朝焼けよりも赤く   作:エビまよねーず。

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どうも皆さん、エビまよねーず。です!
前回の話は鈴木くんを全然出すことができなかったので、今回から他の登場人物も含めじゃんじゃん登場させてみました!前の話と比べると結構長くなりすぎた気もしますが…
後、これからあとがきの部分に鈴木くんの報告書を書いて載せておきたいと思いますので、そちらも読んでいただければ幸いです!
それではどうぞ〜


第2話 戦地へ

日本が韓国に宣戦布告したちょうどその頃、会社の会議室から戻ってきた俺は途方に暮れていた。

開戦に際して国の命令で報道管制が敷かれ、国の方針に反対するような記事や、国を批判するような記事は書いてはいけないこととなったのだ。

俺が勤めていた新聞社はもともと右寄りで、新政府樹立当初から目をつけられていた。それが今回の報道規制のおかげで、今までのような取材の仕方や記事の書き方では即発行停止になってしまう。

今まで会社で得てきた経験を全てドブに捨て、新しいやり方を模索していかないといけないのだ。

…と、文章に起こすと大変簡単に見えるが、実際やってみるとかなり難しい。

まず、相手に取材のアポを取るのが難しくなってしまった。

もともと右翼の新聞社だったのが災いして、どこへ取材に行くにも必ず他の新聞社と受ける対応に差が出る。

また、必ず国をほめたたえるような文を入れなければいけないというのも辛い話であった。

広告も載せられる量が大幅に減って広告量がとれなくなり、このままでは会社が倒産する…

そんな悩みに頭を抱えながら、自分の席に着く。

何かいい案はないものか…と部屋の隅々をぼんやり眺めていると、ふと一冊の本が目に入った。

『青木某写真集 〜戦場で生きる芸術家〜』

と銘打たれたそれは、まさしく戦場カメラマンについて書かれた本であった。

「これだ…っ!」

と俺はおもわず声を出していた。

「どうしたのかね鈴木くん。ハエ叩きでも見つけたのか?」

編集長に声をかけられる。

「ハエ叩きって…違いますよ編集長、我が社の新しい方針の案が浮かんだんです」

「ほう、言ってみたまえ」

「はい」

俺は編集長だけでなく、その部屋にいる全員に語りかけるように、ゆっくり区切りながら言った。

「戦場に自ら取材に行き、今前線で何が起こっているのかを報道するんです」

「ほう…それはなかなか斬新なアイデアだな。しかし、それはあまりに危険すぎる。流れ弾が当たったりでもしたらどうするんだね?」

「それは…」

続く言葉が見つからない。

「いくら我が社が倒産しそうだからだと言っても、そんな危険な状況に社員を晒すわけにはいかない。そうだろう?」

「…っ」

編集長の部下に対する優しさは身にしみて感じられたが、他に解決策がない今、倒産を免れるためにはこうするしかないのだという思いがある。どうしても会社のために案を通せないかと考えていた時、不意に同僚の一人が言った。

「そもそもそんな危険な仕事、好き好んで行く奴なんかいるかよ」

そう。一番の問題点はそこであった。

いざ戦場に取材に行くということになっても、肝心のリポーターがいなくては話にならないのだ。

もうこうなったら、最終手段を使うしかない…

「…編集長」

「ん?」

「俺が、行きます」

「なんだって?」

「俺が、前線に行って情報を送ります。そうすれば誰も行かなくて済むし、俺のほか誰も傷つくことはありません」

しばしの沈黙。これでも尚ダメだと言われたら、もうこの案はボツということになる…とその時、編集長が口を開いた。

「…わかった」

「!!本当ですか編集長!?」

「あぁ。これまでも鈴木くんの出す案は突拍子もないものばかりだったが、悪い結果に終わったことは数えるほどしかない。今回もうまくいくと信じているよ」

「ありがとうございます!!」

俺はほうっ、と息を吐いた。これでひとまずは倒産を回避できそうだ…

俺は早速支度をし、次の日の朝早くに前線が構築されている韓国の南部、鎭安という都市に向けて出発した。

 

