この素晴らしい世界に不死人を   作:ボンシュ

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 生存ルート


第1章 火継ぎ
この素晴らしい世界に祝福を!


 最初に火を継いだのはいつだったか。

 

 自分に課せられた使命と思ってがむしゃらにソウルを手に入れ続け、何度も死んでは学びを繰り返し続け、最後の王を倒し終わりと思いきや

 

 これは何度目の火継ぎだろうか。

 

 最後の王がソウルとなって霧散していく中、火に近づいていく。

 

 考えても無駄か。

 

 火を継げばまた繰り返される。全く同じ世界を無限に繰り返し続ける。それでも止まれない。止まるわけにはいかない。火継ぎが止まれば世界は闇に包まれる。

 

 だから、続けるしかないのだ。

 

 これは罰なのではないか。ただの不死人が王を殺したことへの罰ではないのか。あの時牢獄を出ずにいればこうなることはなかった。世界の終わりが来るのをじっと待っていれば良かった。

 

 消えそうな火に身体を差し出す。

 

 あとはソウルが燃えていく。火は身体を燃やし、魂までも燃やして世界を光で照らす。そして私は牢獄の中にいる。避けられない運命。変えることのできない結末にただ従う。

 

 世界が照らされた。牢獄の中へ戻る時だ。

 

「………?」

 

 なんだ。ここはどこだ。緑…草原だ。そしてなんだ、明るい。空に太陽がある。空…青い空だ、あの白いものは雲か。なんだこの景色は?

 

 いいや、考えても無駄だ。自分に課せられた火継ぎの使命を全うしなくては。

 

 歩いた。ひたすらに歩いた。亡者どころかデーモンも存在しない世界で、騎士は警戒しながらあてもなく進んでいく。

 

 しばらく歩けば街が見えた。一層警戒を強めた。ロングソードと紋章の盾。初めて探索する時はいつもこの装備にしていたなと思いながら、街へと近づいていく。

 

「ああああああああ!!! よくもぬけぬけと現れられたわね!でも運の尽きね、亡者ごときこの水の女神アクア様の手にかかれば!」

 

 青い髪の女が走ってきた。杖を持って一直線に向かってくる。すぐに紋章の盾を構えてガードした。そのまま自分もじりじりと距離を詰める。魔法を撃たれたらガードしてやり過ごしすぐ反撃。何度もそうやってきた。だから繰り返す。

 

 

 わずかな違い。ほんの少しのズレが起こった。

 

 

 一向に魔術が撃たれない。警戒しながら盾の横から覗き込む。青髪の女は地面に倒れていた、否、倒されていた。後ろから頭を押さえつけられていた。

 

「すんまっせんしたあああああ!!」

 

 押さえつけた男が叫んで頭を地面に擦り付けている。見たことのない奇行に驚いて警戒しつつ動かない。

 なんだこの動きは。いや、見たことがある。どこだったか…。そうだ、灼熱の地下空間の中で遭遇した卵を背負ったやつらだ。なにかを懇願するようにいつも祈っていた。

 ならばと構えを解いた。

 

 敵にしても敵じゃないにしても、やつらに攻撃は逆効果だった。攻撃すれば卵が割れて、出てきた幼虫に卵を植え付けられた。

 それを見た(エンジー)に同族かと勘違いされた苦い記憶が蘇る。

 

 そんな勘違いをされているとはつゆ知らず、カズマは警戒心が薄れたと感じて頭を上げた。

 

 あっぶねぇ〜〜!! 絶対敵に回したらアウトだよあんなやつ!

 

 カズマは歴戦の猛者ではない。しかし目の前の騎士に喧嘩を売ってはいけないことは理解できた。雰囲気、オーラとでもいうのか。一目見て本能的な部分が戦うことを否定していた。

 

「なにするのよこのクソヒキニート! 早くあのクサレアンデッドを浄化するんだからーー!」

「ばっかお前、知らない人にいきなりターンアンデッドとか……え、アンデッド?」

 

 チラリと不死人の方を見る。まさかまさか。アンデッドといえば奇声を上げたり予測不能な動きをしたりどこか欠損してたり、何かしら異常が見えるものだ。雰囲気こそヤバいが……え?マジなのか?

