隊を見やると、少なくとも戦車1両が横転、その脇には少し前まで人間だったであろう肉塊が散らばっている。

《進み続けろ!もたもたしてると損耗する一方だぞ!》ベルツ中尉が言うとおり、彼らは進み続けるしかない。たとえここで後退を図っても、その道中に砲撃で壊滅させられるだけだ。

 

《こちらB隊コリンズ軍曹、近接航空支援を要請します!》との地上部隊から懇願にも聞こえる無線だが、一番近くにいるオメガは、《無茶言わないで、こっちも逃げまわってんだから!》と返す。しかし、地上部隊の進軍を阻む装甲戦闘車に、何本ものロケットが降り注ぐ。やったのはオメガ……ではない。

 

《邪魔だ。遊んでるだけなら帰ってくれ》《こんにちは、空賊さん》70mmロケットの雨を降らせたのは、リッジバックスだ。

 

《また一本線の連中?》どうやら完全にリッジバックス隊が嫌いになったらしいオメガがつぶやく。

 

《ちんたら飛んでんじゃないわよ、オメガ!ほら、やるわよ!》ヴァイパーがオメガを急かし、複数両の装甲車や戦車に、M203とM79からグレネード弾の雨を降らせる。撃破された兵員輸送車から銃を持った兵士が這い出るのを予測していたように、ヴァイパーが複数のM67破片手榴弾を落とす。空中で炸裂し、破片効果を最大限に発揮した手榴弾は、二人の通った後から動くものを一掃した。

 

《ちっ》2人に獲物を取られたらしいスラッシュの舌打ちがはっきりと聞こえるが、無視だ。

 

 

《こちらA隊、目標地点に到達!待たせたな!電子攻撃施設への砲撃を開始する!》ストーンヘンジまでほんの10kmほど。見える限りでは4両のM109A6パラディン155mm自走榴弾砲と2両のエイブラムス戦車……恐らくは最新鋭のM1A2 SEPV3。さらには同型のストライカーを用いる2名の陸戦ウィッチまで見える。合計8門の砲撃を、鉄骨を組み上げただけのろくな防備もない建物に浴びせかけるのだ。一瞬で片が付くだろう。

 

 

《各機、地上部隊の攻撃完了まで待機》待機とはいってもまだやることはある。自走砲を狙うハインドを撃墜し、水平射で地上部隊を薙ぎ払おうとした対空機関砲座を破壊。

 

しかし、ふと気づく。静かすぎる。今まで数秒とおかずに鳴り響いていた砲撃音が全く聞こえない。《おかしいな……、レールガンの砲撃が止んだ》スラッシュも訝しんでいる。次の瞬間、今までばらばらの方向を向いていた8門の砲身が、意外なほどの素早さである一方向に向く。あの方向は──

同一方向を向いた砲身が、ぴたりと動きを止める。その動きが何をしようとしているか瞬時に察した私は、無線機に叫ぶ。だが、その声は、8発の砲弾が同時に放たれた爆音でかき消された。地上で、今までとは比べ物にならない大きさの火球が産まれる。すさまじい爆風。視界を遮る塵の中で、全備重量63トンを超える戦車が、子供に投げ飛ばされたおもちゃのように大地を転がるのが一瞬見えた。

 

《ぐああっ!》ベルツ中尉の呻きとも悲鳴ともつかぬ声が無線に響く。

 

《A隊、何かあったか!?》離れたところにいるせいか、直接こちらを目視できないスカイ・アイが叫ぶ。

《くそっ…!レールガンの集中砲撃だ!損害甚大!作戦続行は不可能!一時撤退を要請する! 》

見ると、自走砲は4両とも元あった位置から数十mは吹き飛ばされてひしゃげた残骸と化し、M1も1両は完全にひっくり返ってしまっている。どちらも内部の乗員が生きているようには見えない。陸戦ウィッチも1名が負傷したらしく、別のウィッチの肩を借りて何とか歩いているようだ。

 