…俺が現地の空港(元は韓国の空港だが、日本軍が接収して利用している)に着いて荷物を受け取っていると、一人の大柄な男が声をかけてきた。

「よぉ、あんたが記者さんか?思ったより細い体してんなぁ。自分で志願したって聞いたから、もっとがっしりしてんのかと思ったぜ」

いきなり大声でまくしたてられ、驚いてスーツケースを足に落としそうになった。

「戦場で生き残るためには、何よりもまず強い体が必要だ。おまえさんみたいなやせっぽちは、せいぜい2、3ヶ月命がありゃ御の字、って所かな」

「…だ、誰ですかあんたは」

「ん?あぁ、すまねぇ。自己紹介をしてなかったな」

そう言って、彼はようやく自分の名前を口にした。

「俺は熊野良彦、階級は大尉。第五十八中隊の中隊長で、茨城の水戸生まれだ。今年で43になる」

驚いた。俺と同郷ではないか。

すぐさま俺も名刺を取り出し、自己紹介をした。

「俺は鈴木一、聞いてると思うが〇〇新聞社の特派員だ。同じく水戸生まれで、年はー」

言い終わらないうちに、熊野が驚いた声を出した。

「何だお前、水戸っ子だったのか。水戸の野郎はみんな体力があって、力も強いと思っていたんだがな」

「…いや、そんなことないだろ。というか、水戸っ子ってなんだよ」

「こんな所で立ち話も何だし、そろそろ車で戦場向かうか。積もる話は車の中でだ」

熊野は俺の質問には答えず、くるりと回れ右をして歩き出した。マイペースなやつだ。

そうして俺たちは軍用車に乗り込み、鎭安へ向けて出発した。

 

「さて、それでは前線における注意事項を伝える。死にたくなければ今から言う事をしっかりと守れ」

さっきの雰囲気とは打って変わり、真面目な表情で熊野は口を開いた。

「一つ、戦闘中は主戦場より七十五メートル以内には近づかないこと。近づいてもいいが、お前さんが五体満足で変えれる保証はないぞ。

 一つ、武器庫や兵站に取材に行くのは構わないが、そこにある武器に触れないこと。変に爆弾なんか触られて寝ぐらごと吹き飛びましたじゃあ、話にならないからな。

 一つ、もし万が一のことがあって…ありえないとは思うが…拠点に敵が攻めてくるようなことがあったら、兵士と同じように武器を持って戦うこと。記者だから絶対戦わなくていいなんて、甘い考えは捨てろ。

 最後に、前線での指示は全て俺がする。何か質問は?」

質問などなかった。ただ、自分は戦争の真っ只中にいるのだという緊張感が胸を締め付けた。

「よぅし、それなら今のうちに遺書でも書いておけよ。後一時間くらいで着くからな」

そうして走っているうちに、ふと周りの景色がおかしいことに気がついた。

外傷が全く無い死体や、苦しそうに首のあたりを押さえている死体もあった。

しかも、周りの木がことごとく変色したり、枯れたりしているのだ。

おかしいと思い、熊野に尋ねてみたら、こう返ってきた。

「今にわかるさ。こんなもの、前線でやってることに比べたら屁でもねぇ」

…何だか物凄く嫌な予感がしたが、旅の疲れのせいか寝てしまい、目が覚めた時にはその予感も忘れてしまっていた。

熊野の言っていることの本質を、俺はそのときまだ理解していなかったのである…




                共産元年 8月 26日分報告書         
                   報告者:鈴木 一
今日前線に到着。第五十八中隊に着任する。
熊野という大尉に拠点の概要を説明される。
兵員はざっと250人ほどで、生活環境はさほど悪く無い模様。兵士たちに聞くと、女がいないこととカエルの鳴き声以外は最高だそうだ。
近くには龍潭湖という湖があり、ここで魚を釣って食べることもよくあったそうだが、現在は辺り一帯が戦場なため、近寄れなくなっている。
広い食堂には人の良さそうなコックが居た。ここで日に二回、朝の四時半と夜九時に会議を行う。
明日、大々的な攻撃作戦があるらしい。兵士たちの武器庫を見てみたところ、普通の銃や機関銃のほかに、防護服のような形をした戦闘服やガスマスク、手榴弾の様なものが大量にあった。毒ガスでも使うのだろうか。
今日の報告に関連した写真を同封して本社に送る。平和そうな写真ばかりだが、明日はもっと攻撃的な写真も撮れるかと思う。期待してほしい。
                                             以上  
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