INFINITY WITCHES ~無限大の魔女~   作:AGM-123

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投稿が遅れて誠に申し訳ありません。
第5話、投稿させていただきます。

また、UA1000達成をこの場をお借りしてお礼申し上げます。


Misson05 極東戦線 ~東京解放戦(前編)~

ストーンヘンジ攻略戦から数日後の早朝、叩き起こされた私達は、グッドフェローに起き抜けには見たくないものを見せられた。

 

「武装テログループのリーダーによる声明文が全世界に向けて発表されたわ。リーダーは…先の宇宙兵器開発問題で解雇されたヴェルナー社軍事部門最高責任者、キャスパー・コーエン」

 

薄く髭を生やしたもじゃもじゃ頭の男性の顔が大写しになる。

 

「コーエンはユリシーズの厄災以降、一部特権階級の私服を肥やしただけの国連及び大国政府の政策責任を追及するとして、拉致したグレイメン9人を全員処刑したわ」

 

さらに9人の男性のバストショットが画面に映り、殺害を意味する赤で全ての写真が染め上げられる。

 

「そして EU東部からアジア共同体にかけてのユーラシア大陸南部をユリシーズ難民による国家“ユージア連邦”と名付けて独立することを宣言。その声明文は次の通りよ」

 

画面にユーラシア大陸全体が映し出され、“ユージア連邦”とやらの面積が表示される。それを見て私は、目を見開いた。…広すぎる。大モンゴル帝国にインド連邦、ビルマ、シャムロ、ペルシア、オストマンとオラーシャの一部、オストマルクとカールスラント、さらには扶桑の西側の砂漠地帯までもを領土としているというのか!?

 

 

私の驚きをよそに、画面にユージアのものと思しき国旗の様な物が映り、同時に音声が流れはじめる。

 

 

「ユリシーズの厄災から20年、難民たちは苦しめられてきた。そして、いまだユリシーズの破片がNEOとして多く周回、落下の危険性は極めて高い。ユリシーズの悲劇はまた繰り返される!今こそ人類の力を結集して対策すべきである!…そのような事態にありながら、国連は20年もの間、大国の言いなりとなり弱体化した。その対策として“失われた世代”と呼ばれる我々難民出身者が脆弱な国連に変わる新たな秩序となり、強力な統治機構で世界の窮状を救うのだ!」

 

熱に浮かされたかのように、コーエンが画面の中でがなる。

 

 

 

「ガキの戯言ね」とオメガがきっぱり言い切り、

誇大妄想狂(パラノイア)が。ダイムノヴェルの主人公にでもなったつもりか」とヴァイパーが口に出すのも嫌そうに吐き捨てる。

「……馬鹿みたい」と率直すぎる意見で締めくくったのは、ブロンコだ。

 

 

「ふざけた話だけど、事実イユーリを中心にヴェルナー社の軍事兵器を使用して大陸各国の主要地を要塞化し、防衛ラインを引いているのが確認されたわ。テロ組織の独自行為とは思えない迅速さね。加担している国家も複数あると見られているわ。なんにせよ、国連軍の出足の遅さが仇になったわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―???―

 

『ユージア、また歴史の1ページが紡がれました』

いつも通りの嬉しそうな口調で“彼”が切り出す。

『もっと歴史のお勉強をしましょう。昔ユーラシア大陸の中央に……』

機会があったらすぐにでも歴史の講義を進めようとする“彼”を、いつかと同じくビープ音が抑える。

 

[SORTIE ORDER]

 

『あ、また出撃のようですね。この話はまた別の機会に』

と、残念そうに語る“彼”を無視し、私は出撃の準備をする。またあのウィッチ、ボーンアロー隊の4番機とやらに会えることをほんの少しばかり楽しみにしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“ユージア独立宣言”の翌日、またしても早朝に私達は叩き起こされた。しかし、グッドフェローによって告げられた作戦は、私達全員の眠気を完全に吹き飛ばすのには十分なほど衝撃的なものだった。

 

 