《…なんてことだ》暗に撤退を許可したスカイ・アイが呻く。しかし、これで作戦はご破算だ。ロックオンできなければストーンヘンジの破壊は無理だ。これだけの被害を出して撤退か──

《…アローズ・コマンダーからスカイ・アイ、一つ提案があるわ》今まで沈黙を保っていたグッドフェローが、無線越しにスカイ・アイを呼ぶ。

《続けてください、コマンダー・グッドフェロー》打つ手を失ったスカイ・アイは、素直にグッドフェローの提案を受け入れるつもりらしい。私も無線に耳を澄ます。

 

《こちらの航空部隊であれば、電子攻撃システムへ直接攻撃を行うことが可能よ》

「……ええっ!?」思わず大声をあげてしまう。

《それは……!?》スカイ・アイにも予想外の事だったらしい。

 

《ちょっと…!それマジで言ってる!?パスパス、私はパス!》あまりにも非常識な提案に、オメガが今この場にいるすべての人が思っているであろうことを代弁する。

 

《状況は一刻を争うわ。回答を!》そんな私たちの事を知ってか知らずか、グッドフェローは回答をと急かす。

 

《……了解した!》数瞬の逡巡後、短く了承の意を伝えた彼女は、《スカイ・アイから全機へ、作戦変更だ。これより航空機による電子攻撃装置の破壊を行う。サークル中央部の電子攻撃装置3基を無誘導兵装で破壊せよ》と、全員に伝えた。

 

《なんて燃えるシチュエーション》と、オメガが完全にあきらめたようにつぶやく。

 

《グットフェロー、砲台は私がひきつける。その間にアイツを行かせる》ヴァイパーが指示したアイツとは、言うまでもなく私の事だった。

 

《お膳立ては申し分ない、か……分かった。リーパー、突入よ!貴女が先陣を切りなさい!》無茶を通り越して無謀ともいえる作戦の連続にヤケを起こした私は一言、《了解!!》とだけ叫び、ヴァイパーを追って隙ができた砲台の間をくぐり、サークル内へ突入した。

 

《え!?ちょ…マジでいくの!?》驚いたオメガが叫ぶも、無視だ。

 

《リッジバックス隊全機、突入を開始する》獲物を取られてたまるか、とばかりにスラッシュらも私の後を追う。

 

《リーパー、“エースへの道その4”は「無茶な状況のほうを選べ」よ!そう、今みたいにね!》確かに、これは今選択できる状況の中では最も無茶なものかもしれない。サークル内にストーンヘンジの砲撃は飛んでこない。しかし、一体どれだけ持ち込んだのかと疑問に思えるほどの対空火器が待ち構えていた。SAMが、AAガンが私を狙う。もはやアラートが鳴っていない時がない、といえるほどに濃密な防空網が形成されていた。

 

《しょうがない。こちらオメガ、リーパーについていくわ!》覚悟を決めたらしいオメガが私よりやや高空で飛び回り、自らに砲火を引きよせる。

 

私は50ftを切るほどの低空で、1基目のシステムに7.62mm弾を浴びせかける。装填済みのベルトリンクを撃ち切り、ついでにLAGMをロックオンせずに極至近距離で発射。大型ロケット弾と化した2発のLAGMは、ほとんど燃焼せずに残った推進剤と弾頭を起爆させ、鉄骨で組み上げられたシステムにとどめを刺した。

《リーパー!ここは度胸よ!スピードさえ出してりゃ致命弾は受けないわ!死神名乗るんならあの化け物を憑り殺してやりなさい!》あまりにも厚い防空網に命を脅かされ続け、溢れるドーパミンでハイになったらしいオメガが変なことを口走る。

装填に時間がかかるMk.48をスリングで背負いなおし、アーウェンを構える。5発全弾を2基目に向けて発射し、さらにこちらにもLAGMを撃ち込む。

《電子攻撃システムの2基目を破壊!残り1基だ!》最後の1基を破壊しようと、カナードとスラストノズルを用いて急旋回。しかし、《空賊だけにやらせてたまるか!》と一言叫んだスラッシュが70mmロケットを浴びせかける。最後の1基は、そうして土台ごと崩壊した。

