銀の剣の物語   作:ボード

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遅くなってすみませんーーー!


異変

 ハラキリでもしそうな勢いで謝罪してくるトモをなんとか宥め、三人は二階の一室に足を向けた。(ちなみに「宿代は要りません!」と床に突き刺さらんばかりの土下座と共に言われたが、さすがに申し訳なかったのでトレロと同じ格安料金にしてもらった。)

 コナミとカイダが借りたのは二階の角部屋だ。ほとんど無いとは思うが、魔族に襲撃されたときの逃走、警戒のしやすさを考えると、できるだけ確保しておきたい部屋だった。

 

「それで、早速ですが...」

 

 ドアをしっかりと閉め、外に誰もいないことを確認し、トレロはコナミに声をかけた。

 この街で起きている異常。一刻も早い対処を必要とするそれについて説明しようとした......のだが。

 

「ふあ~~あ」

 

 という幼いあくびに言葉を止められた。

 音の聞こえた方を見ると、カイダが眠たげに目を擦っている。

 

「あー、そういえば、もう二時過ぎてるもんな。カイダ、そこのベッドで寝とけ。」

「うん、そうするでやんす...。おやすみなさいでやんす、先生」

 

 そう言ってのろのろとした動きでベッドに潜ったカイダは、ものの三秒ほどでぐっすりと寝付いていた。

 その様子を優しい目で見守っていたコナミは、カイダが寝付いたのを確認するとトレロに視線を戻した。

 

「悪い、待たせたな。それじゃあ、状況を教えてくれ」

「あ......はい」

 

 弟子というにはやけに甘いように思える対応を不思議に感じたが、今はそれを尋ねている場合ではないということを思い出し、説明を開始した。

 

「では、順にお話しします。と言っても、まだあの城が出現してから三日ですし、そう多くのことが起こっているわけではないのですが---」

 

 そう告げて、トレロはこの街で起きていることを語りだした。

 

 三日前、朝になるとあの城が空中に存在していたこと。

 近くの支部からトレロが派遣されたが、とても一支部の手に負えるものではないと判断して本部に応援を要請したこと。

 城が出現した日には大騒ぎになっていたが、翌日になってトレロが到着したころには、住民たちは()()()()()()()落ち着いていたこと。

 この街の市長は城への対策を何も立てておらず、それどころか観光資源にしようとしていること。

 そして-----

 

「昨日の夜、この街の子供が30人行方不明になりました」

「なっ」

 

 今まで冷静に話を聞いていたコナミが、そこではじめて目を見開いた。

 

「......それで、なにか進展はあったのか?」

 

 いいえ、とトレロは首を横に振る。

 

「周辺の森を探そうかとも考えましたが、一人ではとても手が足りませんでした。自分にできたのは、子供がいなくなった家庭に行ってその夜の状況を聞き出すくらいで......」

「いや、上出来だ」

 

 自分への憤りか拳を握りしめるトレロは、予想していなかったコナミの言葉に不意を疲れた様子で顔を上げた。

 トレロを見るコナミの目には、慰めではなく賛辞の色が映っている。

 上出来だ、というたった一言。それだけでトレロは救われた気持ちになった。

 

「......よし、状況はだいたい分かった。とりあえず、お前ももう寝ろ」

「え、いや、できませんよそんなこと!」

 

 唐突なコナミの指示を反射的に断るトレロ。

 子供たちの安否も定かでないのに何を言っているのかと言おうとしたが、仕方のないものを見るような目をするコナミがそれを遮った。

 

「あのなあ......。どうせお前、昨日寝てないだろ」

「っ、い、いえ、そんなことは」

「丸分かりだっての。いいから寝とけ。今から寝たって四時間もすれば夜が明けるだろうが、それでも大分違ってくる。いざってときに調子がでなきゃ困るだろうが。ハンターなら自分のコンディションには気を使え」

 

 ぐうの音もでない正論に押し黙るトレロ。反論のしようもなく「わかりました」と渋々ベッドに入る。

 

「俺は調べることがあるから、少し外に出てくる」

「な、ならやっぱり俺も一緒に...」

「トーレロ」

 

 二度も同じこと言わせるなよ? という副音声が聞こえてくるようなにこやかな笑顔を向けられたトレロは、本能に従ってベッドに潜り込んだ。

 それを見て満足げに頷き、部屋のドアを開けて外に出る。

 

「明日は朝から動くから、ちゃんと体を休めておけよ?」

 

 そう言い残して、コナミは部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 (さて、と。どういうことだ、これは?)

 

 寝静まった街を歩くコナミが考えるのは、自分が聞いていた情報とここで得た情報との差異。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ベルデンに向かって異変を解決しろという指令(オーダー)の際に《上司》から聞かされたのは、『ベルデンにて飛行物体が発見された』というもの。完全に嘘の情報というわけでもないが、この状況を表せているとはとても言えない。

 そもそもの話、このような大規模な異変が起きているのなら、いくら人手不足と言えど送られるハンターが一人だけなどということはありえない。

 

(......どこで握りつぶされたかな)

 

 いくつか考えられる線はあるが、中でも最悪なのは-----

 

(今は考えるべきじゃないか)

 

 まず行うべきは子供達の捜索だ。どんな目に遭っているか分からないのだから。

 思考を切り替え、夜明けまでに自分がするべきことを頭に浮かべつつ、コナミは夜の街を歩いていった。




分かりにくい気がするので補足です。

1日目朝:街の人間が目を覚ますと飛行城が現れている
    →人々はパニック
2日目:トレロが到着。人々は落ち着いている。トレロが本部に応援要請
3日目:トレロによる街の調査
3日目夜:子供たちが行方不明に
4日目昼:トレロによる聞き込み調査
4日目夜:コナミ到着 ←今ここ

こんな感じの流れです。
分かりにくくてごめんなさい
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