「全員そろってるわね。ユージア軍を名乗るテログループの侵攻を防ぐべく、ユーラシア大陸各防衛戦において、国連軍の大規模作戦が決行されるわ。一つはペルシア湾沿岸エリア。そしてもう一つはアジア極東エリア──フソウ皇国旧首都、トーキョーでの同時作戦よ。私達アローズにも出動要請が下ったわ。再びトーキョーに向けて出発します。今作戦は陸海空全ての勢力が激突する大規模作戦になるわ。激しい戦闘が予想されるけど、目立ちたがり屋には絶好の舞台よ。機体の整備は慎重にしておきなさい。この戦線を切り崩すのは私達よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AREA J4E 扶桑皇国旧首都東京 2019年 8月19日 17時30分 

 

 

ユージア連邦独立宣言から数日後、私は再び東京上空を飛行していた。前回飛んだときとは違い、今度は4機編成、さらにフル武装だ。遺棄された旧国際空港上空を通り抜け、東京湾上空から首都全体を見渡す。3ヶ月前に見たばかりの東京は、様変わりしていた。狭い河口に戦闘艦が遊弋し、上空をユージア軍機が我が物顔で飛び回る。そして、あちらこちらで空へと伸びる黒煙。湾内では、何隻かの友軍艦が無残な骸を晒している。扶桑海軍のハルナンバー「183」のミニ・イージス艦と、リベリオン第7艦隊のハルナンバー「151」の駆逐艦が、ASMの直撃を受けたのか黒煙を吐いて横たわっている。

 

「……東京が!」私が呟いたのを皮切りとしたかのように、スカイ・アイが命令を下す。

 

《これより東京開放作戦を開始する!各部隊、作戦時間内に可能な限りの戦果を挙げんことを》それを合図に、次々と交戦宣言が伝えられる。

 

《リッジバックス1 エンゲージ!》《リッジバックス2 エンゲージ!》リッジバックスの2人がまずは宣言し、《ボーンアロー1、エンゲージ!》《ボーンアロー2、エンゲージ!》《…ボーンアロー3、エンゲージ》と、3人がそれに続いて叫ぶ。

 

 

《ボーンアロー4、エンゲージ!》と私も一声叫び、アフターバーナーに点火。真正面にあったAAガンにMSSLを発射し、急旋回して別の敵を探す。貨物港に潜伏していたイージス艦を見つけ、艦橋に7.62mm弾の集中砲火を浴びせる。SPYレーダーとCICを破壊されたイージス艦は、これでもう戦力外だ。数十発の魔力弾を浴びた艦橋要員の惨状は想像しないことにして、今度は上空の4機編隊のMiG-29に意識を向ける。MSSLで至近距離の2機を屠り、残りを機銃で追いかけ回す。

 

 

《敵はシンジュク副都心、臨海エリア、ジョートー・クレーター付近に兵力を集中している。航空部隊は各エリアで交戦中の友軍を支援しろ。作戦時間には限りがある。各個の判断で出来る限り多くの敵戦力を排除せよ!》

 

 

スカイ・アイの戦況報告を聞きつつ、2機のMiGを撃墜。ロックオンアラートに周囲を見渡すと、少なくとも6機のMiG-21が私を狙っている。いくら相手が旧型機でも、流石にこの数はきつい。しかし、そう思った次の瞬間、4機のMiGが同時に撃墜された。

 

 

《こちらFASDF309飛行隊!お久しぶり、空賊さん!前みたいに頼むわよ!》

 

 

前に共闘したディアボロ隊が中距離ミサイルを連射し、援護してくれたのだ。編隊が崩れたMiGの間に割り込んだオメガが1機をロックオン。MiGが急旋回してロックから逃れようとしたところにディアボロ1が放ったAAMが突き刺さる。

《スプラッシュ!協同撃墜ね!》《こちらボーンアロー2、援護ありがとう!》

 

 

上空の敵は3人に任せ、私は低空で地上目標を探す。

 

《敵艦隊からの艦砲射撃!敵戦闘機もうじゃうじゃしてやがる!航空部隊はまだか!》

 

