みんな今日も太陽賛美してるか!ソラールだ!
もし太陽のメダルなるものを見つけたら、ぜひ祭壇に持ってきてくれ。きっと素晴らしい恩恵があるぞ!ウワッハッハッハッハッハッ
目が醒める。泥の中から這いずり出るように、混濁した意識が覚醒していく。
いや違う。眠っていたのではない。気絶していたのだ。不死人となった時点で眠ることを必要としなくなった身体だった。じゃあこの状況はなんだ。まだ混乱する頭でひとつずつ整理していく。
デストロイヤーがアクセルに攻めてきた。それに乗り込んだあとだ。そうだ、コロナタイトを見つけたのだ。そしてダークハンドでこの手にした瞬間……。そうだ、コロナタイトはどこだ。
右手を見るとコロナタイトは握られていなかった。だが、気にしなかった。そんなことを忘れるほどの衝撃があった。
「手が……ある!!」
まさか、と布団から飛び出した。部屋を見渡して鏡を探した。壁にかかっている姿見を見つけ、そこに立った。写っていたのは、亡者のように焼けただれて骨と皮だけになった悍ましい姿じゃなかった。肉体だ。健康な人間としての身体になっていた。
「なんという……ことだ…………」
膝から崩れ落ちた。顔面蒼白で恐怖に震えているのが嫌でもわかった。
不味い、不味い不味い。このままだと別の世界から闇霊に侵入されてしまう!!
不死人のいる世界には、たまに闇霊と呼ばれる存在が別の世界から現れる。そいつは侵入した世界の不死人を殺すためにやってくるのだ。そいつらは死ぬか、自主的に帰らなければ消えることはない。
嫌な思い出がいくつも蘇っては消えていく。中には
だが、闇霊を回避する方法はある。人間の身体を捨てて、亡者のような身体になれば何故か闇霊たちは現れない。
だから不死人は安心してこれまで生活できたのだ。というのにこんな身体になってしまった。
「死ななくては……一度死ななくては!」
窓から飛び降りようと足をかけた。
だが。いや待てよ、と思い出す。この世界に来てからのことをひとつひとつ思い出していく。窓にかけていた足はもう降ろされていた。椅子に座りゆっくり考える。
そうだ。篝火がないじゃないか。
途端に、先程の自身の行動に強烈な恐怖が込み上げてくる。もし蘇るのが、この世界ではなくあちらの世界だとしたら、また無限地獄に逆戻りだ。
「となると……備えなくてはいけないな」
どこから現れるかわからない闇霊に対抗する為にも、もっと力をつけなくてはならない。闇霊に対して絶対的優位な立場に立つために、まずはこの世界のスキルを極めよう。
鎧を装備して、兜を被ったタイミングで部屋の扉が開かれた。
入ってきたカズマは一瞬驚くも、起きている不死人を見て安堵の表情を浮かべた。
「よかった、目が覚めたんだな………その格好なんだよ」
「ちょうどよかった。カズマ君、君にスキルを教えてもらいたいんだ」
「無視かよ……って、スキル? 別にいいけど、金は払ってもらうぜ」
問題ない。そう言って不死人はソウルに変換されていたエリス金貨の入った袋を取り出した。手に収まらない大きさのずっしり重い金貨袋だ。
いきなり現れた金貨袋に、カズマはなんだそれと驚き問おうとするが、投げ渡されたそれの中身を見た瞬間、カズマの目の色が変わった。
「細けえことはいいや、ついてきな!」
案内されるがままに外へ出る。そこは街の中ではなかった。人の往来もない、広い敷地のど真ん中に建てられた屋敷だ。
「カズマ君、きみは貴族だったのか?」
「違えって。まぁ〜色々あって、あの屋敷には幽霊がいるらしくてもらえたんだよ。いまは浄化されてるけど」
「そうだったのか……すごいなカズマ君たちは」
「いや〜、それほどでもあるけどな。てか、騎士さんってそんなキャラだったっけ」
「む、そうだったか? そんな変わったようには思わないが」
「絶対に変わったって! 普通に話せているし、なんか前までのなんというか……近づいたら殺す、みたいな雰囲気もないしさ」
「そうか。それはきっと」
そこまで言いかけて不死人は、やはりまだ黙っておこうと思い直した。
「きっと、必死だったからかもしれんな。早くレベルを上げようと」
「それにしては殺気立ってたけど……気のせいかぁ」
なんとか誤魔化せた。そう安心していると。
誤魔化したああー! やっぱ変だよこの人! 早くスキルを教えて早く離れよう。そして金輪際関わるのをやめよう。
カズマは決心した。必ずやかの傍若無人なパーティーメンバーに言い聞かせると。
「よし、この辺りでいいだろ」
カズマは、まず不死人に自身の持つスキルを見せた。それらの中から気に入ったスキルを、不死人に選んでもらおうとしていた。
