「ダークソウルは好きだ」
「ダークソウルがお好き? けっこう。ではますます好きになりますよ。さぁさぁ、どうぞ。ダークソウルの二次創作です。……爽快でしょ? んああぁ、仰らないで。
クロスがこのすば。でも原作なんて見かけだけで、展開は滅茶苦茶だし、よく死ぬわ、すぐ不死人が殺すわ、ろくなことはない。
絶望感もたっぷりありますよ。どんなフロム脳の方でも大丈夫。どうぞ見返してみてください。
……いい不死人でしょう? 余裕で亡者だ、フロム感が違いますよ」
「一番気に入ってるのは……」
「何です?」
「……全滅オチだ」
あり得ない。その単語が何度も頭を過ぎる。でも同時に、一番確率が高いのがそれだという答えは変わらない。
「あの男は、不死なのかもしれません」
………ちょっと、なんですかその何言ってんだみたいな顔は。しかも、よりにもよってアクアにまで馬鹿にするような目を向けられました。
「いやいやいや、めぐみん。あいつ死んだからな? 生き返ってきたのはビビったけど、死んだのは……その、お前も見ただろ?」
私に気を遣ってか、ちょっと言いにくそうにカズマが言う。たしかに私たちの目の前であの男は爆散して死にました。だから私も違うんじゃないかと思ってました。
それを確信に変える為にも、ウィズに問いかけた。
「ウィズに突然質問なんですけど、死んでも生き返れるような魔法とか、それに近いことができる生き物って心当たりありませんか?」
「ええ!? 死んでも生き返るってまるでバニ、あああなんでもないです!」
誤魔化してるつもりなんでしょうか……。
どうやら心当たりがあるようだけど隠されてしまいました。そういえば、以前ウィズが言ってましたね。私は城の結界を維持しているだけで普段は中立、だと。
ならば、聞き方を変えるだけです。
「じゃあ質問を変えます。その生き物は複数いますか?」
「あの〜、私は先程から何の事を聞かれているんでしょう。できれば説明していただけませんか?」
「いいえ、今は時間が惜しいです。すぐにでも吐いてもらいますよ! じゃないといくらパワーアップした貴女でも一瞬で消滅するほどの浄化魔法を、アクア大先生がぶちかましますからね!」
後ろにいたアクアを前に押し出す。
「お前、真顔でえげつない脅しすんなよ。ウィズが可哀想じゃねーか」
「何言ってんのよカズマ! こいつはリッチーよ、倒すべき敵よ。それなのに今こうして見逃してあげてるだけでも異常なんだから!」
「お前もお前で調子に乗んな! 宴会芸しか能のない駄女神がっ!」
「ああああーーー!! またカズマが言っちゃいけないこと言ったああああ! 謝りなさい! 女神を侮辱してすみませんでしたって! ほら早く謝って!」
ああもう、今は一分一秒でも時間が惜しいと言うのに。
「うるさあああーーーーーーーいッ!!!」
ビクッと二人の肩が跳ねて、顔をこちらに向けた。なんですかその顔は。今はこんなことしてる場合じゃないんですよ。緊急事態かもしれないんですよ。
この剣幕のままウィズに向き直る。
「とにかくすぐ答えてください。いいですね!!」
「は、はいイイイー!」
気圧されたウィズはガクガクと首を縦に振った。
「ねえ……どうしちゃったのかしらめぐみん」
「ああ、あんなに怒ったところは見たこともない」
「オレに聞くなって。わかるわけねぇだろ?」
なにやらこそこそと話し声が聞こえますが、それも無視です。でないと手遅れになってしまうかもしれない。
数分後、ウィズから確認したいことを全て聞いた私はそれらの情報のピースを頭の中で一つずつ、しかし迅速に組み立てていった。
そして、結論が出た。
「あ…………勝てないですね」
「何が?」
カズマが聞いてくる。
そんなの、決まってるじゃないですか。
「あの不死の男にですよ。多分…いえ絶対にここにいる全員でかかっても無理です。勝てません。全員殺されてしまいます」
「「「……………え?」」」
「そもそも、おかしいと思いませんでしたか? あの男が術を使うとき、例えばあの巨大な光る槍です。あれだけ強大なものなら、私だけじゃなくカズマにだって凄まじい魔力の流れがわかる筈です」
でも、何も感じ取れませんでした。
「カズマがわからなかったならまだしも、私にも全く感じ取れなかったのはどう考えてもおかしいです」
なので。ここで仮説を一つ立てます。
「あの男が使っていた魔力に代わるエネルギーは魂の集合体のようなもの。だとしたら、他の人間に目もくれずウィズにだけ魂の奔流とやらが来たというのも頷けます」
「ちょっと待ちなさい。だったらどうして女神である私に寄ってこなかったのよ」
「日頃の行いの差じゃね?」
「いいわカズマ、表に出なさい」
ボキボキと拳を合わせるアクアを無視して、話を続ける。