コリンズ軍曹の叫びに、私は敵を撃墜することで答える。CASを行っていたSu-33を叩き落とし、先ほどとは別のイージス艦にLAGMを真上から打ち込む。装甲らしい装甲を持たないイージス艦は、今の一打で竜骨を折られたらしく、真っ二つにへし折れ轟沈した。

 

《大丈夫だ、上を見てみろ!あいつが来てる》今度はベルツ中尉が嬉しそうに叫ぶ。

《死神マークのあのウィッチですか…。あいつだけには取り憑かれたくない》低空で飛んだせいか、私のパーソナルマークを見たらしいコリンズ軍曹が気味悪げにうめく。

 

《いや、違うぞ。あの死神マークが見えてりゃ、そこの下は安全地帯だ。忘れるなよ、コリンズ。お前の上にはいつもあの機体がいるんだ》《了解!》人のことをなんだと思ってるんだ、とツッコみたいのは置いておいて、煩わしいAAガンを2基連続で片付ける。

 

 

《おおっと、艦砲射撃だ!地下鉄構内に退避!》今度は2隻のコルベットが3インチ砲で対地射撃を行っている。それぞれ一発づつLAGMを撃ち込み撃沈。レーダーを頼りに宙返りで反転すると、さらに2隻のコルベットと1隻のイージス艦。この狭い湾内に一体何隻居るんだという疑問はさておき、コルベットには機銃掃射で、イージス艦にはMSSLで対処する。蜂の巣になったコルベットと艦橋をもぎ取られたイージス艦が漂流するのを横目で眺め、急上昇して今度は空中戦に殴り込む。2機のF-15がAMRAAMを発射してくるも、ウィッチの私はRCSが小さすぎてロックオンできなかったらしい。虚しく私を通り過ぎて飛んでいったAMRAAMを無視し、ヘッドオンで機銃を撃つ。キャノピーを粉砕された2機のF-15は、パイロットをベイルアウトさせることなく墜ちていく。

 

 

 

 

 

次の瞬間、レーダーロック警報が響く。振り向くと、後方ほんの1000mほどの距離にMiG-29が接近していた。Mk.48で応射しようとするも、空撃ちの音が響く。目をやると、既に装填していたベルトリンクは撃ち尽くしていた。とっさにMk.23をホルスターから引き抜き、乱射。しかし、当てずっぽうに撃った45口径弾は全て外れた。「しまっ…!」シールドを張る暇は…無い。私は被弾を覚悟し、思わず目を閉じた。

 

だが、衝撃は襲ってこなかった。その代わりに、爆発音と熱風が私に襲いかかる。「…え?」

見ると、MiGは上空からのミサイル攻撃で、エンジンを吹き飛ばされていた。私の危機を救ってくれたのは、2人1組のウィッチ。《こちらイーグレス680、敵機撃墜!》《イーグレス320、周囲に敵影無し。索敵を続行する》扶桑空軍のラウンデルをつけたストライカーを駆る彼女らは、錐揉みで墜ちていくMiGと唖然とする私を置き去りに、飛び去っていった。

エアインテイクと垂直尾翼に紅いダンダラ模様を描いたF-4EF改ストライカー、680号機と320号機。「まさか、新撰組…!」そう、彼女らは“百里の新撰組”の異名で知られるベテランウィッチ、神田中佐と栗原中佐。旧型のF-4EでF-15Cを複数機撃墜したエースコンビ。まさか参戦していたとは。…彼女らに負けないように、私も頑張らなければ。

 

 

 

 

 

再びの警報にレーダーを確かめると、3機のMiG-21が上下に分かれて私を狙っていた。背面飛行で上空の2機に機銃掃射し、すれ違いざまにもう1機にはMSSLを撃つ。3つの爆発音を背中で聞き流し、今度は旧皇居の森の中に隠れる自走ロケット砲をロックオン。自衛装備も装甲も持たないMRLSはLAGMの直撃を受け跡形もなく爆散四散する。その近くにダックインしていた3輛のT-90は、スモークを焚いて自らの姿を隠そうとする。しかしそのスモークの中を狙ってアーウェン37を全弾撃ち込む。魔力によって強化され、一発当たりがMBTのHEAT並の威力になった37mm弾は、たとえ至近弾でもT-90達から戦闘能力を奪うのには十分過ぎるほどだった。