 

 カズマが考えている間に不死人は目の前まで来ていた。

 

「なぁ、そこの……」

「えっ……ぁぁえ〜〜〜っと、ハイ」

 

 ホッとした。会話が出来る。敵じゃなさそうだ。だが油断できない。パッチ(ド腐れ野郎)のような男かもしれない。

 

 カズマはぎょっとした。しかし冷静なように取り繕った。ここへ来たばかりの彼なら、取り繕う余裕など無かった。良くも悪くも様々な出会いが彼を成長させていたお陰だった。

 

「あーっと、すみません。こいつが言ってるんですけど……あなたって、アンデッドですか?」

 

 あー、なんかもうなに言ってんだよ。初対面にアンデッドですかって質問どうかしてんだろ。

 

 カズマが自己嫌悪に陥りそうな時、不死人は考えていた、思い出していた。

 

 質問にどう答えるかで関係は変わってくる。今は大丈夫でもあとあと敵になるかもしれない。最初の選択肢は大切だ。

 

「いいや違う。私はアンデッドではない」

 

 嘘はついていない。私は不死人だ。アンデッドという種属ではないし、仲間ではない。どちらかといえば敵だ。

 

 カズマは安堵した。と同時に妙に静かなのに気がついた。手元が震えている。違う、震えてるのはアクアだ。

 

 アクアは恐怖していた。理由は歴然としている、目の前の騎士だ。アンデッドの臭いがしたので浄化してやろうと意気込んでいたが、近くに寄ってみて理解せずにはいられなかった。

 恐ろしい。そばにいるだけで命を削られていくような錯覚がする。それだけならまだしも、元とはいえ女神のアクアにはわかってしまった。

 

 何度も世界を巡り、その身に溜め込んだ王のソウルや様々な強者のソウルが不死人の身体には宿っている。中には神々に等しいソウルまで紛れているのだ。その濃厚すぎる気配だけなら、なんと畏れ多いことをしてしまったのかと思うだけでよかった。

 

 神々に等しい気配を己の物としている闇のような黒い存在。

 

 どこまでも無限に続く闇、逃れられない暗闇。

 

 ただ、恐ろしい。

 

「……ぃ……おい!」

 

「はっ! な、にかしらカズマ」

「何かって、さっきからどうしたんだよ? 妙に大人しいけどよ。いや〜、ごめんなうちの駄女神がさ〜」

 

 ポンポンと騎士の肩を叩くカズマを見て、アクアは色々なものがぶっ飛ぶかと思った。

 

「うわあああああああああああ!!!!何してんのよあんたはああああーー!」

 

 カズマに掴みかかって引き離す。よかった、自分はまだ生きている。ついでにカズマも無事だ。神様をぶっ殺してるような奴に正体を知られたら、それこそ命がない。

 

「ハァ……ハァ…………なんとか、間に合った」

 

 走って現れた銀髪の女に、不死人は警戒した。

 

 なんだこいつは。今度こそ敵か。武器はダガーと弓矢を装備している。一見弱そうだが、毒を使ってくるかもしれない。殺すとしたら盾で防御しながら太陽の光の槍だ。

 

 身構えた不死人を見て銀髪の女、もといクリスは両手を上げて言った。

 

「違うよ身構えないで! 私は貴方の敵じゃありません。どうか信じてください。落ち着いてくださいー!」

 

 なんだ、この女は。話せるということは敵じゃないのか。だが、まだ安心できない。それに若干感じる神の気配が決断を迷わせる。

 

「ぁあぁぁ〜、もう! これやりたく無かったのに……」

 

 肩まで上げていた両手を上に上げて、足を揃えて少し爪先立ちに……。目を疑った。が、同時に歓喜した。同じ格好をするのに躊躇は無かった。

 

「「 太 陽 万 歳 !! 」」

 

 顔を赤らめているクリスに対し、不死人はいつぶりになるかわからない清々しい気分になっていた。

 

 あぁ、どこかで彼は笑っているだろう。

 

 ウワハッハッハッハッ!

 

 どこかで彼が笑っている気がした。

 




 ウワッハッハッハッハッハッハッ!

 なんだか今日は気分がいいな! どこかで太陽を賛美してくれる友が現れたような気がしたが……気のせいかな! まあいい!

 今日は一段と太陽が輝いて見えるな……ウワッハッハッハッ!


 2020/05/18 更新しました
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