「お待たせ燐子ちゃん!」
「あっ‥‥‥新田さん‥‥」
ライブが終わった翌週。あたしは燐子ちゃんと約束通り買い物をするためにショッピングモールに来ていた。
店の前、日陰でスマホを操作していた燐子ちゃんに声を掛ける。あたしの声に反応しいて顔をあげた燐子ちゃんはなんだか嬉しそうな表情をしていた。
「どうかしたの?口角上がってるけど」
「‥‥‥次の、イベント‥‥私の欲しかった武器が‥‥‥手に入るみたいで‥‥‥」
「そっか。よかったね!」
ゲームの話だった。
そう言えば燐子ちゃんはあこちゃんと一緒にゲームをすることが好きだと言っていたのを思い出す。確かオンラインのゲームだったはず。あたしはゲームをあまりやらないからわからないけど燐子ちゃんが嬉しそうだし何か言おうとは思わない。
というか燐子ちゃんがハマっているのなら面白いのだろうしこれを機に教えてもらいながらやってみるのもいいかもしれない。
「じゃあ、行こっか」
「‥‥‥はい」
ショッピングモールの中は空調が利いていて夏に入ったばかりのあたしたちを癒してくれる。
今日の目的であった洋服を見るため服屋へと足を進める。
ショッピングモールというだけあって店では取り扱っていないような系統の服や種類が多い。服を見てテンションが上がらないわけがないのだ。
燐子ちゃんもワクワクしながら選んでいるように見えた。
「ねえ燐子ちゃん、これ紗夜ちゃんに似合いそうじゃない?」
「‥‥‥そうですね‥‥‥こっちも‥‥似合いそう、です‥‥‥」
「あ、ほんとだね!これだったら」
シャツやトップスに似合うパンツやボトムスを二人で選んでは誰に似合いそうか話し合って、ああでもないこうでもないって議論を重ねて。結局ただ服を見に来ただけじゃなく、誰に何が似合うのかを選ぶ会になってしまった。
でも服の話でこんなにも盛り上がれるのはおそらく燐子ちゃんだけだし、そんな友達ができたことが嬉しくて仕方なかった。
「これは燐子ちゃんに似合いそうだね」
あたしが選んだのはVネックとゆったりしたスカート。胸の大きい子はあんまりゆったりしたの履くと太ってるように見えちゃうけど、ベルトでウエスト部分を締めたらメリハリが出ていい感じに見えるんだよね。
間違いなく、似合うだろう。
「……そう……でしょうか……」
「うん。だってあたしが選んだんだもん」
自信満々に言えばそうですねとふんわりした雰囲気で返される。ちゃんと試着までしてくれて、買いはしなかったもののあたしも燐子ちゃんも満足げだった。
その後も欲しい服やアクセサリーを見て、あたしたちはフードコートに訪れていた。お昼も一時を回ったところ。フードコート内は人で溢れかえっていた。前にいたお客さんと入れ替わりで席に着く。
これは二人で一緒に席を立ったら席がなくなるやつだと思った。
「燐子ちゃん、あたしまとめて買ってくるけど何食べたい?」
「……一緒に……行きます……」
「いやいや。そうしちゃうと席なくなっちゃうから。燐子ちゃんはこの席死守しておいてよ」
あたしの言葉に納得したのか燐子ちゃんはこくりと頷いた。
燐子ちゃんの要望に応えるためフードコート内のファストフード店でハンバーガーのセットを二つ購入して席に戻れば燐子ちゃんはスマホと睨めっこしていた。
「燐子ちゃんどうしたの?」
「……新田さん……」
なんだか少しうれしそうに見えた。何かあったのだろうか。
トレーをテーブルに下して向かいに座る。
「……今度の日曜日って……空いていますか……?」
「え?日曜?大丈夫だと思うけど……」
「……それなら……」
そう言って燐子ちゃんが差しだしてきたスマホの画面に映っていたのはとあるHPだった。
Neo Fantasy Onlineと書かれている。前に言っていたゲームのことだと察する。スクロールした先にはコラボカフェ情報という欄があった。それを指差して燐子ちゃんが言う。
「……一緒に、行きませんか……?」
「え?けどあたしこのゲームそんなに知らないんだけど……」
「……私が…教えます……だから……行きませんか……?」
お誘いは嬉しい。けど知らないゲームのコラボカフェ?というやつに参加するのはどうなのか。そもそもコラボカフェってなんだ。
「……ダメ…ですか……?」
「ううん。全然。行こうか。日曜日」
ダメですかなんて申し訳なさそうな言われて断れるわけがない。燐子ちゃん可愛い天使かよ。
「じゃあ細かい話は後で話すとして、今はこれ食べちゃおうか」
「……はい」
あたしの言葉で燐子ちゃんはハンバーガーを手に取った。包み紙を開けて中身にパクっと口をつける。
え、なに可愛い。小さな口で頑張って食べてる。もきゅもきゅと小動物のように食べるその姿に胸を打たれないわけがない。やば、可愛すぎ。
「……新田さん……?」
食べてる最中に上げられた視線。
それは少し上目遣いになっていてハートを射抜かれた。
我慢できなくてどうしてもこの姿を収めたくて、無言で写真を撮れば消してくださいと真っ赤な顔で言われた。
あたしはただ笑って燐子ちゃんを落ち着かせることにした。