「次に私を襲いにきた時の様子ですが、あれはまるでアンデッドでした。そして、しきりに呟いていた『渇く』という言葉……まるで、そう、魂が抜けたようでした」
「魂………っ! そ、それじゃあまさか!!」
「そうです。一番考えたくなかったですが…」
口の中が乾く。反対に汗は気持ちが悪いほど流れ出た。認めたくはなかったが、私が認めなくても現実は変わらない。
意を決して、私は伝えた。
「あの男は、魂のエネルギーを身代わりにして何度でも復活できるんです!」
めぐみんが言った言葉が、一瞬わからなかった。アクアとの喧嘩とかそんなことは吹っ飛んだ。代わりにそれを頭の中で咀嚼して、理解した。
「はああああああ!? なんだよそれ!」
おれの言葉はその場にいた全員の気持ちを代弁した。
だってそうだろう。ついこの間まで一緒に冒険していたやつが死んだと思ったら生きていて、命を狙われているってだけでも大変だってのに。この上さらにその男が不死なんて聞かされたら誰だってこうなるさ。
ん? いや待てよ。
「なあめぐみん、その仮説だとおかしい点があるぜ。魂を身代わりに復活したってんならそりゃ一回だけだろ? あいつはお前の爆裂魔法で吹っ飛ばしたじゃねえか」
「私もそう思います。でも、同時にこれで終わってないっていう直感があるんです」
「直感って……大雑把すぎるだろそれ。なんの確証もないってのに、ビビってんのか?」
「ええ、ビビってます」
思いもよらない返しに、黙ってしまう。
めぐみんは真剣な目で見てくる。たまらず目を伏せると、めぐみんの手が視界に入った。杖を握る手は震えていた。
それを誤魔化すように、めぐみんは帽子を目深に被っていつもの中二臭いポーズを決めた。
「それでも! 例え相手が不死の化け物だとしてもっ! たった一つだけ残された策がこの我にはある!」
「おい、逃げるとか言うなよ」
嫌な予感がして真っ先に言った。めぐみんは勢いを挫かれたことに不満気な顔を上げる。
「なんですかそれ。ビビってるのはカズマの方じゃないですか」
「お、おれはビビってねえし! じ、じゃあその策ってなんなんだよ」
「フッフッフッフッ、それは……」
その頃、不死人は
「足りない…………もっと…………………ぜんぜん…」
身体を蝕む飢餓感は消えない。
モンスターをどれだけ屠ろうと、この飢えは減るどころか増す一方だ。
あのソウルだ。あのソウルだけがこの苦しみから解放してくれる。
唯一の救いを求めて不死人は歩き続けていた。
あのソウルの気配はもう覚えた。どこへ行こうと決して逃しはしない。それこそ深淵に逃げようとも追いかけるだろう。
その時、前方の茂みが揺れた。
足を止めて不死人は黄金の残光と暗銀の残滅の曲刀二振りを構えて警戒する。確実に何かがいる。それが何か把握するまでは下手に動けなかった。
その気持ちを察してか、ゆっくりとそれは茂みから出てきた。
「アナタ……ボウケンシャ、サン?」
出てきたのは、とても愛くるしい緑髪の少女だった。服はボロボロで、傷も負っているようだ。庇護欲を感じさせる少女は潤んだ瞳で不死人を見る。
不死人は安心した。どうやらモンスターではないようだと、構えていた両手を下ろした。
怪我をして、フラフラと今にも倒れそうな少女に不死人は近づいていく。
「オネガイ、タス…ケテ、ホシイノ。ホウシュウ……コレシカ、ナイケド」
そう言って少女は懐から実に旨そうな果実を取り出して差し出した。
「うまそうだ………」
そう言った不死人の手が、熟れた果実に伸びていく。
そして少女の首が飛んだ。
「エ………」
ゴロンと転がった頭は、驚愕の表情のまま固まっていた。
傷口から赤い血ではなく薄緑色の液体が流れる。この少女はモンスターだったのだ。
しかも危険度が非常に高い安楽少女というモンスターである。
不死人は死んだ安楽少女の顔を見て思った。
ソウルが若干多い人間と思ったが、まさかモンスターだったとは思わなかった。
以下、冒険者ギルドのモンスター情報の記述である。
『安楽少女。その植物型モンスターは、物理的な危害を加えてくる事はない。……が、通りかかる旅人に対して強烈な庇護欲を抱かせる行動を取り、その身の近くへ旅人を誘う。その誘いは抗い難く、一度情が移ってしまうと、そのまま死ぬまで囚われる。一説には、このモンスターは高い知恵を持つのではともいわれているが定かではない。これを発見した冒険者グループは、辛いだろうが是非とも駆除して欲しい』
死んで植物化が始まってきた姿を見て、不死人は自身の身体にこれまでよりも多くのソウルが入ってきたのを感じた。だが、それでもほんの僅かな差だった。
まだ飢えは治らない。
原作キャラは無事だ大佐。少なくとも今のところはな。
この先どうなるかはあんた次第だ。
無事ハッピーエンドを迎えたければ、俺たちに協力しろ。OK?