 

 

《なんて入り組んだ街だ》コリンズ軍曹のぼやきが聞こえる。

《回避!回──うわあああ!!》断末魔と共に無線が途絶える。下を見ると、陸軍のAH-64Dがビルに衝突、炎上している。パイロットとガナーは即死だっただろう。原因は──あそこの車載SAMか!ついでとばかりに私をロックオンしてきたSAMにLAGMを発射し、破壊。ギリギリまで迫ってきていたSAMを避けるために、低空に逃げる。真下は運が良いことに小さい川だ。これなら、高度を下げられる。しかし、その川の中、堤防の間には先客がいた。ライトグレイに塗られたシングルローターの大型ヘリが2機。撃とうかと一瞬迷うも、胴体横のラウンデルは白地に太陽と月。扶桑軍機だと分かったため、私はその場を離れ、高度を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何て入り組んだ街だ」コリンズ軍曹はぼやいた。

ベルツ中尉は隣にはいない。どこかではぐれてしまった。

艦砲射撃に追われ地下鉄に逃げ込み、構内で彷徨っているうちに離れ離れになってしまったのだ。合流しないとと思いつつ小隊無線手を探すも、彼は地下に逃げ込む前に無線機ごと吹き飛ばされていたことを思い出す。

「ったく、ナンバーテンだな」

ふとヘリの羽音に空を見上げると、上空を遊弋するAH-64Dが見える。一瞬身構えるも、茶、緑、黒の三色塗装は紛れもない扶桑陸軍の物。地上最強の戦闘ヘリの登場に安心したのもつかの間、アパッチはチャフとフレアを撒き散らしつつ急旋回。しかしその努力も虚しく、数瞬後SAMの直撃を食らったアパッチは、高層ビルに機首から突っ込み、ひしゃげたテールブームのみを黒煙の中から覗かせていた。

目の前で戦死した2人のパイロットの事はとりあえず意識の外に置き、コリンズは地図を取り出し、辺りを見渡す。まるで迷宮のような地下街に、地上には放置された古めかしい乗用車と、20年前遺棄された半壊したビル。『篠原重工』と書かれた錆び付いた看板が虚しく風に揺れている。地下鉄の駅名を調べようと標識を見るも、それは経年劣化が激しく、解読は不可能だ。自分がどこにいるのか見当もつかない。

「畜生、何て入り組んだ街だ」もう一度コリンズはぼやいた。

次の瞬間、目の前の廃乗用車が火柱を上げて吹き飛ぶ。ビルの窓からのロケット弾攻撃だ!「RPG!」と叫びとっさに伏せて第2撃の破片から身を守り、ロケットの飛んできた方向に向かってM-4を乱射し牽制。更に近隣のビルからの火点に擲弾手が40mm弾を撃ち込むも、彼は別方向からの火線に体を撃ち抜かれ、即死した。

「クソッタレが!」口汚く罵りつつ地下街入り口のコンクリート壁を盾にし、何とか2つの火点を黙らせるも、未だ10近い火線が彼らを良いようにいたぶっていた。

ビルから飛び出てきた敵兵らが、牽制の火線を張りつつこちらに向かってくる。

 

 

「全滅」の2文字がコリンズの頭をよぎったその時だった。

 

糸が切れた人形の様に、路上にいた3人の敵兵が頽れる。その一瞬のち、複数の火点があっという間に沈黙した。数秒遅れて聞こえてくる複数の発砲音。アンチマテリアルライフルの遠距離射撃か。

「…へ?」状況が把握できず、間抜けな声を上げてしまったコリンズの前に、どこからともなく扶桑人の男が現れた。

黒いBDUとドラゴンスキンのアーマーを着込み、MP7を持っている。だが、どちらも扶桑軍の装備ではない。PMCにしても、こんな最新鋭の装備を使えるはずがない。

「…扶桑国防陸軍か?」コリンズの問いに、その男は微笑みを浮かべつつ流ちょうな英語で答えた。

 