 

《全ての電子攻撃システムの破壊を確認!砲台本体にロックオンが可能だ!攻撃を許可する!》珍しく興奮しているスカイ・アイが大声を張り上げる。

 

《はっ!よくやったわねリーパー!》ヴァイパーが嬉しそうに叫び、ターゲットの3分の2を奪われたスラッシュが聞こえよがしに《クソッ!》と吐き捨てる。

 

《ペイバックタイムだ!デカブツを叩き潰すぞ!》その言葉と共に、ヴァイパーは砲撃の合間をするりと抜け、サークル内の対空火器に機銃掃射を行う。

 

《リッジバックス隊各機、巻き返すぞ!砲台は俺達が貰う!》《了解!このままでは終われません!》スラッシュの激励にエッジが答え、サークル外で待機していたリッジバックス隊のウィッチ達が超低空飛行で飛び込む。

《お、一本線が体勢を立て直した!まあ、最後は私が貰うけどね!》やる気満々のオメガが砲火に翻弄されつつも、1基目の砲台基部に40mm弾を撃ち込む。《ルーキーに良いとこ獲られてたまるか!出る杭は全力で叩き潰してやる》と今度はヴァイパーが手榴弾をいくつもばらまき、AAガンを破壊する。

 

しかし、より砲台に近い位置にいた私は、他の誰よりも有利だった。3発のLAGMを同時発射し、オメガによってダメージを与えられていた1基に致命弾を与える。《砲台の1基目を破壊!》しかし、ほとんどのウィッチはそれを聞く間もない。

《くうっ!風圧で流される!》《体勢を立て直せ!戦術データリンクを切らすな!》砲弾の炸裂による爆風と衝撃波、エンジンと翼が巻き起こす乱気流、サークル内は真っ直ぐ飛べないほどの暴風が縦横無尽に吹いていた。地面効果で暴れる機体をエンジン推力で無理やり抑え込み、どこから飛んできたのかもわからない敵のフランカーをロックオン。しかし、後ろからミサイルが接近する。チャフを撒き地面スレスレまで下がると、真上をリッジバックス3が飛び去る。《ブルー・オン・ブルー!》と叫んだ彼女は、悪いといわんばかりに片手を私に挙げ、2機のSu-27をヘッドオンで撃墜。雑魚を彼女にくれてやった私は、2基目に今度は4発のLAGMを発射する。砲身に1発、基部に3発の直撃を受けた砲台は、冷却水を盛大に吹き出し、頽れた。《水蒸気で前が見えない!…ってうわあ!》《邪魔しないでよ空賊!どっか行ってなさい!》オメガがニアミスしてきたリッジバックス4に逆ギレ気味に怒鳴られ、《そっちこそ邪魔》とブロンコに言い返される。

それを尻目に、3基目と4基目に同時攻撃。それぞれ4発づつLAGMを発射し、同時撃破。

 

《このサークルの中に何機入ってんのよ!?ニアミスのオンパレードね》とオメガがぼやく。しかもそれだけではない。SAMやAAガンが火を噴くのを避け、狭いエリアで飛び交う味方を機体の設計限界ギリギリの急旋回で回避しつつ、ストーンヘンジに攻撃を行っているのだ。HMDはほぼ常にロックオンを示す赤色に染まり、対地接近警報、ロックオン警報、過荷重警報、味方の罵声と悲鳴交じりの無線、さらにはロックオン完了のオーラルトーンにストーンヘンジの砲撃音、AAガンの発砲音にフルスロットルで回転するエンジンの轟音まで鳴り響いているのだ。もし、耳の良い者がこの場にいたら、新手の拷問じゃないかと錯覚するほどの煩さだった。

 

