この素晴らしい世界に不死人を   作:ボンシュ

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第二章 不死人の選択
この不死の男に爆裂を!


 不死人の進む先には、厳重な警備が敷かれた建造物があった。石造りの厳格な建物は犯罪者が入れられる施設だ。目視で確認できる見張りは4人。門の前に2人、建物の上に1人ずついた。中にはもっといるだろう。

 

「おい、最近捕まった奴のこと知ってるか?」

「ああ、魔王軍の関係者らしいな……あんな子供が手先なんて信じられん」

「尋問を見てた書記の話だと、魔道具が鳴ったそうだな」

「嘘を見抜くという魔道具か、ってことは本当なんだな……手先とはいえ子供をこんなとこに入れなきゃならねえのは、嫌だな」

「よせって、勇んでも俺たちじゃ何もできない…それよりそのガキの事だ。どうやらあいつ以外のパーティーメンバーは女だけらしいんだ、それも美女揃い」

「早く死刑にならねえかな」

「…………全くだな」

 

 

 兵士の話が本当ならカズマは魔王軍の手先らしい。だが、そうは思えなかった。普段彼らと接点がなくても、カズマの事は噂で聞いていた。目的のためなら手段を選ばない男だと。何をしたのかと聞いてみれば、下着を剥ぎ取ったり仲間を囮に使ったりなど。

 その程度か。不死人の率直な感想だった。パッチ(クソッタレハゲ野郎)と比べてもまだ可愛いと思える。

 

 兵士の会話を聞きながら、正門を堂々とくぐる。見つかってはならないので、静かに眠る竜印の指輪で音を消して霧の指輪で姿を隠していた。更に念には念を入れて影の装備を付けていた。

 

 脱走対策だろう、中は外観と同じように石造りで、壁にランプがあるだけで目印も無い。このまま当てもなく進んでは迷うのは必然だ。

 

 敵感知のスキルを使えば青白い人の形がゆらゆらと視界に映った。これで鉢合わせする危険は無い。念のために鎧貫きとバックラーを装備して先へ進んだ。

 

 ソウルがたくさん並んでいる場所に着いた。敵感知スキルを解除すると視界が戻る。牢屋が規則正しく並んでいた。不死院を思い出させる光景の中で囚人達の寝息が聞こえて来る。その中にはすすり泣く声も混ざっていた。警備兵は居ないようだった。この幸運が逃げないうちにカズマを探し出さなくては。

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 カズマは自分のよく回る舌を呪った。どうして自分はこうも調子に乗ってしまうのだろうか。これじゃアクアと同じじゃないか。

 

 デストロイヤーがアクセルの街に来た時、自分たちも含めて他の冒険者達は水晶に映った光景に顎が外れるほど口をあんぐりさせた。

 

 警報が鳴ってそれほど経ってないにも関わらず、デストロイヤーの目の前に獅子のような鎧をつけた人がいた。その人の周りが光ったと思ったら、デストロイヤーが急に止まって地面に蹲った。

 

 そのスキルについてめぐみんに聞いても、鎧がカッコいいと目を光らせて役に立たない。ダメ元でアクアに聞いたらあんなスキルは無いと言われた。

 

 となると残った可能性は一つだけだ。

 

 あの化け物騎士さんだ。

 

 そこから俺たちは騎士の化け物さを見せつけられた。

 

 両手で持つような大剣を片手で軽々背負うと、電気のような光を出しながら軽快に走り出した。棒切れを振り回しているように大剣を振り回して、次々にデストロイヤーの足を根本から断ち切っていく。

 

「なあ、デストロイヤーの体ってひょっとして柔らかいのか?」

「なわけないでしょ。デストロイヤーの身体は、それこそ爆裂魔法でもない限り壊せないくらいかたいのよ」

「なんですと!? あのちっぽけな剣ごときが、私の爆裂魔法に匹敵するとでも言うんですか!」

 

 めぐみんはあっというまにギルドから走り去っていった。その無駄に早い脚を普段の戦闘にも役立てて欲しいと思ったけど、そもそも爆裂魔法しか使えない上に使ったら動けなくなるので意味はなかった。クソッタレ。

 

「くそっ、しょうがねぇな。連れ戻して来るから、2人はここで待っててくれ」

 

 アクアとダクネスにそう言ってめぐみんを追いかけた。もう見えなくなっていたけど、行く場所はわかっている。十中八九デストロイヤーの見える場所だ。となると、平地よりも高台の方を選ぶに違いない。

 

 街の中を走り回ってたどり着いたところには、高台がふたつあった。このどちらかにめぐみんはもう登り始めている。迷っている時間はない、俺は右の高台に賭けた。

 

 結論から言うと俺の予想は外れた。右どころか左にもめぐみんの姿はなかった。どうやら俺が早く来すぎたようだ。

 

「しまったぁあぁぁーー!!」

 

 ここへ来ておれは自分のミスに気がついた。めぐみんを見失っただけじゃなく、何をしでかすかわからない駄女神と敵に突っ込むド変態クルセイダーから目を離してしまった。こうしてる内にもめんどくさい事態になってるかもしれない。だからといってめぐみんが来るかもしれないここを離れるわけにもいかない。

 

「何を叫んでいるんですかカズマ」

 

「うおおっ!! ってめぐみんっ! お前勝手に走り出しやがって、面倒ごとを増やすんじゃねーよ!」

 

 めぐみんの頬を思い切り引っ張る。涙目でやめてと言ってるがやめてやるもんか。こっちがどれだけ焦ったと思ってるんだ。

 

「爆裂魔法は私の誇りなのです! それを下に見られて黙ってられるわけがないでしょう!」

「あっ、馬鹿!」

 

 めぐみんは俺の手を振り払うと、高台を飛び降りて城壁の上に着地した。そのまま隣の高台によじ登ると、詠唱を始めた。

 

「光に覆われし漆黒よ。夜を纏いし爆炎よ。他はともかく、爆裂魔法のことに関しては私は誰にも負けたくないのですっ!行きます!我が究極の破壊魔法、エクスプロージョン!」

 

「こんの馬鹿があああああああ!!」

 

 俺の静止も聞かず、めぐみんの爆裂魔法はデストロイヤーに命中した。

 

「お前何やってんだ! とうとう頭がおかしくなったのか爆裂馬鹿女がっ!」

 

 めぐみんのいる高台によじ登ると、めぐみんは満足そうに倒れていた。

 

「フフッ、それは私にとって褒め言葉です……それでカズマ、どうでしたかいまの爆裂は」

 

 自分のしたことの重大さに気づいてないめぐみんに、おれはマジでキレた。

 

「0点だ。お前が撃った場所に何があったかもう一度考えてみやがれ」

「な、何を怒ってるんですかカズマ……デストロイヤーは倒せましたよ。急に走り出したことは謝りますが……」

 

「いいからよく考えろ!」

 

 しばらく黙って考えていためぐみんは、ようやく自分のしでかした事に気がついて顔を青くさせていた。

 

「ど、どどどどうしましょうカズマ………わわわわたしはとんでもないことをッ!」

 

 涙を流して後悔しても遅い。あれだけの威力の爆裂魔法を受けて、あそこで戦っていた騎士が無事なわけが無い。その証拠に爆心地には何も残っていなかった。

 

「やっと気づいたか………」

 

 うろたえるめぐみんを背負いながら、おれはどうやって誤魔化そうかと考えていた。

 

 




 爆裂魔法で不死人を吹っ飛ばしてしまっためぐみん

 果たしてセーフなのかアウトなのか

 なんだって、本人が気づいてない? なら  ヨシ!
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