「扶桑国防陸軍……所属は言わないでおきます。コウヘイ・ドモン少佐です。私の事はプリーストと呼んでください」

 

特殊部隊員か、と悟ったコリンズは「UNFのコリンズ一等軍曹であります」と返答し、握手を交わした。

「我々があなた方を援護します。戦闘車両もわずかながら持ち込めたので、航空部隊が優勢を取り戻すまでしのぎましょう」

生き残った小隊員を集めて部隊を再編制しつつ、コリンズは問うた。

「ボタスキー、SAWを持て。パッキーはグレネードを頼む。ラッツはSMAWだ。チコ、お前はスティンガーだ。……AFVがあるんですか?そりゃいいが一体どこに…」

彼が言いかけた時だった。耳を弄する轟音とともに、巨大な2つの影が現れた。近くの堤防の中をNOEでここまで飛んできたのか。

「キングスタリオンか!?」コリンズが呻くと、入り口前の道路に着陸した2機のCH-53Kから、2台づつ車両が現れた。

ルーフにM2重機関銃を積んだ扶桑軍の四駆装輪装甲車──軽装甲機動車──と、2門の砲を搭載した見たこともないような小型AFVだ。

「何ですか?あのちっこいのは?」と機関銃手から問われた彼は、笑って答えた。

「60式自走無反動砲。今から約60年前に採用された自走無反動砲ですよ」

「…たった2両のポンコツが、心強い援軍とはね」と小隊付き選抜狙撃手が周りに聞こえないようぼやいた。

 

いつの間にやってきたのか、服装も装備もバラバラの男女が自走無反動砲に取り付き、各部の点検や砲弾の装填を行っていた。

「ユミ!イタミ!ノモト!イツネ!配置に付け!」「了解、ハンニバル!」「…彼らは?」プリーストに彼らの正体を尋ねると、「東京での治安維持に当たっていたPMCだ」という趣旨の簡素な答え。軽装甲機動車に乗り込み、機銃席についたコリンズに、プリーストが大声で呼びかける。「PMCはあちこちでレジスタンス活動を行っています!合い言葉があるので、困ったときは使ってください!」「なんて言えば良いんだ!?」プリーストはにやりと笑って答えた。「“糞共は誰?”に“国連だ!”って返せば良いんですよ!」と。それを聞いてコリンズも笑みを返した。PMCにぴったりの合い言葉。それに、この状況を招いたのは国連だ、という意見もあながち間違っては居ない。そうコリンズは思っていた。

 

「さあ、反撃開始だ!」コリンズは叫び、部下に前進を促した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高層ビルの間をくぐり抜けた私は、AAガンや装甲車を血祭りに上げる。さらに、上空から逆落としに突っ込んでくるMiG-21を躱し、エンジン部を機銃弾でずたずたに切り裂く。

 

《おかしい。空賊連中と差が出始めてる。リッジバックス隊、ペースを上げるぞ!》スラッシュの言葉に、HMDのインジケーターを見てみる。私達が6、リッジバックスが4という感じだ。2回前のオラーシャのミッションでは、リッジバックスが8、私達が2という具合だったので、逆転されたのが不愉快なのだろう。

 

《あっちにも敵が散開している…私が叩く!》1人突出したエッジがヴァイパーの前すれすれを横切り、ヴァイパーが狙っていたSu-33を撃墜する。《ははっ!生意気でいいねぇ!》獲物を奪われたことに怒る様子もなく、むしろ楽しげにエッジを目線で追いかけるヴァイパー。

《スラッシュからエッジ、編隊から外れるな》スラッシュの叱責にエッジが不満げに答える。

《……エッジ了解》

 

《一本線のリーダー!アンタのやり方はいちいち過保護なのよ。そんなんじゃ良い部下は育たないわよ》珍しくヴァイパーがスラッシュに話しかける。

《あんたは傭兵だろう。黙っててくれ。部下を守るのは上官としての役目だ。そちらのやり方では放任過ぎる》と、スラッシュが返す。

《そうそう、言ってやんなさいよ一本線》と、こういうときばかりはオメガがスラッシュの肩を持つ。

《フン、若いのは勝手に育つのよ。あたしたちの役目は、ここってタイミングで背中をポンっとひと押ししてやるくらいでいい。さっさと一人前になってもらわないと、おちおち隠居もできやしないじゃない》と、持論を展開するヴァイパーをオメガが茶化す。

