この素晴らしい世界に不死人を   作:ボンシュ

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この素晴らしい世界に封印を

 

 

「ちくしょう! なんなんだよあんなの!」

 

「化け物なんて呼び方が可愛く思えるぜ…」

 

「生きてる……わたし生きてるわ!」

 

「もうやだ…おうち帰りたい」

 

 

 油断してたであろう相手への一斉攻撃。めぐみんの立てた作戦は見事だった。普段からパーティーメンバーに振り回されている故に、生き残る策を立てるのがうまいカズマも思いつかない策だった。

 

 

 ギルドの椅子に横たわりぼんやりと天井を見ていた。これからどうすればいいのだろうか。

 泣き声がして、首だけを動かしてそちらを見ると女の子が泣いていた。それをパーティーメンバーが背中を撫でて慰める。

 

 仲間が死んだのだと察した瞬間、カズマは目を見開いてそれ以上そちらを見るまいと首を動かした。

 それでも泣き声や慰める声だけは聞こえてくる。なんとか出来ないのか。だが、そんな都合のいいことが。

 

「そうだ、アクア!」

 

「うわぁ! いきなり大声出さないでよ!」

 

「お前、たしか俺が一度死んだ時に蘇らせてくれたよな? あれって他のやつにも使えないのか?」

 

「リザレクションのこと? それなら、もう試したわよ」

 

「もしかして…」

 

「何人かは復活できたけど、残りはダメだったわ。蘇らせようとしたけど、そこにはもう魂はなかった。残滓すらもきれいさっぱりね」

 

 残滓すら残っていないのは変だ。天寿を全うしたのならともかく敵に殺されて死んだのに成仏したとでもいうのか。

 考えるカズマの脳裏に、不死人が持つ禍々しい剣が過ぎる。

 

「もしかしてそいつらって、あの男にやられたのか?」

 

「ええ、あの男にやられた人はみんな魂が無くなっていた。復活できたのはあの男にやられたのじゃなく、余波で死んじゃった人だけよ」

 

 泣いている冒険者たちの方を見て言った。いつもの駄女神と言われている彼女とは思えない表情だった。まさしく化け物だ。

 

「だから、これ以上犠牲を出す前にあの男を倒す相当の作戦を考えないと」

 

「不死人…」

 

 突然割り込んできたのは、めぐみんだった。杖に寄りかかり目元にはいつもの爛々とした覇気がなかった。まだ安静にしてないといけないのに無理をして出てきたのだ。

 

「おいめぐみん、まだ動かない方がいいだろ」

 

「そうよ、あなたは充分やってくれたんだから、ゆっくりしてなさいよ」

 

 寝室に戻るよう説得するも、めぐみんには届いていなかった。

 

「さっきから聞いていればあの男あの男あの男…だからこの私がわざわざ呼び名を付けてやったんですよ。不死人(ふしびと)です、もう決定です。確定です」

 

「おぉ、めぐみんにしては普通にいい呼び名だ。ってそうじゃねえだろ、お前は寝てろって!」

 

 前言撤回。いつも通りのめぐみんだった。自信たっぷりなその肩に、引き戻しにやってきたギルド職員の手が置かれた。抜け出してきためぐみんは病室へ強制連行された。

 

 倒すのは難関、倒したとしても復活して体力全開で追い詰められる。浄化魔法も生き返るのを阻止できないどころか普通に防御される始末。

 

 

「やっぱ、この街から逃げ」

「あっ、ここに居たんですねカズマさんとアクア様! やっと見つけましたよ〜」

 

 街からの逃走を考えた時、ウィズが手を振ってやって来た。

 

「貧乏店主さんだ!」

 

「店主さんが来てくれたぞ!」

 

 さっきまで諦めムードだったギルド内に、僅かなやる気が灯った。それはカズマも同じだった。すがり付くようにウィズの肩を掴んで引き寄せる。

 

「きゃっ」

「ウィズ! 相手を殺さずに戦闘不能にすることってできないか!?」

 

「なっ、なんですかいきなり!! そ、それでしたら封印ぐらいかと……」

 

 

 

「それだああああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 カズマたちが作戦を練る間、不死人は僅かながら理性を取り戻しつつあった。

 

 少なくない犠牲はソウルとなって不死人へと注がれていく。

 

「『敵感知』ーーーーーもう、この辺りにソウルはないか」

 

 周囲を見回してみても、敵感知にひっかかる生き物は無かった。

 