《砲台の7基目を破壊!残りあと 1基だ!!》スカイ・アイの叫びに私は我に返る。SAMやAAガンを相手している間に2基をヴァイパーが、1基をオメガが破壊したらしい。SMAWの83mm弾を食らった砲台は、完全に倒壊していた。残った1基は私の目の前、しかも、こちらに砲口を向けていた。LAGMをその砲口めがけて撃とうとするも、既に弾切れ。が、この絶好のチャンスを逃すわけにはいかない。再装填を済ませてあったアーウェン37を構え、全弾を砲口内へ撃ち込む。退避しつつ振り返ると、どうやら内部で装填中だった砲弾が5発の37mm弾で誘爆したらしい。その誘爆が地下にある弾薬庫まで回ったらしく、何十トンになるか想像もつかないほどの巨砲が地面から持ち上がるほどの爆発が地下で起き、砲身が後ろにひっくり返るように倒れた。

 

 

これが、私たちを苦しめ、幾多ものパイロットと兵士達の命を奪った“ストーンヘンジ・タイプ3”の最期だった。

 

 

《砲台の完全沈黙を……確認》スカイ・アイが、興奮を押し殺したような冷静な声で、ここ最近で最もうれしいことを教えてくれる。

 

《よっしゃー!》オメガが拳を突き上げ快哉を叫ぶ。

《やるじゃないの》とヴァイパーが言下に私を褒める。

《よくやったわね、リーパー!》グッドフェローも喜色をたたえた声で呼びかけてくる。

 

《こちらB隊、電子攻撃システムをやってくれたのはどの部隊だ?》重装備のほとんどを失いつつも、サークル外からの砲撃で防空網の弱体化に協力してくれていたコリンズ軍曹が呼びかける。《こちらスカイ・アイ。何機か突入したがリッジバックス隊だろう》と、現場を見ていないスカイ・アイは勘違いしているようだった。

《こっちからは別の機体に見えたがな》《リッジバックス、さすがは一本線!助かった!礼を言う》と偶然にも皮肉な内容になったベルツ中尉とコリンズ軍曹の無線に、スラッシュは答えず、《全機帰還するぞ。すぐにデブリーフィングだ》とだけ伝え、機体を翻し、去っていった。

 

《……やったのはうちのリーパーだっていうのに》と、オメガがぼやくが、《ははっ!好きに言わせきなさい》とヴァイパーが笑い飛ばす。

《こちらグットフェロー。そうね。どういわれようが、報酬はどっさり頂ける》と彼女も笑った後、ふと意味深なことを言った。

《その上、掘り出し物もあったわ。一線というやつが見えた?ねえ、リーパー》

彼女の問いに、私は答えることができなかった。

 

 

 

基地に帰投した私たちは、デブリーフィングもそこそこに久しぶりの休みを謳歌しようとしていた。しかし、デブリーフィングが終わる直前、渋面で入ってきたグッドフェローに、再び休みは覆された。「さあみんなで祝杯を…といきたいところだけど、今はおあずけよ。テログループは私たちのストーンヘンジ攻撃の裏で同時多発に東欧・中東・アジア共同体の各主要都市を攻撃、瞬く間に占拠したわ。詳しい情報はまだないけど、全員自室で待機。緊急出撃に備えて」とだけ伝えた彼女は慌ただしく部屋から出ていき、後には唖然とした私たちだけが残された。

 

 

自室に戻った私は、このテログループの手際の良さに半ば感心していた。要人拉致で私たちをキルゾーンに誘い込み、ストーンヘンジで攻撃。そして、ストーンヘンジをターゲットにさせる。私たちにストーンヘンジを決戦兵器と勘違いさせ、それを囮に、腕のいいパイロットや地上部隊が出払って無防備な各国主要都市を制圧。私たちは、彼らの掌の上で踊らされているだけだった。

「……考えても、仕方ないか」そう独り言ちた私はベッドに横になって目を閉じ、次の作戦まで少しでも体を休めようとした。どうせ、次もグッドフェローが重要作戦を持ってくるのだから。

 

 

 

そして、私は眠りについた。

 

 

 

次の作戦が私たちに大きな影を落とす事になるなんて考えつきもしないまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




漸く中盤の山場、ストーンヘンジ戦まで書くことが出来ました。
次話投稿前にもしかしたら別の短編をアップするかもしれません。
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