《隠居って言ってもどうせギャンブルでしょ?また直ぐに戻ってくることになるわよ》しかしヴァイパーは《うるせぇ》とだけ返し、《そっちの2番機は戦いたくてウズウズしてるように見えるけどね》と今度はエッジに視線を向けた。図星を付かれたらしいエッジは、何も答えなかった。

3人が話している間にも、私は敵を撃墜していく。比較的高性能な敵機──MiG-29やSu-33は既に全て墜とされ、残っているのはMiG-21だけ。旋回しつつ1機1発の勘定でMSSLを撃ち、3機を墜とした。MiG-21の方は既にAAMも撃ち尽くしたらしく、ただただ旋回を続けるだけだった。

 

 

《ひるむな!上空の連中は押してるぞ!死神がいる限り、撤退はない!》どうやら私のことを“死神”と呼ぶことに決めたらしいベルツ中尉が、部下に激励を掛けるのが聞こえる。

さらに私が2機、オメガが1機のMiGを撃墜する。

《こちらスカイ・アイ。一定数の敵戦力の排除を確認》

《うわー、だいぶぶっちぎったんじゃない?》オメガの言葉通り、私達は敵の7割近くを破壊していた。残りの3割は地上部隊とリッジバックス隊、扶桑空軍と国連空軍機の合同スコアなので、まさしくぶっちぎりの大金星だ。

 

もはや戦意を失い、ただ逃げ続けるだけの敵を撃ち墜とそうとしたときだった。

 

 

 

 

《待て!上空に巨大な機影を察知!!》

 

とのスカイ・アイの言葉と共に、レーダーに非常識なまでの大きな何か(・・)が映る。レーダーが故障しているんじゃないかと思えるほどに巨大な飛行物体。全幅は──約1km。

 

 

 

 

「何…よ。何なのよ…。あれ…」オメガがおびえたように呟く。

 

「……嘘でしょ」顔面を蒼白にしたブロンコがぼそりと言う。

 

 

 

まるで、1940年代の記録映像の中から飛び出てきたような姿。あれがもし黒と赤のヘックスパターンだったら、子供でも正体を言い当てられる。

 

「まさか…ネウロイ…?」人類最大の脅威を思い浮かべた私の言葉を、ヴァイパーが否定する。

 

 

 

「いや、あれは……、重巡航管制機って奴よ。噂では聞いていたんだけど…まさか、完成していたとはね……」

 

 

 

 

その短い一言が告げた非現実的な光景に、私はただただ恐怖するしかなかった。

 

 

 




◎キャラ解説コーナー

 ・神田中佐、栗原中佐:某空自物漫画の主人公コンビ。この世界ではウィッチとして登場。2機のストライカーに分乗しているのは、複座型戦闘脚のイメージが思いつかなかったため。
 
 ・コウヘイ・ドモン少佐:某特殊部隊物小説の2代目部隊長。ちなみに前隊長も登場予定。

 ・ボタスキー、パッキー、ラッツ、チコ:某猫の糞一号の主人公達。ちなみにチコは陸戦ウィッチ(使い魔は猫)。
 
 ・ユミ:某女子高生が海兵隊になる漫画の主人公。この世界では傭兵。

 ・イタミ:某異世界に行ったオタク自衛官。この世界では傭兵。

 ・ノモト:某迷彩君。原作と同じく傭兵。

 ・イツネ:某VRゲームで山本五十六役を演じた女子高生。

 ・ハンニバル:某特攻野郎Aチームの隊長。



◎シーン解説
 今回CH-53Kで自走無反動砲を運搬するシーンを書きましたが、あれは恐らく可能だと考えました。CH-53Kの荷室が9.14m×2.62mx1.98m、15.9トンまで。60式自走無反動砲が3m×2.23m×1.38m、8トンなので恐らく積載は可能です。

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