「ドレインタッチというのはいいな。人に魔力を与えることやもらうことができるとは」
真っ先に不死人が目をつけたのはドレインタッチであった。ダークハンドとは違って、自分の力を相手に分け与えることができるというのは魅力的であった。
すぐさまドレインタッチを習得する不死人。
「カズマ君、すまないがこれを試してみてもいいだろうか。そちらに魔力を分け与えるのでな」
「えっ……」
カズマは思った。この男が使う魔法はどれもとんでもない威力のものだった。つまり、内包する魔力は計り知れない。そんなものを一気に送り込まれたら、カズマの身体はあっという間にパンッとなるであろう。
「頼む! ちょっとでいいのだ! ほんのちょっとやってみたい。協力してくれ!」
だが、不死人の強い押しとすでに報酬をもらっていることで断ることはできなかった。
「よ、よぉぉ〜し。いいぞ。けど、ちょっとな……ほんとにちょっとだけだからな! フリじゃねぇからな! ちょっとだからな!!」
差し出されたカズマの手を握り、不死人は想像する。分け与える感覚。昔、なんどもしていた人間性を分け与えるあの感覚が近いだろう。あの感覚を思い出して、ほんのちょっとだけ魔力を流し込むのだ。
「いくぞ、『ドレインタッチ』!」
「お、おおお!! きてるきてる、いい感じ! すっげぇ、制御できてるじゃん!………って、なんだこれ」
魔力が流れてくる中に、別のものを感じ取ったカズマは瞬時に手を離す。なんだ、何を流し込まれたんだ。うっ、頭が……
しまった。不死人は想像しすぎてしまった。人間性を分け与える感覚を思い出しすぎて、間違えて人間性を少し(1個)分け与えてしまった。苦しそうにするカズマの肩に手を置くと、カズマは苦しむのをやめて振り向いた。
「なっ!! ど、どうしたんだカズマ!!?」
「心配をかけてごめんな! けど、もう大丈夫だ。騎士さんこそ、大丈夫か? スキルはちゃんと発動したのかな、もし俺に手伝えることがあるなら、気兼ねなく相談してくれ! もう僕と騎士さんは友達なんだからな!」
なんということだろう。カスマだのクズマだのと街で言われていたカズマが、好青年のようになってしまったではないか。心なしか、目が光り輝いてみえる。
「あぁ、大丈夫だ。とりあえずもう大丈夫だ。用事を思い出したのでな、すまないがここで失礼する」
「そうか、残念だ。でも、よかった! それじゃあな騎士さん! また会おう!」
逃げ出すようにその場を離れた不死人は、しばらく葛藤していた。戻すべきだったのではと。だが、僅かにかつての戦友を思い出せるような話し方は聞いていたかった。
そんな葛藤をされていると知らないニューカズマは、仲間たちがまだ眠っている我が家へと意気揚々と帰っていく。
「そうだ、まだ朝食がまだだったな。みんなの分を作ろう!」
どこからか取り出したエプロンを身につけ、台所へ立つカズマ。料理スキルを覚えていたカズマにとって、料理はお手の物だ。更に現在の性格が相まって、その料理に込められた仲間への愛情の深さはそのまま旨さへと変貌していく。
そこへ、寝ぼけ眼でめぐみんが起きてくる。料理の音からして、ダクネスが先に起きていると思っていためぐみんは、台所を見て眠気が吹っ飛んだ。
「おはようござ………えええええええええええ!!」
「おはようめぐみん! 今日はいい朝だな! 顔を洗ったら席で待っててくれ、すぐ料理ができるからなっ!」
「か、かかかかかかかカズマッ!? どうしたんですかこんな時間に! しかもこんな料理まで…いや、そもそも顔もなんだか……」
完全に意識が覚醒しためぐみんは、持ち前の観察眼と頭脳で現在の状況を分析しようと試みる。だが、どう頑張っても今の状況になる要因が思い浮かばない。
「ここは、一時撤退ですっ!」
全力でその場から逃げ出しためぐみんは、真っ先に仲間たちを起こしに行った。まだ半分眠っている仲間たちをなんとか叩き起こして、背中を押して台所へと連れて行った。
「ああ! みんな起きてきたんだな。もうすぐ料理ができるから、みんな席についてくれ」
輝くような笑顔と、手に持った美味しそうな料理。そして若干デッサンの違った顔があった。
「か、かかかかかかかカズマーー!!!??」
このカズマ好青年化事件は、アクセルの街の七不思議として伝えられるようになるのだが、それはまた先の話。
このあと、不死人にスキルを教えていたことを知っためぐみんが、街の隅で焚き火にあたっていた不死人を見つけ出してカズマを元に戻してもらうのであった。
俺は一度死んで生き返った
俺も一度死んで生き返った
俺も一度死んで生き返った
以下エンドレス
これがダークソウル