 不死人が殺したのは冒険者だけじゃない。

 

 興味本位で近づいて来た子供をそれを守ろうとした親ごと刺し、仇だと迫って来た者は斬り払い、隠れる者は敵感知で見つけ出して糧としていった。

 

「これだけ殺して、やっとこの程度……やはりあの巨大なソウルを……」

 

 なんだ、肌がピリピリするような強いソウルだ。だが、あの女神のソウルではない。別のソウルだ。この感じはどこかで……。

 

「そうだ、あの魔道具店の女か! だが強い……なんと強く大きなソウルだ。隠していたのか、小賢しい真似を!」

 

 口元がつりあがった。ソウルの輝きに目を奪われた。罠があるかもしれない。その可能性も頭から抜け落ち、一直線に不死人はギルドへと駆け出した。

 

「ハッハッハッハッハッ! なんと凄まじいソウルの光か! あの女神とやらが霞んで見えるわ!」

 

 徐々に語気を強めていき、半狂乱の不死人が街道を走る。時には脇道を通り、時にはすれ違いざまに住民を斬り捨てる。

 

 不死人が通ったあとに淡い光の軌跡が現れた。ソウルが身体の内側から滲み出すように、鎧も剣もソウルの光を発してソウルへと戻っていく。あるべき場所へ帰ったソウルとは別に、新たなソウルが不死人の全身を包んだ。

 

 

 猛々しい鎧と獅子を模した兜には雷の力が宿り、未だ幽鬼のようであった不死人の動きが洗練される。

 

 空いた右手で虚空を掴めば、身の丈を超えた十字槍が姿を現した。それを少し振るえば空気は切り裂かれ衝撃波が周りを吹き飛ばす。

 

 

『竜狩り』の騎士 オーンスタイン

 

 

 グウィン王の四騎士の長にして、その身一つで『竜狩り』を成した伝説の存在。

 

 だが、いまその鎧を纏った不死人はソウルへの渇望に溺れ、高尚であった彼には似ても似つかない『何か』に堕ちていた。

 

 

 雷の力で高速移動を可能にした不死人は、目にも止まらぬ速さで駆ける。

 

 

「待っていろ、そのソウルを我が糧としてくっ……なに!?」

 

 

 兜の下の顔が歪んだ。足を地面に突き刺して街道を抉りながら止まり、再度ギルドの方角を見た。

 

「消えよったぞ……消えよった! どこに消えた!!」

 

 

 つい先ほどまで迸るほどのソウルがあったのに、それがなんの前触れもなく消え去った。もはや周囲の細かなソウルなんて気にもとめていない。

 

 ただあのソウルがほしい。自分のものとしたい。見つけなくては。見つけなくては。

 

「『千里眼』!」

 

 冒険者が使えばはるか遠くを見ることができるスキル。それは不死人が使うことでまさしく千里を見透す眼になった。

 眼だけが移動して縦横無尽に動き回る。景色が移り変わり見慣れた建物が増えていった。その中にギルドを見つけて突入させる。

 

 冒険者ギルドの中には、ウィズの姿もアクアの姿も見つからない。

 

 ではどこに消えたのか。

 

「覚悟ォ!」

 

 千里眼に集中している隙だらけの背中を狙って物陰から飛び出した冒険者が、決死の覚悟で切っ先を突き立てようとしていた。千里眼を発動したまま不死人は振り返りもせず槍を振った。

 剣が半ばで真っ二つに折れて、短い呻き声を残して冒険者は横へ吹っ飛ばされた。

 

 

 ーーーかつて訪れた洞窟

 

 

 ーーー冬将軍が現れた雪山

 

 

 ーーー爆裂魔法を食らった館

 

 

「見つけたぞ……」

 

 これまで訪れた場所をしらみつぶしに探してついに見つけた。爆裂魔法を撃たれた館跡地のど真ん中にウィズはただ一人で立っていた。罠かもしれないなど考えなかった。

 

 雷が落ちたような音がしたと思えば、もうその場にいなかった。加減をすることなく全力で走った不死人の後ろの地面は一歩ごとに割れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 カズマたちが出した結論は、不死人を封印することだった。

 

 

「だが、それを実現するとなれば成功率は格段に落ちるぞ」

 

 ダクネスの言うことは間違ってない。

 

 不死人の脅威はその不死性だけではない。爆裂魔法をギリギリとはいえ耐えられる防御力、装甲など無いかのように相手を斬り裂く攻撃力と射程距離。謎が多いスキルの数々。

 

