10年くらいしたら「先輩、それ平成っすよーw」とか言われるのか......。
顔合わせをすませた一行は、トレロの案内でベルデンへと向かった。
森はベルデンから程近い場所だったが、夜、それも雷雨の中である以上、当然移動は遅くなる。
三人がベルデンに到着したのは、日付が変わった頃だった。
「この宿です」
「......意外と大きいんだな?」
足を止めたトレロの視線の先に建つ宿は、大型というほどではないが、一般的な家二、三軒ほどの大きさがある。
闇夜ゆえに視界は十分ではないが、ぱっと見渡したところ目立つ汚れも傷もない。
「これで客が少ないっていうのは、少し意外だな」
「......入って......いえ、入って少ししたら分かりますよ......」
「お、おう?」
なぜか死んだ目で呟くトレロに促され、宿屋の扉を開く。
リンリン、と鳴るベルの音を聞きながら中に入った。
とりあえず内装を見てみるが、別に床が抜けているとか、壁に血痕が飛び散っているなどということもない。
なにか変わったものがないかと周囲を見回しているところに、『彼女』はやって来た。
「こらー! 泥棒のくせに正面から入ってきてんじゃないわよ!」
部屋の奥の扉から威勢の良い叫び声と共に少女が出てきた。
この宿の従業員らしき少女は、右手のボウガンをコナミに向けながら、精いっぱい睨み付けている。
「ほら、こっちはちゃんと武器を持ってるんだからね! さっさと出ていきなさい!」
ボウガンは下ろさないまま、左手で扉を指差す少女。
しかし、突然の展開にコナミはなにも言うことができなかった。
「...な、なによ。さっさと出ていきなさいって!」
なにも言わないコナミに、少し震えた声で少女が叫ぶ。
強盗(少女視点)と一人で相対しているのだ、怖くないはずがないだろう。それでも虚勢を張る辺り、彼女はなかなか良い根性をしているらしい。
そこでコナミはようやく自分が強盗と思われているという状況に頭が追い付く。
「いや、違うんだ。俺たちは怪しいものじゃなくて......」
出来る限りの笑顔を浮かべて、両手を上げながら少女へ近づく。
「や、やるって言うの? い、言っとくけど、このボウガンは本物なんだからね!?」
だがしかし、目の前の少女は想像以上に恐怖を押さえ込んでいたらしい。
落ち着かせるためにとったコナミの行動が、図らずも彼女の恐怖を解放してしまう。
引き金にかけていた指が震え、無意識のうちに力が籠る。
「いや、だから俺たちは......」
「いやああぁーーーーーっ!」
目を閉じて発した少女自身の叫びが彼女の体を強張らせ、結果として意図しないまま引き金を引いてしまう。
パシュッ、という軽い発射音。握り込まれた引き金が、自分が矢を射ってしまった---人を殺してしまったということに気づかせる。
「あ、ああ............」
相手は強盗。だが、この手で人を殺してしまったのだ。呆然としながら、それでも相手を見ようと視線を上げる。
その先にあったのは、矢を生やした強盗の死体-----
「うわ、びっくりしたあ...」
「............へ?」
-----などではなく、心臓の少し前で矢を掴んでいる、呆れた表情を浮かべた強盗の姿だった。
「え? え、いや、え?」
「はあ...。少しは落ち着け」
「だ、誰! ......って、トレロさん!?」
目の前で何が起こったのか分からず先程とは違うパニックに陥る少女を見かねて、トレロが仕方なさそうに声をかける。
一応は顔見知りである相手を見て少しだけ落ち着いた彼女に、彼は盛大な爆弾を投げた。
「あのな、とりあえず一つだけ教えてやる。」
「な、なによ」
「その人は............客だ」
「-----------」
言葉を失い、ギギギとコナミを見る。
呆然とした彼女の表情とは対照的に、コナミが浮かべるのはどこか申し訳なさそうな表情で。
「...えっと...。こんばんは、お客さんです」
「-----------ご」
「ご?」
「ごめんなさいーーーーーーーーーーっ!!」
宿屋の女将さん、トモ登場。
お客さん(トレロ)の尻をぶち抜いた伝説の女将です。
まあでも、もっと伝説になるべきは、尻に三発矢を受けてピンピンしてるトレロだと思いますけと。