この素晴らしい世界に不死人を   作:ボンシュ

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 ウワッハッハッハッハ!!

 久しぶりだな諸君、少し用事があって離れていたのだ。いやすまん。

 用事はなんだって? まあまあそんなことはどうでも良かろう! 太陽を賛美するのだ!


この素晴らしい世界に反撃を!

 

 

 街のそばまでようやくたどり着いた不死人は、鎧を揺らしながら進む。両手の剣先からここへ来るまでに殺したモンスターの血がまだ滴っていた。鎧も返り血で染め上げられ、その姿に以前の面影はなかった。

 

 途端、街からやかましい鐘の音が何度も響いた。やって来たのが知られたのだろう。

 

 それでも歩みは止めない。

 

「敵感知……」

 

 ソウルの技を使えない不死人だが、スキルは使用できる。レーダーを使っているように、建物すら透過していくつものソウルが見えた。

 

 

 見つけたぞ…

 

 

 幾つもの小さなソウルの中に、あの巨大なソウルを見つけた。

 

 剣を振り、血を払い落とす。

 

 周囲を見回す。もう爆裂魔法を喰らわないように要注意して、丘のような場所も念入りに観察した。だが、ソウルは見えなかった。

 

 隠れていないことを確認した不死人。しかし彼は用心深かった。『見えない体』を発動させて身体を透明にした。

 

 一歩、また一歩とアクセルの街の入り口へと近づいて行く。ガラ空きになった入り口…へ……。

 

 

 ………してやられた

 

 

 

 

「セイクリッド・ターンアンデッド!」

 

 アクアの光の柱が不死人を捉えた。

 

 透明なはずなのに、なぜ攻撃されているのか。光は不死人にかかった『見えない体』を弾き飛ばして、姿を露わにした。

 

 眩い光に落ち窪んだ目を焼かれながら、紋章の盾を構えるも、退魔の光は盾を越えて不死人の肉体へ直接突き刺さった。

 

 たまらず膝をついた。それでも尚、盾を構える腕が下がることはない。体力が削られていく感覚を味わいながら、もう片方の手に杖を構えた。

 

「いけえええーー!」

 

 静まり返っていた街に響いた声を合図に、隠れていた冒険者たちが一斉に姿を現した。杖を出した隙を逃すまいと、大小様々な杖が全て膝をつく不死人に向けられた。

 

 間に合うか!

 

「「「ターンアンデッド!」」」

 

 セイクリッド・ターンアンデッドの威力が徐々に落ちてきたのを補助するように、次から次へと退魔魔法が放たれる。

 不死人という動かない一つの的に、前から、上から、様々な場所から魔法が放たれる。

 

 だがあくまでも人間の、しかもただのターンアンデッドでは僅かな時間しか稼げない。

 

 攻撃の中、アクアの元へカズマが駆け寄った。

 

「アクア、まだいけるか!」

 

「私を誰だと思ってるのよ。水の女神を舐めないでよね、セイクリッド・ターンアンデッド!」

 

 再度、動かない不死人へ向けて光の柱が突き刺さる。

 

 その光景を見た誰かが、思わず叫んだ。

 

「やったか!?」

 

「うおい誰だフラグ発言したやつ! マジで今はやめてくれっ!」

 

 カズマが叫んだ次の瞬間、ゆっくりと、動かなかった不死人が盾を構えながら立ち上がって歩き出した。

 

「え、ちょっと嘘でしょ? 全力込めてるのよ? 女神の全力の一撃なのにどうして歩けるのよォー!」

 

「くそっ、作戦失敗だ。みんな逃げろー!」

 

 セイクリッド・ターンアンデッドを放ち続けるアクアの肩を引っ張りながら、カズマはみんなに逃げるよう促した。

 

 カズマの作戦は完璧だった。

 

 めぐみんから不死人についての予測を聞いたカズマは、まずどうやって居場所を察知するかを考えた。それは簡単に解決できた。アクアは不死人の雰囲気を酷く恐れている。遠くにいようと、ムカムカするような感覚でどの方向に居るか大体の見当がつくというのだ。

 

 そして攻撃もアクアが主砲となって強力な一撃を放つというもの。次の一撃までの時間はこの街中の冒険者の魔法で時間稼ぎをすればいい。

 

 そして見事に、不死人はその策にかかった。

 

 だが、今はどうだ。立ち上がってじわりじわりと迫ってくる姿は恐怖でしかない。

 

 

 

 アクアの『セイクリッド・ターンアンデッド』が切れた。立ち上がっていた不死人の持つ盾は、青く光っていた。

 

 

 『強い魔法の盾』

 使命を帯びた魔法剣士にのみ伝授される魔法

 一時的に大盾クラスの強靭さを実現する

 

 

 二度目のセイクリッド・ターンアンデッドの直前、一瞬の隙に不死人は発動していた。

 

 

 

 鬱陶しい光が治まった。随分と体力を消耗してしまった。

 

 巨大なソウルの感覚はどんどん遠ざかっていく。

 

「敵感知」

 

 建物越しにソウルが見える。やはりあの大きなソウルは遠くへ逃げてしまった。

 

 

 追いかけようとして、ふと視界の端に小さなソウルが見えた。木箱の中でゆらゆらと揺れているそれは、魔物のそれより小さい。

 

 

 念の為にそっと近づいて耳をそばだてる。

 

 

お願い……お願い……気づかないで…お願い……たすけてエリス様………

 

 

 声が聞こえた。助けを求めている。

 

 ゆっくりと離れて、あの巨大なソウルの方へと歩き出した。

 

 

 目的はあの女神のソウル。この飢えを止める為にも、早く殺さなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 木箱の中に隠れていた少女は、離れていく足音に安堵した。ゆっくりとずっと握りしめていた手を開いた。

 

 まだ震える手の中で、エリス教の十字架が光っていた。良かった。本当に助かって良かった。

 

 作戦失敗の号令の後、慌てて転んでしまったが為に、こんな木箱の中に隠れる羽目になった。お陰で杖もほっぽり出してしまったが、生きていることに比べれば些細なこと。

 

 

「はぁ………よかっ」

 

 

 

 

 

 

 矢が木箱に命中したのを確認して、弓を収める。ソウルが手に入るも、それは僅かなソウルだった。

 

 

 だめだ、全く足りない。

 

 

 木箱を壊した途端に襲いかかってくる可能性を考慮して、弓で攻撃したが結局出てくることはなかった。

 

 考えすぎたか。いや、今はそんなことどうでもいい。

 

 

 街の中心へと、不死人は足を進める。

 

 






  犠牲者が出てしまった。

 でもこの時に攻撃していたのは数十人だったから、たった一名の犠牲なら小さいもんだ。

 たった一名……まだ一名です。

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