 それらを掻い潜ってはじめてダメージを与えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 ソウルを求めて走った不死人は半刻で爆心地に着いた。館の面影すらも消し飛んだ光景は、爆裂魔法の凄まじさを物語っている。だが不死人にとってそれは重要じゃ無い。

 

 目の前の巨大なソウルの塊、ウィズを殺して己のソウルへと吸収。その後にアクアのソウルも得たのならこの世界の魔王を屠って元の世界に帰り、火継ぎを終わらせるのだ。

 

 

 突進してくる不死人に気圧されることなく、ウィズは作戦を開始した。

 

 

「『ボトムレス・スワンプ』!!」

 

 

 ウィズに目掛けてまっすぐ突っ込んでくる不死人の目の前に、巨大な沼が現れる。少し前までの不死人ならばひっかかることはない単純な罠だった。

 

 だが、目の前に極上のソウルがあっては不死人の目は盲目になる。見事に沼に足をとられた不死人は、しかし依然として前へ前へと進もうと足掻く。

 

 力自慢のモンスターですら動くことも満足にできない沼で、それでも徐々に進んでいるのは執念の為せる技か。

 

 

「今ですアクア様!」

 

 ウィズが叫んで後ろへ駆け、入れ替わるように岩陰に身を潜めていたアクアが飛び出した。その場所は以前にめぐみんが隠れていた岩陰であった。

 

 

「リッチーのくせに指図しないでっ! 『セイクリッド・ターンアンデッド』ォォ!」

 

 神々しい光を孕んで、浄化魔法が不死人に降り注ぐ。今度は防がれることもなく、アクアの浄化魔法が命中した。

 

 全身が蒸発させられるような苦痛も意に介さない。不死人は浄化魔法を受けながら沼を歩いて進んでいた。

 

「決して逃さない……決して……!!」

 

「なんなのよ!? 浄化魔法が全然効いてないんですけどォー! カズマ! 逃げるわよ! もう逃げてもいいでしょー!」

 

「ばっかおまえこっち見んな!! こっちに来たらどうすんだあ! 効いてるからお前はそのまま浄化魔法を続けてろ!」

 

 アクアの視線の先の茂みから、カズマが顔だけ飛び出させていた。

 

 不死人はあと少しで、沼地から出そうになっていた。

 

「ウィズッ! いまだああああ!!」

 

「はい!! 『カースド・クリスタルプリズン!』」

 

 平地へ上がろうとした不死人を中心にして、青い色の巨大な魔法陣が現れた。辺りに冷気が漂う。

 

「…………っ!!」

 

 まさかと不死人は気がついた。だが全てが遅かった。

 

 足が凍らされ、それを壊すために振り上げた腕も凍りついた。

 

 氷に閉じ込められたその姿は彫像のようにも見えた。不死人の必死な形相もオーンスタインの兜によって隠され、伝説の騎士の姿だけがそこにあった。

 

「止まった……のか?」

 

 それでも不死人はまだ何か仕掛けてきそうで、恐る恐る柱に近づいたカズマは不死人をじっと見つめた。

 

 作戦が成功したことをやっと受け入れたカズマは、その場にへたり込んだ。ウィズも、アクアも、誰も声を上げなかった。

 

 あまりにも失いすぎた。その喪失感は、不死人を止めたことより遥かに大きく重く彼らにのしかかっていた。

 

 

 

 

 

 ウィズの魔力で固められた氷の柱とはいえ、いつまでも続くことはない。その柱は地面ごと移動させられ、アクセルの街にあるエリス教の教会の地下に収められることになった。

 

 

 アクセルの街を訪れたエリス教の魔法使いは、ぜひ教会の地下へ来て欲しい。

 

 

 そこにはひどく寒い部屋があり、その中心には一本の氷柱があるだろう。

 

 

 その柱に触れてはならない。溶かしてはならない。割ってはならない。

 

 

 命が惜しいなら、ただ氷魔法を詠唱して欲しい。

 

 

 未来永劫、世がどれほど変わっても、それは守らなくてはならない

 

 





みなさん、いよいよお別れです!
アクセルを守るカズマ連合は大ピンチ!しかも!デビルウィズ最終形態へ姿を変えたウィズが、めぐみんに襲い掛かるではありませんか!
果たして!全宇宙の運命やいかに!
機動武闘伝Gダクネス 最終回「Gゴッドブロー大勝利!希望の未来へレディ・ゴーッ!!」
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